年を重ねた愛犬が、ご飯をあまり食べなくなり、日中もうとうとと寝てばかり——。そんな姿を見ると、「このまま弱ってしまうのではないか」「何か悪い病気なのではないか」と、胸がざわついて落ち着かないですよね。食べることは生きる力に直結しているぶん、食欲が落ちたときの飼い主さんの不安は、とても大きなものだと思います。
この記事では、老犬が「食べない・寝てばかり」になったときの見方を、食べ方と経過時間から緊急度を整理したうえで、今日おうちで試せる食事の工夫、シニア期に見直したいフード、そして動物病院に相談する目安まで、静かに順を追って整理しました。看取りの時期に「食べない」ことと向き合っている方へ、寄り添える言葉もお届けできればと思います。編集部が各フードの公式サイト・原材料・口コミを調べてまとめています。


一言でいうと、水も飲まない・ぐったりしている・丸1日(24時間)以上まったく食べないといった状態は、経過時間を待たず早めの受診が安心とされています。元気はあって食べる量が少し減っただけなら、温める・ふやかすなどの工夫を試しながら、量や様子を記録して観察するのが一般的な考え方です。
老犬が「食べない・寝てばかり」になる主な原因
シニア期の愛犬が食べず、よく眠るようになる背景には、いくつかの要因が重なっていることが多いとされています。原因を断定することはできませんが、どんな可能性があるかを知っておくと、様子を見るときの手がかりになります。

加齢による食欲・活動量の自然な低下
年齢を重ねると、犬も人と同じように基礎代謝や運動量が落ち、必要とするカロリーが少なくなっていきます。若い頃と同じ量を食べきれなくなったり、睡眠時間が長くなったりするのは、加齢に伴う自然な変化のこともあると一般的にいわれています。嗅覚や味覚が鈍くなって、以前ほどフードの匂いに反応しなくなることもあります。犬にとって「香り」は食欲を大きく左右する要素のため、匂いを感じにくくなると、それだけで食が細くなることがあります。
また、シニア期は寝ている時間が長くなり、日中もうとうとと過ごすことが増えていきます。これも加齢による自然な変化のことがある一方で、「眠っている時間が急に増えた」「呼びかけへの反応が鈍くなった」という変化を伴うときは、単なる加齢とは分けて考えたいサインです。食欲と睡眠の両方を、その子の普段の様子と比べながら見ていきましょう。
ただし、「年のせいだろう」と決めつけてしまうと、隠れた不調を見逃すおそれがあります。元気や反応の様子とあわせて見ていくことが大切です。
口やあごのトラブルで食べづらい
歯周病や口内炎、歯が抜けるなど、口まわりのトラブルがあると、食べたい気持ちはあっても痛くて食べられないことがあります。フードに近づくのに口をつけない、食べるときに顔を傾ける、口臭が強くなった、よだれが増えた——こうしたサインがあるときは、口の中の不快感が原因かもしれません。
内臓の病気や痛みが背景にあることも
腎臓・肝臓・心臓の機能低下や、消化器・ホルモンの病気など、さまざまな体調の変化が食欲の低下や元気消失として現れることがあると一般的に知られています。とくに嘔吐や下痢、体重の急な減少、ふらつき、呼吸の変化を伴う場合は、食欲不振以外のサインとして見逃さないようにしたい点です。原因の見極めは飼い主さんだけでは難しいため、気になる症状が続くときは動物病院に相談しましょう。
ストレス・環境の変化やフードの飽き
引っ越し・家族構成の変化・気温の変化・食器の位置など、ちょっとした環境の変化が食欲に影響することもあります。また、同じフードが続いて飽きてしまう、フードが酸化して風味が落ちている、といった単純な理由で食が細くなることもあります。とくに夏場は、暑さで食欲が落ちたり、開封後のフードが酸化しやすくなったりするため、保存方法を見直すだけで食いつきが戻ることもあります。まずは元気や便の様子を確認しながら、思い当たることがないか振り返ってみましょう。
これらの原因は、一つだけとは限りません。「加齢で食が細くなっているところに、口の痛みや暑さが重なっている」というように、いくつかの要因が少しずつ影響し合っていることも多いとされています。だからこそ、食べない理由を一つに決めつけず、元気・水分・便・体重といった全体の様子から見ていくことが、その子に合った対応につながります。
何日まで様子見? 食べ方と経過時間で見る緊急度の目安
「あと何日、様子を見ていいのか」は、多くの飼い主さんが迷うところだと思います。ここでは食べ方(どのくらい食べられているか)と経過時間を組み合わせた、一般的な目安を整理しました。あくまで目安であり、最終的な判断はかかりつけの動物病院にご相談ください。

