おやつやトッピングには目を輝かせて飛びつくのに、お皿に入れたドッグフードだけは、ふんと匂いをかいで、そのまま離れてしまう——。手をかえ品をかえ差し出しても、ドライフードには見向きもしない。そんな姿が続くと、「これはわがままなのか、それともどこか具合が悪いのか」と、判断に迷ってしまいますよね。無理に食べさせるべきか、それとも待つべきか、飼い主として悩ましいところです。
この記事では、当メディア編集部が犬の食事に関する公開情報を調査し、「おやつは食べるのにドッグフードだけ食べない」——いわゆるわがまま食い(偏食)に的をしぼって、原因の見分け方、病気との切り分け、今日からできる対処、そしてフードの見直し方までを、順を追って静かに整理しました。


一言でいうと、おやつや好物は食べて元気・水分もとれているなら、多くは「わがまま食い(偏食)」で、おやつを控え食事の時間を区切ることから始めます。ただし、大好物にも反応が鈍い・水も飲まない・ぐったりしている場合は、わがままでは説明がつきにくいため受診を検討してください。
おやつは食べるのにドッグフードを食べない主な原因

「おやつは食べるのにフードは食べない」という食べ方には、いくつかの背景があります。多くは病気ではなく、日々の与え方や好みが関係しています。まずは当てはまるものがないか、順に見ていきましょう。複数が重なっていることもよくあります。
おやつ・トッピングの与えすぎで満腹になっている
もっとも多いのが、これです。おやつやトッピングでお腹が満たされてしまうと、栄養の主役であるフードを食べる余裕がなくなります。犬は賢いので、「フードを残していれば、もっとおいしいものが出てくる」と学習することもあります。悪気はなく、飼い主の優しさが、結果的に偏食を後押ししてしまっているケースです。おやつは1日の必要カロリーの1割程度が目安とされ、それを超えると食事バランスが崩れやすくなります。
フードそのものに飽きている・好みに合わない
同じフードを長く与え続けていると、香りや味に飽きて食いつきが落ちることがあります。とくに嗜好性の高いおやつの味を覚えた後は、シンプルなドライフードが物足りなく感じられることも。また、フードのメーカーが原材料や製法を変えたタイミングで、急に食べなくなる子もいます。粒の大きさや硬さが好みに合っていない場合もあり、これは「わがまま」というより「食べにくい・好みじゃない」というサインです。
ごはんの環境・タイミングが合っていない
食事の場所が落ち着かない、食器が滑る・高さが合わない、家族の食事中に人の食べ物の匂いがする——こうした環境要因で集中して食べられないことがあります。運動量が足りずお腹が空いていない、暑い時期で食欲が落ちている、去勢・避妊後で必要カロリーが減った、といったタイミングの問題も。ダラダラとフードを出しっぱなしにしていると、「いつでも食べられる」と学習して、かえって食が細くなることもあります。
不調・病気が隠れている場合もある
「おやつは食べる」と、つい安心してしまいますが、口内炎や歯周病で硬いフードだけが痛くて食べられないこともあります。この場合、やわらかいおやつは食べられるため、わがままと見分けがつきにくいのが難しいところです。また、消化器の不調や発熱などで食欲全体が落ちているとき、最初はフードから残し始めることも。「大好物への反応が鈍い」「元気がない」「嘔吐・下痢を伴う」場合は、わがままではなく体調のサインを疑ってください。原因の切り分けについては、犬全般の食欲不振の見方も参考になります。
「わがまま」か「病気」か|食べ方と経過時間で見分ける
対処を始める前に、まず「これはわがまま食いか、それとも受診が必要な不調か」を落ち着いて見分けることが大切です。ポイントは、「おやつや大好物を食べるか」と「どのくらいの時間食べていないか」の組み合わせで考えることです。

おやつや好物は食べ、水も飲めて元気もある——という段階なら、多くはわがまま食い(偏食)の可能性が高く、次の章の対処を試しながら数日単位で様子を見ていけます。フードだけを残すのは、緊急性という点ではあわてなくてよいことが多いといえます。
一方で、「大好物にも反応が鈍い」「水も飲まない」「ぐったりして元気がない」「嘔吐や下痢を伴う」場合は、経過時間にかかわらず、対処を試すより先に受診してください。とくに子犬や小型犬、持病のある子は絶食に弱いとされ、丸1日(24時間)食べないだけでも体力を消耗することがあります。判断に迷うときは、かかりつけの動物病院に電話で相談すれば、受診の要否を教えてもらえます。あくまで一般的な目安であり、最終的な判断は必ず獣医師にゆだねてください。
わがまま食いを直す|今日からできる対処

