もふもふとした厚い被毛に、ふてぶてしいような、それでいてどこか甘えたような表情。チャウチャウと暮らしていると、そのどっしりとした存在感に、家じゅうが静かに守られているような気持ちになる日があったのではないでしょうか。だからこそ、白いものが混じった口まわりや、ゆっくりになった歩みにふと気づいたとき、「この子とあと何年一緒にいられるのだろう」と、胸の奥が静かになる方もいらっしゃると思います。
この記事では、チャウチャウの寿命について、英国の大規模な統計調査や国内のペット保険会社が公開しているデータをもとに、出典と調査年・対象頭数まで示しながら整理しました。あわせて、人間の年齢に換算するとどのくらいなのか、この犬種で気をつけたいこと、そしてシニア期をどう支え、いつか来るお別れにどう向き合うかを、静かにお伝えします。今そばにいる方にも、見送ったばかりの方にも、少しだけ心がほどける時間になりますように。


一言でいうと、チャウチャウの寿命は、英国の大規模調査(対象940頭)で中央値12.1歳と報告されています。ただし調査ごとに対象の国も頭数も異なるため、10歳台前半を中心にいくらか幅のある数字として受け取るのが実際に近いといえます。
チャウチャウの平均寿命は何歳?
チャウチャウの寿命について、編集部が確認できたなかでもっとも母数と算出方法がはっきりしていたのは、英国の研究チームが2024年に学術誌『Scientific Reports』へ発表した論文「Longevity of companion dog breeds: those at risk from early death」(McMillanら)です。英国の犬584,734頭・155犬種を対象に犬種ごとの寿命を推計したもので、その犬種別一覧は動物福祉団体ドッグズ・トラストがPDFで公開しています。
この一覧によると、チャウ・チャウの寿命の中央値は12.1歳(95%信頼区間11.7〜12.5歳)。対象となったチャウ・チャウは940頭で、そのうち死亡が確認された個体は395頭です。同じ表では雑種(クロスブリード)が12.0歳とされているため、犬全体のなかで極端に短命という位置づけではありません。

