いつもの場所で眠るように動かなくなってしまった愛犬を前に、何から手をつけたらいいのか分からなくなってしまう——それは、長い時間をともに過ごしてきたからこそ起きる、ごく自然なことです。頭の中が真っ白になったまま、スマートフォンで検索してこのページにたどり着いた方も多いと思います。
この記事では、愛犬が亡くなったあとに「いつ・何をすればいいのか」を時系列のチェックリストとして整理しました。数時間以内にしてあげたい安置のこと、当日から数日のあいだのお別れと火葬の手配、そして30日以内に必要な役所への届出まで。あわせて、急がなくていいことと早めがいいことを分けてお伝えします。今できることは、そう多くありません。ひとつずつで大丈夫です。


一言でいうと、犬が亡くなったあとは「①安置(清拭・姿勢・保冷)→②お別れの時間→③火葬の手配→④死亡届と鑑札の返納→⑤供養」の順で進めます。このうち急ぐのは①の安置だけで、そのほかは落ち着いてから決めても間に合います。
犬が亡くなったあとの流れ|時系列のチェックリスト

まず全体像です。犬が亡くなったあとにすることは、大きく5つに分かれます。ここを一度眺めておくと、「今しなければならないこと」と「あとで決めればいいこと」の区別がつきやすくなります。
| タイミングの目安 | すること | ポイント |
|---|---|---|
| 亡くなってから数時間以内 | ①安置(体を拭く・目と口を閉じる・姿勢を整える・保冷する) | 硬直が始まる前に姿勢を整えると、安らかな寝姿でお別れできます |
| 当日〜翌日 | ②お別れの時間/③火葬の相談・予約 | そばで過ごしながら、火葬の形式を決めて問い合わせを |
| 2〜3日を目安(環境により前後) | ③火葬・お見送り | 合同・個別・立会から選ぶ。気温の高い時期は早めに |
| 亡くなってから30日以内 | ④死亡届の提出と、鑑札・注射済票の返納 | 犬にだけある法律上の手続き(狂犬病予防法) |
| そのあと(期限なし) | ⑤納骨・手元供養など、供養のかたちを決める | 気持ちが動いたときで大丈夫です |
この記事では、それぞれをこのあと順番に見ていきます。ペットの種類を問わない全体の流れをもう一度たどりたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
①安置|体を清めて、姿勢を整えて、冷やす

いちばん最初にしてあげたいのが、安置です。犬の体は亡くなってからおよそ2〜3時間で硬直が始まるといわれ、そのあとは手足を動かしにくくなります。姿勢を整えられるのは、硬直が始まる前のこの時間だけです。どうか気持ちが追いつかないままで構いませんので、次の順にそっと進めてあげてください。
1体をやわらかい布でそっと拭く
ぬるま湯で湿らせたタオルやガーゼで、体全体をやさしく拭いてあげます。強くこすらず、毛並みに沿ってなでるように。汚れが気になる部分は、水分を残しすぎないように最後に乾いた布でおさえます。
2目と口を、指でやさしく閉じる
目が開いたままのことはよくあります。まぶたを指の腹でそっと下ろし、数秒おさえてあげてください。口が開いている場合は、丸めたタオルを顎の下に入れて支えると閉じやすくなります。閉じきらなくても、無理に力を入れる必要はありません。
3手足を胸のほうへ丸め、寝ている姿勢にする
硬直が始まると、伸びたままの姿勢で固まってしまい、棺や箱に納めにくくなります。前足と後ろ足を体のほうへ軽く折り、眠っているような姿勢に整えてあげましょう。抵抗を感じたら、そこで止めて構いません。
4箱やバスケットに、ペットシーツを敷いて寝かせる
体に合った大きさの箱に、ペットシーツやタオルを敷いて寝かせます。口や鼻から体液が出ることがあるため、顔の下にもタオルを一枚重ねておくと安心です。愛用の毛布を添えてあげてもよいでしょう。
5保冷剤やドライアイスを当て、涼しい場所に置く
保冷剤をタオルで包み、お腹・背中・首元など体の厚い部分に当てます。直接当てると結露で毛が濡れてしまうため、必ず布で包んでください。エアコンで室温を下げた、直射日光の当たらない部屋に安置します。
安置ができたら、あとはひと息ついて大丈夫です。硬直がいつ始まり、いつ解けるのかを詳しく知っておきたい方は、次の記事で時間の目安をまとめています。
亡くなった直後に見られる、体の変化について
安置をしていると、思いがけない変化に驚いてしまうことがあります。そのほとんどは、亡くなったあとの体に自然に起こることです。「何かいけないことをしてしまったのでは」と思う必要はありません。
| 見られること | どうしてそうなるか | してあげられること |
|---|---|---|
| 口や鼻から体液・血のような液が出る | 体の力がぬけ、内部にたまっていた水分が流れ出るために起こります | ガーゼやタオルでそっと拭き、顔の下に布を重ねる |
| 便や尿が出る | 筋肉がゆるむために起こる自然な変化です | ペットシーツを敷き、汚れたら取り替える |
| 体がまだ温かい | 体温が下がりきるまでには時間がかかります | そのまま保冷を始めて大丈夫です |
| 体がぴくりと動いたように見える | 筋肉が硬直へ向かう過程で起こることがあります | 心配なときは、かかりつけの動物病院に電話で相談を |
| 目が閉じきらない | まぶたの筋肉がゆるんでいるためです | 無理に閉じず、湿らせたガーゼをそっとのせる |
なお、呼吸や心臓が止まっているかどうかの判断に迷う場合は、自己判断をせず、かかりつけの動物病院に電話で相談してください。診療時間外でも、夜間対応の病院を案内してもらえることがあります。
②お別れの時間|何日まで一緒にいられる?