とくに水も飲めていない、ぐったりして反応が鈍い、震えている、呼吸が苦しそうといった様子があるときは、経過時間にかかわらず早めの受診が安心とされています。反対に、元気があって好きなものは口にする、少しずつでも食べられているという場合は、下記の工夫を試しながら落ち着いて観察していきましょう。持病のある子やシニア期は状態が変わりやすいため、迷ったときは電話でかかりつけに相談するだけでも安心につながります。
猫を含めた食欲不振の見極めや、犬側のより詳しい対処については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
今日からできる食事の工夫
「食べないけれど、まだ元気はある」というときに、おうちで試せる工夫を紹介します。どれも難しいものではありません。無理に食べさせようとせず、愛犬が心地よく口にできる形を探す気持ちで、できそうなものから試してみてください。

1ぬるく温めて香りを立たせる
フードを人肌程度に少し温めると香りが立ち、嗅覚が鈍くなってきたシニア犬でも食欲が動きやすくなります。電子レンジで温める場合は熱くなりすぎないよう、必ず人肌程度に冷ましてから与えてください。
2ぬるま湯やスープでふやかす
硬いドライフードは、ぬるま湯でふやかすと柔らかくなり、香りも立って食べやすくなります。噛む力や飲み込む力が弱ってきた子にもやさしい形です。ふやかす水分に、味の付いていない茹で汁などを使うと風味が加わることもあります。
3ウェットフードやトッピングを少し足す
いつものドライフードに、ウェットフードや少量のトッピングを混ぜると、香りと嗜好性が上がって食いつきが期待できます。ただし、持病がある子は塩分や成分に注意が必要なので、トッピングの内容は事前にかかりつけに確認すると安心です。
4食器の高さと食べる姿勢を見直す
シニア犬は、首を下げて食べる姿勢がつらくなることがあります。食器を台の上に置いて高さを出すと、無理な姿勢にならず食べやすくなる場合があります。滑りにくいマットを敷くのもおすすめです。
5静かな環境で・少量頻回にする
落ち着ける静かな場所で与える、1回量を減らして回数を増やす(少量頻回)といった工夫も、負担を軽くします。一度に食べきれなくても、こまめに口にできれば十分なこともあります。
これらの工夫を試すときは、いつ・何を・どのくらい食べられたかを簡単にメモしておくと、様子の変化に気づきやすくなります。「昨日より少し食べた」「この形なら口をつけてくれた」といった記録は、受診が必要になったときにも役立ちます。手を替え品を替えても食べない、あるいは元気がなくなってきたと感じたら、工夫を続けるより受診を優先してあげてください。
シニア期のフードを見直す|選び方とおすすめ
食が細くなってきたときは、フードそのものを見直すのも一つの方法です。シニア犬のフードを選ぶときは、香りの立ちやすさ・消化のしやすさ・粒の食べやすさを目安にすると選びやすくなります。食が細くなった子には、香りが立ちやすい動物性原料をしっかり使ったフードや、ふやかして与えやすいドライフードが向いていることが多いとされています。粒が大きすぎたり硬すぎたりすると、噛む力の落ちたシニア犬には負担になるため、その子の口の状態に合わせて選んであげたいところです。
ここでは編集部が公式サイトの情報をもとに調べた、香りや原材料に配慮したフードを2種類ご紹介します。いずれも「食いつきが期待できる」タイプですが、体質や持病によって合う・合わないがあります。とくに腎臓や心臓に持病がある子は、たんぱく質やミネラルの量に配慮が必要なこともあるため、療法食を含めて切り替えは少量ずつ、心配なときはかかりつけの獣医師に相談しながら進めてください。
モグワン

モグワンは、チキンとサーモンを主原料にしたグレインフリー(穀物不使用)の全年齢対応フードです。公式サイトによると、放し飼いチキンの生肉や生サーモンなど動物性原料を約56%使用し、香りの良さと食いつきに配慮したレシピとされています。全年齢対応のため、給餌量を調整すればシニア犬の主食としても使えます。
粒は直径1cmほどのリング型でやや硬さがあるため、噛む力が弱ってきた老犬には、ぬるま湯でふやかして与えると香りも立って食べやすくなります。新しいフードに切り替えるときは、今までのフードに少しずつ混ぜて7〜10日ほどかけて移行すると、おなかへの負担をやわらげやすいとされています。
モグワンの基本情報
| 主原料 | チキン&サーモン(動物性原料 約56%) |
| タイプ | ドライ・グレインフリー |
| 対象 | 全年齢(シニアも可) |
| 内容量 | 1.8kg |
| 原産国 | イギリス(執筆時点・公式サイトより) |
ネルソンズドッグフード

