牧草をむしゃむしゃと食べる音。名前を呼ぶと、鼻をひくつかせながらこちらへ跳んでくる足音。うさぎと暮らしていると、その静かな気配が毎日の一部になっていきます。だからこそ、ふとした拍子に「この子は、あとどのくらいそばにいてくれるのだろう」と考えてしまう方も少なくないと思います。
うさぎの平均寿命は、実は資料によって数字がかなり違います。しかも、飼育下のうさぎの寿命は、この十数年で確かに延びてきています。この記事では、当メディア編集部が保険会社の統計データ集、国内外の獣医学の査読論文、獣医学の標準資料にあたって確認できた数字だけを、調査名・年次・対象頭数とあわせて整理しました。あわせて、人間の年齢に置きかえるとどのくらいなのか、寿命に関わるとされる病気、そして日々の健康管理でできることをまとめています。今そばにこの子がいる方にも、見送ったばかりの方にも、静かに読んでいただけますように。


一言でいうと、うさぎの平均寿命は国内の統計で8.1歳(2023年度)とされ、15年ほどで1歳以上延びてきています。ただし調査の設計によって数字は4歳台から8歳台まで幅があり、10歳を超える子もいるとされています。記録に残る最高齢は18歳10か月あまりです。
うさぎの平均寿命は何歳?

いちばん新しく、日本の飼育うさぎを対象にした大きな統計は、アニコム損害保険がまとめている『アニコム 家庭どうぶつ白書2025』です。同白書の図表2-4-6「うさぎの平均寿命の推移」によると、2023年度のうさぎの平均寿命は8.1歳とされています。
この数字は、2008年4月1日から2024年3月31日までに同社のペット保険契約を開始したうさぎを対象に、年度ごとに各年齢での契約頭数と死亡解約の届け出のあった頭数を集計してカレント生命表を作成し、0歳時点での平均余命を平均寿命としたもの、と同白書に明記されています。対象となった頭数そのものは白書に記載がありませんでした。
もうひとつ注目したいのが、この数字の推移です。同じ図表をたどると、2008年度は6.9歳でした。そこから7.1歳、7.4歳、7.6歳と少しずつ上がり、2019年度に7.9歳、2022年度と2023年度は8.1歳。15年ほどで1歳以上延びていることになります。フードや飼育環境、うさぎを診られる動物病院の広がりなど、いくつもの要素が重なった結果と考えられますが、白書は理由までは示していません。
資料によって数字が違う理由
うさぎの寿命を調べていると、7〜8年、4歳台、8〜12年と、ばらばらの数字に出会います。これはどれかが間違っているのではなく、「何を数えた統計か」がそれぞれ違うためです。編集部が出典をたどれた主なものを並べます。
| 調査・資料 | 年 | 対象(母数) | 数字 | 何を測ったか |
|---|---|---|---|---|
| アニコム 家庭どうぶつ白書2025 | 2025年公表/2023年度データ | ペット保険契約のうさぎ(頭数は非公表) | 平均寿命8.1歳 | 生命表による0歳時点の平均余命 |
| Shigaら(東京のエキゾチック動物専門病院) | 2022年/2006〜2020年の症例 | 死亡した898頭 | 死亡時年齢の中央値7歳(四分位範囲5〜9歳) | 専門病院で亡くなった子の年齢 |
| O'Neillら(英国VetCompass) | 2020年/2013年のデータ | 一次診療のうさぎ6,349頭中、死亡した370頭 | 死亡時年齢の中央値4.3歳(範囲0.1〜14.4歳) | 一般の動物病院で1年間に亡くなった子の年齢 |
| アニコム損保「うさぎとの暮らし大百科」 | 2022年 | —(獣医師監修の解説記事) | 一般に7〜8年 | 従来から言われてきた目安 |
たとえば英国の調査で4.3歳と短く出ているのは、その1年間に亡くなった子だけを数えているためで、若くして亡くなった子の割合が結果に強く出ます。逆に東京の専門病院の調査は、専門的な医療にたどり着けた子が対象になるため、数字は高めに出やすくなります。どの数字も「その調査の枠の中では正しい」ものとして読むのが、いちばん誤解の少ない見方です。
そのうえで、日本の家庭で暮らすうさぎの現在地としては、白書の8.1歳がもっとも近い目安といえます。東京の専門病院の調査(Shigaら, 2022年, 898頭)では、亡くなった子の18%が9歳を超えていたとも報告されています。10歳という数字は、決して夢物語ではありません。
飼育環境による差
うさぎの寿命は、どこでどう暮らすかによって大きく変わるとされています。米国のうさぎ情報サイトrabbit.orgは、室内で暮らす飼いうさぎは体格・品種・世話の質によって8〜12年ほど生きるのが一般的だとし、一方で屋外で飼われる飼いうさぎは3〜5年ほど、野生のうさぎは1〜2年ほどと記しています。数字の出どころとなる統計までは示されていないため目安として読む必要がありますが、環境の差が大きいという方向性は、他の資料とも一致しています。
アニコム損保の解説も、うさぎは暑さにも寒さにも弱く、野生では穴を掘って地中で暮らす動物だと説明しています。屋外飼育の冬の冷え込みはもちろん、室内でも真夏に空気の通らない部屋に置いたままにすることは危険だとしています。温度と湿度の管理が、そのまま寿命の話につながるのがうさぎという動物です。
長生きの最高齢記録
ギネス世界記録に登録されている「最も長生きしたうさぎ」は、Flopsy(フロプシー)という名前のうさぎです。ギネスワールドレコーズの記録によると、1964年8月6日に捕獲された野生のうさぎで、オーストラリア・タスマニア州ロングフォードのL.B.ウォーカー氏の家で、それから18年10.75か月生きたとされています。
もちろんこれは例外的な記録で、目標にするような数字ではありません。ただ、うさぎという動物にそれだけの時間を生きる力があるということは、覚えておいてよいことだと思います。
うさぎの年齢を人間に換算すると【早見表】

