ごはんの器はそのままなのに、愛猫は今日も窓辺で丸くなって眠っている――呼んでも薄く目を開けるだけ、遊びにも誘ってこない。「食べない」ことと「寝てばかり」が重なると、この子は今つらいのだろうか、何をしてあげればいいのだろうと、胸のあたりがざわつきますよね。猫はもともと眠る時間の長い動物ですが、そこに食欲の落ち込みが加わったときは、いつもより少していねいに見てあげたいサインのことがあります。この記事では、どんなときに受診を急ぐべきかの見きわめに触れたうえで、今日その手で試せる「食べてもらうための工夫」と、香りや素材からのフードの見直しまでを、静かに整理していきます。編集部が獣医療の一般的な情報や各フードの公式情報を調べてまとめました。


一言でいうと、少しは食べて水も飲み、元気もあるなら、食べやすくする工夫を試しながら観察してよい状態です。一方で、丸1日(24時間)以上まったく食べない・水も飲まない、あるいは寝てばかりでぐったり・反応が鈍いといった元気消失が重なるときは、工夫より先に受診を優先してください。
まず「元気があるか」で対応を分ける

猫は健康な成猫でも1日12〜16時間ほど眠るといわれ、シニアになるとさらに眠る時間が延びるのが自然です。ですから「寝てばかり」だけで慌てる必要はありません。ただし、食欲の落ち込みと「活動全体の低下」が同時に見られるときは、対応の分かれ目になるとされています。ここでいう活動の低下とは、いつもの遊びや毛づくろいをしなくなった、呼びかけへの反応が鈍い、といった様子を指します。
工夫を試してよい場合と、受診を急ぐ場合
おおまかには、次のように考えると整理しやすくなります。少しは食べて水も飲め、なでれば反応するなら、この記事で紹介する食事の工夫を試しながら1〜2日観察してよいことが一般的とされています。反対に、まったく食べない・水も飲まない・呼んでも反応が鈍い・隠れて出てこないといった様子があるなら、様子見をせず動物病院へご相談ください。
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- 水を飲めているか … 食べなくても水を飲めていれば猶予は比較的ありますが、水も飲まないのは注意サインです。
- 反応・意識の状態 … なでれば顔を上げる・目で追うなら反応あり。呼んでも反応が鈍い、暗い所に隠れて出てこないのは危険度が上がります。
- 呼吸や姿勢 … 呼吸が速い・浅い、うずくまって動かない、よだれが多いなどは、痛みや内臓の不調が背景にある可能性があります。
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特に猫では、あまり食べない状態が数日続くと肝臓に負担がかかる「脂肪肝(肝リピドーシス)」につながることがあると言われ、太り気味の子ほど注意が必要とされています。自己判断で長く様子を見すぎないことが、この記事全体を通しての前提です。
食欲が落ちて寝てばかりになる主な原因

「食べない」と「寝てばかり」が同時に起きる背景には、いくつかの原因が考えられます。ここでは一般的に挙げられるものを整理します。あくまで一般的な情報であり、実際の原因の特定は動物病院での診察が必要です。
加齢による嗅覚・食欲の変化
年齢を重ねると、においを感じる力や消化の働き、活動量が少しずつ変わっていきます。猫は香りで食欲が左右される動物なので、嗅覚がゆるやかに落ちると、以前と同じフードでも「あまりそそられない」ことが出てきます。加齢そのものは自然な変化ですが、「年のせい」と決めつけず、後述の工夫で香りを立ててあげると食が進むこともあります。
口や歯の痛み
歯周病や口内炎などで口の中が痛むと、食べたい気持ちはあってもお皿の前で顔を背ける、食べようとして途中でやめる、といった様子が見られることがあります。よだれが増えた、口を気にする、片側で噛むといったサインがあれば、口の中の不調も考えられます。この場合はふやかす・柔らかくするといった工夫が助けになりますが、痛みが強そうなら受診をおすすめします。
内臓の病気・発熱・痛み
慢性腎臓病・肝臓の不調・膵炎などの内臓の病気や、感染症・発熱・体のどこかの痛みがあるときは、食欲の低下とあわせて「じっとして動かない」「寝てばかり」という形で元気の低下が現れやすくなります。この場合は活動の低下がはっきりしていることが多く、フードの見直しでは対処できません。元気消失を伴うときは受診が最優先です。犬の食欲不振の見きわめについては、こちらの記事も参考になります。
ストレス・環境の変化
引っ越し・同居動物の変化・気温の変化・器や置き場所の変更などのちょっとしたストレスでも、一時的に食欲が落ちたり、隠れて過ごす時間が増えたりすることがあります。思い当たる変化があれば、まずは静かで落ち着ける環境を整えてあげることが、食欲を取り戻す助けになることがあります。
何日まで様子見?経過時間で見る目安

