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愛犬が亡くなった人にかける言葉が見つからない|そばにいる・急かさない関わり方

親しい人が愛犬を亡くしたと知って、スマートフォンを持ったまま手が止まってしまう。書いては消し、書いては消して、結局まだ何も送れていない。そんな時間の途中で、このページを開かれたのではないでしょうか。

「何か言わなければ」と思うのに、どの言葉も薄っぺらく感じる。励ませば軽くなってしまいそうで、黙っていれば冷たいと思われそうで、どちらにも進めない。その立ち止まりは、あなたが相手を軽く扱いたくないからこそ起きています。この記事では、関係性ごとの例文をずらりと並べるのではなく、言葉が見つからないままでもできる関わり方を静かに整理しました。何を言えばいいか分からない自分を責めなくてよい、という話から始めます。

飼い主さん
友人が愛犬を亡くしたと聞きました。何か声をかけたいのに、どの言葉もふさわしくない気がして、何日も送れないままです。私は冷たい人間なのでしょうか。
編集部
いいえ。言葉が見つからないのは、相手の悲しみを安易にまとめたくないからです。そして、支えになるのは気の利いた一言だけではありません。伝え方には、言葉以外の道もあります。

一言でいうと、かける言葉は「見つからないまま」でもかまいません。そばにいること、急かさないこと、落ち着いた頃にもう一度声をかけること。この3つのほうが、うまい言葉よりも長く残ることがあります。

愛犬が亡くなった人にかける言葉が見つからないのは、冷たいからではありません

うつむいて言葉を探している人の様子
写真はイメージです

言葉が出てこないとき、私たちはたいてい「相手の痛みを想像できてしまっている」状態にあります。何を言っても足りない気がするのは、その喪失の大きさが見えているからです。逆に、深く考えずにすぐ言葉が出るときほど、相手の事情から離れた一般論になりがちです。

実際、がん医療の現場向けに厚生労働科学研究費補助金の研究班がまとめた「遺族の心理的サポートに関する手引き(一般医療者用)」(竹内恵美ほか、2021年)では、安易な共感や励ましは、かえって遺族を傷つけてしまう可能性があると説明されています。「あなたなら乗り越えられる」といった言葉は、それができない自分を責めさせてしまうことがある、とも書かれています。人を亡くした遺族への支援を想定した手引きですが、大切な家族を失った人にどう関わるかという点では、愛犬を見送った方に向き合うときにも参考になる考え方です。

つまり、あなたがためらっているのは的外れではありません。むしろ、慎重になっている時点で、相手を大切に扱えています。うまく言えない自分を責める必要はありません。

送れないまま日が経ってしまった人へ

「もう何週間も経ってしまった。今さら連絡したら不自然かもしれない」。そう感じて、さらに送れなくなる方は少なくありません。けれど後述するとおり、周囲が話題にしなくなった頃こそ、相手が孤独を感じやすい時期でもあります。遅れて届く言葉には、遅れたぶんの意味があります。「ずっと気になっていました」と正直に添えれば、それで十分に伝わります。

悲しみに「ここまで」という区切りはありません

悲しみが波のように行きつ戻りつする様子と、急かさない関わり方をまとめた図解
悲しみは波のように行きつ戻りつするとされています(当メディア編集部作成)

前掲の手引きでは、悲嘆の過程について「段階を順番に上っていくというよりも、それぞれの段階を波のように行ったり来たりする」と説明されています。あわせて、「正しい」悲嘆のプロセスがあるわけではなく、人それぞれ異なる過程をたどるとも書かれています。悲しみを自分で抱えられるようになるまでに必要な時間は人によって違い、すぐに苦しみから抜け出す方法は残念ながらない、という前提に立った説明です。

この「波」を知っておくと、相手の見え方が変わります。落ち着いて笑っていた翌日に、また沈んでいる。それは後戻りでも、こじらせているわけでもなく、波の谷にいるだけかもしれません。だからこそ「そろそろ元気を出して」「いつまでも悲しんでいたらあの子が悲しむよ」という言葉は、届きにくくなります。相手の内側の時間を、こちらの都合で早送りしてしまうからです。

もうひとつ、ペットとの死別には特有の事情があります。心理学の領域には「公認されない悲嘆(disenfranchised grief)」という概念があり、社会的に認められにくい喪失は、悲しみを表に出しにくく孤立しやすいと指摘されています。伴侶動物との死別はこれにあたりやすいとする研究報告があります。「たかが犬で、と思われるかもしれない」という恐れを抱えている相手にとって、あなたがその悲しみを本物として扱うこと自体が支えになります。

