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犬のてんかんの原因は?特発性・症候性の違いと発作時の対応・受診目安

ある日突然、愛犬が体を硬直させて倒れ、手足をばたつかせる——。はじめて犬のてんかん発作を目にしたとき、多くの飼い主さんが「このまま死んでしまうのでは」と血の気が引くような思いをされます。何が起きているのか分からず、どうしてあげればいいのかも分からない。その不安と怖さは、経験した方にしか分からないものかもしれません。

この記事では、犬のてんかんがなぜ起こるのか(原因のタイプ)、発作が起きたときにやること・やってはいけないこと、動物病院を受診する目安、そして日々どう付き合っていくかを、獣医師監修の情報をもとに静かに整理しました。診断や治療の判断は動物病院で行うものですが、正しい知識を持っておくことは、いざという時にこの子を守る力になります。

飼い主さん
先日、うちの子が急に倒れて全身をけいれんさせて……。数分でおさまったのですが、あれは何だったんでしょうか。原因も分からず、こわくて。
編集部
それはさぞ驚かれたことと思います。犬のけいれん発作は「てんかん」が原因のことがあり、その多くは脳に明らかな異常が見つからないタイプとされています。原因のタイプ、発作時の対応、受診の目安を、順にやさしく見ていきましょう。まずは記録を取っておくことがとても大切です。

一言でいうと、犬のてんかんは脳の神経が一時的に過剰興奮して起こる発作で、原因が特定できない「特発性」と、脳の病気などが背景にある「症候性(構造的)」に大きく分けられます。発作そのものへの正しい対応と、早めの受診が、この子を守るうえで何より大切になります。

犬のてんかんとは?発作が起こるしくみ

てんかんとは、脳内の神経細胞(ニューロン)が一時的に異常なほど過剰に興奮することで、けいれんや意識障害などの発作を繰り返す状態を指すとされています。動物病院の情報によると、犬のてんかんはおよそ100頭に1〜5頭の割合で見られると言われ、犬の神経疾患のなかでも比較的多いものとされています。

穏やかに眠る犬のイメージ
写真はイメージです

「発作」と「てんかん」は同じではない

混同されがちですが、「発作(けいれん)」は症状の名前で、「てんかん」はその原因のひとつです。犬がけいれんを起こす背景には、てんかん以外にも中毒や低血糖、心臓や代謝の異常などさまざまな可能性があるとされます。そのため、けいれんを起こしたからといってすぐに「てんかんだ」と自己判断せず、原因を動物病院で調べてもらうことが大切です。

発作の現れ方はさまざま

発作というと全身が硬直してけいれんする姿を思い浮かべがちですが、一般的には次のような幅があるとされています。体の一部だけがピクピクする、口をクチャクチャさせる、宙をかむような動きをする、急にそわそわして落ち着かなくなる——こうした軽い症状もてんかん発作の一種のことがあります。「うちの子はけいれんしていないから大丈夫」とは限らない、という点は知っておきたいところです。

犬のてんかんの主な原因【特発性・症候性・反応性】

犬のてんかん(けいれん発作)の原因は、大きく3つのタイプに分けて考えられるとされています。どのタイプかによって、必要な検査や向き合い方が変わってきます。ここでは獣医師監修メディアの情報をもとに整理します。

やわらかな光の中で穏やかに過ごす様子のイメージ
写真はイメージです

特発性てんかん(原因が特定できないタイプ)

脳を精密に検査しても明らかな異常が見つからないてんかんを「特発性てんかん」と呼ぶとされています。犬のてんかんのなかでも多くを占めるとされ、遺伝的な要因が関係していると考えられています。主に生後半年〜6歳くらいまでの若齢〜中年期に初めて発作が現れることが多いと言われます。原因が「分からない」と聞くと不安になりますが、投薬でコントロールしながら付き合っていける子も多いとされています。

症候性てんかん(構造的てんかん・脳に原因があるタイプ)

脳腫瘍、脳炎、水頭症、脳梗塞・脳出血、頭部の外傷など、脳そのものの構造的な異常が背景にあるタイプを「症候性てんかん」「構造的てんかん」と呼ぶとされています。とくに中高齢(一般に6〜7歳以降)で初めて発作が出た場合は、こうした脳の病気が隠れている可能性も考えられるため、MRIなどの精密検査がすすめられることがあります。

反応性発作(脳以外の異常が引き金になるもの)

脳自体には異常がなく、低血糖・肝不全・腎不全・電解質(ミネラル)の異常、中毒(チョコレート、キシリトール、殺鼠剤など)といった体の別の不調が引き金となって起こる発作を「反応性発作」と呼ぶとされています。厳密にはてんかんとは区別されますが、けいれんという見た目は似ています。誤食に心当たりがある場合などは、必ず動物病院に伝えてください。

