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犬が亡くなって会いたいとき|写真・手紙・命日にできる小さなこと

あの子の名前を呼んでも、もう足音が返ってこない。ごはんの時間になると台所を振り返ってしまう。夜、布団のなかで「もう一度だけでいいから会いたい」と思って、そのまま朝になってしまう——そんな時間を過ごしていらっしゃるかもしれません。

会いたいという願いは、どうすることもできない願いです。けれど、その気持ちを抱えたまま「今日を過ごす方法」なら、いくつかあります。写真や動画を見返すこと、手紙を書くこと、名前を呼んで語りかけること、いつもの散歩道を歩くこと、命日や月命日をどう過ごすか決めること。どれも派手なことではありませんが、多くの方が、そうやってあの子とのつながりを確かめながら日々を過ごしています。

この記事では、悲嘆(グリーフ)のケアに関する専門家の資料をもとに、「会いたい」と思ったときにできる具体的なことを、静かに整理してお伝えします。できそうなものが一つもなくても、それで構いません。読むだけで、そっと閉じてくださっても大丈夫です。

飼い主さん
写真を見たら余計につらくなりそうで、まだ一枚も見られていません。手紙を書くといい、とも聞いたのですが、こんな状態でも意味があるのでしょうか。
編集部
見られないなら、今日は見なくて大丈夫です。悲しみに向き合う時間と、日常に取り組む時間を行き来しながら少しずつ進むことが自然だと言われています。手紙も「書けたら書く」で十分です。できることから、ひとつずつ見ていきましょう。

一言でいうと、「もう一度会う」ためにできるのは、写真・手紙・語りかけ・思い出の場所・命日といった、あの子とのつながりを確かめる小さな行為です。どれも順番や期限はなく、今日できるものをひとつ選べば十分です。

「もう一度会いたい」と思ったとき、まずできること

大切な存在を亡くしたあとの悲しみ(悲嘆・グリーフ)は、喪失に対する自然で正常な反応であり、その表れ方は人によって違うとされています(中島聡美・伊藤正哉「大切な人との死別による悲しみの理解と対応」2023年、日本トラウマティック・ストレス学会掲載資料)。同資料では、死別から数か月以降にも、亡くなった存在へのとらわれ(生きているように感じる)、亡くなった相手の夢を見る、その子の持ち物をいつも身につけるといった反応が挙げられています。「会いたい」と思い続けているのは、異常なことではありません。

窓辺で静かにうつむき悲しみと向き合う人
写真はイメージです

そのうえで、この記事でお伝えする「できること」は、次の5つです。順番はありません。今日の自分にできそうなものから、ひとつだけで大丈夫です。

会いたいときにできる5つのこと(写真・手紙・語りかけ・思い出の道・命日)を示した図解
会いたいときに、今日できること(当メディア編集部作成)

「会う」とは、つながりを結び直すこと

グリーフケアの標準的なテキストでは、悲しみのなかで取り組まれることのひとつとして「新たな人生を歩み始める途上において、故人との永続的なつながりを見出すこと」が挙げられています(前掲資料より、J.W.ウォーデン『悲嘆カウンセリング[改訂版]』をもとにした整理)。つまり、つながりを断ち切ることではなく、形を変えて持ち続けることが、悲しみとともに生きていく道筋のひとつだと考えられているということです。

ここから紹介する行為は、どれも「あの子を過去にする」ためのものではありません。むしろ逆で、あの子との関係を今の生活のなかに置き直していくための、小さな手立てです。会いたい気持ちそのものについては、次の記事でもう少しゆっくり触れています。

写真や動画を見返す——見られない日は、見なくていい

もっとも身近な「会う」方法が、写真や動画を見ることです。動画は声や歩き方まで残っているぶん、写真よりも強く胸に迫ります。見た瞬間に涙が止まらなくなることもありますが、それ自体は悪いことではありません。悲しみに向き合う時間は、回復の過程のなかにきちんと含まれているものだからです。

