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猫が寝たきりになったら|楽な姿勢の作り方と体位変換・床ずれ予防の基本

自分で寝返りが打てなくなった猫を前にすると、「この向きで苦しくないだろうか」「もっと楽にしてあげられる姿勢があるのではないか」と、一日に何度も迷ってしまうものです。眠っているように見えても、体の下になっている側に体重がかかり続けていないか、首が不自然に曲がっていないか、気になって夜中に何度も様子を見に行く方もいらっしゃいます。

寝たきりの猫にとっての「楽な姿勢」は、実はそれほど複雑なものではありません。胸を下にして体を支え、首と背中をまっすぐに保ち、同じ場所に圧がかかり続けないよう定期的に向きを変える——この3つが基本とされています。この記事では、当メディア編集部が、動物病院や獣医師監修の公開情報をもとに、体位のとり方と体位変換の間隔のめやす、床ずれ(褥瘡)の防ぎ方、寝床の整え方、排泄と水分の介助で気をつけたいことを、順に整理してお伝えします。

飼い主さん
18歳の猫が、自分で起き上がれなくなりました。ずっと同じ格好で寝ていて、見ているのがつらくて……。どんな姿勢にしてあげるのがいいのでしょうか。
編集部
毎日そばで見ていらっしゃるからこその心配ですね。一般には、胸を下にした「伏せ」に近い姿勢でクッションに支えてもらい、首と背中がまっすぐになるように整えるのが楽だとされています。そのうえで、数時間ごとに向きを変えて同じ場所に体重がかかり続けないようにします。間隔や体の支え方はその子の状態で変わりますので、かかりつけの動物病院にも一度確認してみてください。

一言でいうと、寝たきりの猫が楽に過ごせる姿勢は「胸を下にして体を支え、首と背中をまっすぐに保ち、数時間ごとに向きを変える」ことが基本とされています。アニコム損害保険の解説では、体の向きを変える間隔として2〜3時間に一度くらいが望ましいとされていますが、適した間隔はその子の状態によって変わるため、かかりつけの動物病院に確認しておくと安心です。

寝たきりの猫にとって「楽な姿勢」とはどんな姿勢か

猫が自分で体勢を変えられるうちは、暑ければ伸び、寒ければ丸まり、苦しければ自分で楽な向きを探します。寝たきりになるということは、その「自分で選ぶ力」が弱まっている状態です。だからこそ、飼い主さんが体を支える形が、そのまま呼吸のしやすさや体への負担に直結します。

寝たきりの猫の伏臥位と横臥位の違い、体を支えるポイントを示した図解
寝たきりの猫の体位のとり方のめやす(当メディア編集部作成)

基本は胸を下にした「伏せ」に近い姿勢

お腹を下にして前足を前に伸ばした、いわゆる「伏せ」に近い姿勢は、胸がまっすぐ下を向くため肺がふくらみやすく、寝たきりの子でも比較的呼吸がしやすいとされる体勢です。ただし、寝たきりの猫は自力でこの姿勢を保てないことがほとんどなので、丸めたタオルやクッションを胸の下と体の横に添えて、崩れないように支えてあげる必要があります

ぐらぐらと傾いてしまう場合は、無理に伏せの形を作ろうとせず、次に説明する横向きと組み合わせながら、その子がいちばん落ち着いて呼吸できる形を探していきます。

横向き(横臥)は、圧が一点に集まりやすい

体を横たえた姿勢は、猫にとっても飼い主さんにとっても楽に見えますが、肩・腰・かかとなど、骨が出っ張って皮膚が薄い部分に体重が集中しやすいという面があります。アニコム損害保険の解説では、褥創(じょくそう=床ずれ)ができやすい場所として、肩や腰、かかと、膝、頬が挙げられています。横向きにする時間帯があっても構いませんが、そのぶん向きを変えるタイミングを意識しておきたいところです。

毛布の上で静かに眠る高齢の猫のイメージ
写真はイメージです

首と背中が一直線か、あごが浮いていないかを見る

姿勢を整えるときに見落とされがちなのが、首の角度です。枕が高すぎてあごが胸につくほど曲がっていたり、逆に低すぎて首がのけぞっていたりすると、気道が狭くなって呼吸がしづらくなることがあります。横から見たときに、鼻先から背中にかけてゆるやかな一直線になっているかどうかを目安にして、タオルの厚みで微調整してみてください。

また、寝たきりの子は前足や後ろ足が不自然にねじれたままになっていることがあります。関節が突っ張っていないか、下になった足が体に踏まれていないかも、向きを変えるたびに確認しておくと安心です。

