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犬の床ずれ|できやすい部位と初期のサイン・寝たきりの子の予防とケア

自分で寝返りが打てなくなった愛犬の体を、そっと抱えて向きを変える。おむつを替えるたびに、皮膚の色を確かめてしまう。そんな毎日を送っていらっしゃる方にとって、床ずれ(褥瘡)は「気をつけていても、いつの間にかできているのではないか」という不安がずっと消えないものだと思います。

床ずれは、長く同じ姿勢でいることで血管が圧迫され、血流が滞って皮膚がただれたり傷になったりする状態のことです。寝たきりになった犬に起こりやすく、いったん深くなると治りにくいこともあります。けれど、できやすい場所とはじまりのサインを知っておくと、早い段階で気づける可能性は高くなります。

この記事では、犬の床ずれができやすい部位、赤みや脱毛といった初期のサイン、寝たきりの子のためにご自宅でできる予防を、動物病院や介護の専門サイトが公開している情報をもとに整理しました。あわせて、介護を続けるご家族ご自身の体と心を守ることについても触れています。処置の方法をお伝えするものではありません。皮膚に変化が出たときは、どうか自己判断で対処なさらず、かかりつけの動物病院にご相談ください。

飼い主さん
寝たきりの老犬の腰のあたりが、少し赤くなっている気がします。これは床ずれのはじまりでしょうか。どう手当てすればいいのか分からなくて不安です。
編集部
赤みは、床ずれのごく初期に見られるサインのひとつとされています。ご自宅でできるのは「圧を逃がすこと」と「清潔と乾燥を保つこと」までで、消毒や薬をどうするかは獣医師の判断が必要な領域です。この記事では、できやすい部位と予防の考え方、そして受診の目安を静かに整理してお伝えします。

一言でいうと、犬の床ずれは肩・肘・腰・かかとなど「骨が床に当たる場所」にでき、赤みや毛が薄くなることから始まるとされています。予防の柱は、2〜3時間ごとの体位変換と体圧分散、そして皮膚を清潔で乾いた状態に保つことです。

犬の床ずれ(褥瘡)とは|寝たきりの子に起こりやすい理由

床ずれは、医学的には褥瘡(じょくそう)と呼ばれます。市川市・鎌ケ谷市のALL動物病院グループの解説では、長時間同じ姿勢でいることによって血管が圧迫され、血流が滞ることで皮膚組織がただれたり傷になったりする状態と説明されています。進行すると皮膚がはがれ、表面から体液が出てじゅくじゅくとした状態になり、感染を起こしやすくなるとされています(ALL動物病院グループ)。

寝床で静かに横になっているシニア犬と、そばに寄り添う飼い主の手
写真はイメージです

健康な犬は、寝ていても無意識に少しずつ体の位置を変えています。ところが後ろあしに力が入らなくなったり、立ち上がれなくなったりすると、その「自然な寝返り」ができなくなります。同じ面が床に接し続けることで、体重のかかる一点に圧が集中してしまうわけです。

同じ解説では、圧力のほかにおむつなどによる摩擦、栄養が足りずにやせ細ってしまうこと、皮膚の栄養不足も要因として挙げられています。高齢の子だけでなく、けがや病気で自分では体位を変えられない状態にあれば、年齢にかかわらず起こりうるとされている点も、知っておきたいところです。

体が大きい子ほど、圧がかかりやすいとされる

床ずれは、中型以上の犬や皮膚が薄い動物に多く見られると説明されています(ALL動物病院グループ)。往診専門動物病院「犬と猫の緩和ケア」の解説でも、大型犬が起立できなくなった場合は重症化しやすいと述べられています(犬と猫の緩和ケア)。体重が重いほど、接している面にかかる力が大きくなるためです。

もちろん、小型犬なら起こらないというわけではありません。やせてきて骨の出っ張りが目立つようになった子は、体が小さくても圧が一点に集まりやすくなります。体格にかかわらず、寝たきりの状態になったら確認する習慣を持っておくと安心です。

犬の床ずれができやすい部位|肩・肘・腰・かかと

どこにできやすいかを知っておくと、毎日のチェックがぐんと楽になります。老犬ホーム・老猫ホームの情報サイト「老犬ケア」では、肩、肘、腰、かかとなど、筋肉が薄く、横になったときに骨が床に強く当たる場所が床ずれのできやすい場所だと説明されています(老犬ケア)。

犬の床ずれができやすい4つの部位(肩・頬、肘・手根、腰・骨盤、かかと)を説明した図解
床ずれは骨が床に当たる場所からできる(当メディア編集部作成)

