大切なペットとのお別れが近づいたとき、あるいは旅立ちを迎えたとき、「棺(ひつぎ)はどうすればいいのだろう」と、静かに戸惑う飼い主さまは少なくありません。ペット用の棺は、体を横たえて休ませ、火葬まで安置するための大切な入れ物です。段ボールで手作りされる方もいれば、専用の棺を選ばれる方もいます。
この記事では、ペット用の棺の種類や素材の選び方、サイズの合わせ方、費用の目安、そして棺に入れられるもの・入れられないものまでを、編集部が各社の公式情報や火葬事業者の解説をもとに整理してお伝えします。火葬の妨げにならない配慮を大切にしながら、後悔のないお見送りの助けになれば幸いです。


一言でいうと、ペット用の棺は「火葬に向く素材」と「少しゆとりのあるサイズ」で選ぶのが基本です。入れてよいものは業者ごとに基準が異なるため、迷ったら事前に確認するとより丁寧なお見送りができます。
ペット用の棺とは?種類と素材を知る
ペット用の棺とは、亡くなったペットの体を横たえ、火葬までのあいだ安置するための入れ物です。人と同じように、体を清め、お花で飾り、そっと眠らせてあげる場所でもあります。素材や形にはいくつかの種類があり、「安置のための入れ物」として使うのか、「そのまま火葬したい」のかで選び方が変わってきます。

ペット葬儀事業者の解説によると、市販・専用のものを含めて主に次のような種類があります(ペット葬儀110番、ペトリィの解説より)。
専用棺・特殊段ボール製
ペット火葬用に作られた棺です。木目プリントや単色、柄入りなどデザインは多彩で、燃え残りのススや灰が発生しにくい素材で作られているものが多く、お骨を汚しにくいのが特徴です。覗き窓やお布団が付属するタイプもあります。「そのまま火葬まで見送りたい」という方に向いています。
木製(桐・ヒノキなど)
桐やヒノキといった天然木で作られた棺です。段ボール製に比べて丈夫で高級感があり、「最期はこだわって送り出したい」という方に選ばれます。一方で厚みのある木材は燃え残りが出やすいため、そのまま火葬できるかは業者に確認しておくと安心です。
段ボール製(市販・手作り)
もっとも手軽な選択肢です。軽く、女性やご高齢の方でも運びやすいのが利点で、安置のための入れ物としては十分に役立ちます。ただし一般的な段ボールは火葬時に灰が多く出るため、後述のとおり火葬時には箱から出して行う業者が一般的です。あくまで火葬までの「仮の入れ物」と考えておくとよいでしょう。市販のペット用段ボール棺には、木目調や柄入りなど落ち着いたデザインのものもあり、お別れの場を穏やかに整えてくれます。
このほか、最近では化学繊維でできたおくるみ型の棺や、特殊なフィルムで真空にして約1か月ほど安置できるタイプなど、新しい選択肢も登場しています。どれを選ぶかは、火葬までの日数や、そのまま火葬まで見送りたいかどうかで考えると迷いにくくなります。次の章から、費用の目安と具体的な選び方を順に見ていきましょう。
ペット用の棺の費用の目安
棺にかけられる費用は、素材やサイズによって幅があります。市販の棺を購入する場合の目安は、次のとおりです(各通販・ペット葬儀事業者の情報をもとに編集部が整理。価格はいずれも執筆時点・税込表記の有無は販売元により異なります)。
| 種類 | 費用の目安 | 特徴 | こんな方に |
|---|---|---|---|
| 段ボール製の棺 | 約1,000円〜8,000円 | 軽くて扱いやすい。サイズ・柄が豊富 | 手軽に用意したい方 |
| 専用棺(バスケット型など) | 約5,000円〜10,000円 | デザイン性が高く、そのまま飾れるものも | こだわって送り出したい方 |
| 木製の棺 | 目安は数千円〜(商品により幅あり) | 丈夫で高級感がある | 最期を大切にしたい方 |
| 手作り(段ボール) | 実費のみ(数百円程度) | 身近な材料で用意できる | すぐに安置したい方 |
火葬を業者に依頼する場合、簡易的な棺や布を用意してくれるプランもあります。棺を別途用意すべきかどうかは、依頼先の火葬事業者に確認しておくと無駄がありません(出典:アーバンペット葬儀社、LIMIAほか)。
棺はどこで買えるのか迷われる方も多いのですが、もっとも種類が豊富なのはインターネットの通販です。ペット用品店や一部のホームセンター、ペット火葬場でも取り扱いがある場合がありますが、ホームセンターでは常時は置いていないことも多いため、急ぐときは通販や火葬事業者への相談が確実です。金額はあくまで目安で、サイズが大きくなるほど価格も上がる傾向があります。無理のない範囲で、送り出したい気持ちに合ったものを選べば十分です。

