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犬が寝たきりになってからの期間|どれくらい続くのか、いま知っておきたいこと

朝、いつもの場所でその子が横になったまま、こちらを見ています。呼べば尻尾の先が少し動く。けれど、自分では起き上がれない。——愛犬が寝たきりになった日から、飼い主さんの一日は形を変えます。

そして多くの方が、口には出さないまま同じことを考えます。「この状態は、あとどれくらい続くのだろう」。それは冷たい問いではありません。心の準備をしたい、仕事をどう調整するか決めたい、遠くにいる家族をいつ呼べばいいのか知りたい——どれも、その子を大切に思うからこそ浮かぶ問いです。

この記事では、当メディア編集部が動物病院や獣医師が公開している解説を調べ、「寝たきりになってからの期間」について分かっていること・分かっていないことを、正直に整理しました。あわせて、期間を左右する要素と、介護の日々を続けていくための工夫、そして看取りが近づいたときのサインまでをお伝えします。

飼い主さん
先週から愛犬が立てなくなりました。ネットで「寝たきりになったら余命は」と検索してしまう自分がいて…。あとどれくらいなのか、目安だけでも知りたいんです。
編集部
その気持ちを、まっすぐお伝えしますね。編集部が調べた範囲では、「寝たきりになってから平均◯か月」とお伝えできる確かな情報は見つかりませんでした。ごまかさずに書きます。そのうえで、期間を左右する要素と、いま手元でできることを一つずつご案内します。

一言でいうと、犬が寝たきりになってからの期間には、信頼できる平均値が見当たりません。数日で見送ることもあれば、一年以上をともに過ごす例もあり、背景の病気や食べられるかどうかで大きく変わります。

犬が寝たきりになってからの期間は、どれくらいなのでしょうか

毛布の上で横になっているシニア犬と、そばに寄り添う飼い主の手
写真はイメージです

最初に、いちばん知りたいことへお答えします。「犬が寝たきりになってから何日、何か月生きられるか」を示す、信頼できる数字は見つかりませんでした。「平均3か月」といった数値を掲げている情報も見かけますが、出典をたどれるもの、調査の方法が示されているものに行き当たらなかったためです。

「平均◯か月」とお伝えできる確かな情報は見つかりませんでした

理由は、いくつか重なっていると考えられます。ひとつは、「寝たきり」の定義そのものが定まっていないことです。支えれば立てる子も、まったく動けない子も、日常では同じ「寝たきり」と呼ばれます。数え始める日が人によって違えば、期間も比べようがありません。

もうひとつは、寝たきりが病名ではなく状態だということです。心臓の病気で急に立てなくなった子と、関節の衰えで少しずつ起き上がれなくなった子とでは、その後の時間の流れがまったく違います。「寝たきり」というひとくくりで平均を出しても、目の前のあの子には当てはまりません。

ですから、この記事では数字を作りません。代わりに、あの子がいまどのあたりにいて、これから何が起こりうるのかを見立てる材料をお渡しします。そのほうが、心の準備にも、暮らしの段取りにも役立つはずです。

それでも「あとどれくらい」を知りたいのは、自然なことです

余命を検索してしまう自分を、責めないでください。知りたい理由は、たいてい愛情の側にあります。

  • いつか来る日に、心の準備をしておきたい
  • 仕事の休みや在宅の日を、いつ・どれくらい取ればいいのか決めたい
  • 遠方の家族や、あの子をかわいがってくれた人を、いつ呼べばいいのか知りたい
  • この介護があと何か月続くのか分からないまま走り続けるのが、少し怖い

どれも、ごく現実的で切実な事情です。数字が出せない代わりに、この記事の後半では「看取りが近いサイン」と「かかりつけの獣医師に聞いておくとよいこと」をまとめました。そちらのほうが、平均値よりもずっと確かな手がかりになります。

同じ「寝たきり」でも、状態はさまざまです

寝たきりの状態を4段階に分けた図解。支えれば立てる、自分で寝返りは打てる、日によって違う、自力では動けない
「寝たきり」と呼ばれる状態の幅(当メディア編集部作成)

期間の話をする前に、確かめておきたいことがあります。あの子はいま、どの段階にいるでしょうか。同じ「寝たきり」でも、必要な手当ても、これからの時間の流れ方も違います。