受診が必要なサインがなく、わがまま食いが疑われる場合は、次の工夫を試してみましょう。ポイントは「フードをきちんと食べることが得」だと少しずつ覚えてもらうことです。焦らず、その子の様子を見ながら進めてください。
1食事の時間を15〜20分で区切る
フードを出して15〜20分たっても食べなければ、いったん下げてしまいます。次の食事時間まで、おやつも含めて何も与えません。「今食べないと、次までお腹が空く」と学習してもらう方法です。健康な成犬なら1食抜いても大きな問題にはなりにくいとされますが、子犬・小型犬・持病のある子には行わず、獣医師に相談してください。
2おやつ・トッピングをいったん減らす
偏食のいちばんの近道は、おやつを見直すことです。まずはおやつを思いきって控え、「お腹が空いた状態でフードと向き合う」時間をつくります。どうしてもトッピングを使うなら、フードにしっかり混ぜ込み、トッピングだけをより分けて食べられないようにする工夫が有効です。
3人肌に温めて香りを立たせる
ドライフードを人肌程度(35〜40度目安)のぬるま湯で少しふやかすと、香りが立って食いつきが変わることがあります。犬は匂いで食欲のスイッチが入る動物なので、温めるだけでも効果が出る子は少なくありません。熱湯は栄養素を壊しやすいので避けましょう。
4食器と食事環境を整える
食器が滑らないようマットを敷く、高さを合わせる、静かで落ち着ける場所に食事の場を移す——といった見直しも有効です。家族の食事と時間をずらし、人の食べ物の匂いがしない状況をつくると集中して食べやすくなります。
5運動量を見直し、お腹を空かせる
散歩や遊びが足りていないと、お腹が空かず食も進みません。その子に合った運動量を確保し、食事の前にしっかり体を動かすと、自然な空腹感が食欲につながります。ダラダラ出しっぱなしをやめ、食事の時間を決めることも大切です。
これらを数日〜1週間ほど根気よく続けると、少しずつフードを食べるようになる子が多いといわれます。それでも食いつきが戻らない、体重が落ちてくるという場合は、フードそのものがその子に合っていない可能性もあります。次の章で、フードの見直し方を見ていきましょう。
フードを見直す|選び方とおすすめ
工夫をしても食いつきが戻らないときは、フードを見直すのも一つの方法です。わがまま食いの子にフードを選ぶときは、次のポイントを意識すると失敗が少なくなります。
- 香りの立ちやすさ:動物性の原材料が主役で、温めたときに風味が出て食欲を刺激できるか
- 粒の大きさ・食べやすさ:その子の口に合う小粒か。ふやかしに向く粒か
- 原材料のわかりやすさ:主原料が明確で、余計な添加物が少ない設計か
- 切り替えやすさ:今のごはんに少量ずつ混ぜて、無理なく移行できるか
ここでは、当メディア編集部が公式サイトの情報をもとに、切り替え先として検討されることの多い犬向けフードを3つ調査しました。いずれも動物性の原材料を主役にしたレシピで、食いつきへの期待から選ばれることが多いフードです。なおフードの切り替えは、今のごはんに少量ずつ混ぜながら1〜2週間かけて進めると、お腹への負担を抑えられます。効果には個体差があるため、その子の様子を見ながら選んでください。
| フード名 | タイプ | 特徴 | こんな子に |
|---|---|---|---|
| モグワン | グレインフリーのドライ(小粒リング型) | チキンとサーモンが主役。ふやかし対応で香りを出しやすい | 香りで食欲を引き出したい・小粒が好みの子 |
| ネルソンズ | グレインフリーのドライ(中粒) | チキンを主原料に、消化に配慮した設計 | チキン好き・しっかり食べられる子 |
| カナガン | グレインフリーのドライ | 動物性たんぱくを主役にした英国発のレシピ | 偏食で切り替えを幅広く比べたい子 |
モグワン

チキンとサーモンを主役にした、ヒューマングレードの食材を使う小粒ドライフードです。中央に穴の空いたリング型で、小型犬でも食べやすく、ぬるま湯でふやかす食べ方も公式サイトで案内されています。香りが立ちやすいレシピのため、フードに飽きてしまった子の食いつきが期待できるとして選ばれています。全年齢対応で、切り替え先として検討されることの多いフードのひとつです。口コミでは食いつきへの評価が見られる一方、体に合うかは個体差があるため、少量ずつ試すのがおすすめです。
基本情報: 主原料=チキン・サーモン/タイプ=グレインフリーのドライ(小粒リング型)/対象=全年齢/内容量=1.8kg(執筆時点)
ネルソンズ

