大切なペットを見送ったあと、涙が止まらない、眠れない、何も手につかない――そんな状態が続いて「自分は大丈夫だろうか」と不安になっていませんか。その深い悲しみには「ペットロス症候群」という言葉が使われることがあります。
この記事では、ペットロス症候群とはどのような状態を指すのか、心・体・行動にあらわれる主な症状のチェックリスト、そして「これは自然な反応なのか、専門家に相談したほうがよいのか」を判断するための目安を、静かに整理してお伝えします。つらさを一人で抱えている方が、少しでも自分の状態を落ち着いて見つめられるように、と願って書きました。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。つらさが長く続く場合は、心療内科・精神科・カウンセリング等の専門家にご相談ください。


【一言でいうと】ペットロス症候群とは

ペットロス症候群とは、大切なペットを亡くした(あるいは失った)ことで生じる深い悲しみが、心や体、日常の行動にさまざまな形であらわれる状態を指す言葉です。医学的に確立された正式な病名というわけではなく、「大切な存在を失ったときの、ごく自然な悲嘆(グリーフ)反応」を分かりやすく表現したものとして広く使われています。
ペットは家族の一員であり、日々の暮らしそのものです。その存在を失えば、深く悲しむのはむしろ自然なことです。多くの場合、悲しみは時間の流れとともに少しずつやわらいでいきます。一方で、つらさが長く強く続き、日常生活に支障が出るような場合には、専門家の力を借りることが助けになることもあります。この記事は、その両方を落ち着いて見分けるための情報を整理したものです。
主な症状チェックリスト(心・体・行動)

ペットロスにともなう反応は、大きく「心(気持ち)」「体(身体)」「行動」の3つの面にあらわれることがあります。以下は代表的なものを整理したものです。いくつ当てはまるかで良し悪しを測るものではなく、ご自分の状態を言葉にして見つめるための一覧としてご覧ください。
| 分類 | あらわれることのある状態(例) |
|---|---|
| 心(気持ち) | 涙が止まらない/強い喪失感・虚無感/後悔や自責の念(「もっとできたはず」)/怒りやいらだち/何も感じられない放心状態/楽しいと感じられない |
| 体(身体) | 眠れない・眠りが浅い/食欲がわかない・食べられない/疲れやすい・だるさ/頭痛やめまい/動悸/胃の不調 |
| 行動 | 仕事や家事が手につかない/人と会うのがつらい/ペットの写真や思い出の品を見られない(または見続けてしまう)/外出を避ける/ふとした瞬間に姿を探してしまう |
これらは、大切な存在を失ったあとに多くの人が経験しうる自然な反応です。あらわれ方や強さ、続く期間には大きな個人差があります。「自分は涙が出ない」「怒りばかり感じる」といった場合も、悲しみの形はさまざまであり、どれが正しい・間違っているというものではありません。
これは病気?自然な反応との境界

まず知っていただきたいのは、ペットを亡くしたあとの深い悲しみやつらさは、その多くが「異常」ではなく、自然な悲嘆(グリーフ)反応だということです。悲しみが強いこと、涙があふれること、しばらく何も手につかないことは、それだけ深く愛していた証でもあります。ご自分を「弱い」「大げさだ」と責める必要はありません。
一般に、悲しみは直後がもっとも強く、時間の経過とともに波を打ちながら少しずつやわらいでいくといわれています。ある日ふと穏やかな気持ちになれたり、また悲しくなったりを繰り返しながら、自分なりのペースで折り合いをつけていく――それが自然な流れです。
一方で、つらさがやわらぐ気配がなく、むしろ強まっていく、日常生活が立ち行かなくなる、といった状態が長く続く場合には、悲しみが心身に大きな負担を与えているサインかもしれません。その境界を一人で判断するのは難しいものです。次の見出しでは、「専門家への相談を考えてみてもよいかもしれない」という一つの目安を、断定を避けながら整理します。
医療機関の受診を検討する目安

