ふと見ると、愛犬が肩で息をするようにハアハアと呼吸している——。運動したわけでも暑いわけでもないのに呼吸が荒い・速いと、「何か悪い病気なのでは」「このまま様子を見ていていいのだろうか」と、胸がざわつきますよね。とくにシニア期の子や、長く一緒に過ごしてきた子であればなおさらだと思います。
この記事では、当メディア編集部が獣医療の公開情報を調査し、犬の呼吸が荒くなる原因と、「今すぐ受診すべきサイン」と「まず落ち着いて見守れる状態」の見分け方を整理しました。あわせて、食欲が落ちてきた子への食事の工夫や、看取り期に呼吸が変わってきたときの寄り添い方まで、静かにお伝えします。


一言でいうと、口を開けたハアハア呼吸・舌や歯茎が紫や白っぽい(チアノーゼ)・横になれず座り込んで息をする、といったサインがあれば、様子を見ずにすぐ動物病院へ。これらがなく、運動や暑さのあとに一時的に荒いだけなら、涼しく静かな場所で休ませて様子を見ます。
犬の呼吸が荒い・速いときに考えられる主な原因

犬の呼吸が荒くなる背景は、大きく「生理的なもの(心配のいらないことが多い)」と「病気やからだの不調によるもの」に分けられます。まずは全体像を整理してみましょう。
暑さ・運動・興奮による一時的なもの
犬は人のように全身で汗をかけません。汗腺は主に肉球にしかなく、体温を下げる手段が限られているため、口を開けてハアハアと速い呼吸(パンティング)をすることで、体にこもった熱を逃がしています。散歩や遊びのあと、気温や湿度が高いとき、興奮したときや来客時などに呼吸が速くなるのは自然な反応で、休んで落ち着けば数分〜十数分でおさまるのが一般的とされています。
一方で、涼しい場所で休ませてもハアハアが止まらない、大量のよだれを流す、ぐったりする、歯ぐきが赤い・どす黒いといった場合は、熱中症の初期のことがあります。とくに短頭種(フレンチブルドッグ・パグ・シーズーなど)や、心臓・呼吸器に持病のある子、シニア犬は暑さに弱いとされるため、夏場は室温管理に気を配ってあげてください。熱中症が疑われるときは、涼しい場所へ移して体を濡らしたタオルなどで冷やしながら、すぐに動物病院へ連絡します。
痛みや不安・ストレスによるもの
体のどこかに痛みがあるとき、犬は呼吸が浅く速くなることがあります。関節や腰の痛み、お腹の不調などが背景にあることもあり、そわそわして落ち着かない、震えを伴う、特定の姿勢を嫌がるといった様子が一緒に見られたら、痛みのサインかもしれません。強い不安や緊張でも呼吸が速くなることがあります。
心臓・呼吸器の病気によるもの
安静にしているのに呼吸が速い・荒い状態が続く場合、心臓病(小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症など)や、気管・肺の病気(気管虚脱、肺水腫、肺炎、気管支炎など)が隠れていることがあると一般的にいわれます。心臓の機能が落ちると肺に水がたまり(肺水腫)、呼吸が苦しくなることがあります。
こうした病気では、咳を伴う、夜間や明け方に呼吸が苦しそう、少しの運動で疲れる、興奮すると呼吸が乱れるといった変化が現れやすいとされます。とくにシニア犬や小型犬に多いといわれるため、こうしたサインに気づいたら、早めに動物病院で相談するのが安心です。心臓や呼吸器の病気は、早く見つけて管理を始めることで、その子が楽に過ごせる時間を延ばせることもあります。
老犬・終末期に見られる呼吸の変化
高齢になると、心肺の機能が少しずつ落ちてくることで呼吸が変化することがあります。終末期が近づくと、浅く速い呼吸や不規則な呼吸が見られることもあります。これについては、記事後半の「看取り期の呼吸との向き合い方」でも、そっと触れています。いずれの場合も、自己判断で「歳のせい」と決めつけず、一度かかりつけ医に相談しておくと、その子に合った見守り方が見えてきます。
すぐ受診すべき?呼吸の緊急度を見分ける目安
呼吸が荒いとき、いちばん大切なのは緊急度を見極めることです。次の図解で、落ち着いて確認してみてください。

