親しい友人やご親族から「うちの子が旅立ちました」と知らせを受けたとき、まず胸に浮かぶのは「なんと言葉をかけよう」という思いだと思います。そのすぐあとに、「お金を包んだほうがいいのだろうか」「かえって気を遣わせないだろうか」と迷って、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。人の葬儀であれば香典という決まった形がありますが、ペットの見送りには、そこまではっきりした作法がまだありません。だからこそ迷いますし、迷うこと自体が、相手を大切に思っている証だとも思います。この記事では、ペット葬儀の香典についてペット葬儀社が公式サイトで案内している内容を編集部が調べ、包む場合の表書きや金額の考え方、現金以外の形、そして受け取る側の気持ちまでを静かに整理しました。正解を押しつけるためではなく、あなたが落ち着いて選べるようにするための材料としてお読みください。


一言でいうと、ペットの葬儀に香典を包む習慣は定着しておらず、多くのペット葬儀社は「不要」と案内しています。それでも気持ちを形にしたいときは、現金より花・お菓子・言葉のほうが相手の負担になりにくく、選ばれやすい形です。
ペットの葬儀に香典は必要? 多くの事業者が「不要」と案内する理由
結論から申し上げると、ペットの葬儀に香典を持参する習慣は、執筆時点(2026年8月)では一般的なものとして定着していません。編集部がペット葬儀を手がける事業者の公式サイトを調べたところ、イオンライフが運営する「イオンのペット葬」、ペトリィ(小さな家族のセレモニー)、みんなのペット葬儀屋さんなど、複数の事業者がコラムやよくある質問のなかで「ペットの葬儀に香典を用意する必要はない」と案内していました。特定の一社の見解ではなく、業界のなかで共通して案内されている考え方だと言えます。

理由1:ペットを葬儀で見送る習慣そのものが新しい
人の葬儀における香典は、地域や家同士の相互扶助として長い時間をかけて形づくられてきたものです。一方、ペットを火葬し、式を営んで見送る文化は比較的近年に広がったもので、香典のような相互のやりとりまでを含む型は、まだできあがっていません。前述のイオンのペット葬も、香典が不要とされる背景として、ペットの火葬や葬儀の習慣自体が新しいものである点を挙げています。作法が定まっていないということは、包まなくても失礼にあたらないということでもあります。
理由2:受け取った側に「お返し」の気遣いが生まれてしまう
もうひとつ、複数の事業者が共通して挙げているのが、香典を受け取った飼い主が香典返しを考えなければならなくなる、という理由です。みんなのペット葬儀屋さんは、香典を用意しなくてよい理由として、受け取った飼い主が返礼を考える必要が生じ、心苦しい思いをさせてしまう点を挙げています。ペットを亡くしたばかりの数日間は、火葬の手配や役所の手続き(犬の場合は死亡届の提出など)が重なり、心身ともに余裕がありません。そこへ返礼という宿題を渡してしまうことは、贈る側の本意ではないはずです。
理由3:ペットの葬儀は「ごく身内だけ」で営まれることが多い
ペットの火葬・葬儀は、家族だけ、あるいは家族と本当に近しい数名だけで静かに行われるケースが多く、そもそも参列を伴わない見送りも珍しくありません。訪問火葬であれば自宅前で数十分から一時間ほどで終えることもあり、人の葬儀のように「受付があり、そこで香典を渡す」場面が用意されていないことも多いのです。参列を打診されていない場合は、金銭も品物も持参せず、言葉だけを届けるのが最も自然だと考えてよいと思います。
「お香典は辞退します」と事前に伝えられている場合は、その意思をそのまま尊重してください。重ねてお渡しすることは、かえって相手を困らせてしまいます。
包む・包まないをどう決めるか——関係性と「相手の負担」で考える
とはいえ、「習慣がない」と言われても、何もしないままでは気持ちが収まらないこともあると思います。そんなときは、作法の正解を探すのではなく、相手との関係性と、相手に残る負担の大きさという二つの軸で考えると決めやすくなります。ペットの見送りに関しては、贈る形は大きく分けて「現金を包む」「花やお菓子を贈る」「言葉だけを届ける」の三つです。

