いつもと同じ器、いつもと同じフードなのに、少し匂いを嗅いだだけで離れてしまう。あるいは反対に、食べ終わってすぐまた鳴いてねだる、他の子のご飯まで狙いにいく——。「食欲がおかしい」と感じたとき、飼い主さんの胸には言葉にしづらい不安が広がりますよね。猫の食欲は、その日の気温や気分でも揺れます。けれど、いつもの幅を超えた変化が続くときは、体からの静かな知らせであることも少なくありません。
「食欲異常」と一口にいっても、その中身は「減った」と「増えた」の両方向があります。どちらも、それ自体が病気なのではなく、体の中で起きている何かが食べ方に表れている状態です。だからこそ大切なのは、まず「量がどう変わったのか」を落ち着いて見分けること。感覚だけで判断すると、様子を見すぎてしまったり、逆に不安だけが大きくなってしまったりします。
この記事では、当メディア編集部が獣医療の公開情報を調査し、猫の食欲の量的な変化を見分ける具体的な方法、減る場合・増える場合それぞれに考えられること、受診を考える目安、そして今日からできる食事の工夫までを、順を追って静かにまとめました。


一言でいうと、丸1日(24時間)以上まったく食べない・水も飲まない・ぐったりしているときは早めの受診を、それ以外は1日の食事量と体重を記録しながら見極めるのが基本の目安です。また「よく食べるのに痩せてきた」という増える側の変化も、体のサインとして受診の対象になります。
猫の「食欲異常」の見分け方|まず量・回数・体重・飲水量を数える

「食欲がおかしい」という感覚は、多くの場合とても正確です。ただ、動物病院で相談するときも、家で判断するときも、感覚のままでは扱いにくいという難しさがあります。そこでまず、食欲の変化を「数えられる形」に置き換えてみましょう。見るべきものは、次の4つです。
1日の食事量(もっとも大事な指標)
いちばん確実なのは、1日に与えた量と残した量をはかり、実際に食べた量をグラムで把握することです。猫は1回の食事をちびちびと何度にも分けて食べる動物なので、「さっき残していた」だけでは判断がつきません。朝に1日分を計量して器に入れ、翌朝に残りをはかる方法なら、手間をかけずに1日量がわかります。数日分を並べてみると、「気のせいだった」のか「本当に減っている(増えている)」のかがはっきりします。
食べる回数と、食べ方そのもの
量が同じでも、食べ方の変化には意味があります。器の前まで来るのに食べずに離れる、食べたそうに見えるのに口をつけない、噛まずに丸のみする、片側だけで噛む、食べこぼす、食べながら頭を振る——こうした様子は「食欲がない」というより「食べたいのに食べられない」状態を示していることがあります。反対に、食べ終わってすぐまたねだる、他の子の器に行く、盗み食いが増えたといった変化は、増える側のサインです。
体重(食欲の変化を裏づける物差し)
食欲の変化が体に影響しているかどうかを教えてくれるのが体重です。猫は体が小さいぶん、数百グラムの減少でも大きな割合になります。抱いて体重計に乗り、自分の体重を引く方法で十分ですので、週に1回でも記録しておきましょう。とくに「よく食べているのに体重が減る」という組み合わせは、家庭では見逃されやすい重要なサインです。
飲水量と、おしっこの量・回数
食欲の変化には、飲水量の変化がついてくることがあります。水飲み場の減り方、おしっこの塊の大きさや回数(システムトイレなら吸収量、砂ならおしっこ玉の数)も、あわせて見ておきたい項目です。飲む量が急に増えた・減ったという変化は、食欲の増減とセットで獣医師に伝えると診察の助けになります。
| 記録する項目 | はかり方の目安 | 気にしたい変化 |
|---|---|---|
| 1日の食事量 | 朝に1日分を計量→翌朝に残りをはかる | いつもの量より明らかに少ない/多い日が続く |
| 食べ方 | 食事の様子を数十秒だけ動画に撮る | 食べずに離れる・片側噛み・食べこぼし |
| 体重 | 抱いて体重計に乗り自分の体重を引く(週1回) | 続けて減っている/食べているのに減る |
| 飲水量・尿 | 水入れの減り方、おしっこの塊の数や大きさ | 急に増えた・急に減った |
この4つを3日ほどメモするだけで、「食欲異常」という漠然とした不安が、獣医師に伝えられる情報に変わります。猫はもともと日によって食べムラのある動物なので、1日だけの変化で慌てすぎる必要はありません。ただし、次章以降の「すぐ相談したいサイン」に当てはまるときは、記録より受診が優先です。
食欲が変わるときに考えられる主な原因|減るとき・増えるとき