言葉にしなくても伝わる、3つの関わり方

しなくていいこととしてもいいことを対比した、言葉がなくても伝わる関わり方の図解
言葉を探す代わりにできること(当メディア編集部作成)

手引きには、支援する側の姿勢として「何かアドバイスしようと意識するよりも、遺族の話をじっくり聞くことが支援になるかもしれない」「遺族に対して無理に悲嘆を表出させる必要はない」という趣旨の記述があります。言い換えれば、語らせることでも、励ますことでもなく、受け取る側でいることが関わりの中心だということです。具体的には、次の3つから始められます。

1そばにいる(返事を求めない)

既読がつかなくても、返信がなくても構わない形で伝えます。「返信は不要です」「気が向いたときで大丈夫です」と一言添えるだけで、相手は返事を書けない自分を責めずに済みます。会える間柄なら、話題を用意せずに同じ空間にいるだけでも十分です。沈黙を埋めようとしなくてかまいません。

2いつもどおりに接する

腫れ物に触るような扱いは、相手を「かわいそうな人」の位置に置いてしまうことがあります。仕事の連絡、買い物の相談、他愛のない話。日常が変わらずそこにあることは、それ自体が安心につながります。相手が悲しみに触れたときだけ、その話にゆっくり付き合えば十分です。

3落ち着いた頃に、もう一度声をかける

訃報の直後は多くの人から連絡が届き、数週間後には静かになります。手引きでも、心配していることを伝え、必要なときにまた相談にのれることを伝えるとよいとされています。一度きりで終わらせず、「その後どうしていますか」と後日もう一度声をかける。これは言葉の巧拙にほとんど左右されない関わり方です。

そしてもし、どうしても何も浮かばないときは、「なんて言っていいか分かりません」とそのまま伝えてもかまいません。取り繕った言葉より、正直な戸惑いのほうが相手の実感に近いことがあります。

タイミング別|知った直後・数週間後・命日の関わり方

そっと手向けられた小さな花
写真はイメージです

同じ「声をかける」でも、時期によって相手の状態は大きく違います。前掲の手引きでは、死別直後はショックと混乱で状況をよく覚えていないこともあるとされ、数週間から数か月かけて、感覚が麻痺した状態から強い悲しみへと移っていくと説明されています。時期に合わせて、力の抜き方を変えてみてください。

訃報を知った直後(数日)

長文は控え、短く済ませて構いません。この時期の相手は、火葬や供養の段取りなど、実務にも追われていることがあります。判断を求める質問(「お花はどこに送ればいい?」など)を重ねると負担になりやすいため、こちらで完結する形にするのが親切です。相手が段取りに困っている様子なら、流れをまとめた記事をそっと渡すだけでも助けになります。

数週間後〜数か月後

周囲が話題にしなくなり、相手は「もう終わったこと」として扱われ始めます。ここでかける一声は、直後の言葉よりも深く届くことがあります。「あれから、どうしていますか」「ふと思い出して連絡しました」。近況を聞き出そうとせず、こちらから短く投げかけるだけで十分です。

命日・誕生日・季節の節目

一周忌、誕生日、いつも一緒に出かけていた季節。波が戻ってくる日は、あらかじめ分かっていることがあります。その日に名前を呼んで、思い出をひとつだけ添える。「◯◯ちゃん、散歩ですれ違うといつも尻尾を振ってくれましたね」。亡くなった子の名前を口に出せる相手がいることは、それだけで救いになります。忘れられていないと伝わるからです。

送る前に、一度立ち止まりたい表現

静かな朝の光が差す風景
写真はイメージです

善意から出た言葉が、思わぬ形で相手を追い詰めることがあります。前掲の手引きが「好ましくない関わり」として挙げている例をもとに、送信ボタンを押す前に一度立ち止まりたい表現を整理しました。使ってはいけない禁句というより、相手の時間を早送りしてしまう言い方だとお考えください。

立ち止まりたい表現 届きにくくなる理由
時間が解決してくれるよ 手引きでも励ましの例として挙げられています。悲しみの終わりを他人が決める形になります
気持ち、よく分かるよ 安易に理解したと伝えることは、かえって傷つける可能性があるとされています
あなたなら乗り越えられる 乗り越えられない自分を責めさせてしまうことがあります
大往生だったね/天寿を全うしたね こちらの評価を含む言葉です。相手の受け止めとずれると、怒りにつながることがあります
また新しい子を迎えたら 亡くなった子が代わりのきく存在のように響きます。迎えるかどうかは相手が決めることです
泣かないで/元気を出して 感情を出すことを止める働きをします。無理に我慢させなくてよいとされています