安置ができたら、そのあとは一緒に過ごす時間です。「すぐに火葬しなければいけない」というきまりはありません。名前を呼んであげたり、好きだったおやつやおもちゃをそばに置いてあげたり、家族の帰りを待ってから見送ったりと、ご家庭のペースで構いません。
ただし、ご遺体は時間とともに変化します。保冷をしたうえで、火葬までの目安は2〜3日程度とされることが多く、気温の高い夏場は1〜2日と短くなります。冬場やエアコンで低温を保てる環境では、もう少し長く安置できる場合もあります。次の点を目安にしてください。
お別れの時間の長さで、愛情がはかられることはありません。「もう少しそばにいたい」も、「早く楽にしてあげたい」も、どちらも大切な気持ちです。
③火葬の手配|形式の選び方と、相談の進め方

犬の火葬には大きく3つの形式があります。お骨を手元に残したいかどうか、そして最後の瞬間まで立ち会いたいかどうか——この2点で選ぶと、迷いにくくなります。
| 形式 | 内容 | お骨の返却 | こんな方に |
|---|---|---|---|
| 合同火葬 | ほかの子と一緒に火葬し、霊園の合祀墓へ納骨される | なし | 費用を抑えたい方・霊園で眠らせたい方 |
| 個別火葬(一任) | その子だけを火葬し、収骨は業者が行う | あり | お骨は残したいが、立ち会いはつらい方 |
| 立会火葬 | その子だけを火葬し、家族が立ち会って骨上げをする | あり | 最後まで見守り、自分の手で骨を拾いたい方 |
犬の火葬費用の目安(体重別)
犬の火葬料金は、体重と火葬形式で決まるのが一般的です。次の表は、編集部が複数のペット火葬事業者の公式料金表を確認した範囲での目安です。地域や事業者によって幅があり、深夜・早朝の対応や骨壷のグレード、返骨のための移動などで追加費用が生じることもあります。
| 体重の目安 | 合同火葬 | 個別火葬(一任) | 立会火葬 |
|---|---|---|---|
| 小型犬(〜10kg程度) | 15,000円〜(税込) | 20,000円〜(税込) | 25,000円〜(税込) |
| 中型犬(10〜20kg程度) | 19,000円〜(税込) | 23,000円〜(税込) | 28,000円〜(税込) |
| 大型犬(20kg以上) | 25,000円〜(税込) | 35,000円〜(税込) | 40,000円〜(税込) |
自治体(市区町村)に引き取りを依頼できる地域もあり、その場合の費用は数千円程度と民間より抑えられることが多い一方、返骨がない、立ち会いができない、廃棄物として扱われるなど、自治体ごとに扱いが大きく異なります。お住まいの市区町村の窓口で確認してから判断してください。
火葬業者を選ぶときに、必ず確認したいこと
ペット火葬の業界には、残念ながら、料金を後から高額に請求する、火葬したと説明しながら適切に扱わない、といったトラブルが実際に報じられてきました。悲しみのなかで冷静に見比べるのは簡単ではありませんが、電話で次の4点を聞くだけでも、大きな安心につながります。
また、火葬の当日は、首輪やハーネス、金属・プラスチックの入ったおもちゃは一緒に入れられないことがほとんどです。棺に入れたいものがある場合は、あらかじめ業者に確認しておくと当日あわてずにすみます。
近くにどんな業者があるのか分からない、深夜や早朝で問い合わせ先が見つからない、といったときは、全国のペット葬儀社を紹介してくれる窓口に相談する方法もあります。費用や対応可能な時間を確認したうえで、依頼するかどうかを決めて構いません。
④死亡届と鑑札の返納|30日以内にする手続き