最初にお伝えしておきたいのですが、うさぎと人の年齢を対応させる方法に、定まった基準はありません。犬や猫でさえ研究者によって計算の仕方が分かれますし、うさぎについては換算式そのものを示した学術資料を、編集部では確認できませんでした。ここで紹介するのは、アニコム損害保険が運営する「〈アニコム獣医師監修〉うさぎとの暮らし大百科」の記事(2022年6月16日公開)に掲載されている対応です。換算の計算方法は同記事にも示されていないため、あくまで年齢の感覚をつかむための目安としてご覧ください。
| うさぎの年齢 | 人間に置きかえると | この時期の様子の目安 |
|---|---|---|
| 生後4〜5か月 | 12歳ごろ | まだ体は成長の途中。小さい子がほとんど |
| 1歳 | 18歳ごろ | 体の成長がほぼ止まり、性格も定まってくる |
| 5歳 | 44歳ごろ | シニア期の入口。落ち着いてくる子が多い |
| 7歳 | 64歳ごろ | のんびり過ごす時間、眠る時間が増える |
| 8歳以上 | 70歳代〜 | 体の老化が進む時期という認識が必要 |
同記事は、5歳を超えたらシニア期だと思って食事・運動・環境を整えることが大切だとしています。8歳を超えると、毛のつやが落ちたり、目や鼻や耳の病気にかかりやすくなったり、部屋を走り回ることが減ってくるといった変化が挙げられています。ちなみに、先ほどのFlopsyの18歳10か月は、同記事の見立てでは人間の122歳ほどにあたるとされています。
うさぎの寿命に関わるとされる病気