寝たきりの状態を四つに分けて見る

状態 できること 主に必要になる手当て
支えれば立てる 腰を支えると立ち、数歩は歩ける。自力での起き上がりが難しい 立ち上がりの介助、滑らない床、支える側の腰を守る工夫
自分で寝返りは打てる 立てないが、体の向きは自分で変えられる。飲み食いは自力でできることが多い 寝床づくり、食器の高さの調整、排泄の場所の見直し
日によって状態が違う 立てる日と立てない日がある。時間帯によっても差が出る 日々の記録、変化があったときの受診
自力では動けない 体位を変える、姿勢を保つ、水を飲むことにも手が要る 体位変換、食事と水分の介助、床ずれと誤嚥への備え

この表は医学的な分類ではなく、介護の手間を見立てるための整理です。「支えれば立てる」段階と「自力では動けない」段階では、一日にかかる時間も、飼い主さんの体力の減り方もまったく違います。いまの段階を言葉にしておくと、獣医師に相談するときにも伝えやすくなります。

「今日は立てた」という日があること

寝たきりは、一方向に進むとは限りません。高齢の犬に比較的多い特発性前庭疾患では、斜頸(首が傾く)やふらつき、転倒して起き上がれないといった症状が前触れなく急に現れることがあります。ペットフードメーカーのヒルズが公開している解説によれば、この病態は「2〜3週間以内に自然に治まることが多く」とされ、時間をかけて症状が和らいでいく例があります(同社サイト「犬のふらつきは前庭疾患の前兆か」より・執筆時点)。

ただし、同じように突然立てなくなる症状の裏に、脳の病気など別の原因が隠れていることもあります。同解説でも、平衡感覚に突然問題が生じたときはできるだけ早く獣医師に相談することがすすめられています。「年だから」と決めてしまう前に、一度診てもらう価値があります。

寝たきりの期間を左右するもの

動物病院の診察台で獣医師にやさしく触れられている犬
写真はイメージです

平均値はありませんが、「何によって変わるのか」は整理できます。ここを押さえておくと、獣医師との話も具体的になります。

背景にある病気

寝たきりは結果であって、原因ではありません。何によって立てなくなったのかで、その後の経過は大きく変わります。

  • 関節や筋力の衰え:ゆっくり進むことが多く、介護の期間も長くなりやすい傾向があります
  • 椎間板ヘルニアなど神経の病気:治療やリハビリで動きが戻る例もあります
  • 特発性前庭疾患:急に立てなくなり、時間をかけて和らぐことがあります
  • 心臓・腎臓などの内臓の病気:全身の状態に左右され、経過が読みにくくなります
  • 認知機能の低下:アニコム損保の解説(監修:箱崎加奈子獣医師)では、昼夜逆転や夜鳴き、旋回といった変化が挙げられており、体は動くのに介護の負担が重くなる場合があります

診断がついている場合は、その病気の見通しをかかりつけの獣医師に確認するのがいちばん確かです。診断がついていないなら、それを確かめることが最初の一歩になります。

食べられるか、飲めるか

介護の現場で、経過を大きく分けるのが「口から食べられるか」「水を飲めるか」です。食欲があるのに立てないだけ、という状態であれば、支えながらの時間が長く続くことも珍しくありません。

獣医師の石川太郎氏による解説では、首の筋力が落ちると床の食器まで顔を下げるのが大変になるため、少し高さのある台に食器を乗せると食べやすくなると紹介されています。水分については、スポイトなどを使って口に入れる方法が挙げられています。飲み込む力そのものが落ちているときは、与え方を獣医師に確認してから始めてください。

床ずれ・誤嚥性肺炎などの合併

寝たきりの期間を短くしてしまう要因として、繰り返し挙げられるのが床ずれ(褥瘡)と誤嚥性肺炎です。

床ずれについて、キュティア老犬クリニック(横浜市青葉区)は、頬・肩・腰・前後の足首など骨が出っ張っている部分が寝床と接して圧迫されやすいとしたうえで、「2〜3時間おきに体位変換をして、圧迫される部分が集中しないようにする必要があります」と説明しています。低反発素材のマットやクッションで体圧を分散させる方法も紹介されており、床ずれになったと思ったらなるべく早く動物病院へ、とされています。

誤嚥性肺炎については、前述の石川獣医師の解説で、年をとって飲み込む力が弱くなると食べた物が気管に入りやすくなり、それが肺で炎症を起こす誤嚥性肺炎は老犬によく見られる、と説明されています。食事のときに頭を少し起こしてあげる、といった姿勢の工夫が語られるのはこのためです。

