長いあいだ家族として過ごしてきた子を見送るとき、悲しみのただ中で「お金のこと」を考えなければならないのは、とてもつらいことだと思います。動物病院での治療が続いたあとであればなおのこと、「加入しているペット保険で、葬儀や火葬の費用も見てもらえるのだろうか」と気になる方は少なくありません。
この記事では、ペット保険で葬儀・火葬の費用が補償されるのかどうかを、保険会社の公式情報をもとに整理してお伝えします。編集部が各社の公式サイト・よくある質問・用語解説を調べ、基本の補償と特約の違い、契約中の保険が対象かどうかを確かめる方法、そして亡くなったあとの解約手続きと保険料の返還までをまとめました。落ち着いて確認するための、静かな手引きになれば幸いです。


一言でいうと、ペット保険の基本の補償は通院・入院・手術といった治療費が中心で、葬儀・火葬の費用は対象外とされているのが一般的です。ただし一部の保険会社は「ペットセレモニー特約」「葬祭費用」などの形で、上限3万円程度を補償する仕組みを用意しています。
ペット保険で葬儀・火葬の費用は出るのか
結論からお伝えすると、多くのペット保険で、葬儀・火葬の費用は基本の補償の対象外とされています。ペット保険はもともと、動物病院でかかった診療費(通院・入院・手術)の一部を補償する仕組みとして設計されているためです。人の医療保険が治療のための保険であり、葬儀費用は別に備えるものとされているのと、考え方としては近いといえます。

一方で、「まったく受け取れない」と決まっているわけでもありません。保険会社によっては、葬儀・火葬にかかった費用を補償する特約(オプション)を用意している場合があります。たとえばペットメディカルサポート株式会社の「PS保険」には、火葬費用などを対象とする「ペットセレモニー特約(火葬費用等担保特約)」があり、同社の公式FAQでは支払限度額を30,000円までと案内しています(PS保険よくあるご質問/執筆時点)。
つまり、ご自身の契約で葬儀費用が出るかどうかは、「その特約を付けているか」「そもそも加入している保険にその特約があるか」で決まります。加入時に細かく確認していなかったとしても、それは自然なことです。次の章から、どこまでが「出る費用」でどこからが「出ない費用」なのかを、順に整理していきます。
保険で「出る費用」と「出ない費用」の境目
ペット保険の補償範囲は、大きく「生きている間の治療にかかったお金」と「亡くなったあとにかかるお金」で分かれます。前者は基本の補償、後者は特約や別の制度がある場合にかぎられる、というのが全体像です。

基本の補償で対象になりやすいもの
亡くなる直前まで動物病院に通っていた場合、その診療費は通常どおり補償の対象になります。入院中に亡くなった場合の入院費や、最後に受けた検査・処置の費用も、契約している補償割合の範囲で請求できるのが一般的です。「もう亡くなってしまったから請求できない」と思い込んでしまう方もいますが、亡くなる前に受けた診療については、契約が有効だった期間の出来事として扱われます。請求期限は各社で定められているため、落ち着いたタイミングで明細を確認してみてください。
基本の補償では対象外とされることが多いもの
いっぽう、火葬料・棺・祭壇・骨壷・お墓や納骨といった、お別れのあとにかかる費用は、基本の補償では対象外とされているのが一般的です。予防目的の処置やワクチン、健康診断などと同じく、「ケガや病気の治療」に当たらないためです。また、死亡そのものに対して保険金が支払われる「死亡保険」の形をとるペット保険も、現在の日本では一般的ではありません。この点は、人の生命保険とは仕組みが異なります。
なお、葬儀費用の特約がなくても、保険会社によっては提携先の葬儀サービスを案内してくれる付帯サービスや、契約者向けの相談窓口を用意している場合があります。金銭的な補償とは別の支えとして、契約内容と一緒に確認しておくとよいでしょう。
葬祭費用・セレモニー費用の特約とは
「葬祭保険金特約」「ペットセレモニー特約」などと呼ばれるものは、ペットが亡くなったあとの火葬・供養にかかった費用を、決められた上限まで補償するオプションです。楽天保険の比較による用語解説でも、火葬・埋葬や、供養のための仏具などを購入した際に一定の保険金が支払われる特約として説明され、支払われる上限は3万円前後が多いとされています(楽天保険の比較「葬祭保険金特約」/執筆時点)。