もし言い過ぎたと感じても、あわてて取り消さなくて大丈夫です。「うまく言えなくてごめんなさい」と添え直せば、多くの場合それで伝わります。関係性ごとの言い回しをもう少し具体的に知りたい方は、犬を見送った方への例文をまとめた記事も用意しています。

犬を見送った人には、犬ならではの事情があります

犬と歩いていた散歩道を見つめる人
写真はイメージです

犬との暮らしには、犬ならではの日課と人間関係があります。それが一度になくなることが、悲しみの形をつくっています。言葉を選ぶ前に、相手が今どこに立っているのかを想像するだけでも、関わり方は変わります。

  • 毎日の散歩という時間が、ある日を境に丸ごと空く(朝夕の予定が消える喪失感)
  • 散歩道やドッグランで会っていた「犬友達」と、どんな顔で会えばいいか分からなくなる
  • 多頭飼いなら、残された子の食欲や元気にも気を配りながら悲しんでいる
  • 介護や通院が長かった場合、疲れ切っていることへの後ろめたさを抱えていることがある

特に、看取りまでの時間が長かった方は「もっとできたのではないか」という後悔を抱えがちです。手引きでも、これまでの療養生活をねぎらうことが好ましい関わりとして挙げられています。「あのとき、できることを本当によくやっていましたね」という一言は、評価ではなく、見ていましたという事実の共有です。散歩ですれ違ったときの様子、預かったときのしぐさ。あなたが知っている小さな場面があれば、それを伝えるだけで十分な意味を持ちます。

相手の様子が心配になったときは

相談窓口で静かに話を聞いてもらう様子
写真はイメージです

悲しむこと自体は、心のバランスを取り戻す過程で起こる自然な反応とされています。神奈川県の案内でも、悲嘆の反応として悲しみや怒り、集中力の低下、涙、不眠や食欲不振などが挙げられ、その表れ方は人それぞれだと説明されています。ですから、泣いている・元気がないというだけで「異常だ」と判断する必要はありません。

一方で、前掲の手引きでは、精神保健の専門家によるケアが望まれる場合として、悲嘆が長期化・慢性化している場合、悲嘆が複雑化している場合、うつ症状や自殺願望が強まっている場合、過度あるいは不適切な飲酒がみられる場合が挙げられています。こうした様子が続くようであれば、心療内科や精神科、心理カウンセラーなどの専門家に相談することをそっと提案するのが、周囲にできる範囲です。自治体によっては、こころの相談やグリーフケアの窓口を設けているところもあります。

診断や治療の判断は専門家の領域です。あなたが原因を突き止めたり、治そうとしたりする必要はありません。そして、支える側も疲れます。あなた自身がつらくなったときも、抱え込まずに誰かに話してください。

よくある質問

QLINEやメールで伝えても失礼になりませんか

A相手が電話に出られる状態とは限らないため、文字で伝える形は負担が少ない方法のひとつです。返信を必要としない一文にして、「返事は気にしないでください」と添えておくと、相手は開くだけで済みます。長文よりも、短く届くほうが読みやすいことが多くなっています。

Qお花やお供えを贈ってもよいでしょうか

A関係性によりますが、お返しの気遣いが生じない範囲にとどめるのが無難です。事前に「送っても大丈夫ですか」と一度確認すると、置き場所や住まいの事情に合わない品を避けられます。相手が受け取る余裕を優先し、こちらの気持ちを収めるための贈り物にならないよう気をつけたいところです。

Q自分も同じ経験があります。話してもいいですか

A相手が話し始めたときに、短く重ねる程度であれば支えになることがあります。ただし、話題の中心が自分の体験に移ってしまうと、相手は聞き役に回らざるを得ません。「私も同じでした」と一言添えたら、あとは相手の話に戻すくらいの配分が安心です。

Q何も言えないまま何か月も経ってしまいました

A遅すぎるということはありません。周囲が話題にしなくなった時期こそ、思い出してもらえたことがうれしく感じられる場合があります。「ずっと気になっていたのに、うまく言葉にできませんでした」と、遅れた理由ごと伝えて構いません。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状が続く場合は、心療内科・精神科などの専門家にご相談ください。

まとめ

愛犬を亡くした人にかける言葉が見つからないのは、あなたが冷たいからではなく、その悲しみを軽く扱いたくないからです。悲嘆は波のように行きつ戻りつするとされ、必要な時間は人それぞれ違います。だからこそ、急かさないこと、そばにいること、落ち着いた頃にもう一度声をかけること。この3つは、うまい言い回しよりも長く相手に残ります。言葉が浮かばなければ、浮かばないままでも構いません。あの子の名前を呼べる相手がいる、それだけで支えになることがあります。

大切な家族を見送ったあの方の毎日に、少しずつ静けさが戻りますように。

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