食欲の変化の背景は一つとは限らず、いくつかが重なっていることもよくあります。ここでは減る方向・増える方向に分けて、一般的に知られていることを整理します。いずれも家庭で断定できるものではないため、「当てはまるかもしれない」という見当をつけて、獣医師に相談する材料としてお使いください。
減るとき①:口の中の痛み・歯のトラブル
歯周病や口内炎などで口の中に痛みがあると、食べたいのに食べられない状態になります。ドライフードだけを残す、やわらかいものなら食べる、食べこぼす、口を前足で気にする、よだれが増えるといった様子があれば、口のトラブルが疑われます。フードを変える前に、一度口の中を診てもらうと原因の切り分けが早くなります。
減るとき②:内臓の病気や体調の変化
腎臓や肝臓、消化器、膵臓など、食欲に影響する体の不調はさまざまです。とくに高齢の猫では慢性腎臓病が珍しくないとされ、食欲の低下や飲水量の変化、体重減少という形であらわれることがあります。吐く回数が増えた、便がゆるい状態が続く、飲水量が急に変わったといった変化を伴う食欲低下は、「歳のせい」で片づけず早めに相談したい状態です。
減るとき③:ストレス・環境の変化
猫は環境の変化に敏感な動物です。引っ越し、模様替え、来客、同居動物や家族構成の変化、工事の音、食事場所がトイレや騒がしい場所に近いことなどが、食欲に影響することがあります。この場合は「食べたくない」というより「落ち着いて食べられない」状態なので、環境を整えるだけで戻ることも少なくありません。
減るとき④:フードへの慣れ・食べにくさ
同じフードが続いて飽きたように見える、新しいフードに切り替えた直後から食べない、粒が硬くて噛みづらい、器が深くてヒゲが当たる、器の位置が低くて首を下げるのがつらい——こうした「食べにくさ」も食欲低下として現れます。年齢を重ねると嗅覚や味覚が鈍くなり、香りを感じ取りにくくなるともいわれており、同じフードでも魅力が落ちて見えることがあります。
増えるとき①:甲状腺の病気(甲状腺機能亢進症)
「よく食べるのに痩せる」という組み合わせで知られているのが、甲状腺機能亢進症です。MSDマニュアル家庭版(獣医学)では、猫のこの病気は中年〜高齢で多くみられ、食欲が非常に旺盛になる一方で体重が減るほか、飲水量・尿量の増加、嘔吐や下痢、落ち着きのなさなどがみられると説明されています(出典:MSD Vet Manual「Disorders of the Thyroid Gland in Cats」)。一方で、高齢猫では逆に元気や食欲が落ちる形で現れることもあると報告されており、症状の出方は一様ではありません。
増えるとき②:糖尿病
糖尿病もまた、食欲の増進を伴うことが知られています。日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)の解説では、猫の糖尿病の症状として「水をよく飲んで尿が多量に出る多飲多尿、食欲の増進」が挙げられ、インスリンが十分に働かない場合は食べているのに痩せていくと説明されています(出典:JBVP「糖尿病/猫の病気」)。食欲が増えたと同時に水を飲む量・おしっこの量が増えたときは、元気に見えても早めの相談をおすすめします。
増えるとき③:消化・吸収がうまくいかない状態
食べたものを十分に吸収できない状態でも、体が栄養を求めて食べる量が増えることがあると知られています。猫では炎症性腸疾患(IBD)や消化器型リンパ腫、慢性膵炎に続く膵外分泌不全などが挙げられ、軟便や下痢、便の見た目やにおいの変化、体重減少を伴うことがあります。ただし猫の膵外分泌不全では、犬と違って食欲がむしろ落ちる例も報告されており、症状だけで見分けることはできません。便の状態の変化を伴う食欲の変化は、便の写真を持って受診すると診察がスムーズです。
増えるとき④:生活や環境の要因
病気以外にも、避妊・去勢手術後の代謝や活動量の変化、多頭飼育で他の子と競って食べる状況、退屈や不安からくる要求行動、投薬(副腎皮質ステロイドなど)の影響で食欲が増すことがあると一般に知られています。この場合も、体重が増えすぎていないか、他に変わった様子がないかを合わせて見ておくと安心です。
犬の食欲不振では、原因の並びも家庭でできる工夫も少し勘どころが異なります。犬の場合について知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
何日まで様子を見てよい?食べ方×経過時間で見る受診の目安
原因の見当がついても、いちばん知りたいのは「いつ病院に行けばいいか」だと思います。ここでは「どんな食べ方か」と「どれくらい続いているか」をかけ合わせた、一般的な目安を整理しました。あくまで目安であり、最終的な判断は必ず獣医師に委ねてください。