下の図は、「どのくらい時間が経ったか」と「食べ方・元気の状態」を組み合わせて、様子見の目安を整理したものです。同じ「食べない」でも、経った時間や元気の有無によって、工夫を続けてよいか受診を急ぐかの目安は変わります。あくまで一般的な目安であり、最終的な判断は動物病院で行ってください。
ざっくりとは、少しは食べて元気もあるなら半日ほどは工夫しながら観察、ほとんど食べないまま半日〜1日が過ぎるならかかりつけへ相談、寝てばかり・水も飲まない状態が24時間続くようなら、様子見の段階ではありません。元気消失を伴う「食べない」は、時間を待たず受診してください。猫の「食べない」全般の見きわめは、こちらの記事にも詳しくまとめています。
今日からできる食事の工夫

元気があって少しは食べられる子なら、食べやすくする工夫で食欲を後押しできることがあります。猫は「香り」と「食感」「食べる環境」で食が進みやすくなる動物なので、その三つを整えてあげるイメージです。ただし、元気がなく寝てばかりの状態が続くときは、工夫より先に受診を優先してください。
1フードを人肌に温める
フードを人肌程度(37〜38度目安)に温めると香りが立ち、嗅覚が落ちてきた猫でも食欲が刺激されやすくなります。電子レンジで温めすぎず、指で触れて熱くない程度に。猫は香りで食べる動物なので、まず試したい工夫です。
2ウェットやふやかしで食べやすくする
ドライが食べづらそうなら、ウェットフードに切り替えたり、ドライをぬるま湯でふやかして柔らかくすると、口や歯に負担がかかりにくくなります。ふやかすと香りも立ちやすくなります。
3香りの強いものを少量トッピングする
かつお節やささみのゆで汁、猫用のウェットを少量トッピングすると、香りで食欲を引き出せることがあります。持病がある子は、足してよい食材をあらかじめ獣医師に確認しておくと安心です。
4食器の高さと置き場所を見直す
食器を少し高くすると、首やあごへの負担が減って食べやすくなる子がいます。人の出入りが少ない静かな場所にお皿を置くと、落ち着いて食べてもらいやすくなります。
5少量を数回に分けて出す
一度にたくさんではなく、少量を1日数回に分けて出すと、負担なく食べ進められることがあります。新鮮なうちに食べきれる量を意識し、時間がたって乾いたフードは取り替えてあげましょう。
これらを試しても半日〜1日ほとんど食べない、あるいは元気の低下が強まるようなら、工夫を続けるより受診を選んでください。工夫はあくまで「元気はあるけれど食が細い」子のためのものです。
フードを見直す|猫のフードの選び方とおすすめ

工夫を試しても食が進まず、原因が「病気ではない」と確認できている場合は、フードそのものの飽きや香りの好みが理由かもしれません。そんなときは、香りや素材の面から切り替えを検討するのも一つの選択肢です。ここでは、切り替え先として検討されることのある猫用フードを3種紹介します。いずれも「食いつきが期待できる」という位置づけであり、症状を治すものではありません。元気がない・寝てばかりの子は、まず受診が優先です。
モグニャンキャットフード

白身魚を主原料にしたグレインフリーのドライフードです。公式サイトによると、白身魚をたっぷり使い、穀物の代わりにタピオカ・じゃがいも・さつまいもを用いた設計とされています。全猫種・全年齢に対応し、粒は小粒タイプ。魚の香り立ちと小粒設計から、嗅覚やあごの力が落ちてきた猫の切り替え先として検討されやすいフードのひとつです。ドライが食べづらそうなときは、ぬるま湯でふやかして与えることもできます。
基本情報: 主原料=白身魚(約65%)/タイプ=グレインフリーのドライ/対象=全猫種・全年齢/粒=小粒(直径約8mm)/内容量=1.5kg
アランズナチュラルキャットフード