公式サイトで内容を確認できた例を、次の表にまとめました。なお、すべての保険会社が同種の特約を用意しているわけではなく、名称も条件も各社で異なります。
| 保険会社・制度名 | 対象となる費用 | 支払限度額 | 確認しておきたい条件 |
|---|---|---|---|
| PS保険(ペットメディカルサポート)/ペットセレモニー特約(火葬費用等担保特約) | 火葬費用、位牌・メモリアルプレート等の作成費用、棺代、葬儀用祭壇のレンタル費用 | 30,000円まで | 特約の有無を選べるのは新規契約時のみ。大型犬は15歳以上でのセット不可、14歳までにセットしても15歳以降は自動的に特約なしへ |
| あいおいニッセイ同和損保/ペット保険の葬祭費用 | 火葬費用、仏具購入費用など | 3万円を限度 | ケガや病気で保険期間中に死亡し、死亡日から1か月以内に日本国内で費用を負担した場合 |
※内容は各社公式サイト(PS保険よくあるご質問/あいおいニッセイ同和損保よくあるご質問)の執筆時点(2026年7月)の記載をもとに編集部が整理したものです。プランや契約時期により取り扱いが異なる場合があります。
表からも分かるとおり、特約があっても「実際にかかった費用の全額」ではなく、上限までの実費補償という形が一般的です。たとえば上限3万円の特約で葬儀費用が5万円かかった場合、受け取れるのは3万円まで。反対に、費用が3万円に満たなければ、実際にかかった金額が支払われる仕組みが多いとされています。
また、加入できる年齢に上限が設けられていたり、途中からは付けられなかったりする点にも注意が必要です。特約は「あとから思い立って付ける」ことが難しい場合があるため、これから加入や更新を検討される方は、契約前の資料や重要事項説明書で条件を確かめておくと安心です。ただし、特約を付けることが誰にとっても得になるとはかぎりません。保険料の負担も含めて、ご自身の状況に合うかどうかを静かに見比べていただければと思います。
契約中の保険が対象かを確認する方法
「うちの保険はどうなのだろう」と気になったときに、確認する順番をまとめました。すでにお別れを迎えたあとで、書類を探すことが負担に感じられる場合は、無理に急がず、できるところからで大丈夫です。

1保険証券・契約内容のお知らせを見る
まず手元の保険証券(契約者証)や、更新時に届いた契約内容のお知らせを確認します。付帯している特約は「特約」「オプション」の欄にまとめて記載されているのが一般的で、「セレモニー」「葬祭」「火葬費用」といった語があれば対象の可能性があります。書面が見当たらない場合は、次の方法に進んでください。
2約款・重要事項説明書で対象費目と上限を確かめる
特約名が見つかったら、約款や重要事項説明書で「支払限度額」「支払いの条件」「対象となる費用」を確認します。多くの保険会社が公式サイトにPDFを掲載しています。火葬費用だけが対象なのか、棺や位牌の費用まで含むのかは会社によって異なるため、領収書をとっておくべき範囲もここで分かります。
3契約者ページ(マイページ)で契約内容を開く
証券が見つからないときは、契約者向けのマイページにログインすると、契約中のプランと特約が一覧で表示されることがほとんどです。請求書類のダウンロードや、解約手続きの案内も同じページにまとまっている場合が多く、書類を探すより早いこともあります。
4コールセンターに問い合わせる
それでもはっきりしない場合は、保険会社の窓口に電話やメールで問い合わせます。証券番号が分からなくても、契約者の氏名・住所・電話番号で照会してもらえるのが一般的です。「葬儀費用の補償が付いているか」「請求に必要な書類は何か」の2点を最初に伝えると、話が早く進みます。悲しみのなかで電話するのがつらいときは、メールフォームやチャットの窓口を使う方法もあります。
特約が付いていた場合は、火葬・葬儀の領収書や明細書が請求に必要になることがほとんどです。葬儀社から受け取った書類は、宛名・日付・内訳が分かる形で保管しておくと、あとの手続きがスムーズです。
保険で足りない分は? 火葬費用の目安と相談先
特約があっても上限は3万円前後が多く、実際の葬儀費用がそれを上回ることは珍しくありません。実際にどのくらいかかっているのか、参考になる調査があります。PS保険を提供するペットメディカルサポート株式会社が、葬儀費用の保険金請求データ(2023年度・2,017名分)を集計した発表によると、平均額は次のとおりでした。

