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ラブラドールの寿命|平均寿命のデータ・かかりやすい病気・シニア期の備え

散歩の帰り道で立ち止まる回数が増えた。階段の前でためらうようになった。白いものが混じった口もとを見ながら、ふと「この子はあと何年、そばにいてくれるのだろう」と考えてしまう——ラブラドール・レトリーバーと暮らす方の多くが、どこかの時点でその問いに行き当たります。

寿命を調べることは、終わりを数えることのようで、少しこわいかもしれません。けれど、平均や傾向を知っておくと、備えの時期が見えてきます。大型犬であるラブラドールは、小型犬より早くシニア期を迎えるとされています。7歳という年齢が持つ意味も、小さな犬とは違います。

この記事では、当メディア編集部が英国の大規模な獣医診療データベースをもとにした学術論文、日本のペット保険会社が公表している統計、そして環境省の資料を調べ、ラブラドールの寿命について出典のある数字だけを整理しました。あわせて、寿命に関わりやすいとされる病気、日々できること、そしてお別れが近づいたときのことまでを、静かにご案内します。

飼い主さん
ラブラドールが今年8歳になりました。まだ元気に走るのですが、大型犬は寿命が短いと聞いて不安になってしまって…。平均で何歳くらいなのでしょうか。
編集部
よく走ってくれているのですね。英国の大規模な調査では、ラブラドール・レトリーバーの寿命の中央値は12.0歳から13.1歳と報告されています。調査によって幅がありますので、後ほど一つずつ出典とあわせてご説明します。ただ、平均はあくまで集団の真ん中の値です。8歳のいまは、人でいえば還暦を少し過ぎたあたり。走れるうちに体重と関節を守ってあげることが、この先の時間にいちばん効いてくるといわれています。

一言でいうと、ラブラドール・レトリーバーの寿命は、英国の大規模調査で中央値12.0〜13.1歳、日本のペット保険データでは平均12.9歳と報告されています。大型犬としては短いほうではありませんが、7歳前後から高齢期に入るとされるため、備えは小型犬より早めに始めるのが現実的です。

ラブラドール・レトリーバーの平均寿命は何歳?

芝生の上で穏やかに伏せているシニア期の大型犬
写真はイメージです

ラブラドールの寿命は、世界でもっともよく調べられている犬種のひとつです。英国では、動物病院の診療記録を集めた大規模なデータベースをもとにした研究が複数発表されており、日本でもペット保険会社が契約データから犬種別の平均寿命を公表しています。数字は調査ごとに少しずつ違うので、どの調査の、いつの、どれだけの頭数のデータなのかまでセットで見ていきます。

英国の大規模調査では中央値12.0歳・13.1歳

ひとつめは、英国王立獣医大学(RVC)などが運営する診療記録データベース「VetCompass」を用いた研究です。McGreevyらが学術誌『Canine Genetics and Epidemiology』に2018年に発表した論文では、2013年に英国の一次診療施設を受診したラブラドール・レトリーバー33,320頭を対象に解析し、寿命(生存期間)の中央値は12.0歳(四分位範囲9.9〜13.8歳)と報告されています。

ふたつめは、動物福祉団体Dogs Trustの研究チーム(McMillanら)が学術誌『Scientific Reports』に2024年に発表した論文です。英国の584,734頭(うち死亡個体284,734頭)・155犬種という、さらに大きなデータセットを用いたもので、この研究ではラブラドール・レトリーバーの寿命の中央値は13.1歳とされています。同じ論文では体格別の中央値も示されており、小型犬12.7歳、中型犬12.5歳に対して大型犬は11.9歳でした。つまりラブラドールは、大型犬のなかでは長く生きているほうの犬種にあたります。

2つの研究で1年ほど差が出るのは、対象とした年代や集め方が違うためです。どちらかが誤っているわけではなく、「12歳台から13歳台」という幅で捉えるのが実態に近いと考えられます。