体位変換のやり方と、間隔のめやす

体位変換(寝返りの介助)は、床ずれを防ぐうえでもっとも基本となるケアです。難しい手技ではありませんが、痛みのある部位や点滴・カテーテルが入っている場合は動かし方に注意が必要なので、最初のやり方は動物病院で見てもらえると安心です。

横になった猫の背中をそっとなでる飼い主のイメージ
写真はイメージです

間隔については、公開されている情報で次のようなめやすが示されています。数字はあくまで一般的な目安であり、褥瘡がすでにある場合や痛みがある場合はもっと短い間隔がすすめられることもあります。

状況 向きを変える間隔のめやす 出典・補足
一般的な寝たきりのケア 2〜3時間に一度 アニコム損保「どうぶつのターミナルケア」(猫)
通常のベッド・寝具の場合 2時間ごと ALL動物病院グループ(犬猫の介護解説)
体圧分散の介護マットを使う場合 4時間ごと 同上。マットの上に布団を重ねない
床ずれや痛みがある場合 上記より短い間隔 具体的な間隔はかかりつけの動物病院に確認を

夜通し2時間おきに起きることは、多くのご家庭で現実的ではありません。体圧を分散するマットを使う、日中はこまめに、夜はできる範囲で、という形に切り替えているご家庭もあります。介護は続けられることがいちばん大切なので、無理のない間隔を獣医師と一緒に決めておくと、気持ちの負担も軽くなります。

1声をかけてから、ゆっくり動かす

眠っているところを急に動かすと驚かせてしまいます。名前を呼び、体に手を添えて「向きを変えるよ」と伝えてから、ゆっくりと動かします。

2頭と腰を同時に支えて、体をねじらない

片手を肩や胸の下に、もう片方の手を腰に添え、体が丸太のように一体のまま回るように動かします。頭だけ・腰だけを持ち上げると、背中や関節に負担がかかります。

3支えのタオルを入れ直す

向きを変えたら、胸の下・背中側・足の間に丸めたタオルを入れ直し、姿勢が崩れないようにします。骨が出っ張った部分の下には、やわらかいものを当てておきます。

4下になっていた側の皮膚を見る

向きを変えたタイミングは、皮膚を観察する機会でもあります。赤み・脱毛・湿り気がないかを見て、必要なら体を拭いて乾かします。

床ずれ(褥瘡)ができやすい場所と、防ぎ方

床ずれは、体重で圧迫された部分の血流が悪くなり、皮膚や皮下の組織が傷んでしまう状態とされています。獣医師監修の解説では、はじめは皮膚が赤くなったり薄くなったりする程度でも、進行すると滲出液が出て、深い傷になり感染を起こすことがあると説明されています(出典:ペットスマイルニュース「猫の床ずれの症状、原因、予防法は?」(獣医師監修))。

飼い主の手のひらにそっとのせられた猫の前足のイメージ
写真はイメージです

できやすいのは、骨が出っ張っていて脂肪や筋肉の少ない部分です。痩せてきた高齢の猫では、以前は気にならなかった場所にも圧がかかるようになります。

できやすい部位 圧がかかりやすい場面 家庭でできる工夫
肩・肘 横向きで下になったとき 体の下に薄いクッションを差し込み、面で支える
腰・骨盤まわり 横向き・伏せのどちらでも やわらかいタオルを敷き、向きを定期的に変える
かかと・膝 足が伸びたまま床に当たるとき 足の間にタオルをはさみ、直接床に当てない
頬・あご 頭を床につけたまま長時間過ごすとき 低めの枕で頭の位置を分散させる

予防の柱は、こまめな体位変換に加えて、皮膚を清潔で乾いた状態に保つことと、圧がかかる部分にタオルやクッションを当てて逃がすこととされています。低反発のマットや、ペット用の体圧分散マットを使う方法も紹介されています。湯たんぽやペットヒーターで温める場合は、自分で逃げられない状態では低温やけどが起こりやすいため、直接肌に当てず、タオルで包んで距離をとることが大切です

皮膚が赤くなってきた、じくじくと液が出ている、出血しているといった変化に気づいたときは、家庭でのケアだけで様子を見ず、早めに動物病院で診てもらってください。傷の手当ての方法は状態によって変わり、自己判断で市販の薬を塗ることはすすめられていません。