下の表は、決まりごとではなく、各社の案内と一般的な考え方を編集部が整理したものです。ご自身と相手の関係に近い行を目安として見ていただければと思います。
| 相手との関係 | 現金を包むか | 選ばれやすい形 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 家族・同居の親族 | 包まないことが多い | 火葬費用の一部を分担する | 見送りの当事者同士。形式より実務の分担で |
| 家族ぐるみの親しい友人 | 包む場合がある | 現金または花+メッセージ | その子を知っている間柄なら気持ちが伝わりやすい |
| ふだんの友人・ご近所 | 包まないことが多い | 小さな花やお菓子 | 相手が返礼を考えずに済む額・大きさに |
| 職場の同僚・仕事の関係先 | 包まない | 言葉だけ、または連名の花 | 踏み込みすぎない距離感を保つ |
| SNSでのつながり | 包まない | 短いメッセージ | 住所を尋ねること自体が負担になる場合も |
迷ったときの目安として、「相手が受け取ったあとに何かをしなければならない形」ほど負担が大きいと考えてください。現金はお返しを、大きな花は花瓶や置き場所を、生ものは扱いを相手に求めます。反対に、短い手紙やメッセージは何も求めません。気持ちの大きさと、贈り物の大きさは比例させなくてよいのです。
香典を包む場合の表書き・袋・金額の目安
関係の深さから「やはり包みたい」と思われた場合の作法を整理します。前提として、ペット専用の香典袋というものは市販されておらず、決まった書式もありません。以下は、ペット葬儀社が案内している内容と、人の葬儀の一般的なマナーを踏まえた考え方です(執筆時点・2026年8月)。

1まず「式を営むかどうか」と、参列の可否を確かめる
訃報を受けても、こちらから葬儀の予定を細かく尋ねるのは控えたほうが穏やかです。相手から立ち会いや参列の案内があった場合にのみ、持参するものを考えます。案内がなければ、言葉だけを届ける形で十分です。
2袋は無地に近いものを選ぶ
ペット専用の袋はないため、人の葬儀用の不祝儀袋か、白無地の封筒を使います。イオンのペット葬やみんなのペット葬儀屋さんは、仏式でのみ用いられる蓮の柄や華美な箔押しの袋は避けるほうが無難だと案内しています。飼い主の宗教が分からないことも多いため、装飾の少ないものが安心です。
3表書きは相手の宗教観に合わせて選ぶ
複数の事業者が挙げているのは「御霊前」です。飼い主が浄土真宗であれば「御仏前」、神道であれば「御玉串料」など、宗派によって書き分けるという案内も見られます。宗教を尋ねにくい場合は、宗教色の薄い「御供」や、白無地の封筒に「お花代」と記す方法もあります。表書きの下段には自分の名前を書きます。
4金額は「相手が返礼を考えずに済む範囲」に収める
ペット葬儀社が示す目安は、おおむね1,000円〜3,000円程度、多くても5,000円までです。高額になるほど相手は返礼を意識しますので、関係が深いからといって金額を上げる必要はありません。
5渡すときは言葉を短く
「お花の代わりに、少しですが」と一言添えて、静かに手渡します。長い説明や励ましは不要です。相手が受け取りを固辞された場合は、その場で引くのが思いやりです。
表書きの選び方(早見)
| 表書き | どんなときに | 留意点 |
|---|---|---|
| 御霊前 | 複数のペット葬儀社が「無難」として挙げている書き方 | 宗派によっては用いない場合もある |
| 御仏前 | 飼い主が浄土真宗の場合に用いられる | 宗教が分からないときは選びにくい |
| 御供 | 宗教色を抑えたいとき | 品物に添える場合にも使いやすい |
| お花代(御花代) | 花の代わりとして渡すとき | 白無地の封筒でも用いられる書き方 |
なお、人の葬儀では薄墨で書く、新札を避けるといった作法がありますが、これらは地域や家によって考え方が異なります。ペットの見送りではそこまで厳密に問われる場面は少なく、形式の正しさより、相手が受け取りやすいかどうかを優先して差し支えありません。
現金より選ばれやすい「花・お菓子・言葉」という形
編集部が各社の案内を調べたなかで、香典の代わりとして最も多く紹介されていたのがお花と、その子が好きだったおやつでした。どちらも、そのまま祭壇に供えられ、いずれは形を残さずに終わるという点で、受け取る側の負担が軽い贈り物です。