原因のタイプを見分けるには、血液検査・神経学的検査・画像検査などが必要になります。見た目だけで飼い主さんが判断することは難しいため、「どのタイプか」の診断は動物病院にゆだねましょう。

愛犬が発作を起こしたときにやること・やってはいけないこと

発作の瞬間は、飼い主さんもパニックになりがちです。ですが、この場面で最も大切なのは「何かをしてあげること」より「安全を確保して、静かに見守り、記録すること」だとされています。まずは落ち着いて、次のことを思い出してください。図解にもまとめました。

犬のてんかん発作でやること・やってはいけないことを対比した図解
犬のてんかん発作時の対応(当メディア編集部作成)

発作時にやること

  • 周囲の安全を確保する……階段や家具の角、水回りなど、ぶつかると危険なものを遠ざけます。頭を床に打ちつけそうなときは、そっと薄いタオルやクッションを頭の下に差し入れます。
  • 時間を計り、動画を撮る……発作が始まった時刻と続いた長さを記録します。可能ならスマホで動画を撮っておくと、診察時に獣医師が状態を把握する大きな手がかりになります。
  • 暗く静かな環境にする……照明を落とし、テレビなどの音を消して、刺激の少ない状態にします。
  • そばで静かに見守る……多くの発作は数十秒〜数分でおさまるとされています。おさまるまで、落ち着いて見守ります。

発作時にやってはいけないこと

よかれと思ってした行動が、かえって危険になることがあります。次のことは避けてください。

  • 口の中に手や物を入れない……「舌を飲み込むのを防ぐため」という俗説がありますが、犬が発作で舌を飲み込むことはないとされ、無理に手を入れると強く噛まれてけがをする危険があります。
  • 体を強く押さえつけない……けいれんを止めようと力ずくで押さえると、骨折や筋肉・関節の損傷につながるおそれがあります。
  • 大声で名前を呼び続けたり、体を揺すったりしない……発作中の犬には呼びかけが届いておらず、刺激がかえって発作を長引かせることがあるとされます。
  • 水をかけない・飲ませない……意識がない状態での水は、誤嚥(気管に入ること)の原因になります。

動物病院を受診する目安|すぐに連絡すべきサイン

てんかんの疑いがある発作を一度でも起こしたら、まずは落ち着いたあとに、かかりつけの動物病院へ相談することがすすめられています。そのうえで、次のような状態は「緊急」とされ、時間を問わずすぐに動物病院へ連絡すべきサインだとされています。

飼い主の手にそっと寄り添う犬の前足のイメージ
写真はイメージです

すぐに動物病院へ連絡すべき緊急のサイン

  • 1回の発作が5分以上続く(重積状態)……発作が長く続くと脳に大きな負担がかかるとされ、命に関わる可能性があります。
  • 意識が戻らないうちに次の発作が起こる……発作が連続する状態も重積とされ、緊急対応が必要です。
  • 24時間以内に2回以上の発作を繰り返す(群発発作)……短期間に何度も起こる状態も、脳がダメージを受けるリスクが高いとされます。
  • 初めての発作である/誤食・中毒の心当たりがある/発作後もぐったりして様子がおかしい。
これらに当てはまる場合は、夜間や休日であっても迷わず動物病院(または夜間救急動物病院)に電話し、指示を仰いでください。落ち着いている発作でも、繰り返すようであれば早めの受診が安心です。

受診のときに伝えたいこと

診察では、発作の様子を正確に伝えることが診断の助けになります。発作が起きた日時、続いた時間、体のどこがどう動いていたか、意識はあったか、発作後の様子、頻度(前回はいつか)などをメモしておくと役立ちます。撮っておいた動画があれば、ぜひ見せてください。

てんかんと診断されたあとの付き合い方

てんかんと診断されると気持ちが沈むかもしれませんが、適切な管理によって、発作の回数を減らしながら穏やかに暮らしている子はたくさんいるとされています。ここでは、日々の暮らしで意識したい付き合い方のポイントを整理します。治療方針は必ず獣医師と相談して決めてください。

愛犬とおだやかに過ごす飼い主のイメージ
写真はイメージです

1発作の記録(発作日誌)をつける

発作が起きた日時・長さ・様子を、カレンダーやノート、アプリなどに記録し続けます。この記録が、投薬の効果判定や治療方針の見直しにおいて何より重要な情報になるとされています。