寿命の話は、どうしても病気の話とつながります。ここでは、査読論文と獣医学の標準資料で確認できた範囲で整理します。ここに書くのは一般的な情報で、診断や治療の判断は動物病院で行われるものです。気になる様子があるときは、記事を読み進めるより先に受診をご検討ください。
先に挙げた東京のエキゾチック動物専門病院の調査(Shiga T, Nakata M, Miwa Y, Kikuta F, Nakayama H. Journal of Exotic Pet Medicine. 2022;43:35-39/2006〜2020年に亡くなった898頭)は、死因の内訳も報告しています。もっとも多かったのは腫瘍で223頭・24.8%、次いで消化器疾患が135頭・15.0%、細菌性膿瘍が90頭・10.0%、泌尿器疾患が85頭・9.5%、外傷が44頭・4.9%、心疾患が27頭・3.0%でした。同論文は、4歳以下では消化器疾患が、5歳以上では腫瘍がもっとも多い死因だったとしています。年齢によって、気をつけるところが移っていくということです。
メスの子宮の腫瘍
うさぎのメスで多いとされるのが、子宮腺癌(子宮の腫瘍)です。獣医学の標準的な資料であるMSDマニュアル獣医学版は、避妊手術をしていない3歳を超えたメスでの発生率は最大60%にのぼると記載しており、うさぎでもっとも多い腫瘍だとしています。同マニュアルは、繁殖の予定がないメスについて、生後4〜6か月での避妊手術によってこの病気を防ぐことがすすめられるとも記しています。
ただし、手術には麻酔のリスクがともないます。うさぎの麻酔は犬や猫とは条件が異なるとされ、実施するかどうかは、その子の年齢・体調・かかりつけの体制を含めて獣医師と相談したうえで決めることになります。ここで「した方がよい」と言い切ることは、この記事ではしません。
歯の病気(不正咬合)
うさぎの歯は生涯伸び続け、上下の歯がかみ合ってすり減ることで長さが保たれています。MSDマニュアル獣医学版は、不正咬合はうさぎでおそらくもっとも多い遺伝性の疾患だとし、遺伝的な要因のほか、栄養の偏りやケージの金網をかじることなどの飼育上の要因も関わるとしています。遺伝によるものは生後3〜8週ごろに現れることが多く、飼育要因によるものは成長後にゆっくり進むと記載されています。
英国の大規模調査(Jackson MA, Burn CC, Hedley J, Brodbelt DC, O'Neill DG. Veterinary Record. 2024/2019年に一次診療を受けた161,979頭)では、1年間に歯科疾患と診断されたうさぎは15.36%、およそ7頭に1頭でした。内訳は臼歯(奥歯)の疾患が13.72%、切歯(前歯)の疾患が3.14%です。
この調査には、よく言われる話をくつがえす結果もありました。垂れ耳(ロップ系)や鼻先の短い体型は、歯科疾患のリスクを高める要因としては有意ではなかったとされています。以前の研究では関連が指摘されていましたが、それらは調査規模が小さく偏りがあった可能性があると同論文は述べています。一方で、5歳以上のうさぎは1歳未満に比べて7.58倍リスクが高く、体重2kg超のうさぎは1.49kg未満のうさぎより低リスクでした。品種よりも、年齢と日々の食事の影響が大きいという読み方ができます。
消化管うっ滞
MSDマニュアル獣医学版は、繊維が足りない食事や、歯の病気などで食べられなくなることによって、うさぎの消化管の動きが止まってしまう状態(消化管うっ滞)が起きると記載しています。原因としてはほかに、ストレスや痛み、肥満、脱水が挙げられています。同マニュアルは、うさぎが被食動物であるため不調を隠すのが上手く、受診したときにはすでに進んだ状態であることが多いとも指摘しています。
ふんが小さくなった、数が減った、まったく出ていない。牧草に口をつけない。じっとうずくまって動かない。こうした様子は、うさぎにとっては早めの受診が必要な変化とされています。「様子を見る」の判断が難しい動物です。
暑さ・寒さによる負担
MSDマニュアル獣医学版は、うさぎの飼育環境について、華氏で表した気温と、%で表した湿度の合計が150を超えないようにすることという目安を示しています。摂氏に直すと、たとえば気温28℃(華氏82度)のときは湿度68%あたりが上限にあたる計算です。同マニュアルは、環境として気温50〜70°F(およそ10〜21℃)・相対湿度40〜60%を挙げています。
これは実験動物・生産動物の飼育管理を含めた記載で、そのまま一般家庭の目標にできる数字とは限りません。それでも、気温だけでなく湿度とセットで見るという考え方は、日本の夏を越えるうえで手がかりになります。エアコンの設定温度だけを気にして、湿度が見落とされていることは少なくありません。
うさぎに長生きしてもらうためにできること

寿命そのものを思いどおりにすることはできません。それでも、確認できた資料が示している「関わりが大きいとされること」は、日々の暮らしの中にあります。
1牧草を主役にした食事にする
繊維の不足は、歯がすり減らないことにも、消化管の動きが落ちることにもつながるとされています。牧草をいつでも食べられる状態にしておくことが土台になります。ペレットやおやつの量については、その子の体格や年齢によって適量が変わるため、かかりつけの動物病院にご相談ください。
2気温と湿度をセットで管理する
暑さにも寒さにも弱い動物です。エアコンの風が直接当たらない場所にケージを置き、夏は湿度計も一緒に置いておくと判断しやすくなります。留守中に空調が切れる設定になっていないか、夏の前に一度確認しておくと安心です。
3避妊・去勢について獣医師と話しておく
メスの子宮の腫瘍の発生率については前述のとおりです。ただし手術には麻酔のリスクもあり、年齢や体調によって判断は変わります。答えを急がず、健康なうちに一度、かかりつけの獣医師と話しておくことをおすすめします。
4ふん・食べた量・体重を毎日そっと見る
うさぎは不調を隠します。だからこそ、ふんの大きさと数、牧草をどのくらい食べたか、体重が減っていないか——この3つを毎日ひとつずつ見ておくだけで、変化に気づくのが早くなります。数字にしなくても、「昨日と違うか」だけで十分です。
5うさぎを診られる動物病院を先に見つけておく
うさぎのようなエキゾチックアニマルを診られる動物病院は、地域によって限られることがあります。元気なうちに一度受診して、診てもらえるかどうか、夜間や休日はどうなるかを確かめておくと、急な体調不良のときに探しまわらずにすみます。
シニア期のうさぎの変化と日々の健康管理