写真立てとお花を並べたペットのメモリアルスペース
写真はイメージです

とはいえ、いきなり全部を見返すのは負担が大きいものです。次のように、量と時間を自分で決めておくと、気持ちが揺さぶられすぎずに済むことがあります。

11日1枚、時間を決めて見る

「夜、お茶を飲みながら1枚だけ」というように、枚数と時間を決めておきます。区切りがあると、思い出に浸る時間と、日常に戻る時間を行き来しやすくなります。

2つらい時期の写真は、後回しにしていい

闘病中や最期の日の写真は、心の準備ができるまで開かなくて構いません。元気だった頃のフォルダから見はじめる方が多くなっています。

3一枚だけ選んで、飾る/持ち歩く

「これ」と思う一枚をプリントして、いつもの場所に飾る。スマホの待ち受けにする。いつでも会える場所を一つ作っておくと、探し回らずに済みます。

写真が見られないときの気持ちについて

「見たいのに、怖くて見られない」という方も少なくありません。前掲の資料では、亡くなった相手を思い出させるものを避けることも、死別後に起こりうる反応のひとつとして挙げられています。見られないのは、愛情が足りないからでも、逃げているからでもありません。今はまだ、心が受け止める準備をしている時期なのだと考えて差し支えないでしょう。

ただし同資料では、写真を見ることや故人について話すことを長く避け続ける状態が、悲しみと折り合いをつけていく過程を妨げる場合があるとも指摘されています。数か月たっても写真を見ることがまったくできず、生活にも支障が出ているようなら、後述する専門の相談先に気持ちを話してみることも選択肢になります。急ぐ必要はありませんが、一人で抱え込まなくていい、ということだけ覚えておいてください。

また、遺品や写真、ごはんのお皿を「早く片づけなければ」と思う必要もありません。東京都動物愛護相談センターに掲載された濱野佐代子氏(日本獣医生命科学大学)による解説でも、ペットのことを忘れなくてもよいこと、ペットに関連する物を無理に片づけなくてもよいことが述べられています(東京都動物愛護相談センター「ペットロスを考える」)。置いておきたいなら、置いたままで大丈夫です。

手紙を書く・名前を呼んで語りかける

言葉にできないまま胸のなかで回り続けている思いは、外に出す先があると少し形を変えます。相手がもういないからこそ、手紙という形が使われることがあります。届けるためではなく、自分のなかにある言葉を、いったん外に置くための手紙です。

会いたい気持ちと過ごす日にしてもいいこと・しなくていいことを整理した図解
会いたい気持ちと過ごす日の「しても/しなくてもいい」(当メディア編集部作成)

書く内容は、きれいでなくていい

手紙に書く内容に決まりはありません。「あのとき病院に連れて行くのが遅れてごめんね」という後悔でも、「どうして置いていったの」という怒りでも構いません。悲しみのなかで自分を責める気持ち(自責感)が起こることは、ごく一般的な反応として整理されています(前掲・中島ほか)。謝りたいことを謝れる場所があるだけで、少し呼吸がしやすくなることがあります。

書いた手紙は、無理に読み返さなくても大丈夫です。箱にしまっておく方、お骨のそばに置く方、日記のように書き足していく方など、扱い方はさまざまです。文章が続かないときは、「今日は雨だったよ」の一行でも十分に手紙になります。

名前を呼び、声に出して話しかける

手紙よりもさらに簡単なのが、名前を呼ぶことです。「おはよう」「行ってきます」と声に出す。散歩の時間に「今日は寒いね」と話しかける。前掲の資料では、遺族を支える人の姿勢として「故人を名前で呼び、尊厳を守る」ことが挙げられています。名前は、その子がたしかにここにいたことの証でもあります。

声に出すことに抵抗があるときは、心のなかで話しかけるだけでも構いません。「返事がないのがつらくて、かえって苦しくなる」と感じたら、そこでやめてよいのです。合わないやり方を続ける必要はありません。

思い出の場所を、もう一度歩く

いつもの散歩コース、よく行った公園、車で通った河川敷。あの子と一緒に歩いた道には、写真とは違う記憶が残っています。角を曲がるたびに立ち止まっていた場所、必ず匂いを嗅いでいた電柱。歩いてみると、忘れていた細かなことがふいに戻ってくることがあります。

夕暮れの散歩道を犬と歩く飼い主
写真はイメージです

ただ、同じ道を歩くことは、それだけつらさも連れてきます。前掲の資料では、一緒に行った場所を避けてしまうことも、死別後によく起こる行動として挙げられています。玄関を出られない日があっても、まったく不自然ではありません。