今すぐ受診してほしい危険なサイン
次のような様子が見られたら、酸素が十分にとりこめていない可能性があり、緊急性が高いとされています。数時間の遅れが命に関わることもあるため、すぐに動物病院、夜間であれば救急対応の病院へ連絡してください。
- 口を大きく開けて苦しそうにハアハアしている(開口呼吸)
- 舌や歯茎が青紫色・白っぽい(チアノーゼ・貧血のサイン)
- 横になれず、座ったまま首を伸ばして呼吸する(起坐呼吸)
- お腹を大きく波打たせて全身で息をする(努力性呼吸)
- ゼーゼー・ヒューヒュー・ガーガーといった異常な呼吸音がする
- ぐったりして反応が鈍い/ピンク色の泡状の鼻水や咳がある
安静時の呼吸数を数えてみる
受診すべきか迷ったときの手がかりになるのが、眠っているとき・くつろいでいるときの呼吸数です。胸やお腹が上下する回数を、1分間(または15秒×4)数えてみてください。犬の安静時の呼吸数は1分間におよそ20〜30回程度が一般的な目安とされ、寝ているときはもう少し少なくなります。安静時に1分間40回を超えるような速い呼吸が続く場合は、心臓や肺の不調が疑われることがあるため、受診の目安になります。ふだんの安静時の呼吸数を知っておくと、「いつもと違う」に早く気づけます。
ここまでの危険なサインがなく、運動・暑さ・興奮のあとに一時的に荒いだけであれば、まずは涼しく静かな場所で休ませ、落ち着くかどうかを見守りましょう。
呼吸が荒いときに家でできること・楽な姿勢

受診が必要なサインがない場合や、病院へ向かうまでの間にできる、家での落ち着かせ方をまとめました。無理に何かをするより、まず環境を整えてあげることが大切です。
1涼しく静かな場所で休ませる
室温をやや低め(人が少し涼しいと感じるくらい)に保ち、風通しのよい静かな場所に寝かせます。呼吸が苦しいときは暑さや騒がしさが負担になるため、まわりを落ち着いた環境に整えてあげましょう。
2楽な姿勢をとらせてあげる
一番楽に感じる姿勢は子によって違います。胸を下にした伏せの姿勢や、上半身をやや高くした体勢が楽なことが多いとされます。クッションやタオルで支え、本人がとりたい姿勢を邪魔しないようにそっと見守ります。
3飼い主さんが落ち着いて接する
犬は飼い主さんの不安を敏感に感じ取ります。心配な気持ちはそのままに、声かけやなでる手はできるだけ穏やかに。あなたが落ち着いていることが、その子の安心につながります。
4呼吸の様子を記録しておく
呼吸数、どんなときに荒くなるか、舌の色、咳やよだれの有無をメモや動画に残しておくと、受診時の診察がスムーズになります。スマホで数十秒の動画を撮っておくのがおすすめです。
ただし、これらはあくまで「危険なサインがないとき」や「受診までの間」の対応です。症状が改善しない・悪化する場合は、家でのケアにこだわらず、動物病院への相談を優先してください。
食欲が落ちてきた子へ|高栄養の食事という選択

呼吸に不調があると、体力を使うぶん食欲が落ちてきたり、食べること自体がおっくうになる子もいます。まずは呼吸の原因を動物病院で診てもらうことが最優先ですが、そのうえで「少しでも栄養をとってほしい」というとき、食べやすさや栄養密度に配慮した食事に見直すのはひとつの選択肢です。ここでは、食が細くなった子に検討されることの多いフードを、参考としてご紹介します(持病がある子は、フードの変更前に必ず獣医師にご相談ください)。
モグワン(食が細くなった子の切り替え候補として)

