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老犬の夜泣きの原因と対処法|認知症・不安・痛みと介護に疲れたときのケア

夜、家じゅうが寝静まったころに、あの子の鳴き声が響く——。「クーン」と細く訴える声も、「ワンワン」と止まらない声も、続くと心も体もすり減っていきます。日中の仕事や家事に加えて、夜も眠れない日が重なると、「どうして」「いつまで続くの」と、途方に暮れてしまう方も少なくないと思います。かわいいはずのあの子の声に、つい強い気持ちがわいてしまって、そんな自分を責めてしまう——それも、必死で向き合っているからこそのことです。

この記事では、老犬の夜泣き(夜鳴き)の背景に何があるのか、認知症・不安・体の痛み・トイレや空腹といった原因ごとに、動物病院や獣医師が解説する情報をもとに静かに整理します。そのうえで、家庭でそっとできる工夫、動物病院に相談する目安、そして介護に疲れてしまった飼い主さん自身の心と体を守るための考え方まで、一緒に見ていきます。ひとりで抱え込まずにすむための、小さな手がかりになればと願っています。

飼い主さん
ここ最近、うちの子が夜中になると鳴き続けるんです。昼間はよく寝ているのに、夜になると急に。もう歳だから仕方ないのでしょうか。正直、私も眠れなくて限界で……。
編集部
毎晩となると、本当におつらいですよね。夜泣きは「歳だから」の一言では片づけられず、認知機能の変化や不安、体の痛み、トイレなど、いくつもの背景が考えられるとされています。原因によって和らげ方も変わりますし、動物病院で相談できることもたくさんあります。まずは一緒に、その背景をひとつずつ見ていきましょう。ご自身のことも、どうか大切になさってくださいね。

一言でいうと、老犬の夜泣きは「認知機能の低下(昼夜逆転)」「不安・寂しさ」「体の痛みや不調」「トイレ・空腹などの要求」といった原因が単独または重なって起こるとされ、原因によって対処が変わります。「歳のせい」と自己判断せず、まず動物病院に相談することが、あの子にも飼い主さんにも助けになります。

老犬が夜泣きするのはなぜ?考えられる主な原因

老犬の夜泣きには、ひとつの原因だけでなく、複数の要因が重なっていることも多いとされています。多くの動物病院の解説では、大きく「認知機能の低下」「不安・寂しさ」「体の痛みや不調」「トイレ・空腹などの生理的な要求」の4つが挙げられています。まずは全体像を図で見てみましょう。

老犬の夜泣きに考えられる4つの原因(認知機能の低下・不安・体の痛み・生理的要求)を示した図解
老犬の夜泣きには大きく4つの背景が考えられる(当メディア編集部作成)

認知機能の低下(昼夜逆転・徘徊)

年齢を重ねた犬では、脳の働きがゆるやかに衰え、認知機能が低下することがあるとされています。その代表的なあらわれのひとつが、昼と夜の生活リズムが逆転する「昼夜逆転」です。昼間はぐっすり眠り、夜になると起き出して活発になり、理由がはっきりしないまま鳴いたり、同じ場所をぐるぐると歩き回ったり(徘徊)することがあると言われています。夜に活発になって鳴く、呼びかけへの反応が鈍い、壁や家具にぶつかる、トイレの失敗が増えるといった変化が重なるときは、認知機能の低下が背景にある可能性が考えられます。ただし、これらは家庭で断定できるものではないため、気になるときは動物病院で相談することがすすめられます。

不安・寂しさ(暗さ・ひとりでいる心細さ)

年齢とともに目や耳の働きが衰えると、周囲の様子がつかみにくくなり、不安を感じやすくなるとされています。とくに夜は暗く静かで、飼い主さんの姿や気配も感じにくいため、「どこにいるのか分からない」「ひとりにされた」という心細さから、呼ぶように鳴くことがあると言われています。日中は落ち着いているのに夜になると鳴く、そばに行くと鳴きやむ、といった様子が見られる場合は、不安や寂しさが関係していることが考えられます。

体の痛みや不調

関節炎などによる関節の痛みや、内臓の不調、体を動かしたときの不快感が、夜の鳴き声としてあらわれることもあるとされています。昼間は活動でまぎれていた痛みが、静かな夜に意識されやすくなることもあると言われます。特定の動作をしたときに鳴く、触られるのを嫌がる、寝る姿勢を頻繁に変える、食欲が落ちているといった変化を伴うときは、体のどこかに不調が隠れている可能性があります。痛みは我慢させずにやわらげてあげたいものなので、早めに動物病院で診てもらうことが大切です。

トイレ・空腹などの生理的な要求

「トイレに行きたいのにうまく動けない」「おなかがすいた」「寒い・暑い」といった、生理的な要求が夜泣きの理由になっていることもあります。夕食から翌朝までの時間が長く空くと、夜中に空腹で目を覚ますことがあるとされ、また足腰が弱ってトイレまで移動しづらいと、要求として鳴くことがあると言われています。こうした要求が背景にある場合は、環境や生活リズムを少し整えるだけで和らぐこともあります。