ALL動物病院グループの解説では、頬・肩・肘・手根部・腰・足根部が起こりやすい部位として挙げられています(ALL動物病院グループ)。いずれも、横になったときに床側になる骨の出っ張りです。

部位 圧がかかりやすい場面 確認するときのポイント
頬・顔まわり 横向きで長く寝ているとき 下になる側の頬骨の上。毛の薄れが分かりやすい
同じ側を下にして寝ているとき 肩の骨の出っ張り。左右を見比べる
肘・手根部(前あし) 体を支える姿勢が続くとき 皮膚が薄く硬くなりやすい。赤黒い変色に注意
腰・骨盤まわり やせて骨が出てきたとき 排泄で湿りやすい。蒸れとこすれも一緒に見る
かかと(足根部) 後ろあしが伸びたまま寝ているとき 毛に隠れやすいので、かき分けて色を見る

チェックのタイミングは、体の向きを変えるときと、おむつを替えるときの2回に組み込んでしまうのがおすすめです。「あとで見よう」と思うと忘れてしまいますが、すでにしている作業とセットにすると続けやすくなります。

床ずれの初期のサイン|赤み・毛が薄くなるところから始まる

床ずれは、いきなり傷になるわけではありません。往診専門動物病院「犬と猫の緩和ケア」の解説では、第一段階として床ずれのできやすい部位の毛が抜けてしまい、次の段階では皮膚がカサカサと乾燥してフケのようなものができたり、皮膚が黒く変色したりすると説明されています。放置すると皮膚が脱落し、皮下組織、重度の場合は筋肉や骨が露出していく段階まで進むこともあるとされています(犬と猫の緩和ケア)。

診察台の上でシニア犬の様子を確認する獣医師と付き添う飼い主
写真はイメージです
見え方 皮膚の様子 受診の考え方
はじまりのサイン 皮膚が赤くなる/その部分の毛が薄くなる・抜ける この段階で相談しておくと、対策を早く始められる
進みはじめ 乾燥してカサカサする/フケのようなものが出る/黒っぽく変色する 早めに動物病院へ。自己流の処置は避ける
傷になった状態 皮膚がむけて赤くただれる/体液が出てじゅくじゅくする 感染のおそれがあるとされる。速やかに受診
深くなった状態 皮膚が脱落し、皮下組織や筋肉が見える 治療が難航しやすいとされる。すぐに受診

グリーンパーク動物病院の解説でも、赤みや腫れ、潰瘍の兆候がないかを毎日チェックすることがすすめられています(グリーンパーク動物病院)。ALL動物病院グループも、皮膚に赤みや傷が見られたら早めに動物病院を受診すること、早期の治療のほうが改善が早いことを伝えています(ALL動物病院グループ)。

「これくらいで病院に行っていいのだろうか」と迷う段階こそが、いちばん相談しやすいタイミングです。写真を撮っておいて診察のときに見せると、変化を伝えやすくなります。

寝たきりの犬の床ずれを防ぐためにできること

ここからは、ご自宅でできる予防を整理します。すべてを完璧にこなす必要はありません。介護が長く続くほど、続けられる形にすることのほうが大切です。

寝たきりの犬の床ずれを防ぐ4つの習慣(体位変換・体圧分散マット・清潔と乾燥・食事と水分)をまとめた図解
床ずれを遠ざける4つの習慣(当メディア編集部作成)

12〜3時間を目安に体の向きを変える

体位変換は、同じ場所に圧がかかり続けるのを防ぐための基本です。ALL動物病院グループとグリーンパーク動物病院はいずれも2〜3時間おきを目安として挙げており、老犬ケアでは2時間程度を目安に体圧分散を行うとしたうえで、体重や皮膚の状態、マットの素材によって適切な間隔は変わると説明しています。向きを変えるときは背中が上になるように回し、お腹を上にして回すと内臓に負担がかかることがあるため避けるとされています。

2体圧分散マットで、体重を一点に集めない

横になっているときに一か所へ体重が集中しないよう、体圧分散性のある寝床を用意します。やわらかければよいというものではなく、沈み込みすぎると体重のかかる点が床についてしまうため注意が必要だと説明されています。実際に寝かせた状態で、骨の出っ張りの下に手を入れて底づきしていないかを確かめてみてください。