ネルソンズドッグフードは、チキンを主原料にしたグレインフリーの全犬種・全年齢対応フードで、とくに中型犬・大型犬にも配慮した大容量パックが特徴です。公式サイトによると、関節に配慮したグルコサミン・コンドロイチンや、2種類のオリゴ糖を配合しているとされ、体格の大きなシニア犬を飼っているご家庭でも使いやすい設計です。
大容量のため一袋で長く使え、多頭飼いや大きめの子にも向いています。こちらも切り替えは今までのフードに少しずつ混ぜて進め、粒が食べにくそうなときはふやかすと食べやすくなります。価格や定期コースの内容は変動することがあるため、最新の情報は公式サイトでご確認ください。
ネルソンズドッグフードの基本情報
| 主原料 | チキン(生肉・乾燥チキン) |
| タイプ | ドライ・グレインフリー |
| 対象 | 全犬種・全年齢(中大型犬にも配慮) |
| 内容量 | 5kg/関節・腸内環境に配慮した成分を配合(執筆時点・公式サイトより) |
ネルソンズドッグフードの口コミ・評判
Web上では「ふやかしたら食いつきが良くなった」「香りが強くて興味を示してくれた」といった声が見られる一方、「うちの子には粒が硬かった」という声もあり、感じ方には個体差があるようです。
動物病院に相談する目安
おうちでの工夫を試しても食べない、あるいは以下のようなサインが見られるときは、早めに動物病院に相談することをおすすめします。フードの見直しは元気があってこそ意味を持ちます。気になる症状があるときは、フードを変えるより先に受診を優先してください。

受診を考えたいサインの一例です。
- 丸1日(24時間)以上、まったく食べない・水も飲まない
- ぐったりして反応が鈍い、立てない、ふらつく
- 嘔吐や下痢を繰り返す、血が混じる
- 短期間で体重が目に見えて減った
- 呼吸が苦しそう、震えが続く、痛がる様子がある
受診の際は、いつから・どのくらい食べていないか、水は飲めているか、便や嘔吐の様子をメモしておくと、診察がスムーズになります。可能であれば、食べなくなる前後の写真や動画があると状態が伝わりやすくなります。持病がある子は、進行が早いこともあるため、電話で早めに相談するだけでも安心につながります。
看取り期の「食べない」との向き合い方
ここまでは回復を前提とした工夫をお伝えしてきましたが、高齢や病気が進み、治療よりも穏やかに過ごすことを選ぶ時期に入っている場合もあります。看取りの時期の「食べない」は、これまでとは少し違う意味を持つことがあります。

体が食べ物を受けつけにくくなり、眠っている時間が増えていくのは、旅立ちに向かう体の自然な変化のこともあると一般的にいわれています。この時期に無理に食べさせようとすると、かえって本人の負担になってしまうこともあります。「食べてほしい」という気持ちは、愛情そのものです。それでも、食べさせることよりも、そばで穏やかに過ごす時間を大切にするという選び方もあることを、そっとお伝えできればと思います。
この時期にどう寄り添えばよいか、水分の取らせ方や体位の変え方など具体的なケアは、かかりつけの獣医師に相談すると、その子の状態に合った方法を教えてもらえます。「もう治療をしない」という選択も、決して見放すことではありません。どうか、ご自分を責めないでください。少しでも食べられたときは、それを一緒に喜んであげてください。
同じように食が細くなった猫ちゃんの看取りや食事の工夫については、こちらの記事も参考になります。
よくある質問
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。
※本記事のフード情報は執筆時点(2026年7月)の各社公式サイト情報です。最新の内容・価格は各公式サイトでご確認ください。
まとめ
老犬が「食べない・寝てばかり」になったときは、まず水を飲めているか・ぐったりしていないかを確認し、食べ方と経過時間から緊急度をやさしく見極めることが大切です。元気があるうちは、温める・ふやかす・少量頻回といった工夫や、香りに配慮したフードへの見直しで食べやすくしてあげられます。一方で、気になるサインがあるときや看取りの時期には、無理をせず、その子に合ったケアを獣医師と一緒に考えていきましょう。
食べる量が減っていく姿を見守るのは、本当につらいことです。それでも、あなたがそばで気にかけていること自体が、その子にとっての大きな安心になっています。どうか一人で抱え込まず、頼れる人や動物病院に相談しながら、愛しい時間を穏やかに重ねていけますように。