一方で、日本国内の資料はやや違う数字を示しています。アニコム損害保険が運営する「犬との暮らし大百科」のチャウ・チャウのページでは、チャウ・チャウ単独の平均寿命は示されておらず、『家庭どうぶつ白書2021』の大型犬の平均寿命11.5歳を目安として紹介するにとどまっています。また、ペット保険を扱うアイペット損害保険の犬種解説では「およそ10〜13歳」とされていますが、こちらは算出のもとになった調査名や頭数の記載は確認できませんでした。
| 出典 | 対象 | 数値 | 母数・調査年 |
|---|---|---|---|
| McMillanら 2024年『Scientific Reports』(ドッグズ・トラスト公開の犬種別表) | チャウ・チャウ(英国) | 中央値12.1歳(95%信頼区間11.7〜12.5歳) | チャウ・チャウ940頭(うち死亡395頭)/研究全体は英国の犬584,734頭・155犬種 |
| アニコム損保「犬との暮らし大百科」 | 大型犬全体(日本) | 11.5歳 | 『家庭どうぶつ白書2021』の集計値。チャウ・チャウ単独の数値は非掲載 |
| アイペット損保 犬種解説 | チャウ・チャウ | およそ10〜13歳 | 調査名・母数の記載なし |
| ペットフード協会「令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査」 | 犬全体/中・大型犬(日本) | 犬全体14.90歳/中・大型犬14.37歳 | 過去10年間に一般世帯で飼育された犬が算出のもと |
| アニコム『家庭どうぶつ白書2025』 | 犬全体(日本) | 14.1歳 | 2008年4月〜2024年3月に保険契約を開始した犬。年間450万件超の保険金請求データが基盤 |
数字が食い違うこと自体が、この犬種の寿命を考えるうえで大切な情報です。12.1歳という数値は「英国の940頭を対象にした中央値」であり、日本のチャウチャウを対象にした平均値ではありません。また、犬全体の平均寿命として日本で示される14歳台という数字は、小型犬が飼育頭数の多くを占める国内の事情を反映したものです。国も、母数も、平均か中央値かも異なる数字を並べているのだと知ったうえで、「おおむね10歳台前半が一つの目安」と受け取るのが誠実だと考えます。
飼育環境による差
同じ犬種でも、暮らし方によって健康リスクは変わります。英国王立獣医大学(RVC)の研究チームが2020年に『Scientific Reports』へ発表した熱中症(熱関連疾患)に関する論文では、英国の一次診療を受けた犬905,543頭のデータをもとに、体重が同じ犬種・性別の平均より重いこと、2歳を超えていること、短頭種であることが、それぞれ熱中症のリスク要因として挙げられています。体重管理と暑さ対策は、チャウチャウにとって環境面でとくに意識したい点だといえます。
なお「室内飼いか屋外飼いか」「去勢・避妊の有無」がチャウ・チャウの寿命をどれだけ左右するかを、犬種単位で数値化した信頼できる調査は、編集部が調べた範囲では見つけられませんでした。断定できない部分は、断定しないままお伝えします。
長生きの最高齢記録
チャウ・チャウの最高齢として公的機関が認定した記録は、編集部が確認できた範囲では見つかりませんでした。ギネス世界記録が認定している長寿犬の記録はいずれも別の犬種のもので、犬種別の最高齢を網羅的に認定している公的な仕組みは確認できていません。
ただ、先ほどの英国の統計で中央値が12.1歳ということは、その年齢より長く生きた個体が半数いるということでもあります。15歳を超えて過ごしたという話がインターネット上で紹介されることもありますが、出典の確認が取れないものは、ここでは数字として扱いません。
チャウチャウの年齢を人間に換算すると【早見表】
犬の年齢を人間の年齢に置き換える方法は、環境省のパンフレット「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」に掲載されている「犬と人間、猫と人間の年齢のめやす」が、国内では広く参照されています。獣医師監修のペット保険会社の解説などでも、同ガイドラインを出典として次の式が紹介されています。
| 区分 | 換算式 | 考え方 |
|---|---|---|
| 大型犬 | 12+(犬の年齢−1)×7 | 1歳で人間の約12歳。以降は1年ごとに約7歳ずつ |
| 小型犬・中型犬 | 24+(犬の年齢−2)×4 | 2歳で人間の約24歳。以降は1年ごとに約4歳ずつ |
ここで一つ、正直にお伝えしておきたいことがあります。チャウチャウの体重はおよそ20〜32kg程度とされ(アイペット損保の犬種解説による)、中型犬と大型犬のちょうど境目にあたるため、どちらの式を使うかで換算値がかなり変わります。そこで下の早見表では、両方の式で計算した値を並べました。実際の老化のスピードは体格や個体差に左右されるため、二つの数字のあいだのどこかにいる、というくらいの受け止め方が現実的です。
| チャウチャウの年齢 | 大型犬の式 | 中型犬の式 |
|---|---|---|
| 1歳 | 約12歳 | — |
| 2歳 | 約19歳 | 約24歳 |
| 3歳 | 約26歳 | 約28歳 |
| 5歳 | 約40歳 | 約36歳 |
| 7歳 | 約54歳 | 約44歳 |
| 9歳 | 約68歳 | 約52歳 |
| 10歳 | 約75歳 | 約56歳 |
| 12歳 | 約89歳 | 約64歳 |
| 14歳 | 約103歳 | 約72歳 |

なお環境省のガイドライン自身も、この年齢のめやすについて「品種等によってもこの関係は違ってきます」と注記しています。同じガイドラインでは高齢期を「約7歳から8歳以降の時期」としつつ、「老化のスピードには個体差があるため、すべての犬や猫がこの時期から高齢犬というわけではありません」とも記されています。あくまで目安として使ってください。
チャウチャウがかかりやすい病気・寿命を縮めやすい要因
ここからは、チャウチャウで名前が挙がることの多い病気と、暮らしのなかで気をつけたい要因を整理します。いずれも「必ず起きる」ものではありませんし、診断や治療の判断はできません。気になる様子があるときは、早めにかかりつけの動物病院にご相談ください。