楽に眠れる寝床の作り方と、部屋の環境

姿勢を整えても、寝床が硬すぎたり冷えていたりすると、猫は落ち着いて眠れません。寝たきりの介護では、寝床そのものが一日の大半を過ごす生活空間になります。

寝たきりの猫の寝床の作り方と室温・湿度の目安を示した図解
寝たきりの猫の寝床づくりのめやす(当メディア編集部作成)

敷くものは「沈み込みすぎない、洗える、乾く」

体が沈み込みすぎるやわらかい布団は、一見楽そうに見えて、実は姿勢が崩れて呼吸がしづらくなることがあります。適度な厚みで体を面で支えられるものを土台にして、その上に洗い替えのできるタオルやペットシーツを重ねる形が扱いやすい構成です。粗相や滲出液で汚れることを前提に、上に重ねる布は何枚か用意しておくと、交換のたびに慌てずにすみます

なお、体圧分散をうたう介護マットを使う場合、その上にさらに敷布団やクッションを重ねると分散の効果が働きにくくなるとされています(出典:ALL動物病院グループ「介護の準備・方法 〜排泄 寝たきりの介助編〜」)。マットの使い方は製品の説明に沿って確認してみてください。

室温と湿度は、猫がいる高さで測る

自分で暖かい場所へ移動できない猫にとって、部屋の温度は飼い主さんが管理するしかないものになります。アニコム損害保険の解説では、冬場は20度以下にならないようにし、湿度は40〜60%くらいを目安にすることが紹介されています。エアコンの設定温度ではなく、猫が寝ている床に近い高さで温度を確かめておくと、実際の環境とのずれに気づけます。

置き場所は「家族の気配が届くところ」

静かなほうがよいだろうと別室に寝床を移すと、猫が不安になったり、変化に気づくのが遅れたりすることがあります。テレビの音が直接当たらない程度に離れつつ、家族の姿や声が届く場所が、猫にとっても飼い主さんにとっても過ごしやすいことが多くなっています。直射日光やエアコンの風が直接当たらないかも合わせて確認しておきます。

排泄の介助と、お尻まわりを清潔に保つこと

寝たままの排泄が増えてくると、皮膚のトラブルとにおいの両方が気になってきます。アニコム損害保険の解説では、赤ちゃん用のおねしょシーツとトイレシーツを組み合わせて体の下に敷く、紙オムツを使うといった方法が紹介されており、排泄後はなるべく早く取り換えて体を清潔に保つことがすすめられています。お尻まわりの毛を短くカットしておくと、汚れの処理がぐっと楽になります。

動物病院で猫の体をやさしく診察する獣医師のイメージ
写真はイメージです

ここで、ひとつだけ気をつけていただきたいことがあります。お腹を外から押して排尿をうながす「圧迫排尿」や、便を出すためのマッサージ・浣腸は、家庭で自己流に行う手技ではないとされています。同じ解説でも、圧迫排尿は初めは動物病院で指導してもらうこと、排便の介助も動物病院で指導してもらうことが重要だと明記されています。膀胱の位置や力の加減を誤ると体を傷めるおそれがあるため、必要かどうかの判断も含めて、必ず獣医師に相談してください。

また、丸一日おしっこが出ていない、お腹が張って苦しそう、といった様子があるときは、家庭での対応を探すよりも先に動物病院へ連絡することがすすめられています。

水分と食事の介助で気をつけたいこと

寝たきりの猫のケアで、姿勢がもっとも大きく関わってくるのが食事と水分の介助です。横になったまま、あるいはあごを上に向けた状態で口に入れると、食べものや水が気道に入り込む誤嚥(ごえん)につながるおそれがあるとされています。

窓辺のクッションに体をあずけて休む猫のイメージ
写真はイメージです

そのため、介助のときは可能な範囲で上半身を起こし、胸を下にした伏せに近い姿勢でクッションに支えてもらい、頭が体より少し高くなるように整えます。あごを持ち上げて上を向かせる形は避けたい姿勢です。動物病院の解説でも、シリンジで流動食を与える場合は頭を上げた姿勢で、飲み込んだことを確認しながら少しずつ入れることが大切だと説明されています。

水も同じで、一度に多く含ませると危険です。口の端からごく少量ずつ入れ、のどが動いて飲み込んだのを確かめてから次を入れます。むせる、鼻から出る、呼吸の音が変わるといった様子があれば、そこでいったん中止して、動物病院に相談してください。食べる量が減っているときの流動食や強制給餌の可否、皮下点滴が必要かどうかも、自己判断ではなく獣医師と決めていく領域です。