日本のペット保険データでは平均12.9歳

日本の数字としてよく参照されるのが、アニコム損害保険が契約データをもとにまとめている「家庭どうぶつ白書」です。同社が運営する「犬との暮らし大百科」では、『家庭どうぶつ白書2021』におけるラブラドール・レトリーバーの平均寿命は12.9歳、大型犬全体の平均は11.5歳と紹介されています。英国のデータと近い水準で、やはり大型犬の平均を上回っています。

なお犬全体の平均寿命は、一般社団法人ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査で年ごとに公表されており、超小型犬・小型犬のほうが長く、体が大きくなるほど短くなる傾向が繰り返し示されています。ラブラドールの数字を「短い」と感じたときは、比べる相手を小型犬ではなく大型犬にすると印象が変わります

調査・出典 発表年 対象・母数 ラブラドールの寿命 比較の目安
VetCompass(McGreevyら/Canine Genetics and Epidemiology) 2018年 英国・2013年に受診した33,320頭 中央値12.0歳(四分位範囲9.9〜13.8歳) 毛色で差あり(後述)
McMillanら(Scientific Reports) 2024年 英国・584,734頭(うち死亡284,734頭)/155犬種 中央値13.1歳 大型犬全体は11.9歳
アニコム『家庭どうぶつ白書2021』(同社サイトの紹介) 2021年 日本・ペット保険契約データ 平均12.9歳 大型犬全体は11.5歳

飼育環境や体格で差が出るとされる理由

同じ犬種でも、実際の寿命には大きなばらつきがあります。先の2018年の論文が示す四分位範囲(9.9〜13.8歳)は、4頭に1頭は10歳前に亡くなり、4頭に1頭は約14歳まで生きていることを意味します。平均の1点だけを見て安心したり落ち込んだりする必要はない、ということでもあります。

差を生む要因として研究で繰り返し挙げられるのが、体格と体重管理です。2024年の論文でも、大型の犬種ほど死に至るまでの時間が短いという傾向が統計的に示されています。またラブラドールに関しては、後述するように生涯にわたる食事量の管理と寿命の関係を調べた研究が知られており、日々の暮らし方が数字に反映されうることが示唆されています。

もっとも長生きしたラブラドールの記録

例外的な記録として知られているのが、英国リンカンシャーで暮らしていた黒毛のラブラドール「Adjutant(アジュタント)」です。1936年8月14日生まれ、1963年11月20日没で27歳(約27年3か月)まで生きたとされ、ギネスワールドレコーズの1970年版に歴代長寿犬として記載されていると伝えられています。

これは平均の倍以上にあたる、きわめて例外的な記録です。目標として掲げるものではありませんが、「この犬種の上限はここまで伸びうる」という事実として、静かに知っておいていただければと思います。

ラブラドールの年齢を人間に換算すると【早見表】

ラブラドールの年齢を人の年齢に換算した早見表。大型犬と小型・中型犬の対応を並べたもの
ラブラドールの年齢を人に換算した早見表(当メディア編集部作成)

人間の年齢に置き換えてみると、その子がいまどのあたりにいるのかが実感しやすくなります。換算の方法にはいくつかの考え方がありますが、ここでは環境省が公表している「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」に掲載されている年齢の対応表を使います。同ガイドラインでは、大型犬と、小型犬・中型犬および猫とで別の対応が示されています。

ラブラドールの年齢 人間に換算すると(大型犬) 参考:小型犬・中型犬
1歳 12歳 15歳
2歳 19歳 24歳
3歳 26歳 28歳
5歳 40歳 36歳
7歳 54歳 44歳
10歳 75歳 56歳
12歳 89歳 64歳
15歳 110歳 76歳

出典:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」掲載の年齢対応表より作成。

3歳を境に、小型犬より早く歳を重ねていく

表を眺めると、はじめの2年は小型犬・中型犬のほうが人間換算では年上です。ところが3歳でほぼ並び、5歳以降は大型犬のほうが一気に追い抜いていきます。10歳の時点では、小型犬の56歳に対して大型犬は75歳。同じ「10歳の犬」でも、体の中で起きていることはずいぶん違うと考えられています。

この差が、備えの時期のずれになります。小型犬なら10歳でようやくシニア用のフードを考えはじめる時期でも、ラブラドールでは介護や看取りの現実味が出てくる年齢です。「うちはまだ10歳だから」という感覚が、大型犬では半歩遅れになりやすい——ここが、この換算表を見ていただきたい理由です。