夜泣きと認知症の関係|見られやすいサインと発症の目安

老犬の夜泣きというと「認知症では」と心配になる方も多いと思います。実際に、夜鳴きは犬の認知症(認知機能不全)の代表的な症状のひとつとして知られています。ただし、夜泣きがあるからといって必ず認知症というわけではなく、前の章で見たように、不安や痛み、生理的な要求など別の原因のこともあります。ここでは、認知症で見られやすいとされるサインと、発症しやすい年齢の目安を整理します。

部屋の中で静かに過ごすシニア犬のイメージ
写真はイメージです

犬の認知症で見られやすいとされるサインには、次のようなものがあると解説されています。ひとつだけで判断するものではなく、いくつかが重なって少しずつあらわれることが多いとされます。

変化の種類 見られやすいサインの例
睡眠・活動 昼夜が逆転する/夜に起きて鳴く・徘徊する/昼間よく眠る
見当識(場所の把握) 同じ場所をぐるぐる回る/壁や家具にぶつかる/狭い所で動けなくなる
飼い主との関わり 名前を呼んでも反応が鈍い/アイコンタクトが減る/甘え方が変わる
排泄・行動 トイレの失敗が増える/理由がはっきりしないまま鳴く

発症しやすい年齢については、一般的に小型犬・中型犬では10歳ごろ、大型犬では8歳ごろから注意が必要とされ、12〜13歳ごろに気づかれることが多いと解説する動物病院もあります。また、柴犬などの日本犬は認知症になりやすい傾向があるとも言われています。あくまで一般的な傾向であり、その子によって差が大きいものです。気になるサインが見られたら、「歳だから」と決めつけず、早めに動物病院に相談することで、その子に合ったケアを早く始められる可能性があります。

夜、少しでも穏やかに眠るために家庭でできること

原因によって対処は変わりますが、家庭で共通して意識したいのが「生活リズムを整えること」と「安心して眠れる環境をつくること」です。薬やサプリメントを検討する前に、まず家庭で整えられることから、無理のない範囲で試してみましょう。ただし、これらは症状を必ず解消するものではなく、背景に病気や痛みがある場合は受診が優先されます。

老犬が夜に穏やかに眠るための4つの工夫を示した図解
夜を少しでも穏やかに過ごすための工夫(当メディア編集部作成)

1日中に光を浴び、無理のない範囲で刺激を

朝日を浴びると体内時計が整いやすくなるとされています。散歩の回数を無理に減らさず、短くても外の空気に触れる、名前を呼んで軽く関わるなど、日中に適度な刺激を入れることで、昼夜逆転がやわらぐことがあると言われています。歩くのが難しい子は、抱っこやカートで外の景色を見せてあげるだけでも気分転換になります。

2安心して眠れる寝床を、気配の届く場所に

やわらかく暖かい寝床を用意し、飼い主さんの気配が感じられる場所に置いてあげましょう。広い空間より、体にそっと沿うくらいの少し囲われた寝床のほうが落ち着く子もいます。寝返りや体位を変えにくい子は、床ずれを防ぐためにときどきそっと姿勢を変えてあげると楽になるとされています。

3暗さ・寒さ・暑さといった不快を減らす

暗闇が不安の引き金になっている場合は、豆電球のような小さな灯りをつけておくと安心につながることがあります。寝床が冷えないよう保温し、逆に暑すぎないよう室温にも気を配ります。物音や急な明るさの変化が少ない、静かで落ち着ける環境を整えてあげましょう。

4トイレ・空腹などの要求を先回りして減らす

寝る前にトイレをすませておく、寝床の近くに水を置く、就寝前に少量の食事をとれるようにするなど、夜中の生理的な要求を先回りしておくと、鳴く回数が減ることがあります。どんなときに鳴くのかを数日メモしておくと、原因のヒントが見えてきて、動物病院に相談するときにも役立ちます。

これらを試しても夜泣きが続くとき、あるいは痛みや病気が疑われるときは、家庭での工夫だけで抱え込まず、次の章のように動物病院に相談することが大切です。

動物病院に相談する目安と、できること

夜泣きは「様子を見るしかない」と思われがちですが、実際には動物病院で相談できることがたくさんあります。とくに、急に夜泣きが始まった・ひどくなった、鳴き方が苦しそう、食欲や元気がない、痛がるそぶりがあるといったときは、体の不調が隠れている可能性があるため、早めの受診がすすめられます。原因が分からないまま夜泣きが続く場合も、一度相談してみる価値があります。

動物病院で獣医師の診察を受けるシニア犬のイメージ
写真はイメージです

動物病院では、まず体調や認知機能の状態を確認し、痛みや病気が背景にないかを調べたうえで、その子に合った対応を一緒に考えてもらえます。認知機能の低下や不安が関係している場合には、心を落ち着けるための薬やサプリメント、脳の血流を助けるとされる薬、療法食などが選択肢として提案されることがあると解説されています。市販の睡眠薬や人間用の薬を自己判断で与えることは危険なので、絶対に避けてください。薬やサプリメントは、必ず獣医師の診察と指示のもとで使うものです。どんな治療やケアが向いているかは、その子の状態によって大きく変わります。「こんなことで受診してもいいのかな」とためらわず、気軽に相談してみてください。

