長い時間をともに過ごした愛犬が、静かに旅立ってしまった。その現実を前にして、頭が真っ白になり、「まず何をすればいいのか」と手が止まってしまう飼い主さまは少なくありません。深い悲しみのなかで、お別れの準備や手続きに向き合うのは、本当につらいことだと思います。
この記事では、犬が亡くなったあとに落ち着いて進められるよう、安置(体をきれいに整えて保冷する)→ 火葬の選択肢 → 市区町村への届け出という流れを、時系列でやさしく整理しました。急いで完璧にこなす必要はありません。あの子のそばで過ごす時間を大切にしながら、必要なところだけ、ゆっくり読み進めてください。


一言でいうと、犬が亡くなったら「体をきれいに整える → 保冷して安置する → 火葬の方法を決める → 30日以内に市区町村へ死亡届を出す」の順で進めれば大丈夫です。火葬までのあいだ、まずはご遺体を涼しく安置してあげることが最初の一歩になります。
犬が亡くなった直後にすること|安置の手順
犬が亡くなったあと、火葬までのあいだは、ご遺体をきれいに整えて涼しく休ませてあげる「安置」を行います。難しい作業はありません。あの子に手を添えながら、次の順番で、ゆっくり進めてみてください。

1体をやさしくきれいに整える
まぶたや口が開いていたら、そっと閉じてあげます。目や口の周り、体の汚れは、ぬるま湯で湿らせた柔らかい布やガーゼでやさしく拭き取ります。亡くなった直後は、体から体液が出ることがありますが、自然なことなので驚かなくて大丈夫です。ペットシーツやタオルを下に敷いておくと安心です。
2硬直が始まる前に姿勢を整える
犬は亡くなってからしばらくすると死後硬直が始まります。手足がまっすぐ伸びたまま硬くなると棺(箱)に納めにくくなるため、硬直が進む前に、手足を軽く曲げて、眠っているような自然な姿勢に整えてあげます。無理に力を加える必要はありません。まぶたや口も、このタイミングでそっと整えます。
3箱に寝かせて保冷する
ペットの体が入る箱やバスケットに、タオルやペットシーツを敷いて寝かせます。そのうえで、保冷剤やドライアイスをタオルで包み、傷みの進みやすいお腹(内臓)と頭のまわりを中心に冷やします。保冷剤は直接体に当てず、こまめに交換してください。夏場や暖房の効いた室内では傷みが早く進むため、エアコンで室温を低めに保つことも大切です。
4お別れの時間を過ごす
安置が整ったら、火葬までのあいだ、あの子のそばで過ごす時間を大切にしてください。好きだったおもちゃやお花を添えたり、名前を呼びかけたり。お別れの形に決まりはありません。ご家族が揃うのを待って火葬の日を決める方も多くいらっしゃいます。
安置できる期間の目安は、季節や保冷の状態によって変わりますが、一般に夏場で1〜2日、冬場でも2〜3日ほどとされることが多いようです。傷みが心配なときは無理をせず、早めに火葬の相談を進めても構いません。
| 安置で用意するもの | 役割・ポイント |
|---|---|
| 箱・バスケット | 体がゆったり入る大きさ。底にタオルやペットシーツを敷く |
| タオル・ガーゼ | 体を拭く/保冷剤を包む/下に敷く |
| 保冷剤・ドライアイス | お腹と頭を中心に冷やす。直接当てずタオルで包む |
| お花・おもちゃ | お別れの時間に。棺に入れられるかは火葬先に確認 |
火葬までの流れ全体を、もう少し詳しく知っておきたいときは、こちらもあわせてご覧ください。
死後硬直と「生き返る」への不安について

亡くなったばかりのあの子を見つめていると、「体が動いた気がする」「本当に旅立ってしまったのだろうか」と、さまざまな思いが胸をよぎるかもしれません。ここでは、多くの飼い主さまが不安に感じる点を、事実にもとづいて静かにお伝えします。
死後硬直はいつから始まる?
死後硬直は、体の筋肉がしだいに硬くなっていく自然な変化です。犬の場合、亡くなってから数時間ほどで始まり、半日前後で全身に及ぶとされることが多いようです(進み方には個体差や季節差があります)。硬直が進む前に姿勢を整えておくと、棺に納めるときに無理がありません。硬くなってしまったあとでも、時間が経つとやわらぐため、慌てなくて大丈夫です。死後硬直と姿勢の整え方は、こちらでもくわしくまとめています。
「体が動いた」「生き返る」ように見えることについて
亡くなった直後に、手足がわずかに動いたように見えたり、空気が漏れて鳴き声のような音がしたりすることがあります。これらは、筋肉や体内に残った空気による反射的な現象で、命が戻ったわけではないと説明されています。とてもつらい確認になりますが、旅立ちが本当かどうか迷うときは、かかりつけの動物病院に電話で相談すると、落ち着いて判断できます。
犬が亡くなったらする市区町村への届け出(死亡届)