7歳から高齢期の入り口とされる

同じ環境省のガイドラインでは、高齢犬・高齢猫期の目安を約7歳から8歳以降としたうえで、「老化のスピードには個体差があるため、すべての犬や猫がこの時期から高齢犬というわけではありません」と補足されています。数字はあくまで区切りの目安であり、その子の様子が優先されるという前提です。

それでも7歳という区切りには意味があります。健診の間隔を見直す、フードを切り替えるかどうか獣医師に相談する、家のなかの段差を減らす——こうした支度を始める合図として使うと、換算表は不安をあおる道具ではなく、暮らしを整える道具になります。

ラブラドールがかかりやすい病気と、寿命に関わりやすい要因

動物病院で獣医師にやさしく体を診てもらっている犬
写真はイメージです

ここからは、ラブラドールに多いとされる病気を、出典のあるデータの範囲でご紹介します。いずれも「必ずかかる」ものではなく、注意しておくと早く気づける項目としてご覧ください。診断と治療は動物病院の領域ですので、気になる様子があれば自己判断で様子を見ずにご相談ください。

前述のVetCompassの2018年の論文では、無作為に抽出した2,074頭の診療記録を精査し、もっとも多かった疾患として外耳炎10.4%、過体重・肥満8.8%、変形性関節疾患5.5%が挙げられています。また記録が残っていた死亡例では、筋骨格系の異常が24.5%、腫瘍が21.1%と、この2つで4割以上を占めていました。

肥満・過体重|体重管理が寿命に関わるとされる

ラブラドールは太りやすい犬種として知られています。この「太りやすさ」には、しつけや飼い方だけでなく体質が関わっている可能性が指摘されました。ケンブリッジ大学のRaffanらが2016年に学術誌『Cell Metabolism』へ発表した研究では、食欲の調節に関わるPOMC遺伝子の一部が欠けた変異がラブラドールで見つかり、体重・体脂肪の多さ、そして食べ物への執着の強さと関連していたと報告されています。同じ変異は、近縁のフラットコーテッド・レトリーバー以外の犬種ではほとんど見られなかったとされています。

そして体重管理と寿命の関係については、ラブラドールを対象にした有名な長期研究があります。Kealyらが2002年に『Journal of the American Veterinary Medical Association』へ発表した論文で、7腹から生まれた48頭のラブラドールを腹ごとに性別と体重でペアにし、一方は自由に食べさせ、もう一方にはその75%の量(25%制限)を生後8週から生涯にわたって与えて比較したものです。その結果、寿命の中央値は自由に食べたグループが11.2年、食事量を制限したグループが13.0年と報告されました。約2年の差です。

この研究は限られた頭数の実験であり、そのまま「25%減らせば2年延びる」と言い切れるものではありません。それでも、適正体重を保つことが健康寿命に関わりうるという考え方の、有力な根拠のひとつとして今も引用されています。日々の食事量や体型の評価は、かかりつけの動物病院で定期的に確認していただくのが確実です。

関節の病気|股関節・肘の形成不全と変形性関節疾患

大型犬に多いとされる股関節形成不全・肘関節形成不全は、ラブラドールでも古くから注目されてきました。米国で整形外科的な検査結果を登録しているOFA(Orthopedic Foundation for Animals)のデータについて、Kirbergerが2017年に『Journal of the South African Veterinary Association』へ発表した論文のなかで、1974年から2015年に検査されたラブラドール・レトリーバーのうち、股関節形成不全と判定されたのが11.5%、肘関節形成不全が10.2%と紹介されています。なお同論文が南アフリカで調べた909頭では、股関節31%・肘19.8%と大きく高い値でした。検査を受ける集団の性質によって数字が変わる点には注意が必要です。

米国のラブラドール・レトリーバー・クラブは、繁殖にあたって股関節・肘関節の評価と眼科検査を推奨項目として挙げています。すでに一緒に暮らしている子については、床の滑りを減らす、急な方向転換や高い場所からの飛び降りを控える、体重を増やしすぎない、といった日常の工夫が負担の軽減につながるとされています。歩き方の左右差や、立ち上がりに時間がかかる様子が出てきたら、早めに診てもらってください。