介護に疲れてしまったとき|飼い主さん自身を守るために

ここまで、あの子のためにできることを見てきましたが、忘れてはならないのが、看病し介護している飼い主さん自身のことです。毎晩の夜泣きで眠れない日が続くと、心も体も限界に近づきます。かわいいはずのあの子の声に強い気持ちがわいてしまったり、「近所迷惑では」と気を張り続けたり——そんな自分を責めてしまう方も少なくありません。けれど、それは決してあなたが冷たいからではなく、それだけ懸命に向き合い、疲れきっているサインです。

シニア犬にそっと寄り添う飼い主の手のイメージ
写真はイメージです

介護は、ひとりですべてを背負う必要はありません。家族で夜の番を交代する、夜だけ寝室を分けて少しでも眠る時間を確保する、日中に短い仮眠をとるなど、まず飼い主さん自身が休める時間をつくることを、どうか後ろめたく思わないでください。介護をする人が倒れてしまっては、あの子を支えることもできなくなります。あなたが休むことは、あの子のためでもあります。

家庭だけで支えるのが難しいと感じたら、老犬の預かりやデイケアを行う施設、老犬ホーム、ペットシッターといった外部の力を頼る選択肢もあります。夜泣きのつらさは、動物病院の獣医師や看護スタッフに率直に打ち明けてよいことです。近所への配慮が気になるときは、事情をひとこと伝えておくだけで、気持ちがずいぶん楽になることもあります。ひとりで抱え込まず、頼れるところにそっと頼ってください。

よくある質問

Q老犬の夜泣きは、いつまで続くのでしょうか。

A期間には非常に大きな個体差があり、一概には言えません。原因が生活リズムや環境にある場合は、工夫によって比較的早く落ち着くこともあります。一方で、認知機能の低下が背景にある場合は、経過とともに変化していくことが多いとされ、期間を見通すのは難しいのが実際です。「いつまで」を気に病みすぎるより、そのときどきの様子に合わせてケアを調整し、飼い主さん自身の負担も減らしていくことが大切です。気になるときは動物病院で経過を診てもらうと安心です。

Q夜泣きを無視・放置しても大丈夫ですか。

A痛みや病気、トイレなどの切実な要求で鳴いている場合があるため、原因が分からないうちから一律に無視・放置するのはすすめられません。まずは背景を確かめることが先です。一方で、そばに行くたびに鳴くことが習慣づいてしまうケースもあるとされ、対応の仕方に迷うことも多いものです。どう向き合うのがその子に合っているかは、原因によって変わります。自己判断で抱え込まず、動物病院で相談しながら対応を決めていくのがよいでしょう。

Q夜泣きに、市販のサプリや睡眠薬を使ってもいいですか。

A自己判断での使用は避けてください。とくに人間用の睡眠薬や鎮静剤を犬に与えるのは大変危険です。心を落ち着けるための薬やサプリメントが役立つ場合もありますが、それはその子の状態を診たうえで、獣医師が種類や量を判断して処方するものです。「何か飲ませれば」と焦る前に、まず動物病院に相談し、安全な方法を一緒に選んでもらいましょう。

Q夜泣きが続くと、寿命や余命が近いということですか。

A夜泣きがあること自体が、そのまま寿命や余命に直結するわけではありません。夜泣きは認知機能の変化や不安、痛みなどさまざまな背景で起こるもので、多くはケアと付き合っていける症状です。ただし、急な変化や、食欲・元気の低下、苦しそうな様子を伴うときは、体調の悪化が隠れていることもあります。不安なときは、その様子を含めて動物病院に相談し、今の状態を確かめてもらうことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。夜泣きの原因の判断や、薬・サプリメントの使用は、診察を受けた獣医師によって行われます。気になる症状がある場合は、動物病院にご相談ください。掲載内容は執筆時点(2026年7月)で確認できた各情報源の目安です。

まとめ

老犬の夜泣きは、「認知機能の低下(昼夜逆転)」「不安・寂しさ」「体の痛みや不調」「トイレ・空腹などの要求」といった原因が、単独または重なって起こるとされています。「歳だから仕方ない」と決めつけず、まずは背景を確かめ、生活リズムと安心できる環境を整えること、そして急な変化や痛みが疑われるときは動物病院に相談することが、あの子にとっての助けになります。

そして、どうか忘れないでください。眠れない夜を重ねながら介護を続けているあなた自身も、支えられるべき存在です。ひとりで抱え込まず、家族や動物病院、頼れる場所にそっと寄りかかりながら、あなたとあの子の夜が、少しずつでも穏やかなものになりますように。今日も懸命に寄り添うあなたの日々が、あたたかな光に包まれていますように。

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