どちらも、起きてからでは負担が大きくなります。いま元気に見えていても、寝床と食事の姿勢を整えておくことが、結果としていちばんの時間稼ぎになります。

介護の日々は続きます——飼い主さんの生活を守るために

介護を続けるための四つの工夫の図解。時間はアラームに預ける、寝床で手間を減らす、預け先を調べる、ひとりで背負わない
介護の日々を続けるための四つの工夫(当メディア編集部作成)

ここからは、あの子ではなく飼い主さんのための話です。寝たきりの介護は、数か月に及ぶことがあります。2〜3時間おきの体位変換、夜鳴きへの対応、排泄の始末。眠れない日が続けば、どんなに愛情があっても人は消耗します。それは弱さではありません。

1時間の管理は、記憶ではなくアラームに預ける

体位変換や水分の時間を「覚えておこう」とすると、休んでいる間も気が休まりません。スマートフォンのアラームに任せて、鳴るまでは休む。それだけで眠りの質が変わります。

2寝床を整えて、あとの手間を減らす

体圧を分散するマットと、洗い替えのあるシーツ。寝床が整うほど床ずれの心配も洗濯の回数も減り、毎日の手当てが軽くなります。道具に働いてもらう発想でかまいません。

3手を抜いていい部分を、はっきり決めておく

全身を洗う代わりに拭くだけにする、手作りの食事を毎回はやめる。省いていい日をあらかじめ決めておくと、省いたときに自分を責めずにすみます。

4限界が来る前に、預け先の連絡先を控えておく

倒れてから探すのは大変です。老犬ホーム、ペットホテル、訪問のケア。使う予定がなくても、電話番号を一つ控えておくだけで気持ちの余裕が変わります。

床に座って寝ている犬をなでながら休んでいる飼い主
写真はイメージです

預け先を頼るのは、あきらめではありません

前出の石川獣医師の解説でも、疲れたときはかかりつけの獣医師に相談したり、老犬ホームを頼ってみることがすすめられています。数日だけ預けて眠る、という選択は、そのあとの数か月を支えるための現実的な手段です。

預け先を選ぶときは、第一種動物取扱業の登録があるかどうかを必ず確認してください。環境省の解説によれば、顧客の動物を保管を目的に預かる業(ペットホテル、ペットシッターなど)は第一種動物取扱業にあたり、事業所・業種ごとに都道府県知事または政令指定都市の長の登録を受けなければならないとされています。登録業者には標識や名札(識別票)の掲示も義務づけられているため、店頭やウェブサイトで確認できます。

預け先に確認しておきたいこと

  • 第一種動物取扱業の登録番号(標識・ウェブサイトに掲示されているか)
  • 寝たきりの犬を受け入れた経験があるか、体位変換や投薬に対応できるか
  • 提携している動物病院があるか、急変時の連絡の手順
  • 面会や様子の報告の頻度

家族のなかで、役割を分ける

ひとりが全部を抱えると、その人が倒れた時点で介護そのものが止まります。夜間だけ交代する、週末は別の人が担当する、通院の送り迎えだけ頼む——完全に平等でなくてかまいません。抱えている人が眠れる時間を、意図してつくることが目的です。

遠方の家族に事情を伝えておくことにも意味があります。「もしものときに来てほしい」と早めに話しておけば、いざというときに慌てずにすみます。

看取りが近づいているときのサイン

夕暮れの窓辺で静かに時間を過ごす人と犬のシルエット
写真はイメージです

平均の日数よりも、目の前のあの子の様子のほうが確かな手がかりになります。「いぬのきもち」獣医師相談室の岡本りさ獣医師による解説では、犬が亡くなる前に見せる兆候として、次のような変化が挙げられています。

  • 元気、食欲がなくなる
  • 体温が下がる
  • 意識が朦朧とし反応が鈍くなる
  • 排泄のコントロールができなくなる
  • 呼吸や脈が乱れる
  • 立てなくなる

ただし、同じ解説では「呼吸が早い」「立てない」「意識が朦朧としている」「発作が起きている」「粘膜の色が白い、もしくは紫になっている」は、様子を見ずにすぐ受診すべき症状としても挙げられています。看取りの時期に見えても、治療で楽にできる状態が隠れていることがあるためです。判断に迷ったら、迷ったまま連絡してかまいません。

それでも、いよいよという時間が近づいたと感じたら、静かな場所を整えて、そばにいてあげてください。声をかけながら体をなでる。それ以上のことは、たいてい必要ありません。

