ドッグフードには口をつけないのに、おやつを見せると目を輝かせて飛びついてくる——。そんな愛犬の様子に、「これはただのわがままなのか、それともどこか具合が悪いのか」と、判断がつかずに検索された方も多いのではないでしょうか。おやつは食べてくれるぶん、緊急性は低く感じられる一方で、「このまま放っておいていいのかな」という不安も消えないものです。


一言でいうと、おやつは食べて元気・体重・便に変化がなければ「選り好み」の可能性が高く、食事の工夫を試す価値があります。一方で、おやつも食べる勢いが落ちてきた・体重が減る・元気がないといった様子があれば、体調不良のサインとして受診を検討してください。丸1日(24時間)以上まったく食べない・水も飲まない・ぐったりしているときは、工夫より先に動物病院にご相談ください。
「フードは食べないのにおやつは食べる」ときの主な原因

フードは残すのにおやつは食べる——この状態が起きる背景は、大きく4つに整理できます。複数が重なっていることも多いので、当てはまるものがないか順番に確認してみてください。
おやつの味・香りに慣れてしまった(選り好み)
おやつやジャーキーは、犬にとって「特別においしいごほうび」です。おやつをもらえる頻度が高いと、フードよりおやつを待つようになり、フードを残せばおやつがもらえると学習してしまうことがあります。食欲そのものは落ちていないため、元気や体重に変化がないのが特徴です。これはいわゆる「わがまま食い(選り好み)」で、最も多いパターンのひとつです。
フードへの飽き・好みの変化
毎日同じフードが続くと飽きてしまう子もいますし、成長やシニア期への移行で食の好みが変わることもあります。昨日まで食べていたフードを急に残すようになった場合、味や香りが今の好みに合わなくなってきているのかもしれません。
口の中や歯のトラブル
「やわらかいおやつは食べるのに、硬いドライフードは避ける」という場合、歯周病や歯の痛み、口内炎などで「食べたいのに硬いものが噛めない」可能性があります。この場合は食欲があるので食べたそうにしますが、フードの前で口を気にしたり、片側だけで噛んだり、食べこぼしが増えたりします。
体調不良・病気の初期サイン
内臓の病気や発熱、痛みなどで食欲が落ちているときでも、大好きなおやつには一時的に反応することがあります。ただしこの場合、よく見るとおやつを食べる勢いも普段より落ちていることが多く、元気のなさ・体重減少・嘔吐や下痢などのサインを伴いがちです。「おやつは食べるから大丈夫」と思い込まず、全体の様子を見ることが大切です。
おやつは食べるという同じ状況でも、シニア犬では加齢による変化が加わります。基本的な「食べない・食が細い」ときの原因と対処は、こちらの記事でくわしくまとめています。
わがまま食い?病気?食べ方×経過時間でみる見分け方
いちばん知りたいのは「これは工夫で様子を見ていい選り好みなのか、それとも受診が必要な体調不良なのか」という点だと思います。おやつを食べるかどうかだけでなく、おやつの食べ方・元気・体重・経過時間をあわせて見ると、方向性が見えてきます。次の表で当てはまるものを確認してみてください。
| 食べ方・様子 | 考えられる背景 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| おやつも好物も勢いよく食べる/元気・体重・便は変わらない | 選り好み・フードへの飽きの可能性 | おやつを控えめにし、食事の工夫(ふやかし・トッピング・切り替え)を試す |
| やわらかいおやつは食べるが、硬いフードを避ける・口を気にする | 歯・口の中の痛みの可能性 | 口の中のチェックを兼ねて受診を検討 |
| おやつもゆっくり・少ししか食べない/元気がない | 食欲そのものの低下の可能性 | 数日続くなら受診を検討 |
| おやつは食べるが体重が減ってきた・嘔吐や下痢がある | 病気・体調不良の可能性 | できるだけ早く受診して原因を確認 |
| 丸1日(24時間)以上まったく食べない・水も飲まない・ぐったり | 緊急度が高い状態の可能性 | 時間帯を問わず当日中に受診(夜間は救急動物病院へ相談) |
ポイントは「おやつを食べるかどうか」ではなく「おやつの食べ方・元気・体重」まで含めて見ることです。これはあくまで一般的な目安であり、最終的な判断は診察した獣医師によります。迷ったときは、かかりつけ医に電話で相談すれば受診の要否を教えてもらえます。