モグワンは、チキンとサーモンを主原料にしたグレインフリー(穀物不使用)のドッグフードです。公式サイトによると、人が食べられる品質基準(ヒューマングレード)の食材を使い、全年齢に対応した設計となっています。粒は中央に穴の空いたリング型で、公式サイトでもぬるま湯でふやかす食べ方が案内されているため、噛む力や食欲が落ちてきた子にも取り入れやすいとされています。香りが立ちやすく、食いつきへの評価がある一方、体に合うかどうかは個体差があるため、切り替えは今までのフードに少しずつ混ぜ、1〜2週間ほどかけて進めるのが安心です。
モグワンの基本情報
| 主原料 | チキン・サーモン |
| タイプ | グレインフリーのドライ(ふやかし対応) |
| 対象 | 全年齢 |
| 内容量 | 1袋1.8kg |
| 特徴 | ヒューマングレード食材・リング型の粒(執筆時点・公式サイトより) |
自力で食べにくくなってきたら|介護食・流動食も
体力が落ちて自分から食べるのが難しくなってきた子には、ペースト状の介護食や、シリンジ(針のない注射器)で与えられる流動食という選択肢もあります。少ない量でも必要なカロリーをとれるよう、栄養密度を高めた市販の介護食も販売されています。ただし、流動食やシリンジでの給餌は誤嚥(食べ物が気管に入ること)のリスクがあるため、必要なカロリーや与え方は自己判断せず、必ずかかりつけの獣医師に相談してから始めてください。
「食べない」ことへの不安や、食事の工夫については、こちらの記事でもくわしくまとめています。
動物病院に相談する目安とタイミング

呼吸は、体の状態がわかりやすく表れるサインです。次のような場合は、様子見をせず動物病院に相談することをおすすめします。
- 口を開けた苦しそうな呼吸・チアノーゼ・起坐呼吸がある(すぐに受診)
- 安静時の呼吸数が明らかに増えた状態が続いている
- 咳を伴う、少しの運動で疲れる、夜に呼吸が苦しそう
- 食欲や元気の低下、体重の減少をあわせて感じる
- 「いつもと何か違う」という違和感がある
受診の際は、いつから・どんなときに呼吸が荒くなるか、安静時の呼吸数、舌の色、咳やよだれの有無をメモしていくと診察がスムーズです。前述のとおり、呼吸の様子を動画に撮っておくと、病院で症状を正確に伝える助けになります。
看取り期の「呼吸の変化」との向き合い方

ここからは、旅立ちが近づいた子の呼吸の変化について、そっとお伝えします。いま看取りの時間の中にいる方は、どうか無理をなさらず、読める範囲で読んでください。
終末期が近づくと、呼吸に変化が現れることがあると一般的にいわれます。浅く速い不規則な呼吸、口を開けての呼吸、下顎だけを動かすような呼吸(下顎呼吸)、浅い呼吸と深い呼吸をくり返して合間に無呼吸をはさむ呼吸(チェーンストークス呼吸)などが見られることがあります。見ているとつらく感じられますが、意識が下がっている段階では、見た目ほど本人が苦しさを感じていないこともあるとされています。心配なときは、酸素室のレンタルや自宅での看取りについて、かかりつけ医と事前に相談しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
この時間にあなたができる寄り添いは、決して小さなことではありません。
- クッションやタオルで、その子が楽な姿勢をそっと支える
- 乾いた口元を、湿らせたガーゼでやさしく潤す(水を流し込むのは誤嚥のため避ける)
- おだやかな声で名前を呼び、静かにそばにいる
- あなた自身も、深呼吸をして落ち着いた気持ちで向き合う
そばにいて、名前を呼び、あたたかい手で触れてあげること。その一つひとつが、長い時間をともに過ごしてきたあなただからこそできる、いちばんの寄り添いです。
よくある質問
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は動物病院にご相談ください。フードの情報は執筆時点(2026年7月)の公式サイト情報です。
まとめ|呼吸は、その子からの静かなサイン
犬の呼吸が荒くなる背景には、暑さや興奮のような一時的なものから、痛み、心臓や呼吸器の病気、そして看取り期の変化まで、さまざまな理由があります。まずは、口を開けた苦しそうな呼吸・チアノーゼ・起坐呼吸といった危険なサインがないかを確認し、あれば迷わず受診を。安静時の呼吸数を知っておくことも、大きな手がかりになります。
呼吸は、その子が言葉の代わりに伝えてくれる、静かなサインです。いつもと違うと感じたその気づきは、そばで見守ってきたあなただからこそのもの。あなたとあの子の呼吸が、これからもできるだけ穏やかでありますように。