目の病気|進行性網膜萎縮(PRA)

進行性網膜萎縮(PRA)は、網膜が少しずつ働きを失っていく遺伝性の眼の病気です。ラブラドール・レトリーバーは、この病気のうちprcd-PRAの遺伝子検査が推奨されている犬種のひとつとされ、前述のラブラドール・レトリーバー・クラブも繁殖前の検査項目に挙げています。同クラブは運動誘発性虚脱(EIC)などの遺伝子検査も推奨しています。

痛みを伴わずに進むため、気づいたときには視野が狭くなっていることがあります。暗い場所で物にぶつかる、段差でつまずくといった変化が見られたら、加齢のせいと決めつけず眼科的な診察を受けていただくのが安心です。視力が落ちても、家具の配置を変えずにおくだけで暮らしやすさは保たれます

胃拡張・胃捻転|大型犬に起こりうる急変

胃がガスで膨らみ、ねじれてしまう胃拡張・胃捻転(GDV)は、短時間で命に関わることがある状態です。英国の救急動物病院の記録を用いたO'Neillらの研究(2017年)では、77,088頭のうち492頭にGDVの診断があり、有病率は0.64%と報告されています。同研究では、雑種と比べてグレート・デーンやアキタなど大型・超大型の犬種でリスクが高いことが示されました。この研究で示された犬種別のオッズ比にラブラドールの値は挙げられていませんが、胸の深い大型犬に起こりやすい状態として一般に知られています。

食後にお腹が張って苦しそう、吐こうとして何も出ない、落ち着かずうろうろする——こうした様子が急に出たときは、朝を待たずに救急対応のできる動物病院へ連絡してください。夜間に相談できる病院の電話番号を、元気なうちに冷蔵庫に貼っておくことをおすすめします。

腫瘍|死因の2割を占めるとされる

前述のVetCompassの論文では、記録が残っていた死亡例の21.1%が腫瘍によるものでした。高齢の大型犬では珍しくない死因です。体表のしこり、急にやせる、食欲が続かない、跛行が治らないといった変化は、いずれも受診の理由になります。「様子を見る」の期限を1週間と決めておくと、判断が遅れにくくなります。

毛色と寿命|チョコレートの個体について報告された差

ラブラドールの寿命の話題でしばしば取り上げられるのが、毛色による差です。前述の2018年のVetCompassの論文(シドニー大学と英国王立獣医大学の共同研究)では、チョコレート色の個体の寿命の中央値は10.7歳、チョコレート以外は12.1歳で、統計的に意味のある差(P = 0.028)が認められたと報告されています。同じ研究では、チョコレートの個体で外耳炎の有病率が約2倍、化膿性外傷性皮膚炎(いわゆるホットスポット)が約4倍多かったことも示されています。

研究者らは、チョコレート色が劣性遺伝であるため、この毛色を狙った繁殖では遺伝子を持つ個体どうしを掛け合わせる機会が増え、遺伝的な多様性が狭まった可能性を考察しています。毛色そのものが病気を引き起こすと証明されたわけではありません。英国の一時点のデータにもとづく関連の報告であり、日本の個体にそのまま当てはまるとも限りません。

いま実際にチョコレートの子と暮らしている方に、この数字で不安になっていただきたくはありません。できることは毛色によって変わらず、体重を保ち、耳と皮膚の状態をこまめに見て、変化があれば早めに受診する——それだけです。

ラブラドールに長生きしてもらうためにできること

ラブラドールと長く暮らすためにできる四つのこと。体重管理・関節を守る・年2回の健診・変化を記録する
ラブラドールと長く暮らすためにできる四つのこと(当メディア編集部作成)

ここまで見てきた研究が示しているのは、寿命に効きそうな要素の多くが、日々の暮らしの側にあるということです。病気を防ぐ方法ではなく、リスクを少し小さくするための習慣として、上から順にご覧ください。

1適正体重を保つ(いちばん根拠のある一手)