2お薬は自己判断でやめない・量を変えない

抗てんかん薬が処方された場合、急に中断したり量を変えたりすると、かえって発作が悪化することがあるとされています。飲み忘れや副作用が気になるときも、まず獣医師に相談しましょう。

3発作の引き金になりやすい要因を減らす

強いストレス、睡眠不足、極端な疲労、体調の変化などが引き金になることがあるとされています。生活リズムを整え、できるだけ穏やかで安定した環境を保つことが、この子の負担を減らします。

4定期的に通院し、状態を共有する

発作の頻度や体調の変化を定期的に獣医師と共有し、必要に応じて検査やお薬の調整をしてもらいます。「気になること」を溜め込まず、その都度相談できる関係が支えになります。

飼い主さんの心のケアも大切に

愛犬の発作を見守るのは、飼い主さんにとっても大きな精神的負担を伴います。「次はいつ起こるのか」という不安を抱えながらの毎日は、決して軽いものではありません。けれど、あなたが落ち着いて対応し、記録を取り、獣医師と連携してくれること——それ自体が、この子にとって何よりの支えになっています。

犬に寄り添い見守る飼い主のイメージ
写真はイメージです

一人で抱え込まず、家族で対応を分担したり、かかりつけの獣医師に不安を打ち明けたりしてください。同じ病気と向き合う飼い主さんは決して少なくありません。この子との時間を、必要以上に恐れず、けれど油断せず。落ち着いた気持ちで寄り添っていけるよう、まずは正しい知識を持っておくことが、その第一歩になります。

病気と向き合う日々のなかで、いつか訪れるお別れのことが、ふと頭をよぎる瞬間もあるかもしれません。今はまだ考えたくないことですが、もしものときの流れをそっと知っておくことは、いざという時に慌てず、この子との時間を落ち着いて過ごすための静かな備えになります。

そして、もし深い悲しみに包まれる日が来ても、それはこの子を深く愛した証です。悲しみとの向き合い方に、正しいひとつの形はありません。

よくある質問

Q犬のてんかんは治りますか?

A特発性てんかんの場合、原因を根本から取り除くのは難しいとされますが、抗てんかん薬などによって発作の回数や程度をコントロールしながら付き合っていくことは可能とされています。「完治」より「うまく付き合う」という考え方が一般的です。症候性てんかんは、背景にある病気の治療によって変わってくるため、診断が重要になります。治療方針は動物病院にご相談ください。

Qてんかん発作は命に関わりますか?

A短時間でおさまる単発の発作であれば、直接命に関わることは多くないとされています。ただし、5分以上続く発作(重積)や、短時間に繰り返す群発発作は脳に大きな負担がかかり、命に関わる可能性があるとされます。こうした場合はすぐに動物病院へ連絡してください。

Q発作を予防する方法はありますか?

Aてんかんそのものを完全に予防する方法は確立されていないとされますが、強いストレスや睡眠不足、疲労といった引き金になりやすい要因を減らし、生活リズムを整えることが発作を起こしにくくすることにつながると言われています。処方されたお薬をきちんと続けることも大切です。

Qどんな犬種でもてんかんになりますか?

Aどんな犬にも起こり得るとされますが、アニコム損害保険の情報によると、イタリアン・グレーハウンド、ボストン・テリア、ペキニーズ、シベリアン・ハスキー、アメリカン・コッカー・スパニエルなどで比較的多く見られるとされています。とはいえ犬種にかかわらず起こる可能性はあるため、発作が見られたら受診しましょう。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。てんかんの原因のタイプや必要な検査・治療は、診察を受けた獣医師によって判断されます。症状や対応には個体差があり、気になる症状がある場合や発作が見られた場合は、動物病院にご相談ください。掲載内容は執筆時点(2026年7月)で確認できた各情報源の目安です。

まとめ

犬のてんかんは、脳の神経が一時的に過剰興奮して発作を繰り返す状態で、原因が特定できない「特発性」と、脳の病気などが背景にある「症候性(構造的)」、そして脳以外の不調が引き金になる「反応性発作」に分けて考えられるとされています。発作が起きたときは、無理に手を出すよりも、周囲の安全を確保し、時間を計って動画を撮り、静かに見守ることが大切です。1回の発作が5分以上続くとき、意識が戻らないうちに次の発作が起こるとき、24時間以内に繰り返すときは、迷わず動物病院へ連絡してください。

原因が分からないと聞くと不安になりますが、正しい知識を持ち、記録をつけ、獣医師と連携しながら向き合えば、発作とうまく付き合いながら穏やかな毎日を重ねている子はたくさんいます。あなたのその落ち着いた寄り添いが、この子にとって何よりの安心になります。愛犬が、少しでも穏やかな時間を長く過ごせますように。

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