| 様子 | 緊急度 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 水も飲まない/ぐったりして反応が鈍い | 高い | 当日中に動物病院へ。夜間なら救急への相談も検討 |
| 嘔吐や下痢を繰り返す/苦しそうな様子がある | 高い | できるだけ早く受診 |
| 丸1日(24時間)以上まったく食べない | やや高い | 翌日までに受診の相談を(猫は絶食が続くと負担が大きいため) |
| 食べる量が減った状態が数日続く/体重も減ってきた | 中 | 数日以内に受診し、内臓や口の状態を確認 |
| よく食べるのに痩せる/飲水量が急に増えた | 中 | 元気に見えても数日以内に受診を検討 |
| 量は少し減ったが、水は飲む・元気はある・体重は安定 | 低め | 1日量と体重を記録しながら工夫を試し、続くようなら受診 |
とくに注意したいのが、まったく食べない状態が続いた場合です。コーネル大学猫健康センター(Cornell Feline Health Center)は、猫が食べなくなると体じゅうに蓄えられた脂肪が肝臓へ移動し、処理しきれずに肝臓の細胞にたまる「肝リピドーシス(脂肪肝)」が起こりうると説明しています(出典:Cornell Feline Health Center「Hepatic Lipidosis」)。同センターは発症までの日数を示してはいませんが、猫にとって「食べない時間が続くこと」自体が体の負担になりうるという点は、様子見の長さを考えるうえで知っておきたい事実です。
なお、シニア期の猫が食べないときの原因整理や家庭での工夫は、別の記事でより詳しくまとめています。年齢による変化が気になる方は、こちらもご覧ください。
今日からできる食事の工夫

すぐ受診したいサインがなく、食べる量が少し減っている段階であれば、まずは「食べやすくする工夫」を試してみましょう。どれも特別な道具はいりません。反対に食べすぎが気になる場合の考え方も、あとに続けて触れます。
1人肌に温めて香りを立たせる
猫は香りで食欲がわく動物です。ウェットフードを人肌程度に温めたり、ドライにぬるま湯を少し足したりすると香りが立ち、鈍った嗅覚にも届きやすくなります。熱すぎるとやけどにつながるため、指で触れて温かい程度にとどめてください。
2ドライをぬるま湯でふやかす
硬い粒が食べづらそうなら、人肌のぬるま湯で10〜15分ふやかすと、やわらかく食べやすくなります。熱湯は栄養素を壊しやすいため避けましょう。ふやかしても残す場合は、ウェットへの切り替えも検討します。
3ウェットやトッピングで香りと水分を足す
香りが立ちやすく水分もとれるウェットフードは、食が細くなった猫の心強い味方です。いつものドライに少量のウェットや猫用のかつおぶしを混ぜて香りを足すのも一つ。人の食べ物や味付きのものは与えないでください。
4器の高さと形を見直す
床置きの器に頭を下げる姿勢は、首や関節が弱ってきた子にはつらいものです。首を大きく下げずに届く高さに上げ、ヒゲが当たりにくい浅めで広い器に変えると、食べやすさが変わることがあります。台がなければ手持ちの箱で代用しても構いません。
5少量ずつ、回数を分けて出す
一度にたくさん食べるのがつらい子には、1日の食事を3〜5回に分けると合計量を保ちやすくなります。食べ残しは傷む前に下げ、毎回新しいものを出しましょう。これは食べすぎが気になる子にも有効で、1日量を守りながら満足感を保ちやすくなります。
6静かな環境と、食事場所の見直し
人の出入りが多い場所、トイレのそば、他のペットの気配が気になる場所では、猫は落ち着いて食べられないことがあります。静かな場所に食事スペースを移し、多頭飼育なら器を離す・部屋を分けると、食べムラや取り合いが落ち着くことがあります。
食べすぎが気になるときに、自己判断で急に量を減らすのは避けてください。急激な食事制限は猫の体に負担をかけることがあるとされ、また食欲が増えている背景に体の不調が隠れている可能性もあるためです。まずは1日量を記録して獣医師に見せ、必要な量を確認してから調整するのが安全な進め方です。
フードを見直す|選び方と検討されることの多い2つ

