いつもなら足音だけで起きてくるのに、声をかけても顔を上げない。ごはんの器を置いても匂いを嗅ぐだけで、また丸くなって眠ってしまう——。「ずっと寝ている」ことと「ご飯を食べない」ことが同時に起きていると、どこかつらいのではないかと胸がざわつきますよね。眠っている姿を見ながら、「疲れているだけかもしれない」「明日には食べるかもしれない」と考えたい気持ちと、「このまま待っていて大丈夫だろうか」という不安のあいだで揺れている方も多いと思います。この記事では、当メディア編集部が動物病院が公開している情報をもとに、犬が眠ってばかりで食べないときに背景として挙げられるもの、様子を見てよい範囲と受診の目安、そして今日から家でできる食事の工夫を静かに整理しました。原因を言い当てることはできませんが、判断の材料としてお役立ていただければ幸いです。


一言でいうと、「ずっと寝ている」と「ご飯を食べない」が重なっているときは、受診が必要なサインとして受け止めてください。とくに水も飲まない・嘔吐や下痢をともなう・歯ぐきが白い・呼吸が苦しそう・ふらつくといった様子があれば、経過時間にかかわらずその日のうちにご相談ください。
犬がずっと寝てご飯を食べないとき、背景として挙げられること

はじめにお伝えしておきたいのは、この記事を読んでうちの子の原因を特定することはできないということです。眠る時間が増えることも、食欲が落ちることも、犬にとってはさまざまな不調に共通して現れる変化で、原因の絞り込みには診察や検査が欠かせません。ここでは「こういう背景もありうる」という並列の情報として、動物病院が公開している解説でよく挙げられるものを整理します。どれか一つに当てはめようとせず、受診のときに伝える材料として読んでいただければと思います。
発熱・感染症
ウイルスや細菌の感染などで熱が出ているとき、犬は体を休めようとして寝ている時間が長くなり、食欲も落ちることがあるといわれています。犬の平熱は一般に38〜39℃程度で、人よりやや高めとされ、39.5℃を超えると発熱が疑われると案内している動物病院もあります。ただし、家庭での体温測定は嫌がる子も多く、無理に行うと本人の負担になります。耳やお腹が熱い、震えている、呼吸が速いといった様子があれば、測ることにこだわらず受診の判断材料にしてください。
どこかに痛みがある
関節炎や椎間板の疾患、外傷、口の中の痛みなど、体のどこかに痛みがあると、犬は無理に動こうとせずじっと寝ていることがあります。食べたそうに器へ近づくのに口をつけない、片側だけで噛む、食べこぼす、あくびのように口を気にするといった様子があるときは、口や歯の痛みが関係している場合もあります。抱き上げたときに嫌がる場所がある、階段や段差をためらう、といった変化も、痛みを示すサインとして挙げられます。
腎臓や肝臓など内臓の不調
腎臓や肝臓、消化器などの不調でも、元気のなさと食欲の低下が同時に現れることがあるとされています。とくに慢性的に進む病気は初期の症状が分かりにくく、「なんとなく元気がない」「ごはんを残すようになった」という変化が最初の手がかりになることもあります。水を飲む量やおしっこの量が急に増えた・減った、嘔吐をくり返す、口臭が変わった、といった気づきがあれば、あわせて獣医師に伝えてください。
貧血
貧血があると、少し動いただけで疲れてしまい、横になっている時間が長くなることがあります。動物病院の解説では、歯ぐきや舌の色が白っぽく見えることが家庭で気づける手がかりのひとつとして紹介されています。歯ぐきの色が白い・薄いと感じたときは、様子を見ずに受診を検討してください。貧血の背景には内臓の病気や免疫の異常、感染症などが隠れていることもあるとされ、原因の特定には血液検査などが必要になります。
中毒・誤食
拾い食いや誤食のあと、ぐったりして食べなくなることもあります。人の食べ物や薬、観葉植物など、犬にとって中毒を起こす可能性があるものは身近にあり、家庭で「大丈夫かどうか」を見極めるのは困難です。心当たりがあるときは、食べた(かもしれない)ものの現物やパッケージを持って、できるだけ早く受診してください。吐かせる処置を自己判断で行うのは危険とされているため、まずは電話で指示を仰ぐのが安全です。
シニア期の加齢による変化
年齢を重ねると、活動量が落ちて眠る時間が自然に長くなり、必要とする食事量も少しずつ減っていくといわれます。犬の1日の睡眠時間は12〜14時間ほど、子犬やシニア犬ではそれより長くなるのが一般的とされ、よく眠ること自体は必ずしも異常ではありません。ただし、「歳だから」で片づけてしまうと、治療できる不調を見のがすおそれがあります。判断の軸は年齢ではなく、その子のふだんと比べて変化があるかです。呼びかけへの反応が鈍い、好きな遊びに興味を示さない、といった違いがあれば、シニア期でも受診を考えてください。
ストレスや環境の変化
引っ越し、家族構成の変化、来客、工事の音、暑さなど、環境の変化が食欲や活動量に影響することもあります。ただし、ストレスかどうかを家庭で確かめる方法はなく、体調不良と見分けがつきにくいのが実際のところです。思い当たる出来事があっても、それだけで安心せず、食べない・眠り続ける状態が続くようなら受診してください。
シニア期の犬が食べなくなったときの背景と対処については、次の記事でもくわしく整理しています。
何日まで様子見?食べ方×経過時間の目安
「どのくらい待ってよいのか」は、多くの飼い主さんが迷われる点です。動物病院の解説では、成犬で1日程度の食欲低下なら様子を見られることが多い一方、2日以上食べない場合や、食欲の低下に元気のなさが重なっている場合は受診がすすめられるとされています。子犬や小型犬は体力の蓄えが少なく低血糖のリスクがあるため、半日食べないだけでも早めの相談がすすめられると案内されています。次の図は、食べ方と経過時間から緊急度の目安を整理したものです。あくまで一般的な目安で、最終的な判断は獣医師に委ねてください。