もし歩いてみるなら、次のような形にすると負担が軽くなることがあります。

  • 朝や夕方など、人の少ない時間帯を選ぶ
  • ひとりが不安なら、家族や友人と一緒に歩く
  • 途中で引き返してもいいと決めてから出る
  • 外に出るのがつらい日は、窓から同じ景色を眺めるだけにする

散歩の時間帯になると体が動いてしまう、リードの音に振り返ってしまう。そうした反応も、長く一緒に暮らした証です。生活のリズムが元に戻るまでには時間がかかって当然と考えて、ゆっくりで構いません。

命日・月命日をどう過ごすか

命日や誕生日、お正月といった節目は、悲しみが強くなりやすい時期として知られています。前掲の資料でも、命日や故人の誕生日、お正月などの「困難な時期に対処する」ことが、日常を取り戻していくうえでの課題のひとつとして挙げられています。前もって「その日をどう過ごすか」を決めておくと、当日に気持ちが崩れにくくなることがあります。

小さな花瓶にそっと供えられた白い花
写真はイメージです

過ごし方に正解はありません。実際には、次のような形が選ばれています。

過ごし方 内容 こんな方に
お花を供える 好きだった色の花を1輪だけでも。月命日ごとに替える方も 手を動かすと落ち着く方
好物を供える いつものおやつやフードを小皿に。時間を決めて下げる 食事の時間がさみしい方
写真を見ながら家族で話す その子の話をする時間を意識的につくる 気持ちを分かち合いたい方
お参り・供養に出向く 霊園や納骨堂へ。自宅に置いている場合は手を合わせるだけでも 区切りをつけたい方
何もしない いつもどおり過ごし、思い出したときだけ名前を呼ぶ その日が近づくとつらい方

「何もしない」も、立派な過ごし方です。前掲の東京都のコラムでは、家族の希望に合ったお別れやメモリアルが、気持ちの区切りや整理につながりやすいと述べられていますが、あくまで「家族の希望に合った」形であることが前提です。周囲に合わせて無理に行事を整える必要はありません。

供養の形をこれから決める段階の方は、お別れから納骨までの一般的な流れを知っておくと、迷いが少なくなります。

夢で会いたいと願うとき

「夢でもいいから出てきてほしい」——ペットを亡くした方から、よく聞かれる願いです。前掲の資料では、死別後の反応のひとつとして「亡くなった人の夢をみる」ことが挙げられています。夢に見ることは、悲しみのなかで起こりうる自然な反応の一つとして位置づけられているということです。

やわらかな朝の光が差し込む静かな窓辺
写真はイメージです

ただし、夢を見る・見ないは自分で選べるものではありませんし、「夢に出てきてくれない=忘れられた」「愛が足りなかった」ということでもありません。夢の意味づけについては、宗教や考え方によってさまざまな受け取り方があります。当メディアでは、特定の解釈をおすすめすることはしません。あなたが安心できる受け取り方を、そのまま大切にしていただければと思います。

現実的にできることがあるとすれば、眠る前の時間を穏やかに整えることくらいです。悲しみのさなかには睡眠が浅くなることも一般的な反応として挙げられています。眠れない夜が続くときは、無理に眠ろうとするより、横になって体を休めるだけでも構いません。それでも眠れない状態が長く続く場合は、後述の相談先や、かかりつけの医療機関に相談してみてください。

それでも、会いたさに押しつぶされそうなときは

ここまでお伝えしてきたことは、どれも「気持ちが少し軽くなるかもしれない」というだけのもので、悲しみをなくす方法ではありません。会いたい気持ちは、消すものではなく、連れて歩くものと考えていただいてよいと思います。

犬をそっと抱き寄せて寄り添う飼い主
写真はイメージです

「まだ立ち直れない自分」を責めているあなたへ

悲嘆についてよくある誤解として、「悲嘆は6か月から1年続く(=そのくらいで終わるもの)」という考えが挙げられています(前掲・中島ほか。同資料は個人差があることを明記しています)。つまり、1年たっても2年たっても会いたいままであることは、おかしなことではありません。悲しみに、決まった期限はないのです。