工夫をしても食いつきが戻らないとき、いまのフードが体の変化に合わなくなっている可能性もあります。フードは病気を治すものではありませんが、「食べやすさ」を整える手段のひとつです。見直すときは、次の視点で選ぶと迷いにくくなります。
- 香りの立ちやすさ:嗅覚が鈍っても気づきやすい、香りのある原材料が使われているか
- 粒の大きさ・ふやかしやすさ:噛む力が落ちても食べやすいか、ぬるま湯でふやかせるか
- 原材料のわかりやすさ:主原料が何かがはっきりしていて、切り替え時に体調と結びつけて判断できるか
- 少量から試せるか:食べムラのある子ほど、大袋を買う前に試せる形があると無駄になりにくい
ここからは、この視点で編集部が公式サイトの情報を調査した、見直し先として検討されることの多いフードを2つ紹介します。相性には個体差があり、「必ず食べるようになる」ものではありません。切り替えるときは、いまのフードに少しずつ混ぜて1〜2週間かけてゆっくり移行するのが基本です。慢性腎臓病や糖尿病などで療法食を与えている子は、切り替え前に必ず獣医師に相談してください。
モグニャン

白身魚をレシピの65%に使用した、穀物不使用(グレインフリー)のドライフードです。公式サイトでは着色料・香料を使わず、素材の香りと味わいを追求した設計であることが説明されています。粒は小粒設計のため、あごの力が落ちてきた子や、大きな粒を丸のみして吐き戻しやすい子にも配りやすいのが特徴です。全猫種・全年齢対応で、ぬるま湯でふやかす食べ方とも相性がよく、香りで食いつきが期待できる選択肢のひとつといえます。
モグニャンの基本情報
| 主原料 | 白身魚65% |
| タイプ | ドライ(グレインフリー・小粒) |
| 対象 | 全猫種・全年齢対応 |
| 内容量 | 1.5kg |
| 販売 | 公式サイト中心(執筆時点) |
CAT STANCE 鹿肉ドライ

鹿肉(生)を筆頭に、鶏肉(生)・全粒大麦・魚粉・サツマイモ・玄米などを使ったドライフードです。公式サイトでは、加熱による変性を抑える低温・低圧調理と無発泡製法を採用していること、着色料・香料・保存料は無添加であることが説明されています。鹿肉ドライのお試し3袋セットが用意されているため、食べムラのある子でも大袋を買う前に反応を確かめやすい点が、見直しの一歩目として選ばれやすい理由です。
CAT STANCE 鹿肉ドライの基本情報
| 主原料 | 鹿肉(生)・鶏肉(生)ほか |
| タイプ | ドライ(低温・低圧調理/無発泡製法) |
| 添加物 | 着色料・香料・保存料は無添加 |
| お試し | 鹿肉ドライお試し3袋セットあり(執筆時点) |
2つのフードの比較
| フード名 | タイプ | 特徴 | こんな子に |
|---|---|---|---|
| モグニャン | ドライ(小粒・グレインフリー) | 白身魚65%・香り重視の設計・ふやかしやすい | 魚の香りが好きな子、粒が大きいと食べづらい子 |
| CAT STANCE 鹿肉ドライ | ドライ(低温・低圧調理/無添加) | 鹿肉が主原料・お試し3袋セットあり | まず少量から反応を見たい子、食べムラのある子 |
どちらが合うかは、その子の好みと体調しだいです。フードの切り替えは体に負担をかけることもあるため、食欲の変化が続いているときは、まず受診して原因を確かめてから検討するほうが安心です。猫の食事全般の考え方については、関連記事もあわせてご覧ください。
動物病院に相談する目安と、受診時に伝えたいこと