食後しばらくは、すぐに寝かせず頭を高くした姿勢を保ち、吐き戻しやむせがないかを見守ると安心とされています。

姿勢の変化が知らせるサインと、受診の目安

寝たきりの猫の姿勢は、体調の変化を映す鏡でもあります。いつもと違う体勢をとり続けているときは、その姿勢が「楽だから」ではなく「そうしないと苦しいから」であることがあります。

眠る猫のそばに静かに寄り添う飼い主のイメージ
写真はイメージです

とくに、横になれずに伏せたまま首を前に伸ばしている、口を開けて呼吸している、肩で息をしている、といった様子は、呼吸がつらいときのサインとして挙げられており、緊急性が高いと考えられています。猫は本来、鼻で呼吸する動物です。口を開けての呼吸が続く場合は、時間帯を問わず動物病院へ連絡することがすすめられています。

このほか、体を丸めて震えている、触ろうとすると強く嫌がる、半日以上まったく排尿がない、皮膚に新しい傷や出血がある、といった変化も、受診の目安になります。判断に迷うときは、様子を動画に撮っておくと、電話で相談する際にも診察の際にも伝わりやすくなります。

そして、介護が長く続くなかで、いつかは来るその日のことが頭をよぎることもあると思います。あらかじめ流れを知っておくことは、そのときの負担をやわらげる静かな備えになります。

また、お別れのあとに訪れる悲しみは、長く介護を続けた方ほど深くなることがあるといわれています。ご自身の気持ちの揺れに戸惑ったときは、その感情がどのようなものかを知ることが、支えになることがあります。

よくある質問

Q体位変換は何時間おきに行えばよいですか?

A一般的なめやすとして、2〜3時間に一度くらいの割合で体の向きを変えることが望ましいとされています。体圧分散の介護マットを使う場合は4時間ごととする解説もあります。ただし、床ずれがすでにある場合や痛みがある場合は、より短い間隔がすすめられることもあり、適した間隔はその子の状態によって変わります。夜間も含めてどこまで行うかを含め、かかりつけの動物病院に確認しておくと安心です。

Q横向きと伏せ、どちらの姿勢で寝かせるのがよいですか?

A胸を下にした伏せに近い姿勢は肺がふくらみやすいとされ、基本の体勢として紹介されることが多い姿勢です。一方で、同じ姿勢を長く続ければどちらでも圧が集中します。伏せを基本にしつつ、横向きの時間も織りまぜ、数時間ごとに向きを変えていくのが現実的です。呼吸が苦しそうな様子があるときは、姿勢を工夫する前に動物病院へご相談ください。

Qおしっこが出ていないとき、お腹を押してあげてもよいですか?

Aお腹を押して排尿をうながす圧迫排尿は、家庭で自己流に行う手技ではないとされています。膀胱の位置や力の加減を誤ると体を傷めるおそれがあり、必要かどうかの判断も含めて、まず動物病院で相談し、行う場合も指導を受けてから行うことが重要だと説明されています。排尿が長く止まっている場合は緊急性が高いこともあるため、早めに連絡してください。

Q夜中まで体位変換を続けるのがつらいのですが、どうすればよいでしょうか。

A介護は続けられることが何より大切です。体圧分散マットを使って間隔を延ばす、日中にこまめに行って夜は無理のない範囲にする、家族で当番を分ける、往診や預かりのサービスを検討するなど、負担を減らす方法はいくつかあります。どこまで行うのが望ましいかは、その子の状態によって変わりますので、遠慮なくかかりつけの動物病院に現状を伝えてみてください。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。

まとめ

寝たきりの猫にとっての楽な姿勢は、胸を下にして体を支え、首と背中をまっすぐに保つこと、そして同じ場所に圧がかかり続けないよう定期的に向きを変えることが基本とされています。体位変換の間隔は2〜3時間に一度くらいが一般的なめやすとして紹介されていますが、その子の状態によって適した間隔は変わるため、かかりつけの動物病院と決めておくと迷いが減ります。

床ずれは肩・腰・かかと・膝・頬など骨の出っ張った部分にできやすく、こまめな体位変換と、清潔で乾いた皮膚、圧を逃がすタオルやマットが予防の柱になります。排泄の介助のうち圧迫排尿や浣腸は獣医師の指導が前提であること、食事と水は伏せに近い姿勢で少しずつ与えることも、覚えておいていただきたい点です。

毎日何度も向きを変え、汚れを拭き、眠りを見守る日々は、決して楽なものではありません。それでも、あなたが整えたタオルの厚みひとつで、あの子の呼吸は確かに楽になっています。どうかご自身の体もいたわりながら、その子と過ごす時間が穏やかでありますように。

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