チキンを主原料にした、グレインフリー設計のドライフードです。動物性たんぱくをしっかり使いつつ、消化への配慮をうたっており、しっかり噛んで食べられる子の主食候補として選ばれています。粒はモグワンより大きめの中粒のため、小型犬や食べにくそうな子はふやかして与えると食べやすくなります。切り替え時は、いつものごはんに混ぜながらお腹の様子を見て進めましょう。
基本情報: 主原料=チキン/タイプ=グレインフリーのドライ(中粒)/対象=成犬〜シニア/内容量=公式サイト参照(執筆時点)
カナガン

動物性たんぱくを主役にした、英国生まれのグレインフリーフードです。素材の風味を活かしたレシピで、フードに飽きて食が細くなってきた子の食いつきが期待できるとして、切り替えの選択肢を幅広く比べたい飼い主に選ばれています。全年齢対応のラインがあり、偏食が気になる子の見直し先の候補になります。粒が硬いと感じる場合は、ふやかしてやわらかくすると食べやすくなります。
基本情報: 主原料=動物性たんぱく(チキン等)/タイプ=グレインフリーのドライ/対象=全年齢のライン有り/内容量=公式サイト参照(執筆時点)
持病があって食事管理が必要な子は、市販フードの切り替えだけで判断せず、療法食の要否も含めて獣医師に相談してください。フードを替えるときは、一度に全部変えず、少しずつ混ぜて切り替えるのが基本です。
動物病院に相談する目安

「わがままだと思っていたら、実は病気だった」という見逃しを避けるため、次のようなときは自己判断で様子を見続けず、受診をおすすめします。
- 大好物やおやつにも反応が鈍い、まったく食べない
- 丸1日(24時間)以上、ほとんど何も食べていない(子犬・小型犬はより早めに)
- 水も飲まない、またはぐったりして反応が鈍い
- 嘔吐・下痢・血便を伴う、飲水量が急に増えた・減った
- 食べ方がぎこちない(食べこぼし・片側噛み・口を気にする)、口臭が強い
- 体重が明らかに減ってきた、食べない日が繰り返される
受診の際は、「いつから・どのくらい食べていないか」「おやつや好物は食べるか」「水は飲めているか」「便や尿の様子」をメモしていくと診察がスムーズです。食事の様子をスマホの動画に撮っておくと、獣医師が状態を把握しやすくなります。とくに子犬は体力の蓄えが少なく、食べない状態が続くと急に弱ってしまうことがあるため、早めの相談が安心です。
看取り期の「食べない」との向き合い方

ここまでは若く元気な子の「わがまま食い」を中心にお伝えしてきましたが、高齢の子や、病気が進んで獣医師と相談のうえで積極的な治療を選ばない段階に入った子の「食べない」は、意味合いが少し変わってきます。最期が近づくと、体が食べ物を受けつけなくなっていくのは、多くの命に訪れる自然な過程だといわれています。
この時期に大切にしたいのは、「食べさせること」より「その子が穏やかでいられること」という視点です。無理に口へ押し込む強制給餌が、かえって本人の負担や誤嚥のリスクになることもあります。どこまで食事を促すか、点滴や補助をどうするかは、その子の状態とあなたの気持ちの両方を、かかりつけの獣医師と話しながら決めていって構いません。正解は一つではありません。
食べられなくても、できることはあります。好きだった匂いをそっと近づける、口元を湿らせてあげる、静かな場所で体をなでながらそばにいる——。食事という形でなくても、その手のぬくもりは、最期まで愛犬に届いています。「もっと食べさせられたら」と自分を責めないでください。食が細くなっていくその子のそばに、あなたが寄り添えていること自体が、何よりの看取りです。
お別れが近いと感じたとき、見送りや供養についてあらかじめ知っておくと、いざというときに落ち着いて向き合えます。猫と暮らすご家族には、こちらの記事も参考になります。
よくある質問
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は動物病院にご相談ください。※フードの情報・価格は執筆時点(2026年7月)の各社公式サイト情報です。最新は各公式サイトでご確認ください。
まとめ|「食べてほしい」の気持ちを、少しずつ形に
おやつは食べるのにドッグフードを残す背景には、おやつの与えすぎ、フードへの飽き、食事環境、そしてまれに不調まで、さまざまな理由があります。まずは「おやつや好物を食べるか」「元気や水分はあるか」で、わがまま食いと不調を落ち着いて見分けること。そのうえで、おやつを控えて食事の時間を区切る、香りを立たせる、環境を整えるといった対処を根気よく続けてみてください。それでも戻らないときは、香りや粒に配慮したフードへの見直しも一つの手です。
食べてくれない姿を見るとつい焦ってしまいますが、その悩みもまた、あの子を大切に思う気持ちのあらわれです。あなたとあの子のごはんの時間が、これからも穏やかなものでありますように。