火葬の形式や体重によっては、棺だけでなく火葬そのものの費用も気になるところかと思います。体重別の詳しい相場は、次の記事で整理しています。
ペット用の棺の選び方・進め方
棺を選ぶときは、次の順で考えると迷いにくくなります。火葬の妨げにならない配慮を軸に、体に合ったものを選んでいきましょう。

1サイズを合わせる(少しゆとりを持たせる)
体にぴったりのサイズではなく、体長より数センチ大きめを選びます。保冷剤やドライアイス、お花を入れる余裕を持たせるためです。手足を伸ばした状態ではなく、眠っているときの自然な姿勢で測ると安心です。
2火葬まで見送るかどうかで素材を選ぶ
そのまま火葬まで見送りたい場合は、燃え残りの少ない専用棺や特殊段ボールを。安置だけに使い、火葬は業者の棺で行う場合は、市販の段ボールでも差し支えありません。厚い木製棺はそのまま火葬できるか事前に確認しましょう。
3安置の準備を整える
棺の底に新聞紙やペットシーツを敷き、体をやさしく寝かせます。タオルで覆い、保冷剤やドライアイスでお腹まわりを冷やして、直射日光の当たらない涼しい場所に安置します。夏場は特にこまめな保冷を心がけます。
4入れるものを選び、迷うものは確認する
お花や手紙、少量のおやつなど、送り出したいものを選びます。ただし燃えにくいものや有害なものは避けます。判断に迷うものは、火葬前に業者へ相談すると安心です。
棺を手作りする場合と、市販品での代用
専用の棺が間に合わないときや、身近な材料で見送ってあげたいときは、段ボールで棺を手作りすることもできます。ペット葬儀事業者が紹介する基本的な手順は次のとおりです(出典:ペトリィ)。

段ボールで棺を手作りする手順
- 体長より少し大きい新しい段ボール箱を用意する
- 底に新聞紙やペットシーツを敷く
- 体をやさしく寝かせ、タオルで覆う
- 保冷剤やドライアイスで冷やす
- 涼しい場所に安置する
ホームセンターや通販で段ボールを入手して代用する方も多いですが、いくつか気をつけたい点があります。
一般的な段ボールは火葬に向きません。プラスチックやガムテープが含まれると有毒なガスや大量の灰が出ることがあり、遺骨に影響するおそれがあるためです。そのため多くの業者は、市販の段ボールに寝かせている場合、火葬時には箱から出して火葬します。手作りの段ボール棺は「火葬前までの安置に使う仮の入れ物」と考えておくと、行き違いがありません。
そのまま火葬まで見送りたい場合は、火葬用に作られた専用棺や、燃え残りの少ない特殊段ボールを選ぶのが安心です。なお、火葬時に箱から出す運用は業者によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
棺に安置する期間と、保冷のしかた
棺は、火葬までのあいだ体をきれいな状態で休ませる役割も担います。ご遺体はデリケートなため、涼しい場所で保冷しながら安置することが大切です。どのくらいの期間安置できるかは、季節と保冷の方法によって変わります(出典:COCOペット、中央冷凍産業ほか)。