| 区分 | 葬儀費用の平均額 | 備考 |
|---|---|---|
| 小型犬 | 33,967円 | 2023年度の請求データより |
| 中型犬 | 36,855円 | 体格が大きいほど高くなる傾向 |
| 大型犬 | 51,772円 | 全区分でもっとも高い |
| 猫 | 30,011円 | 2023年度の請求データより |
| 全体平均 | 34,665円 | 2019年度比で2,873円(9.0%)の増加 |
※出典:ペットメディカルサポート株式会社「愛猫の葬儀費用の平均は約3万円。愛犬の場合は?:ペット保険『PS保険』調べ」(2023年度=2023年4月1日〜2024年3月31日の請求データ2,017名分)。保険金請求データの平均額であり、税込・税抜の区分は公表されていません。
この数字はあくまで平均で、実際の費用は火葬の形式(合同火葬・個別火葬・立会火葬)と体重によって変わります。他の子と一緒に火葬してお骨が返らない合同火葬がもっとも費用を抑えやすく、個別に火葬して返骨を受けられる形式、火葬に立ち会って収骨まで行う形式の順に高くなるのが一般的です。どの形を選ぶかは費用だけで決めるものではなく、ご家族が納得できるお別れの形をとることがいちばん大切です。
依頼先を選ぶときには、料金の安さだけでなく、立ち会いができるか、返骨をしてもらえるか、固定の斎場や所在地・連絡先が確認できるかを必ず確かめてください。移動火葬車による高額請求や不適切な取り扱いといった事例が報じられたこともある業界です。見積もりの内訳を書面で示してくれるか、追加料金の条件を事前に説明してくれるかも、信頼できるかどうかの目安になります。
はじめてのお別れで、どこに頼めばよいか分からないときは、対応地域や形式ごとの料金を電話でまとめて相談できる窓口を頼るのもひとつの方法です。
猫の場合の費用や当日の流れについては、次の記事でくわしく整理しています。
亡くなったあとの保険の手続きと保険料の返還
ペットが亡くなると、その時点で保険契約は続ける意味を失います。多くの保険会社では、亡くなったことを知らせる連絡と、書面での解約手続きが必要です。手続きをしないと保険料の引き落としが続いてしまうことがあるため、落ち着いたタイミングで進めておきましょう。

1保険会社に連絡する(フォーム・電話・マイページ)
まずは加入先の窓口に連絡します。ペット保険のFPCでは、専用フォームから連絡したうえで書面による解約手続きを行う流れが案内されています(FPCよくあるご質問/執筆時点)。PS保険では「契約内容変更依頼書」を契約者ページから印刷、または取り寄せて郵送する方法が案内されています。
2亡くなったことが分かる書類を用意する
FPCの案内では、動物病院が発行した死亡診断書や死亡日が分かる領収書・明細書のほか、火葬証明書・埋葬証明書・葬儀の領収書のコピーでもよいとされています。火葬を依頼した際に受け取る書類が、そのまま手続きに使えることがあるということです。会社ごとに指定が異なるため、送付前に窓口で確認してください。
3未経過分の保険料の返還を確認する
最近は、亡くなったことによる解約で、以降の保険料を日割りで返金する保険会社が増えています。FPCの案内では、亡くなったことを証明する書類を提出した場合、実施日の翌日以降の保険料を日割りで返金するとされています。一方、PS保険では年払の場合に同社規定の割合による未経過保険料の返戻があり、月払では返戻金はないものの過剰に支払った分の返金が生じる場合がある、と案内されています。返還の有無や計算方法は会社ごとに異なるため、必ずご自身の契約先で確かめてください。
4犬の場合は自治体への死亡届も忘れずに
犬を飼っていた場合は、狂犬病予防法にもとづく登録があるため、亡くなってから30日以内に、登録している市区町村へ死亡届(登録抹消の届出)を出す必要があります。鑑札と注射済票の返還を求められるのが一般的です。手続きの窓口や方法は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の案内をご確認ください。猫やその他の動物には、この登録の制度はありません。
なお、書面の手続きが完了するまでは契約が続いている扱いになるため、行き違いで保険料が引き落とされることがあります。多くの場合は手続き完了後に返金されますので、通帳の記録が残っていれば慌てずに窓口へ相談してください。
よくある質問
※本記事の補償内容・限度額・手続きは執筆時点(2026年7月)の各社公式サイトの情報をもとにしています。プランや契約時期により取り扱いが異なる場合があるため、最新の情報と個別の契約内容は各公式サイト・加入先の窓口でご確認ください。
まとめ
ペット保険の基本の補償は生きている間の治療費が中心で、葬儀・火葬の費用は対象外とされているのが一般的です。ただし一部の保険会社には「ペットセレモニー特約」「葬祭費用」といった仕組みがあり、上限3万円前後の範囲で火葬費用や仏具の購入費用などが補償される場合があります。まずは保険証券や契約者ページ、約款で特約の有無と対象費目を確かめ、分からなければ窓口に問い合わせてみてください。
そして、亡くなったあとには解約手続きと、犬の場合は自治体への死亡届が必要です。未経過分の保険料が戻る場合もあります。手続きは急がなくてかまいません。ご自身の心と体を大切にしながら、できるところから少しずつ進めていただければと思います。
お金のことに追われずに、これまでの日々をゆっくり思い返せる静かな時間が、あなたのもとに訪れますように。