今日からできる食事の工夫

受診が必要なサインがなく、選り好みの可能性が高そうなら、まずは「フードを食べやすく・魅力的にする工夫」から試してみましょう。あわせて、おやつの与え方の見直しも効果的です。
1まずはおやつの量を見直す
おやつでお腹が満たされていると、フードを食べる余地がなくなります。食べない間はおやつを控えめにし、「フードを食べたらごほうび」の順番に整えると、フードへの意欲が戻りやすくなります。おやつは1日の総カロリーの1〜2割程度が目安といわれます。
2フードをぬるま湯でふやかす
ドライフードを人肌程度のぬるま湯で10〜15分ふやかすと、やわらかく食べやすくなり、温まって香りも立ちやすくなります。おやつのような香りの魅力に近づける工夫です。熱湯は栄養素を壊しやすいため避けましょう。
3ウェットやトッピングで香りを足す
犬用ウェットフードを少量トッピングしたり、ゆでたささみのゆで汁をかけたりすると、香りが立って食いつきが変わることがあります。人の食べ物(ネギ類・味付きのもの等)は与えないでください。
41回の量を減らし、回数を分ける
一度に出す量が多いと残しやすい子もいます。1日2回のごはんを3〜4回に分け、食べきれる量を少しずつ出すと、完食の成功体験を積みやすくなります。
5静かで落ち着ける環境を整える
人の出入りが多い場所や、ほかのペットが気になる環境では落ち着いて食べられないことがあります。静かな場所に食事の場を移し、滑らないマットで足元を安定させると、集中して食べやすくなります。
これらの工夫を試しても食いつきが戻らないときは、フードそのものがいまの好みや体に合わなくなってきているのかもしれません。次の章で、フードの見直し方を見ていきましょう。
フードを見直す|選び方とおすすめ3種

おやつは食べるのにフードを残す状態が続くなら、フードを見直すのもひとつの選択肢です。フードを選ぶときは、次の4つのポイントを目安にすると、いまの子に合ったものを選びやすくなります。
- 香りの立ちやすさ:おやつに慣れた子の食欲を刺激できるか(ふやかし対応かも)
- 主原料と嗜好性:チキンやサーモンなど、犬が好みやすい動物性たんぱくが主役か
- 粒の大きさ・硬さ:あごや歯に負担が少なく、食べやすい粒か
- 消化のしやすさ:胃腸への負担が少ない原材料・設計か(持病がある子は獣医師に相談を)
ここでは、食いつきの評価がよく話題にのぼる犬用フードを3つ、公式サイトの情報をもとに紹介します。いずれもグレインフリー(穀物不使用)で、ヒューマングレードの食材を掲げるフードです。ただし体に合うかどうかは個体差があり、すべての子に合うわけではありません。切り替えは少量ずつ、1〜2週間かけて、いまのフードに少しずつ混ぜながら進めてください。
| フード名 | タイプ・特徴 | こんな子に |
|---|---|---|
| モグワン | チキン&サーモン主体・小粒リング型のドライ。全年齢対応 | 小粒で食べやすいものを探している・ふやかしも試したい子 |
| ネルソンズ | チキン主体・グレインフリーのドライ。中型〜大型犬向け設計 | 体格のある中型〜大型で、しっかりした粒を食べられる子 |
| カナガン | チキンたっぷりのグレインフリードライ。全犬種・全年齢対応 | 高たんぱくで香りの立つフードを試したい子 |
モグワン

モグワンは、放し飼いチキンと生サーモンを合わせて56.5%使用したドライフードで、人が食べられる品質(ヒューマングレード)の食材を掲げています。粒は直径約1cm・厚さ4.5mmの、真ん中に穴の空いたリング型で、小粒で食べやすい形状です。対象は幼犬から老犬までの全年齢。公式サイトではぬるま湯でふやかす食べ方も案内されており、香りを立たせたいときにも取り入れやすいフードのひとつです。口コミでは食いつきへの評価がある一方、合うかどうかは個体差があります。
モグワンの基本情報
| 主原料 | チキン&サーモン56.5% |
| タイプ | ドライ(小粒リング型) |
| 対象 | 全年齢(全犬種) |
| 内容量 | 1.8kg |
| 特徴 | グレインフリー・ヒューマングレード(執筆時点) |
ネルソンズ