| 様子 | 緊急度 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 水も飲まない/歯ぐきが白い/呼吸が苦しそう/ふらつく | 高い | 経過時間にかかわらず当日中に受診を。夜間は救急動物病院へ相談 |
| 嘔吐や下痢をともない、寝てばかりで食べない | 高い | できるだけ早く受診を。誤食の心当たりがあれば現物を持参 |
| まる1日(24時間)以上まったく食べず、眠ってばかり | 中〜高 | その日のうちに一度、電話でも相談を(子犬・小型犬は半日でも早めに) |
| 量は減ったが自分から少し食べ、水も飲み、反応はいつも通り | 低め | 食べた量・回数・眠っている時間を記録しつつ観察。2日以上続けば受診 |
迷ったときの考え方として覚えておいていただきたいのは、「食べない」だけよりも、食欲の低下と眠りっぱなしが重なっている状態のほうが、受診を急ぐ理由になるということです。犬は体調の悪さを隠す傾向があるといわれ、飼い主さんが「いつもと違う」と感じた時点で、すでに何日か我慢していることも少なくありません。「大げさかもしれない」とためらう必要はありません。電話での相談を受け付けている病院も多いので、判断に迷う段階で一報を入れて構いません。
受診までのあいだに家でできること

ここからは、受診までの間や、少しずつなら食べられるときに家庭で試せる工夫です。いずれも治療の代わりにはならず、緊急のサインがあるときは工夫より受診が先だという点だけ、先にお伝えしておきます。また、持病があって食事管理をしている子や、薬を飲んでいる子は、食事内容を変える前にかかりつけ医へご確認ください。
1人肌程度に温めて香りを立たせる
香りは温度が上がると立ちやすくなります。ウェットフードや、ぬるま湯でふやかしたドライフードを人肌程度(38℃前後)にすると、匂いを感じ取りやすくなることがあります。熱すぎるとやけどの心配があるため、必ず温度を確かめてから出してください。
2ぬるま湯でふやかしてやわらかくする
ドライフードをぬるま湯で10〜15分ほどふやかすと、やわらかくなって香りも立ちます。あごの力が落ちてきた子や、口に痛みがありそうな子でも口をつけやすい形です。水分も一緒にとれるため、飲水量が減っている子にも試しやすい方法とされています。
31回量を減らして回数を増やす
体調が落ちているときは、一度に多い量を見ただけで食べる気をなくすことがあります。1回量を少なくしてこまめに出すと、1日の合計量を保ちやすくなります。出しっぱなしにせず、時間をおいて新しいものに替えると香りも保てます。
4器の高さと食事場所を見直す
床置きの器は頭を下げる姿勢がつらいことがあります。少し高さを出す、滑り止めを敷く、静かで落ち着ける場所に移す——といった調整は、フードを変えずに試せる工夫です。多頭飼いの場合は、ほかの子が気にならない場所を用意してあげてください。
5水を飲めているかを確かめる
食べないこと以上に心配なのが、水を飲めていない状態です。器を複数の場所に置く、いつもの器の高さを見直すなど、飲みやすい環境を整えてください。それでもまったく口にしないときは、経過時間にかかわらず動物病院へご連絡ください。
6食べた量・眠っている時間を記録する
「いつから・どのくらい食べていないか」「何なら口にするか」「1日のうちどのくらい眠っているか」をメモしておくと、診察のときに大きな助けになります。食べ方や歩き方が気になるときは、短い動画を撮っておくと、診察室では見せられないふだんの様子を共有できます。
なお、口へ押し込むような強制的な給餌は、誤嚥やご本人の負担につながることがあります。行うかどうかも含め、必ず獣医師の指示のもとで判断してください。猫の場合は犬と絶食への強さが異なるとされ、判断の目安も変わります。猫と暮らしている方は、次の記事もあわせてご覧ください。