チキンとターキーを主原料にしたグレインフリーのドライフードです。公式サイトによると、原材料の約70%にお肉を使い、わずか10種類ほどの自然素材だけで作られ、香料・着色料を使わない設計とされています。全猫種・全年齢に対応し、粒は円形で、直径約8mm・厚さ約5mmとされています。シンプルな原材料で素材の香りを大切にしたフードで、余計なものを避けたい子の切り替え先として選ばれることがあります。こちらもぬるま湯でふやかして与えられます。
基本情報: 主原料=チキン・ターキー(約70%)/タイプ=グレインフリーのドライ/対象=全猫種・全年齢/粒=円形・直径約8mm/厚さ約5mm/内容量=1.5kg
CAT STANCE(鹿肉ドライ)

鹿肉を主原料にした国産・無添加のドライフードです。公式サイトによると、鹿肉と鶏肉を使い、着色料や保存料を使わずに国内で製造しているとされています。普段の鶏や魚のフードに飽きてしまった子に、新しい香りの選択肢として検討されることがあります。全年齢に対応しています。原材料に大麦や玄米などの穀物を含むため、穀物を避けたい場合は原材料をご確認ください。
基本情報: 主原料=鹿肉(生)・鶏肉(生)/タイプ=国産・無添加のドライ(穀物を含む)/対象=全年齢(幼猫〜老猫)/内容量=1kg
なお、フードの切り替えは食欲不振の原因が「病気ではない」と確認できていることが前提です。慢性腎臓病などで療法食を使っている子や、持病がある子は、切り替えの前に必ず獣医師に相談してください。新しいフードに替えるときは、今までのフードに少しずつ混ぜて1週間ほどかけて移行すると、消化器への負担が抑えられます。
動物病院に相談する目安

次のような様子が見られるときは、様子見をせず動物病院に相談することが勧められます。特に「食べない」に「元気がない・寝てばかり」が重なっているときは、受診の優先度が高いと考えてください。
こんなときは早めに受診を
- 丸1日(24時間)以上、まったく食べない・水も飲まない
- 食べないうえに、呼んでも反応が鈍い・隠れて出てこない・ぐったりしている
- 呼吸が速い・浅い、よだれが多い、うずくまって動かない
- 嘔吐や下痢を繰り返している、体重が目に見えて減ってきた
- 工夫を試しても半日〜1日ほとんど食べず、元気の低下が進んでいる
受診の際は、「いつから」「どのくらい食べていないか」「水は飲めているか」「元気・活動の変化」「嘔吐や下痢の有無」をメモしておくと、診察がスムーズになります。判断に迷うときも、まずは電話でかかりつけに相談してみると、受診のタイミングの目安を教えてもらえます。
看取り期の「食べない」との向き合い方

高齢や病気が進み、これ以上の積極的な治療をしないという選択のなかで、少しずつ食べられなくなり、眠る時間が増えていく――そんな時期を迎えることもあります。ここでの「食べない・寝てばかり」は、これまでの体調のサインとは意味合いが異なり、体が静かに力を抜いていく自然な過程であることもあります。この時期は、これまで紹介した「食べさせる工夫」とは別のまなざしで、そっと寄り添ってあげてください。
この時期に大切なのは、無理に食べさせることよりも、その子が穏やかに過ごせることです。好きだったものの香りをそっと近づける、口元を湿らせてあげる、そばで名前を呼ぶ――それだけでも、猫にとっては安心につながります。食べる量が減っていくことに飼い主さんが自分を責める必要はありません。どうしてあげるのがよいか迷うときは、かかりつけの獣医師に、この子にとって楽な過ごし方を相談してみてください。最後まで寄り添おうとするその気持ちが、いちばんのケアになります。
よくある質問
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。
※本記事の料金・内容量は執筆時点(2026年7月)の各社公式サイト情報です。最新は各公式サイトでご確認ください。
まとめ|「食べさせる工夫」と「受診の見きわめ」を両手に
猫の「食べない」と「寝てばかり」が重なったときは、まず元気の有無で対応を分けるのが見きわめの第一歩です。少しは食べて元気もあるなら、温める・ふやかす・香りを足す・静かな環境を整えるといった工夫で食を後押ししながら観察を。フードの飽きが疑われるなら、香りや素材の面から見直してみてください。反対に、寝てばかり・水も飲まない・反応が鈍いといった元気消失が重なるなら、工夫より受診が最優先です。
不安なとき、その小さな食欲の変化にいちばん早く気づいてあげられるのは、いつもそばにいるあなたです。気づいたことが、もう十分なやさしさです。どうか、あなたと猫が穏やかな時間を重ねていけますように。