| 保冷の方法 | 安置できる期間の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 特に冷却しない | 2〜3日以内に火葬が目安 | 季節を問わず早めの火葬を |
| 保冷剤で冷やす | 夏場で1〜2日程度 | こまめな交換が必要 |
| ドライアイスで冷やす | 4〜7日程度 | 体にしっかり当てる |
| 専用保管袋+保冷 | 2〜3週間程度 | 長期安置したい場合に |
いずれも目安であり、状態やご家庭の環境によって変わります。直射日光の当たらない、できるだけ涼しい部屋に安置し、夏場は特にこまめに保冷しましょう。ドライアイスや保冷剤は、体に直接当てると毛が張りついてしまうことがあるため、布や紙で包んでから、お腹まわりを中心にそっと当てます。虫が寄りやすい季節は、棺のふたを軽く閉じておくと安心です。
棺に入れられるもの・入れられないもの
棺には、お花や手紙など、旅立ちに寄り添うものをそっと入れてあげられます。ただし、燃えにくいものや有害なものは、火葬の妨げになったりお骨を汚したりするため避けます。ここでは一般的な目安を整理します(出典:ペトリィ、COCOペット、うちの子セレモナビほか)。

お花については、濃い色の花は色素が遺骨に移ることがあるため、淡い色を少量選ぶのがおすすめです。入れ方は、まず顔まわりや体のそばにそっと添え、たくさん敷き詰めすぎないことがコツです。お花を大量に入れると火葬に時間がかかったり、水分でお骨に影響したりすることがあるため、量はほどほどにします。生花が基本で、造花やドライフラワーは避けましょう。定番はキク、カーネーション、トルコキキョウなど、茎のやわらかいものが扱いやすいです。
写真を入れる場合、生きている人が一緒に写った写真は「あの世へ連れて行かれる」という言い伝えから控える業者もあります。気になる場合は写っている方の了承を得るか、ペット単独の写真を選ぶとよいでしょう。これは迷信に基づく慣習の一つで、良い悪いを決めるものではありません。ご家族の気持ちが落ち着く形を選んでいただければと思います。
棺に入れられるもの・入れられないものの口コミ・評判
Web上では「首輪だけは一緒にと思っていたが、金具が残ると聞いて写真を撮ってから外した」「迷ったものは業者さんに聞いたら丁寧に教えてくれた」といった声が見られます。判断に迷うものは、遠慮なく相談してみるとよいようです。
入れてよいものの基準は火葬業者ごとに異なります。どうしても一緒に送りたいものがある場合は、火葬前に相談すると、代わりの方法を提案してもらえることもあります。猫ちゃんの火葬の流れや棺に入れられるものについては、次の記事もご参照ください。
棺や火葬について相談できる依頼先
「棺はどれを選べばいい?」「これは一緒に入れられる?」といった疑問は、火葬事業者に相談するのが確実です。棺を用意してもらえるプランがある場合も多く、はじめてのお別れでも、手順を一つずつ案内してもらえます。

依頼先を選ぶときは、実在する事業者か、立ち会いや返骨に対応しているか、料金が事前に明確かを確認しておくと安心です。移動火葬車による高額請求や不適切な処理などの事例も報じられているため、固定の斎場や連絡先が確認できる事業者を選びましょう。電話で問い合わせたときに、料金や火葬の形式(合同・個別・立会)、返骨の有無をていねいに説明してくれるかどうかも、信頼できる目安になります。
棺の相談だけでなく、火葬の形式や日程、そのあとの供養の方法まで、まとめて相談できる窓口を持っておくと、いざというときに落ち着いて動けます。深い悲しみのなかで多くのことを決めるのは大変ですから、無理のない範囲で、頼れる先をひとつ見つけておけると心強いでしょう。
よくある質問
※本記事の料金は執筆時点(2026年7月)の各社公式サイト・各通販の情報をもとにしています。最新の価格・仕様は各公式サイト・販売元でご確認ください。
まとめ
ペット用の棺は、火葬に向く素材を選び、体より少しゆとりのあるサイズを選ぶのが基本です。安置だけなら市販の段ボールでも十分で、そのまま火葬まで見送りたいときは専用棺や特殊段ボールが安心です。棺に入れるものは、淡い色のお花や手紙など、火葬の妨げにならないものを選び、迷うものは事前に業者へ相談しましょう。
最期の入れ物を整える時間は、これまでの日々に静かに感謝を伝える時間でもあります。あなたと大切な家族の最後のひとときが、穏やかなものになりますように。