花を贈るときに気をつけたいこと
祭壇に供える花は、大きすぎないものが喜ばれます。ペットの祭壇は骨壷や写真を置く小さなスペースであることが多く、大きな供花は置き場所に困らせてしまうためです。また、犬や猫が口にすると危険な植物(ユリ科の植物など)を避けるという配慮も、同居する動物がいるお宅では大切になります。
おやつ・お菓子を贈るとき
生前にその子が好きだったおやつをお供えとして贈る方法も、複数の事業者が紹介しています。火葬の際に一緒に納めることを考えている場合は、燃えやすい容器に入ったものを選ぶ、という案内も見られました。ただし、金属やビニールを含むものは炉に納められないことが多く、判断は葬儀社によって異なります。「お供えとしてお使いください」と伝えるにとどめ、納めるかどうかは飼い主に委ねるのが安心です。人へのお菓子を贈る場合も、日持ちのする個包装のものが扱いやすいでしょう。
いちばん残るのは、名前を呼んだ言葉
何を贈るか迷った末に、結局いちばん心に残ったのは短い手紙だった、という声は少なくありません。その子の名前を書き、具体的な思い出をひとつだけ添える——それだけで、悼む気持ちは十分に伝わります。「元気を出して」「また飼えばいいよ」といった前を向かせる言葉は、いまはまだ受け止めきれないことが多いため、避けたほうが穏やかです。
受け取る側の考え方——お返しは必要?
ここからは、ご自身が受け取る側になった場合の話です。香典やお供えをいただいたとき、「お返しをしなければ」と気を張ってしまう方は多いのですが、ペットの見送りにおける返礼に、人の葬儀のような厳密な決まりはありません。

大阪でペット火葬を行うペット葬儀社ペットマザー大阪火葬斎場は、公式サイトのコラムで、ペット葬儀のお返しは必須ではなく、「お気持ちだけで十分」と考える方も多いと説明しています。そのうえで、もし返礼をする場合の目安として、いただいた額の3分の1から半額程度、時期は葬儀後1週間から1か月ほどを挙げ、無理をせず気持ちが伝わるタイミングを大切にするよう案内しています。贈った側の多くは、返礼を期待して差し出したわけではありません。
受け取ることをためらう気持ちがあるときは、その場で「お気持ちだけありがたく頂戴します」と伝えて辞退しても構いません。相手も、あなたを困らせるために差し出したわけではないからです。
職場の同僚・ご近所など、距離感が難しいとき
もっとも判断に迷うのが、親しくはあるけれど家族ぐるみではない、職場の同僚のような間柄です。この距離感では、金銭を包むことがかえって相手を身構えさせてしまうことがあります。ペットのことを職場で話していた方であっても、悲しみを職場に持ち込みたくないと考えている場合もあるためです。

職場で伝えるときの目安
- 短く、静かに。「◯◯ちゃんのこと、伺いました。心よりお悔やみ申し上げます」程度で十分
- 人前ではなく、二人になれる場面を選ぶ
- 詳しい経緯や死因を尋ねない
- 「何かあれば言ってください」と一言添え、あとは仕事の面でそっと支える
- 贈るなら、部署の連名で小さな花を。個人で現金は避ける
相手がペットの話に触れてほしくない様子であれば、そのまま何も言わずにいることも、立派な配慮です。ペットとの別れが仕事に影響することは珍しくなく、ペット保険を扱う第一アイペット損害保険(当時のアイペット損害保険株式会社)は、犬や猫と暮らす社員がペットを亡くした際に取得できる休暇制度を導入したと公表しています。ペットの死を私的なこととして片づけない職場が少しずつ現れていることは、同僚として接するうえで知っておいてよい変化だと思います。
よくある質問
※本記事の金額の目安・マナーの記載は、執筆時点(2026年8月)に各ペット葬儀社が公式サイトで案内している内容をもとに整理したものです。作法は地域やご家庭、宗教観によって異なります。最新の情報や個別の対応については、各公式サイトや葬儀を担当する事業者にご確認ください。
まとめ
ペットの葬儀に香典を包む習慣は、執筆時点ではまだ定着していません。多くのペット葬儀社が「不要」と案内しており、包まないことを選んでも、それは冷たさではなく、相手に返礼の宿題を残さないという配慮です。それでも気持ちを形にしたいときは、1,000円〜3,000円程度を目安に「御霊前」や「御供」と記して包む方法もありますし、小さな花やその子が好きだったおやつ、そして名前を呼んだ短い手紙という形もあります。受け取る側になったときは、お返しを急がなくて大丈夫です。どの形を選んでも、あなたがその子の名前を覚えていることが、いちばんの供養になります。旅立ったその子と、残された方の日々に、静かな安らぎが訪れますように。