次のいずれかに当てはまるときは、受診を検討してください。食欲が「減った」ときだけでなく、「増えた」ときも含まれる点が、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
- 丸1日以上、ほとんど何も食べていない
- 水も飲まない、またはぐったりして反応が鈍い
- 嘔吐や下痢を繰り返す、苦しそうな呼吸をしている
- 食べる量が減った状態が数日続き、体重も減ってきた
- よく食べるのに痩せてきた、飲む水の量が急に増えた
- 食べ方がぎこちない(食べこぼし・片側噛み・よだれ・口を気にする)
- 食べ物以外のもの(布・紙・ビニールなど)を口にするようになった
受診の際は、次の情報をメモしていくと診察がスムーズです。とくに1日の食事量と体重の推移は、家庭でしか記録できない貴重な情報です。
- いつから、どのくらいの量を食べている(食べていない)か
- おやつや好物には口をつけるか
- 水を飲む量、おしっこの量や回数の変化
- 体重の推移(できれば数字で)
- 吐いた回数、便の状態(便は写真があると助かります)
- フードを変えた、環境が変わったなどの心当たり
食事の様子を数十秒だけ動画に撮っておくと、口の使い方や食べ方のぎこちなさが伝わりやすくなります。迷ったときは、まずかかりつけの動物病院に電話で相談してみてください。受診が必要かどうかの見当をつけてもらえることが多く、それだけでも気持ちが少し軽くなります。
食べられなくなった子と、どう向き合うか

ここまでは、原因を確かめて回復をめざす前提でお話ししてきました。けれど、獣医師と相談したうえで積極的な治療をしない選択をしたときや、老衰で最期の時間が近づいているときには、「食べない」は少し違う意味を持ちます。この章は、そうした時間のなかにいる方に向けて、静かに書いています。
命の終わりが近づくと、多くの動物は自然と食べたり飲んだりしなくなっていきます。それは体が少しずつ役目を終えていく過程の一部で、無理に食べさせることが必ずしもその子のためになるとは限りません。強制給餌は誤嚥(食べ物が気管に入ること)のリスクもあるため、この時期にどこまで行うかは、必ずかかりつけの獣医師と相談しながら決めてください。
食べさせることが叶わなくても、してあげられることはあります。口や唇をそっと湿らせてあげる、好きだった場所であたたかくしてあげる、静かに名前を呼び、なでてあげる。「食べてほしい」という願いは、そのまま「まだ一緒にいたい」という深い愛情です。その気持ちを責める必要は、少しもありません。どうか、残された時間を穏やかに過ごすことのほうを、大切にしてあげてください。
よくある質問
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は動物病院にご相談ください。
※本記事のフード情報は執筆時点(2026年8月)の各社公式サイト情報です。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
まとめ|「食欲の変化」は、その子からの静かな知らせ
猫の食欲異常には、「減る」方向と「増える」方向の両方があります。どちらの場合も、まずは1日の食事量・食べ方・体重・飲水量を数日記録して、変化を数えられる形にすることが第一歩です。そのうえで、丸1日以上まったく食べない・水も飲まない・ぐったりしているときは早めの受診を、よく食べるのに痩せる・水を飲む量が急に増えたときも、元気に見えても相談を検討してください。すぐ受診したいサインがなければ、温める、ふやかす、器の高さを変える、回数を分けるといった小さな工夫から試していきましょう。
食べ方が変わっていく姿を見るのは、心細いものです。それでも、器の前でかける「食べようね」の一言や、温めたご飯のひと工夫は、そのまま「まだ一緒にいたい」という愛情の形です。あなたとあの子のごはんの時間が、これからも穏やかで、あたたかなものでありますように。