フードを見直す|食が細くなってきた子の選び方
ここでご紹介するのは、いずれも健康な犬の主食として作られた総合栄養食であり、治療や療法食の代わりになるものではありません。眠ってばかりで食べない状態が続いているときは、フードを替えることよりも受診が優先です。以下は、診察を受けて大きな病気が見つからなかったとき、あるいは「食が細くなってきたので食事を見直したい」と考えている場面で、選択肢を比べるための材料としてご覧ください。持病がある子は、切り替えの可否を必ずかかりつけ医に確認してください。
そのうえで、食が細くなってきた犬のフード選びで見ておきたいのは次の3点です。
- 香りの立ちやすさ:肉や魚が主原料か、ふやかして香りを立たせられるか
- 粒の大きさ・かたさ:体格と口の大きさに合っているか。あごの力が落ちてきた子は小さめ・ふやかせるものが食べやすい
- 原材料の分かりやすさ:何がどのくらい使われているかを公式サイトで確認できるか
以下では、公式サイトで原材料や特徴を確認できる犬向けフードを3つ、当メディア編集部が公式情報をもとに比較しました。フードの合う・合わないには個体差があり、食欲が戻ることを保証するものではありません。価格や内容量は変更されることがあるため、購入前に公式サイトでご確認ください。
| フード名 | タイプ | 特徴 | こんな子に |
|---|---|---|---|
| モグワン | グレインフリー・ドライ(小粒リング型) | チキンとサーモンを組み合わせた手作り食レシピ発想のフード | 小型犬や、粒の大きさが気になる子 |
| ネルソンズドッグフード | グレインフリー・ドライ | 中型・大型犬向けに作られ、着色料・香料不使用と案内されている | 体格が大きく、量を必要とする子 |
| カナガン | グレインフリー・ドライ | お肉・お魚を多く使ったレシピで、チキンとサーモンの2種類がある | たんぱく源を変えて試してみたい子 |
モグワン

モグワンは、手作り食のレシピから生まれたというコンセプトのグレインフリードッグフードです。公式サイトによると、チキンとサーモンを組み合わせた動物性原材料に、サツマイモやエンドウ豆、果物・野菜を合わせたレシピで、全犬種・全ライフステージに対応すると案内されています。粒は中央に穴の空いたリング型の小粒で、ぬるま湯でふやかす与え方も紹介されています。香りが立ちやすい形にしやすいため、食が細くなってきた子でも食いつきが期待できるフードのひとつです。
モグワンの基本情報
| 主原料 | チキン・サーモン |
| タイプ | グレインフリーのドライ(小粒リング型) |
| 対象 | 全犬種・全ライフステージ |
| 内容量・価格 | 公式サイト参照(執筆時点) |
ネルソンズドッグフード

ネルソンズドッグフードは、中型犬・大型犬に向けて作られたグレインフリーのドライフードです。公式サイトによると、ヒューマングレードの食品工場から仕入れたチキン生肉に、バターナッツスカッシュ・サツマイモ・エンドウ豆を合わせたレシピで、着色料・香料は不使用と案内されています。粒の大きさは全犬種用(5kg)が1辺約1cm、大型犬用(10kg)が1辺約1.5cmと公式に記載があり、体格に合わせて選べます。粒がかたく感じるようなら、ふやかしてやわらかくすると食べやすくなります。
ネルソンズドッグフードの基本情報
| 主原料 | チキン生肉 |
| タイプ | グレインフリーのドライ |
| 対象 | 中型犬・大型犬(大型犬用のラインあり) |
| 内容量・価格 | 公式サイト参照(執筆時点) |
カナガン