Kealyらの研究で寿命の中央値に約2年の差が出たのは、食事量の管理でした。おやつを含めた1日の総量を把握し、体型(あばらに軽く触れるか、上から見て腰のくびれがあるか)を月に一度は確認します。減量が必要かどうかの判断と目標体重は、動物病院で相談してください。

2床と段差を整えて、関節を守る

フローリングで滑ると踏ん張りがきかず、関節に負担がかかります。寝床から水飲み場、玄関までの導線に滑り止めを敷くだけでも違います。ソファやベッドの昇り降りはスロープに置き換え、階段は若いうちから使わせない習慣にしておくと、シニア期の負担が変わります。

3運動は「量」より「続けられる強さ」で

ラブラドールは体力があり、飼い主が止めるまで走り続けてしまうことがあります。若いうちの過度な運動は関節への負担になりうるとされるため、短めの散歩を回数で分ける、水中運動を取り入れるなど、体重をかけすぎない形が向いています。暑い日の運動は控えめに。

47歳を過ぎたら健診の間隔を短くする

環境省のガイドラインでは高齢期の目安を約7〜8歳以降としています。年1回だった健診を年2回にし、血液検査に加えて画像検査を組み合わせると、腫瘍や関節の変化に早く気づける可能性が高まります。検査内容はかかりつけの獣医師とご相談ください。

5食後の様子と「いつもと違う」を書き残す

食欲、飲水量、呼吸、歩き方、お腹の張り。気づいた日付をメモしておくと、受診時に「いつから」を正確に伝えられます。胃拡張・胃捻転のように急を要する状態もあるため、食後に苦しそうな様子が出たときの連絡先を決めておくと安心です。

シニア期のラブラドールに現れる変化と、向き合い方

年老いた大型犬のそばに座って背中をなでる飼い主の手
写真はイメージです

人間換算で7歳=54歳、10歳=75歳。ラブラドールのシニア期は、思っているより早く、そして静かに始まります。ここでは、飼い主さんからよく聞かれる変化と、そのときにできることを整理します。

体に現れる変化

散歩の距離が短くなる、立ち上がりに時間がかかる、後ろ足がふらつく、呼びかけへの反応が鈍くなる、口もとや顔に白い毛が増える——大型犬では、こうした変化が7歳を過ぎたあたりから少しずつ現れることがあります。加齢による自然な変化と、治療できる病気の初期症状は、見た目では区別がつきません。「年のせい」と結論づける前に、一度診てもらう価値があります。

介護の負担は、体の大きさに比例する

大型犬の介護がほかと違うのは、力仕事になることです。30kgを超える体を支えて立たせる、車に乗せる、階段を下ろす。どれも一人では難しく、飼い主さんが腰を痛めてしまう例は珍しくありません。歩行補助ハーネスやスリング、滑り止めマット、高さのある食器台といった道具は、その子のためであると同時に、支える人の体を守るための道具でもあります。

そして、道具は必要になってから探すと間に合わないことがあります。サイズが合うか、装着したまま排泄できるかなど、確かめるべき点が意外に多いためです。まだ元気なうちに、どんな選択肢があるかだけ見ておくと、いざというときの負担が変わります。

気持ちの支度も、少しずつでかまいません

シニア期に入ると、「あと何年」という問いが頭を離れなくなることがあります。けれど、その問いに正確な答えは出せません。できるのは、今日の散歩を少しゆっくり歩くことと、写真を一枚多く撮っておくことくらいかもしれません。それで十分だと、私たちは考えています。

ラブラドールとのお別れが近づいたら

窓辺に置かれた写真立てのそばで静かに過ごす人
写真はイメージです

この章は、いま必要のない方は読み飛ばしていただいてかまいません。それでも書いておきたいのは、大型犬のお別れには体の大きさゆえの段取りがあり、知らずに直面すると混乱しやすいためです。

体重と体長を控えておく

ペットの火葬料金は、ほぼすべての事業者が体重帯で区切っています。またご自宅の前まで来てもらう訪問火葬は、車に積める大きさの炉を使うため、受け入れられる体重と体の長さに上限があります。火葬車の炉は対応体重ごとにラインナップが分かれており、ラブラドール・レトリーバー程度の体格は30kg対応クラスが目安として案内されていることが多く、それを超える場合は固定炉のある施設での火葬になることがあります。