3骨の出た場所を、タオルやパッドで守る

好発部位はタオルやクッション、パッドで保護するとよいとされています。老犬ケアでは、関節部にタオルを巻くなどして骨同士が直接当たらないようにすることがすすめられています。厚みを足すときは、ずれて一部だけに段差ができないよう、当てたあとの寝姿勢も確認します。

4清潔に、そして乾いた状態を保つ

もっとも大切な予防として挙げられているのが清潔を保つことです。排泄物はすぐに取り除き、体に付いてしまった場合はすぐにやさしく拭き取ります。拭いたあとは水気を残さないこともあわせて意識してください。おむつを使っている場合は、縁が当たる部分のこすれも見ておきます。

5食事と水分を、無理のない範囲で支える

栄養が足りずにやせ細ることも、床ずれの要因のひとつに挙げられています。自力で食べられない場合には流動食で栄養を補う方法があるとされていますが、その子に合う内容や与え方、姿勢は状態によって変わります。むせやすい・飲み込みにくい様子があるときは、必ず動物病院に相談してから進めてください。

6軽くさする・関節を動かすことも、できる範囲で

予防として、軽くさするマッサージや手足の曲げ伸ばし、筋肉量を保つためのリハビリも挙げられています。ただし痛みがある部位や、すでに皮膚に変化がある場所は触れないほうがよい場合もあります。どこまで動かしてよいかは、かかりつけの獣医師に確認しておくと安心です。

老犬ケアでは、体位を大きく変えられないときでも、そのままの姿勢で軽く持ち上げるようにサポートするだけで血流が回復し、一定の効果があると説明されています(老犬ケア)。夜中に何度も起きられない日があっても、それでご自身を責める必要はありません。できる時間に、できるやり方で構いません。

床ずれができてしまったときに、家庭でしてよいこと・避けたいこと

すでに赤みや傷が見つかったとき、いちばん気をつけたいのが「よかれと思っての自己流の処置」です。人用の消毒液や軟膏、家にある薬を使う判断は、飼い主さまがするものではありません。動物病院での治療は、周辺の毛刈りと洗浄から始まり、状態に応じて抗生剤や壊死した組織の処置が行われ、傷口にはドレッシング材などが使われることがあると説明されています(ALL動物病院グループ)。どの段階でどう処置するかは、傷の深さや感染の有無によって変わります。

床に座って愛犬の体をやさしく支えながら世話をする飼い主
写真はイメージです
家庭でしてよいこと(メリットのある対応)
  • その部位に圧がかからない向きで寝かせる
  • 汚れをやさしく取り除き、しっかり乾かす
  • 寝床の素材・厚み・底づきを見直す
  • 変化を写真と日付で記録し、診察時に見せる
  • 気になった時点で動物病院に連絡し、指示を仰ぐ
避けたいこと(デメリットが大きい対応)
  • 人用の消毒液・軟膏・薬を自己判断で使う
  • かさぶたや黒く変色した部分を自分ではがす
  • 傷口を強くこすって洗う
  • 包帯やテープでぴったり覆い、蒸らしてしまう
  • 「様子を見よう」と受診を先延ばしにする

特に、じゅくじゅくしている状態や、黒く変色している状態は、家庭で判断できる段階を超えていると考えてよいと思います。往診専門動物病院の解説でも、皮膚が脱落して皮下組織が露出するような状態になると治療が難航する場合が多く、早急な受診が必要だとされています(犬と猫の緩和ケア)。

こんなときは、早めに動物病院へ

赤みが数日たっても引かない/その部分の毛が抜けてきた/皮膚が黒っぽく変色している/じゅくじゅくして体液が出ている/においが出てきた/触ると痛がる・鳴く。ひとつでも当てはまるときは、受診のご相談を。

通院そのものが体に負担になる状態であれば、往診に対応している動物病院に相談するという選択肢もあります。移動が難しいことを理由にケアを我慢させずにすむよう、かかりつけの病院に、往診や夜間の相談先について前もって聞いておくと安心です。

介護するご家族の体と心も、守ってください

2〜3時間ごとの体位変換は、文字にすると短い一行ですが、実際には昼も夜もその間隔で起き続けるということです。おむつの交換、体を拭くこと、食事の介助。寝たきりの子の介護には、想像以上の体力が必要になります。

夜更けの部屋で、疲れた表情のままそっと座っている人の姿
写真はイメージです

介護が長くなると、寝不足や疲れが積み重なり、心身ともに疲弊してしまうことがあると、老犬介護の情報サイトでも指摘されています。先が見えないことへの不安や、費用の不安が重なることも少なくありません。つらいと感じることは、愛情が足りないことの証ではありません。それだけ、ずっと気を張って向き合ってきたということだと思います。