カナガンは、イギリス生まれのグレインフリードッグフードで、公式サイトでは「お肉・お魚をたっぷり使った高たんぱくなレシピ」と案内されています。チキンとサーモンの2種類があり、たんぱく源を変えて試したいときの選択肢になります。公式サイトの調査注記では、チキンが原材料の50%以上を占める点や、子犬・小型犬でも食べやすい粒である点について獣医師へのアンケートが行われたことが示されています。いつものフードに飽きてしまったように見える子の、切り替え先の候補のひとつです。
カナガンの基本情報
| 主原料 | チキン(サーモンのラインあり) |
| タイプ | グレインフリーのドライ |
| 対象 | 公式サイトのライン別に確認 |
| 内容量・価格 | 公式サイト参照(執筆時点) |
なお、腎臓や肝臓などの病気で食事管理をしている場合、市販フードへの切り替えでは対応できないことがあります。獣医師から療法食を指示されている子が食べてくれないときは、自己判断でフードを替えず、まず主治医へご相談ください。
動物病院に相談する目安

次のいずれかに当てはまる場合は、様子を見ずに動物病院へご連絡ください。夜間・休日であっても、救急対応をしている動物病院に電話で相談することができます。
- 水もまったく飲まない
- 嘔吐や下痢をともなう、食べたものをすぐ戻す
- 歯ぐきや舌の色が白っぽい・薄い
- 呼吸が浅く速い、苦しそうにしている
- 立ち上がるときにふらつく、歩き方がおかしい
- ぐったりして呼びかけへの反応が薄い
- まる1日(24時間)以上まったく食べない(子犬・小型犬は半日でも)
- 誤食や中毒の心当たりがある
- けいれん、震え、お腹が張って苦しそうといった様子がある
受診の際は、「いつから・どのくらい食べていないか」「水は飲めているか」「1日のうちどのくらい眠っているか」「便や尿の様子」「思い当たる出来事(誤食・環境の変化・暑さなど)」をメモしていくと、診察がスムーズになります。「食べないだけで受診してよいのか」とためらう必要はありません。食べられているかどうかは、体調を知るうえで重要な情報です。心配な気持ちをそのまま伝えて構いません。
看取り期の「食べない」との向き合い方

病気が進み、獣医師と話し合ったうえで積極的な治療をしないという選択をされている場合、「眠っている時間が長い」「食べない」の意味合いは少し変わってきます。旅立ちが近づくにつれて眠る時間が増え、食べ物を受けつけなくなっていくのは、体が自然にその準備をしている過程でもあるといわれます。この時期には、量を確保することよりも、その子が穏やかに過ごせることのほうが大切になっていきます。
無理に口へ運ぼうとすると、かえって本人の負担や誤嚥につながることがあります。好きだった匂いをそっと近づける、口元を湿らせる、静かな場所で体をなでながらそばにいる——食べさせること以外にも、してあげられることはたくさんあります。どこまで食事を促すか、点滴などの補助をどうするかは、その子の状態とご家族の気持ちの両方を、かかりつけの獣医師と話しながら決めていって構いません。正解は一つではありません。
「食べてほしい」という願いは、愛情そのものです。食べてくれなかったことで、どうかご自身を責めないでください。
よくある質問
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。記載した目安は原因を特定するためのものではなく、気になる症状は動物病院にご相談ください。※フードの情報は執筆時点(2026年7月)の各社公式サイト情報です。内容量・価格・ラインナップは変更されることがあるため、最新は各公式サイトでご確認ください。
まとめ|眠ってばかりで食べないときに大切にしたいこと
犬がずっと寝ていて、ご飯も食べない——この二つが重なっているとき、背景として挙げられるものは、発熱や感染症、どこかの痛み、腎臓や肝臓などの内臓の不調、貧血、中毒や誤食、シニア期の加齢による変化、環境のストレスなど、さまざまです。どれか一つに当てはめて安心することはできず、原因を確かめるには診察が欠かせません。だからこそ、食欲の低下と眠りっぱなしが同時に起きているときは、受診が必要なサインとして受け止めていただきたいのです。とくに、水も飲まない・嘔吐や下痢をともなう・歯ぐきが白い・呼吸が苦しそう・ふらつくといった様子があれば、時間を待たずにご連絡ください。
受診までの間は、香りを立たせる、ふやかす、少量をこまめに、器の高さを見直すといった工夫を、無理のない範囲で試してみてください。そして「いつから・どのくらい食べていないか」「どのくらい眠っているか」の記録が、診察の場でその子を助けてくれます。眠る姿を見つめながら過ごす時間は、心細いものです。それでも、変化に気づいて動こうとするその気持ちは、確かにあの子に届いています。あなたとあの子が、またいつもの朝のように食卓を囲める日が訪れますように。