いま、獣医師に聞いておきたいこと

人の手のひらにそっと乗せられた犬の前足
写真はイメージです

期間の見通しをいちばん具体的に語れるのは、あの子を診ている獣医師です。次回の受診のときに、聞いておくとよいことを整理しました。メモに書いて持っていくと、限られた診察時間でも聞き漏らしません。

診察のときに聞いておくとよいこと

  • いま立てないのは、何が原因と考えられますか
  • 治療やリハビリで、動きが戻る可能性はどれくらいありますか
  • 今後、どんな変化が起きたら連れてくればよいですか
  • 食事と水分は、いまの状態ならどう与えるのがよいですか
  • 痛みや苦しさを和らげる方法はありますか
  • 夜間や休診日に急変したとき、どこに連絡すればよいですか
  • 往診や訪問のケアはお願いできますか

「あとどれくらいですか」と直接たずねてもかまいません。断言はできないと前置きされるはずですが、その子の状態を見ている人の言葉は、ネットのどんな平均値よりも参考になります。

狂犬病予防注射をどうするか

寝たきりになると、毎年の狂犬病予防注射をどうするか迷う方が多くいらっしゃいます。飼い主には年1回の予防注射を受けさせる義務がありますが、老齢や病気などの理由で獣医師が注射を猶予すべきと認めた場合には、獣医師が発行する「狂犬病予防注射実施猶予証明書」を自治体に提出する仕組みがあります。長野市の案内では、猶予期間は証明発行日から発行年度末まで(最長1年間)とされ、電子申請・郵送・保健所窓口で提出できると案内されています。

手続きの名称や提出方法は自治体によって異なりますので、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。まずはかかりつけの獣医師に、いまの状態で接種してよいかを相談するところからで大丈夫です。

よくある質問

Q寝たきりになった犬が、また歩けるようになることはありますか

A原因によってはあります。高齢犬に比較的多い特発性前庭疾患のように、時間をかけて症状が和らぐことがある病態もありますし、椎間板ヘルニアなど治療やリハビリで動きが戻る例もあります。一方で、加齢による筋力の衰えが背景にある場合は、元どおりまで戻るのが難しいこともあります。まずは原因を獣医師に確かめることをおすすめします。

Q仕事で日中は留守にします。水はどうすればよいでしょうか

A自力で顔を上げて飲めるかどうかで方法が変わるため、与え方は獣医師に確認してください。自力で飲める場合は、寝ている位置から届く高さに浅めの器を置く、こぼれても寝床が濡れないようにする、といった工夫が挙げられます。自力では難しい場合、留守番中に水分を摂らせること自体が難しくなるため、帰宅後の与え方や、点滴などの選択肢を含めて相談されるのが安心です。

Q食欲はあるのに立てません。これは寿命が近いということでしょうか

A食べられている状態は、体力が保たれているひとつの目安です。ただし、立てない原因が何かによって今後の見通しは変わりますので、「食欲があるから大丈夫」とも「立てないから終わりが近い」とも決めつけないでください。いつからどう立てなくなったかを記録して、受診時に伝えるのが役立ちます。

Q夜鳴きが続いて、家族も眠れません。どうすればよいでしょうか

A夜鳴きの背景には、痛みや不快感、認知機能の低下、昼夜逆転などさまざまな要因が考えられます。アニコム損保の解説(監修:箱崎加奈子獣医師)でも、昼夜逆転や夜鳴きは認知機能の低下に伴って見られる変化として挙げられています。原因によって対応が変わりますので、我慢せず動物病院にご相談ください。介護する側が眠れないこと自体が、相談してよい理由になります。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。

まとめ

犬が寝たきりになってからの期間について、「平均◯か月」とお伝えできる確かな情報は見つかりませんでした。数日のこともあれば、一年を超えてともに過ごす例もあります。その幅を決めるのは背景の病気であり、食べられるか・飲めるかであり、床ずれや誤嚥性肺炎といった合併の有無です。

だからこそ、平均値を探すより、いまのあの子の段階を言葉にして、獣医師に見通しをたずねるほうが確かです。そして同じくらい大切なのが、飼い主さんが眠れる時間を確保することです。手を抜いていい部分を決め、預け先を調べ、家族で分ける。介護が続くほど、支える人の体力が、そのままあの子の時間の質になります。

あとどれくらいかを知りたかった気持ちも、含めて全部、愛情です。残された日々が、その子にとっても、あなたにとっても、静かであたたかいものでありますように。

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