犬は「狂犬病予防法」にもとづいて市区町村に登録されているため、亡くなったあとは登録を抹消するための死亡届が必要です。猫やそのほかの小動物には、原則としてこの届け出はありません(犬に特有の手続きです)。悲しみのなかで気が回らないかもしれませんが、落ち着いてからで大丈夫なので、忘れずに進めておきましょう。
狂犬病予防法にもとづく死亡届(30日以内)
横浜市や大阪市などの案内では、犬が亡くなった日から30日以内に、登録している市区町村へ死亡届を提出するよう求められています(大阪市「ペットが死亡した場合の手続き」ほか)。届け出の際は、登録時に交付された「鑑札」と「注射済票」を返却するのが一般的です。窓口の名称は、保健所・生活衛生課・動物愛護センターなど自治体によって異なります。
提出方法は、窓口のほか、郵送やオンライン申請に対応する自治体も増えています。手続きの詳細や必要書類は自治体ごとに違うため、お住まいの市区町村の公式サイトで「犬 死亡届」と検索して確認するのが確実です。
マイクロチップを装着している場合
マイクロチップを装着し、環境省の指定登録機関(公益社団法人 日本獣医師会)に情報を登録している場合は、こちらにも死亡の届け出が必要です。こちらは動物愛護管理法にもとづく手続きで、法令上は「遅滞なく」届け出るとされ、オンラインまたは紙で提出でき、手数料はかかりません。狂犬病予防法の死亡届(30日以内)とは別の手続きなので、両方あわせて確認しておくと安心です。
| 届け出の種類 | 根拠となる法律 | 期限の目安 | 提出先 |
|---|---|---|---|
| 犬の死亡届 | 狂犬病予防法 | 亡くなった日から30日以内 | 登録した市区町村(保健所・生活衛生課など) |
| マイクロチップの死亡届 | 動物愛護管理法 | 遅滞なく(期限日数の定めはなし) | 指定登録機関(日本獣医師会) |
※手続きの期限・方法・窓口は自治体や制度改定により異なります。最新の情報はお住まいの市区町村・環境省の公式サイトでご確認ください(本記事は執筆時点=2026年7月の情報です)。
火葬・供養への進み方と、依頼先の選び方

安置をしながら、火葬の方法を決めていきます。ペットの火葬には大きく分けて次の形式があり、費用は火葬形式(合同/個別/立会)と、犬の体重によって変わります。どの形を選ぶかに正解はありません。ご家族の気持ちと、あの子への思いに合う方法を選んでください。
| 火葬の形式 | 内容 | お骨の返却 | こんな方に |
|---|---|---|---|
| 合同火葬 | ほかのペットと一緒に火葬 | 原則なし(合同で供養) | 費用を抑えたい/自宅に置かず霊園で供養したい方 |
| 個別火葬(一任) | 1頭ずつ火葬。立ち会いはせず火葬社に一任 | あり(返骨可) | お骨は手元に残したいが、立ち会いは控えたい方 |
| 立会火葬 | 1頭ずつ火葬し、家族が立ち会い・お骨上げをする | あり(返骨可) | 人と同じように最後まで見送りたい方 |
費用は依頼先や地域、犬の体重によって幅があるため、この記事では固定の金額は示しません。見積もりを取るときは、体重を伝えたうえで「総額でいくらか(追加料金の有無を含む)」を必ず確認してください。火葬費用の相場のくわしい考え方は、こちらでまとめています。
信頼できる依頼先を見分けるポイント
ペットの火葬業界には、残念ながら一部で高額な追加請求や不適切な処理といったトラブルが報じられたことがあります。悲しみのなかで冷静な判断が難しいときこそ、次の点を落ち着いて確認しておくと安心です。
とくに、電話一本でその場の現金払いを強く求めたり、料金をあいまいにしたまま進めようとしたりする場合は、いったん立ち止まって考えて大丈夫です。複数の依頼先を比べて、納得できるところを選ぶことが、後悔しないお別れにつながります。どこに相談すればよいか迷うときは、全国で対応している相談窓口を利用する方法もあります。
\ 詳細・ご相談は公式サイトから /
火葬形式や費用の目安を相談したいときの窓口の一つです。お住まいの地域や体重を伝えて、まずは見積もりを確認してみてください。
お別れのあとの、気持ちの整理について

火葬や手続きが一段落すると、これまで気を張っていた分、深い喪失感が押し寄せてくることがあります。涙が止まらない、何も手につかない、後悔ばかりが浮かぶ――そうした反応は、あの子を深く愛したからこそ訪れる、ごく自然な心の動きです。
「早く立ち直らなければ」と自分を急かす必要はありません。悲しむ時間も、あの子と過ごした日々の一部です。つらい気持ちを誰かに話したり、写真を見返して思い出を記録したり、自分なりの供養で手を合わせたり。無理のない範囲で、できることから少しずつで大丈夫です。もし、眠れない・食べられないといった状態が長く続くときは、一人で抱え込まず、ペットロスに向き合うカウンセラーや医療機関を頼ることも、大切な選択肢の一つです。
よくある質問
まとめ
犬が亡くなったあとは、①体をきれいに整えて安置する ②保冷して涼しく休ませる ③火葬の方法を決める ④30日以内に市区町村へ死亡届を出す――この順番で、慌てず一つずつ進めれば大丈夫です。火葬の依頼先は、固定の所在地・立ち会いや返骨の可否・総額の明示を確認し、納得できるところを選んでください。
そして、手続きよりも何よりも、あの子のそばで過ごす時間を大切にしてください。お別れの形に、正解はありません。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法的手続きや診断・治療の代わりになるものではありません。手続きの詳細はお住まいの市区町村、体調やお気持ちのつらさが続く場合は専門家にご相談ください。
長いあいだ寄り添ってくれたあの子が、あたたかな光のなかで、安らかに眠れますように。