頼れる先は、思っているより多くあります。日中だけ預かってもらえる老犬デイサービス、自宅に来てもらうペットシッター、往診に対応する動物病院、老犬ホーム。すべてを任せる必要はなく、週に一度、数時間だけでも構いません。眠る時間を確保することは、結果として愛犬のケアの質を保つことにもつながります。

介護の疲れや不安は、かかりつけの動物病院に話してみるのもひとつです。ケアの方法だけでなく、どこまで頑張るかという線引きについても、専門家と一緒に考えることができます。ご自身の心身の不調が続くときは、医療機関や相談窓口を頼ってください。

お別れが近づいてきたと感じたときに

床ずれのケアを続けるなかで、「この先どうなるのだろう」という思いがよぎることがあると思います。寝たきりの期間は、犬にとってもご家族にとっても、静かでゆっくりとした時間です。その時間の中で、少しずつ心の準備が進んでいくこともあります。

朝の光がやわらかく差し込む静かな窓辺の風景
写真はイメージです

床ずれのケアは、見た目にはっきり結果が出るとは限りません。防ぎきれないこともあります。それでも、向きを変えてあげた回数、拭いてあげた回数、名前を呼んだ回数は、そのままその子と過ごした時間です。もし防げなかったとしても、それはご家族の努力が足りなかったからではありません。

お別れのあとの流れについて、あらかじめ知っておきたいという方もいらっしゃいます。慌ただしいなかで決めごとが続くと、ゆっくりお別れをする時間が取りにくくなることがあるためです。今すぐでなくて構いませんので、気持ちが向いたときにご覧ください。

よくある質問

Q犬の床ずれは、家で治すことはできますか

A赤みの段階でも、その先の判断は動物病院で行うものとされています。ご家庭でできるのは、圧がかからない姿勢をつくること、清潔と乾燥を保つこと、寝床を見直すことまでです。消毒や塗り薬の使用、かさぶたの処置などは、傷の深さや感染の有無によって適切な対応が変わるため、必ず獣医師の指示のもとで行ってください。

Q体位変換は、夜中も2〜3時間おきに行う必要がありますか

A目安として2〜3時間おきが挙げられていますが、老犬ケアでは体重や皮膚の状態、マットの素材によって適切な間隔は変わると説明されています。どの間隔がその子に合っているかは、皮膚の状態を見ながら獣医師に相談して決めるのが確実です。夜間にどうしても難しい日は、体圧分散マットや保護パッドで圧を逃がす工夫を組み合わせる方法もあります。

Q床ずれ防止のマットは、やわらかいほどよいのでしょうか

Aやわらかすぎると体重のかかる点が沈み込んで床についてしまうことがあると説明されています。大切なのはやわらかさよりも、体圧が一点に集中しないことです。寝かせた状態で、肩や腰の下に手を差し入れて底づきしていないかを確かめてみてください。合うものが分からないときは、動物病院や介護用品を扱うお店で状態を伝えて選ぶと選びやすくなります。

Q床ずれのある子を、お風呂に入れても大丈夫ですか

A傷の状態によって判断が変わるため、自己判断は避けてください。汚れを落とすことは大切ですが、傷口の扱いや洗い方、そのあとの乾かし方には注意が必要です。全身を洗ってよいか、部分的に拭くにとどめるかを含めて、かかりつけの動物病院に確認してから行うことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。記載内容は執筆時点(2026年7月)に公開されている動物病院・介護情報サイトの解説をもとにしています。

まとめ

犬の床ずれは、肩・肘・腰・かかとなど、横になったときに骨が床へ強く当たる場所にできやすいとされています。始まりは、皮膚の赤みや、その部分の毛が薄くなること。この段階で気づけると、対策を早く始められます。

ご家庭でできる予防の柱は、2〜3時間を目安にした体位変換、体圧分散のできる寝床、骨の出た部分の保護、そして皮膚を清潔で乾いた状態に保つことです。やせて骨が目立ってきた子は、食事や水分の取り方についても動物病院に相談しておくと安心です。すでに変化が出ているときは、消毒や薬を自己判断で使わず、受診をご検討ください。

そして、介護をしているご家族ご自身のことも、どうか後回しにしないでください。預ける・頼るという選択は、その子を大切にしないことではありません。眠れる時間を確保することも、ケアの一部です。

その子が痛みの少ない時間を過ごせますように。そして、そばで支えるあなたの毎日にも、静かに休める時間がありますように。

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