アニコム損保の解説は、5歳を超えたらシニア期ととらえて食事・運動・環境を整えることが大切だとしています。前述の英国の歯科疾患の調査でも、5歳以上でリスクが大きく上がることが示されていました。5歳前後は、暮らし方を一度見直すよい区切りといえます。
この時期に見られることのある変化として、次のようなものが挙げられます。いずれも加齢だけが原因とは限らず、病気が隠れていることもあります。
シニア期に見られることのある変化
- 眠っている時間が長くなり、部屋を走り回ることが減る
- 毛のつやが落ちる、毛づくろいが行き届かなくなる
- 牧草を食べ残す、硬いものを避けるようになる
- 体重がゆっくり減っていく、あるいは急に減る
- 段差を上らなくなる、後ろ足の踏ん張りが弱くなる
- 目や鼻、耳のまわりの汚れが増える
「歳だから」で片づけずに、気になる変化があれば受診をご検討ください。特に食べる量が落ちること・ふんが小さくなることは、うさぎでは早めの相談が必要な変化とされています。
暮らしのほうで整えられることもあります。ケージ内の段差を減らす、滑りにくい床材にする、牧草入れと水飲みを寝床の近くにまとめる、ふやかしたペレットも試してみる。どれも小さな工夫ですが、その子が使えるエネルギーを、移動ではなく食べることに回してあげられます。健康診断の間隔についても、シニア期に入ったら一度かかりつけに相談しておくとよいでしょう。
うさぎとのお別れが近づいたら

ここから先は、読み進めるのがつらいと感じたら、そっと閉じていただいてかまいません。いつか必ず来る日のことを、少しだけ先に書いておきます。
うさぎは最期まで静かなことが多い動物です。食べる量が減り、動かなくなり、呼びかけへの反応が薄くなっていく——そのあいだ、こちらにできることは多くありません。それでも、いつもの場所で、いつもの声で名前を呼びながらそばにいる時間は、確かにこの子と分けあった時間です。写真を1枚、動画を数秒。後になって、それらが支えになることがあります。
旅立ったあとは、体を静かに横たえて、涼しい場所に安置します。保冷剤や氷嚢をタオルで包み、体の下や周りに置くようにして、直接当てないようにします。うさぎは体が小さいぶん、亡くなったあとの変化も早く進みます。夏場は特に、早めに火葬の手配を検討することになります。
火葬をお願いするときは、いくつか確かめておきたいことがあります。うさぎのような小さな体の子は、犬猫向けの火力の強い炉ではお骨が残らないことがあるためです。
小動物の火葬で確認しておきたいこと
- うさぎ・小動物の火葬に対応しているか、実績があるか
- お骨を残すこと(返骨)ができるか。難しい場合は理由を説明してもらえるか
- 立ち会いができるか、個別で火葬してもらえるか
- 費用が事前に確定するか。追加料金の有無
- 固定の施設があるか、所在地と連絡先が公開されているか
移動火葬車をめぐるトラブルが報じられたこともある分野です。実在と所在がはっきり確認できる事業者に、事前に費用を確定させたうえで依頼することが、後悔を減らす手立てになります。お住まいの自治体で引き取ってもらう方法もありますので、あわせて調べておくと選択肢が広がります。
そして、見送ったあとのご自身のことも、どうか後回しにしないでください。うさぎは犬や猫にくらべて周囲に理解されにくいことがあり、悲しみを言葉にしづらいまま抱えてしまう方もいます。泣いてもかまいませんし、しばらく何も手につかなくても大丈夫です。
よくある質問
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。
まとめ
うさぎの平均寿命は、アニコム 家庭どうぶつ白書2025で8.1歳(2023年度)。2008年度の6.9歳から15年で1歳以上延びてきました。東京の専門病院の調査では亡くなった年齢の中央値が7歳で、18%の子が9歳を超えています。記録に残る最高齢は18歳10.75か月です。数字は調査の設計によって幅がありますが、飼育下のうさぎの時間が確かに長くなってきていることは、複数の資料が示しています。
その延びを支えているのは、牧草を中心にした食事、気温と湿度の管理、避妊手術についての相談、そして毎日ふんと体重をそっと見ておくこと——特別なことではなく、今日もう始められることばかりです。5歳を過ぎたら、暮らし方を一度見直してみてください。
いつかは来る日のことも、少しずつ心の隅に置いておけば、そのときに慌てずにすみます。それまでの一日一日は、この子にとって短いものではありません。
あなたとこの子の時間が、最後まで穏やかでありますように。