犬には、猫やほかの動物にはない手続きがあります。犬が亡くなったら、30日以内にお住まいの市区町村へ死亡届を出す必要があります。これは狂犬病予防法にもとづく飼い主の義務で、届出をしないままにすると、翌年以降も狂犬病予防注射の案内が届き続けることになります。
1市区町村の窓口に、犬の死亡届を出す
提出先は、登録している市区町村の担当課(生活衛生課・環境課など)や保健所です。自治体によっては郵送や電子申請(オンライン)にも対応しています。手数料はかからないのが一般的です。
2鑑札と、狂犬病予防注射済票を返納する
死亡届と一緒に、犬の登録時に交付された鑑札と、その年の注射済票を返します。紛失している場合も届出はできますので、窓口でその旨を伝えてください。手元に残して形見にしたいときは、返納が必要かどうかを相談してみましょう。
3マイクロチップを装着していた場合は、登録情報の死亡届出も行う
マイクロチップを登録している場合は、環境省の指定登録機関(公益社団法人日本獣医師会)の登録サイトから、死亡した旨の届出を行います。手数料はかかりません。自治体によっては、マイクロチップの登録が犬の登録を兼ねる特例制度に参加している場合があり、その場合の手続きは市区町村の案内に従ってください。
そのほか、ペット保険に加入している場合は保険会社への連絡、ペット霊園の会員登録などがあれば、そちらの解約手続きも必要になります。いずれも数日遅れて困るものではありませんので、気持ちが落ち着いてからで大丈夫です。
⑤その後の供養|かたちを決める期限はありません

火葬でお骨が戻ってきたあと、どう供養するかに決まりはありません。宗教や宗派を問わず、ご家族が納得できるかたちを選んでよい、というのが今のペット供養の考え方です。代表的な選択肢を挙げておきます。
- 自宅供養(手元供養)——骨壷を自宅に置き、写真や花と一緒に飾る。いちばん多く選ばれている方法です
- ペット霊園への納骨——個別墓・合祀墓・納骨堂など。お参りできる場所がほしい方に
- 樹木葬・自然葬——樹木や花のもとに納骨する形式。霊園によって扱いが異なります
- 遺骨アクセサリー・小さな骨壷——一部のお骨を身につけたり、小さな器に分けて残したりする方法
- 自宅の庭への埋葬——自分の所有地に限られます。深く掘り、雨や動物に掘り返されない配慮が必要です
お骨は、湿気を避けて保管すれば自宅に置いたままでも問題ありません。四十九日や一周忌といった区切りに合わせて納骨する方もいれば、何年も手元に置く方もいます。「いつまでに決めなければならない」という期限はありません。
気持ちの整理と、ペットロスについて
手続きが一段落したころに、かえって深い悲しみが訪れることがあります。涙が止まらない、眠れない、食欲がない、後悔ばかり浮かんでくる——そうした反応は、大切な家族を失ったあとに多くの方が経験するものです。
気持ちの整理に、正解も期限もありません。無理に前を向こうとせず、悲しい日は悲しいままで過ごしてください。写真を整理する、手紙を書く、同じ経験をした人の話を聞くなど、ご自分に合う方法が見つかることもあります。ただし、日常生活に支障が出る状態が長く続く場合は、心療内科やカウンセリングなど専門家に相談してください。ひとりで抱え込まないことが、いちばん大切です。
よくある質問
※本記事の料金は執筆時点(2026年7月)の各社公式サイト情報をもとにした目安です。最新の情報や正確な総額は各公式サイトでご確認ください。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。
まとめ
愛犬が亡くなったあとにすることは、①安置、②お別れの時間、③火葬の手配、④死亡届と鑑札の返納、⑤供養の5つです。このうち急ぐのは、硬直が始まる前の安置——体を拭き、目と口を閉じ、姿勢を整えて保冷すること——だけで、そのほかは落ち着いてからで間に合います。死亡届と鑑札の返納は30日以内、供養のかたちを決める期限はありません。
手を動かしているあいだは考えずにすんでも、すべてが終わったあとに、静けさが押し寄せてくるかもしれません。それは、その子と過ごした時間がそれだけ大きかったということです。どうか、ご自分を責めないでください。あの子が最後まで安心して眠れますように。