以下は、あくまで「専門家に相談することを考えてみてもよいかもしれない」という一般的な目安です。当てはまるからといって特定の病気であると決まるものではありませんし、当てはまらなくても、つらいと感じたときにはいつ相談していただいても構いません。ご自分やご家族の状態を見つめる際の参考としてご覧ください。
- 強いつらさや不眠・食欲不振などの状態が、2週間以上にわたって続いている
- 仕事・家事・学業など、日常生活に支障が出ている(続けられない・行けない)
- 眠れない、あるいは食べられない状態が続き、体調そのものが心配になっている
- 気持ちがまったく晴れず、何をしても楽しいと感じられない状態が長引いている
- 強い自責の念や、「消えてしまいたい」といった気持ちがわいてくる
- アルコールなどに頼らないと過ごせないと感じる
とくに、「消えてしまいたい」「生きているのがつらい」といった気持ちがあるときは、我慢せず、できるだけ早めに専門家や相談窓口に助けを求めてください。心療内科・精神科のほか、公認心理師などによるカウンセリング、自治体の相談窓口、ペットロス専門のカウンセリングなど、話を聴いてくれる場所があります。相談することは、けっして弱さではありません。
※上記は一般的な情報であり、診断ではありません。ご自身の状態については、心療内科・精神科・カウンセリング等の専門家にご相談ください。
症状がつらいときの対処

つらさのただ中にいるときに「前向きに」と言われても、なかなか難しいものです。ここでは、悲しみを無理に消そうとするのではなく、少しでも心を守りながら過ごすための、ささやかな手立てをいくつかご紹介します。できそうなものだけ、できるときに試していただければ十分です。
1悲しむ気持ちを、そのまま認める
泣きたいときは泣き、悲しいときは悲しんで構いません。「もう泣いてはいけない」と気持ちにふたをするより、悲しみをそのまま感じることが、心の整理につながるといわれています。悲しむことは、愛したことの裏返しです。
2気持ちを言葉にする・書き出す
ノートに思いを書いたり、信頼できる人に話したりすることで、心の中が少し整理されることがあります。うまくまとめようとしなくて構いません。断片的な言葉のままで大丈夫です。
3生活のリズムをゆるやかに保つ
無理のない範囲で、決まった時間に起きる、少しでも食べる、日の光を浴びる――こうした小さなことが、心身の回復を静かに支えてくれます。がんばりすぎず、できる範囲で構いません。
4同じ経験をした人とつながる
ペットロスの経験者が集うコミュニティや、ペットロス専門のカウンセリングでは、気持ちを分かち合える場があります。「分かってもらえた」と感じられることが、支えになることがあります。
5自分を追い込む言葉から離れる
「もっと早く気づいてあげられたら」といった後悔がわくのは自然なことですが、その思いにとらわれ続けると、心の負担が大きくなります。あなたは、できる限りのことをしてきたはずです。
身近な方がペットロスで苦しんでいて、どんな言葉をかけたらよいか迷っている――そんなときは、こちらの記事も参考にしてください。かける言葉に迷う気持ち自体が、思いやりのあらわれです。
よくある質問
まとめ

ペットロス症候群とは、大切な存在を失ったときにあらわれる、心・体・行動のさまざまな反応をあらわす言葉です。その多くは、深く愛したからこその自然な悲嘆であり、時間とともに少しずつやわらいでいきます。一方で、つらさが2週間以上強く続く、日常生活に支障が出る、眠れず食べられない状態が続くといった場合には、心療内科・精神科・カウンセリング等の専門家に相談することが、心を守る助けになります。
どうか、ご自分を責めないでください。深く悲しむことができるのは、それだけ深く愛した証です。悲しみのペースは人それぞれで、正しい形も、早さもありません。この記事が、つらさのただ中にいるあなたが、ほんの少しでも自分の状態を落ち着いて見つめる手がかりになれば幸いです。
あなたの心が、少しずつでも穏やかさを取り戻していきますように。