とくに注意したい病気
アニコム損保「犬との暮らし大百科」のチャウ・チャウのページでは、気をつけたい病気として短頭種気道症候群、軟口蓋過長症、股関節形成不全などの関節疾患、緑内障、アロペシアXが挙げられています。アイペット損保の犬種解説では、皮膚炎、甲状腺機能低下症、股関節形成不全、緑内障、前十字靭帯断裂、肥満が紹介されています。
また眼瞼内反症(まぶたが内側に巻き込む状態)については、複数の動物病院や獣医師監修の解説で、チャウ・チャウが先天性の好発犬種の一つとして挙げられています。まぶたの内側に巻き込まれた毛が眼球を刺激し、充血や涙、目をしょぼつかせるといった様子につながることがあるとされます。皮膚のたるみが多い犬種や短頭種に見られやすいと説明されており、チャウチャウの顔立ちとも関わりの深い症状といえます。
| 名称 | 見られることのある様子 | 気づいたときの目安 |
|---|---|---|
| 眼瞼内反症 | 目の充血、涙が多い、目をしょぼつかせる、しきりに気にする | 目の症状は進行すると視力に関わることがあるため、早めに受診 |
| 股関節形成不全などの関節疾患 | 立ち上がりにくい、腰を振るような歩き方、散歩を嫌がる | 歩き方の変化が続くときは相談を |
| 皮膚炎 | かゆがる、赤み、たるみの内側のにおい、脱毛 | 被毛が厚く発見が遅れやすいため、日々の触診で確認 |
| 緑内障 | 目の白濁や充血、痛がる様子、瞳孔の変化 | 急な変化は早急な受診が必要とされる |
| 甲状腺機能低下症 | 元気がない、太りやすい、毛づやの低下 | 加齢のせいと思われがちなので健診で確認 |
| 短頭種気道症候群・軟口蓋過長症 | いびき、呼吸音が大きい、暑さや運動での息切れ | 呼吸の変化は暑さの時期にとくに注意 |
寿命を縮めやすい要因
チャウチャウにとって、日本の夏はとりわけ厳しい季節です。英国王立獣医大学の研究チームが2020年に『Scientific Reports』で発表した論文「Incidence and risk factors for heat-related illness (heatstroke) in UK dogs under primary veterinary care in 2016」では、2016年に英国で一次診療を受けた犬905,543頭のデータが分析されました。
この研究で、チャウ・チャウはラブラドール・レトリーバーと比べた熱中症のオッズ比が16.61(95%信頼区間6.21〜44.44)と、対象となった犬種のなかでもっとも高い値を示しています。論文では、被毛が非常に厚い犬種であることが要因として言及される一方、対象となった頭数が少ないため信頼区間が非常に広い、つまり推定の幅が大きいことも明記されています。研究全体での熱中症の発生率は0.04%(95%信頼区間0.04〜0.05%)、発症した場合の致死率は14.18%(同11.08〜17.96%)と報告されています。
数値の幅は大きいものの、「厚いダブルコートを持つチャウチャウは暑さに弱い」という一般的な説明が、統計の面からも裏づけられていると読み取れます。アニコム損保のチャウ・チャウの解説でも「寒さに強く暑さには弱い」とされ、アイペット損保の解説では室温を22〜24度程度に保つことが勧められています。
チャウチャウに長生きしてもらうためにできること
特別なことをする必要はありません。この犬種の体質に合わせて、毎日の暮らしを少しずつ整えていくことが、結果として穏やかな時間を延ばすことにつながります。以下は治療や予防を保証するものではなく、公開されている情報をもとにした生活面の工夫です。
1夏の暑さを最優先で避ける
熱中症のリスクが高いことが統計でも示されている犬種です。エアコンで室温を一定に保ち、散歩は日中を避けて早朝や日没後に。アスファルトの照り返しにも気を配りたいところです。
2適正体重を保つ
体重が犬種の平均より重いことは、熱中症のリスク要因として英国の研究でも挙げられていました。関節への負担という点でも、被毛に隠れて体型が見えにくいぶん、定期的に体重を量る習慣が助けになります。
3被毛と皮膚をこまめに確認する
厚いダブルコートとたるんだ皮膚は、赤みやにおいといった変化を隠してしまいます。ブラッシングのついでに、たるみの内側や指の間まで指で触れて確かめておくと、小さな異変に早く気づけます。
4目のまわりを毎日見る
眼瞼内反症の好発犬種とされています。涙の量、白目の充血、目をしょぼつかせていないか。顔まわりの毛に隠れやすい部分なので、意識して見る時間をつくってください。
5歩き方の変化に気づく
立ち上がりにくそうにする、階段を避ける、散歩の途中で座り込む。関節の不調は少しずつ現れます。「年のせい」と片づけずに、続くようなら相談してみてください。
6健診の間隔を年齢で見直す
成犬期は年1回、7歳前後からは半年に1回を一つの目安に。チャウチャウは表情が読み取りにくく、痛みを我慢しやすいともいわれます。数値で確かめられる機会を持っておくと安心です。