また同資料では、遺族を傷つけうる周囲の言動として「強くなれと励ます」「泣いてばかりじゃ、と感情を出すことを禁じる」といった言葉が挙げられています。もし身近な人からそうした言葉をかけられて苦しくなっているなら、それはあなたが弱いからではありません。ペットロスは「公に認められにくい悲しみのひとつ」であり、「動物が死んだくらいで」といった心ない言葉が当事者を苦しめ、孤立につながるとも指摘されています(前掲・東京都動物愛護相談センター)。あなたの悲しみは、正当なものです。

専門の窓口に相談する目安

悲しみそのものは治療の対象ではありませんが、その強さや長さのために生活に支障が出ている場合には、専門家の力を借りるという選択肢があります。前掲の資料では、悲嘆反応が長期化している場合、重いうつ状態や不安が見られる場合、睡眠障害や社会的な孤立を伴う場合などに注意が必要とされています。

次のような状態が続いているときは、心療内科・精神科やカウンセラー、自治体の相談窓口に、一度気持ちを話してみてください。診断や治療の要否を判断するのは専門家の役割です。ここでの目安は、あくまで「相談してよい」という目印だと受け取っていただければと思います。

  • 食事や睡眠がとれない状態が長く続いている
  • 仕事や家事など、日常生活が立ち行かなくなっている
  • 誰にも会いたくなく、家から出られない日が続く
  • 「自分も消えてしまいたい」という気持ちがよぎる

気持ちの整理がつかず、一人で夜を越えるのがつらいときは、厚生労働省の「まもろうよ こころ」で、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)をはじめとする電話・SNSの相談窓口が案内されています。「ペットが亡くなってつらい」の一言から始めて構いません。同じ経験をした方が集まる分かち合いの会や、動物病院・ペット霊園が開くグリーフケアの集まりもあります。話すことがつらければ、聞いているだけでも大丈夫です。

ペットロスの症状や経過について、もう少し全体像を知りたい方は、次の記事で整理しています。

よくある質問

Q亡くなった愛犬に、本当にもう一度会う方法はありますか。

A亡くなった子と現実に再会する方法はありません。私たちにできるのは、写真や動画、手紙、思い出の場所、命日の過ごし方などを通して、その子とのつながりを確かめ直すことです。グリーフケアの考え方でも、亡くなった相手との永続的なつながりを見出していくことが、悲しみとともに歩む道筋のひとつとして挙げられています。

Q写真を見ると泣いてしまいます。見ないほうがいいのでしょうか。

A泣くこと自体は避けるべきものではなく、悲しみに向き合う自然な過程の一部と考えられています。ただ、見るたびに一日中動けなくなるような状態が続くなら、枚数や時間を決める、家族と一緒に見るなど、負担を小さくする工夫をしてみてください。まったく見られない日があっても構いません。

Q亡くなってから半年たつのに、まだ毎日思い出して泣いてしまいます。

A悲しみの続く長さには大きな個人差があり、「半年から1年で終わるもの」という考えは誤解として整理されています。何年たっても会いたいと思うことは、その子を深く愛した証です。ただし、生活に支障が出ている状態が続く場合は、専門の相談窓口に話してみることをおすすめします。

Q新しい子を迎えたら、あの子に申し訳ない気がします。

A次の子を迎えるかどうか、迎えるとしてもその時期は、個々人のペースで決めてよいとされています。迎えることが前の子を忘れることにはなりませんし、迎えないという選択も同じように尊重されるべきものです。周囲の勧めに合わせて決める必要はありません。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる心身の不調が続く場合は、医療機関や専門の相談窓口にご相談ください。

まとめ

犬が亡くなって「会いたい」と思ったとき、できることは、写真や動画を見返すこと、手紙を書くこと、名前を呼んで語りかけること、思い出の道を歩くこと、命日や月命日の過ごし方を自分で決めることでした。どれも、あの子とのつながりを断ち切るためではなく、形を変えて持ち続けるための小さな行為です。

今日は何もできなくても、何ひとつ問題はありません。悲しみに向き合う日と、日常をこなすだけの日を行き来しながら、人は少しずつ折り合いをつけていくと言われています。折り合いがつくことは、あの子を忘れることではありません。会いたい気持ちは、そのまま連れて歩いていいのです。

あの子と過ごした日々の記憶が、いつかあなたをあたためるものになりますように。

-ペットロス・心のケア, 虹の橋・スピリチュアル
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