ネルソンズは、チキンを50%(チキン生肉25%・乾燥チキン25%)使用したイギリス原産のグレインフリードッグフードです。粒は1辺約10mmの三角形で、中型〜大型犬向けに設計されています。対象は全年齢で、保存料・香料・着色料などの人工添加物は使用していないと公式に記載されています。体格のある中型〜大型犬で、しっかりした粒を食べられる子に向いたフードといえます。
ネルソンズの基本情報
| 主原料 | チキン50% |
| タイプ | ドライ(三角形・約10mm) |
| 対象 | 全年齢(中型〜大型犬向け) |
| 内容量 | 5.0kg |
| 特徴 | グレインフリー・イギリス原産(執筆時点) |
カナガン

カナガンは、放し飼いチキンを50%以上使用したグレインフリーのドライフードで、野菜やハーブをバランスよく配合しています。全犬種・全年齢に対応し、100gあたり約376kcalとされています。高たんぱくで香りが立ちやすい設計のため、食いつきが落ちてきた子に試されることの多いフードです。粒はふやかして与えることもでき、食べやすさにも配慮しやすいフードといえます。
カナガンの基本情報
| 主原料 | チキン50%以上 |
| タイプ | ドライ |
| 対象 | 全犬種・全年齢 |
| エネルギー | 約376kcal/100g |
| 特徴 | グレインフリー・ヒューマングレード(執筆時点) |
フードを切り替えても、はじめのうちは新しいフードだけを警戒して食べないこともあります。あせらず、いまのフードに少量ずつ混ぜて割合を増やしていくのが、切り替え成功のコツです。
動物病院に相談する目安

「おやつは食べるから大丈夫」と様子を見続けているうちに、受診のタイミングを逃してしまうこともあります。次に当てはまるときは、選り好みと決めつけず、動物病院に相談することをおすすめします。
- 丸1日(24時間)以上、フードもおやつもほとんど食べていない
- おやつを食べる勢いも、以前より落ちてきた
- 体重が明らかに減ってきた
- 硬いものを避ける・食べこぼす・口を気にするなど、食べ方がぎこちない
- 元気がない・水を飲む量が急に変わった・嘔吐や下痢がある
受診の際は、「いつから・どのくらいフードを残しているか」「おやつはどのくらい食べるか」「水は飲めているか」「便や尿の様子」をメモしていくと診察がスムーズです。食事の様子をスマホで動画に撮っておくのも役立ちます。
同じように「おやつは食べるのにフードを残す」ことは、猫でもよく見られます。猫の場合の見極めと工夫は、こちらもあわせてご覧ください。
看取り期の「食べない」との向き合い方

ここまでは「フードを食べられるようにする工夫」を中心にお伝えしてきましたが、旅立ちが近づいた終末期には、食事との向き合い方が少し変わってきます。体が食べ物を受けつけにくくなり、フードは残しても、好きだったおやつをほんの少しだけ口にする——そんな時期を迎えることがあります。
この段階では、「たくさん食べさせること」よりも、「その子が心地よく過ごせること」が優先になります。好きだったおやつやフードをほんの少し舐めさせてあげる、指先に付けて香りだけでも楽しんでもらう——そうした関わりも、立派な寄り添いです。強制給餌(シリンジなど)は誤嚥のリスクがあるため、行う場合は必ず獣医師の指導を受けてください。
「フードを食べさせられなかった」と、あとから自分を責めてしまう飼い主さんは少なくありません。けれど、その子の好きなものに寄り添い、最後までそばにいてあげた時間そのものが、何より大きな贈り物です。看取り期の食事やケアで迷ったときは、かかりつけの獣医師に相談してみてください。
よくある質問
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は動物病院にご相談ください。フードの情報は執筆時点(2026年7月)の各社公式サイト情報です。最新は各公式サイトでご確認ください。
まとめ|おやつの向こうに、いつもの食欲が戻りますように
フードは食べないのにおやつは食べる——多くは選り好み(わがまま食い)ですが、口のトラブルや体調不良のサインが隠れていることもあります。「おやつを食べるかどうか」だけでなく、おやつの食べ方・元気・体重・経過時間をあわせて見ることが、見極めのいちばんのポイントです。受診が必要なサインがなければ、おやつの見直しやふやかし、トッピング、そして必要に応じたフードの切り替えから試してみてください。
器の前で迷うあの子の姿に、やきもきする毎日かもしれません。けれど、あれこれ工夫する時間の一つひとつは、「またおいしく食べようね」という気持ちの表れです。あなたとあの子の食卓に、いつもの食欲と穏やかな時間が、これからも続きますように。