シニア期のチャウチャウの変化と向き合い方
環境省のガイドラインでは、高齢期の入り口をおおむね7歳から8歳以降としています。ただし同じ資料が「老化のスピードには個体差がある」と添えているとおり、実際に変化が見え始める時期はその子によってさまざまです。

シニア期に入ると、眠る時間が長くなる、散歩のペースが落ちる、呼びかけへの反応が鈍くなる、被毛の質が変わる、といった変化が少しずつ現れることがあります。大切なのは、その一つひとつを「もう年だから」で終わらせず、いったんは体の不調の可能性として考えてみることです。甲状腺機能低下症のように、加齢と見分けがつきにくい病気もあります。
暮らしの側で整えられることもあります。滑りやすい床にマットを敷く、水飲み場を増やす、段差を減らす、寝床を静かで温度の安定した場所に移す。どれも小さなことですが、体がしんどくなってきた子にとっては、毎日の負担がずいぶん違ってきます。
そして、飼い主さんご自身のことも忘れないでください。介護の時間が長くなるほど、眠れない夜も、うまくいかない自分を責めてしまう日も出てきます。誰かに話す、獣医師に相談する、少し休む。そのどれもが、この子のための時間を続けるために必要なことです。
チャウチャウとのお別れが近づいたら
食が細くなる、立ち上がれない時間が増える、呼吸のリズムが変わる。そうした様子が重なってくると、心のどこかで「そのとき」が近いことに気づきながら、認めたくない気持ちとのあいだで揺れる日が続くのだと思います。

この時期にできることは、そう多くはありません。それでも、痛みや苦しさをやわらげる方法についてかかりつけの獣医師と話しておくこと、家族のあいだで「どこまでの治療を望むか」を言葉にしておくこと、そして見送ったあとの流れを大まかに知っておくことは、いざというときのご自身を確かに支えてくれます。
チャウチャウは体格のある犬種です。安置の方法や火葬の形式によっては、体重帯で費用や手順が変わることもあります。慌ただしいなかで初めて調べることにならないよう、落ち着いているうちに一度だけ目を通しておくと、当日の心の余裕がまったく違ってきます。
そして、見送ったあとに訪れる気持ちの揺れは、けっして弱さではありません。ごはんの器を片づけられない日も、名前を呼びそうになる朝も、多くの飼い主さんが同じように通ってきた道です。
よくある質問
※本記事は一般的な情報提供が目的で、診断・治療の代わりではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。
まとめ
チャウチャウの寿命は、英国の940頭を対象にした2024年の研究で中央値12.1歳(95%信頼区間11.7〜12.5歳)と報告されています。国内の資料では大型犬全体の11.5歳や、およそ10〜13歳という紹介もあり、対象も算出方法も違う数字が並んでいるのが実際のところです。数字はあくまで、暮らしを整えるための手がかりにすぎません。
厚い被毛ゆえの暑さへの弱さ、まぶたや関節、皮膚のこと。この犬種ならではの気をつけたい点を知っておくことは、そのまま、この子と穏やかに過ごせる日を一日でも増やす手立てになります。そして、いつかお別れの日が来たとき、その日々のすべてが、あなたを支えてくれるはずです。
ふわふわの背中に触れられる今日という日が、できるだけ長く、静かに続きますように。