体重だけでなく、鼻先からしっぽの付け根までの長さも測っておくと、問い合わせのときにそのまま伝えられます。体重が範囲内でも、体長で入らないことがあるためです。悲しみのただ中でメジャーを当てるのはつらい作業ですが、事前に数字を控えておくだけで、当日のやりとりはずいぶん短く済みます。

亡くなった直後にできること

すぐにできるのは、涼しい場所に静かに寝かせること、体を保冷すること、そして連絡先をひとつ決めることの3つです。大型犬は体が大きいぶん保冷剤も多く必要になりますので、保冷剤やドライアイスを腹部・首まわりに当て、タオルで包みます。段取りの全体像は、次の記事にまとめています。

そのあとの、長い時間について

ラブラドールは、家族の中心にいることの多い犬種です。玄関で待っていた気配がなくなったあとの静けさは、想像よりずっと大きいことがあります。涙が止まらない日が続いても、食欲が戻らなくても、それはおかしなことではありません。日常に戻れないほどの状態が長く続くときは、ひとりで抱え込まず、専門の相談窓口や医療機関を頼っていただければと思います。

ラブラドールの寿命についてよくある質問

Qラブラドールで15歳は長生きのほうですか?

Aはい、統計的にはかなり長いほうにあたります。英国の2018年の調査では寿命の中央値が12.0歳、四分位範囲の上側が13.8歳と報告されており、15歳はその範囲を超えています。2024年の大規模調査での中央値13.1歳と比べても長寿です。日々の積み重ねが実を結んだ結果と受けとめていただければと思います。

Qチョコレート色のラブラドールは本当に短命なのでしょうか?

A2018年に発表された英国のVetCompassの研究では、チョコレート色の個体の寿命の中央値が10.7歳、それ以外が12.1歳と報告されました。ただしこれは英国の一時点のデータにもとづく関連の報告で、毛色が直接の原因と証明されたものではありません。研究者は、この毛色を狙った繁殖によって遺伝的な多様性が狭まった可能性を考察しています。日常でできることは毛色によって変わらず、体重管理と、耳や皮膚の状態をこまめに見ることが基本になります。

Qラブラドールは何歳からシニア用のフードに変えるべきですか?

A環境省のガイドラインでは高齢期の目安を約7歳から8歳以降としていますが、同時に「老化のスピードには個体差がある」とも記されています。年齢だけで一律に切り替えるのではなく、体重や活動量、健診の結果をふまえてかかりつけの獣医師にご相談ください。切り替える場合も、1週間ほどかけて新しいフードの割合を少しずつ増やす方法がすすめられています。

Q大型犬の平均寿命が短いのはなぜですか?

A2024年の『Scientific Reports』の研究では、小型犬12.7歳、中型犬12.5歳に対し、大型犬は11.9歳と、体格が大きいほど死に至るまでの時間が短い傾向が示されています。急速な成長や体への負荷などが関係すると考えられていますが、決定的な仕組みはまだ解明されていません。なおラブラドールは、大型犬のなかでは平均を上回る犬種として報告されています。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。

まとめ

ラブラドール・レトリーバーの寿命は、英国の大規模な調査で中央値12.0歳(2018年・33,320頭)から13.1歳(2024年・584,734頭)、日本のペット保険データでは平均12.9歳と報告されています。大型犬全体の平均を上回る犬種ですが、人間に換算すると7歳で54歳、10歳で75歳。備えは小型犬より早く始めるのが現実的です

寿命に関わりやすいとされるのは、肥満と関節、そして腫瘍。なかでも食事量の管理については、48頭のラブラドールを生涯追った研究で中央値に約2年の差が出たと報告されています。体重を保ち、床の滑りを減らし、7歳を過ぎたら健診の間隔を短くする——特別なことではありませんが、根拠のある一手です。

数字は、残された時間を数えるためのものではなく、いまできることを見つけるためのものだと思います。あの子との時間が、一日でも多く穏やかでありますように。

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