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高齢猫のトイレを手作りする方法|段差をなくす作り方と切り口の処理・置き場所の見直し方

トイレのふちに前足をかけたまま、少しためらってから入る。入ったと思ったら、はみ出してしまう。トイレの手前で座り込んでしまう——。年をとった猫が見せるこうした変化に気づいて、「今のトイレは、この子にはもう高すぎるのかもしれない」と感じている方は少なくありません。

シニア期の猫にとって、トイレの縁をまたぐ動作は思っている以上に負担になることがあります。市販のトイレは元気な成猫を想定した形が多く、足腰が弱ってきた子には入り口が高すぎたり、中が狭すぎたりすることがあります。そこで選択肢になるのが、衣装ケースや浅い箱を加工して、その子の体に合わせたトイレを手作りするという方法です。

この記事では、猫の暮らしに関する情報を扱う当メディア編集部が、米国猫獣医師会(AAFP)と国際猫医学会(ISFM)が公表している猫の排泄トラブルに関する診療指針や、獣医療の公開資料を調べ、高齢猫のトイレを手作りするときの考え方・作り方の手順・安全面の注意点を整理しました。手作りが難しいときの市販品での代用や、粗相が続くときに考えたいことにも触れています。

飼い主さん
17歳の猫が、最近トイレのふちでつまずくようになりました。手作りで低いトイレを作ってあげたいのですが、切ったところでケガをしないか心配で……。
編集部
よく気づいてあげられましたね。手作りで大切なのは「低くすること」よりも、むしろ「切り口をきちんと保護すること」と「ぐらつかない素材を選ぶこと」です。順番に見ていきましょう。粗相が続いている場合は、体の不調が隠れていることもあるので、そのお話も後半でお伝えします。

一言でいうと、高齢猫のトイレは「またがずに入れる低い出入り口・広い底面・浅めの砂」の3つを満たせば、衣装ケースや浅い収納ケースの側面を切り下げるだけで手作りできます。ただし切断面の保護と、ぐらつかない安定した素材選びだけは省略しないでください。

高齢猫のトイレを手作りする前に確かめたいこと

手を動かす前に、まず「本当にトイレの形が原因なのか」を見ておくと、遠回りせずにすみます。年をとった猫がトイレをうまく使えなくなる背景には、体の変化と環境の両方が関わっていることが多いためです。

動物病院で獣医師にそっと体を触られている年をとった猫
写真はイメージです

「またぐのがつらい」サインの見つけ方

足腰の衰えは、歩き方よりも先に、日常の小さな動作に出ることがあるといわれます。次のような様子が続いていないか、数日かけて観察してみてください。

  • トイレの前で立ち止まり、入るまでに間があく
  • ふちに前足をかけてから、体を引き上げるように入る
  • 中で向きを変えづらそうにしている、壁にもたれる
  • 用を足したあと、砂をかける動作が短くなった、またはしなくなった
  • トイレのすぐ手前や、トイレの縁に乗ったまま排泄してしまう
  • 以前は乗っていたソファや窓辺に、乗らなくなった

猫は痛みを表に出しにくい動物とされ、関節の不調は見過ごされやすいことが知られています。日本の家庭で暮らす猫101頭のレントゲン画像を調べた研究(学術誌『Frontiers in Veterinary Science』2020年掲載)では、約74%の猫に四肢の関節の変形性変化が確認されたと報告されています。対象となった猫の年齢の中央値は約9.8歳で、必ずしも全頭が高齢というわけではありません。それでも、「年のせいで動かなくなった」と見える変化の裏に、体の負担が隠れている可能性は決して低くない、ということを示す数字です。

トイレの形を変えることは、その負担を減らすための環境面の工夫にあたります。ただし環境を整えるだけでは解決しない場合もありますので、次のことも同時に頭に置いておいてください。

粗相を叱らないこと、そして受診を考える目安

まず、大前提としてお伝えしたいことがあります。トイレの外で排泄してしまっても、叱らないであげてください。猫は叱られたことと排泄の場所を結びつけて理解することが難しいとされ、叱ることでかえって人の見ていない場所を選ぶようになったり、飼い主さんを避けるようになったりすることがあると指摘されています。粗相は「わがまま」ではなく、多くの場合「そこまで間に合わなかった」「入るのがつらかった」というサインです。

また、排泄の失敗が続いているときは、環境の問題だけでなく体の不調が背景にあることもあるとされています。膀胱炎などの下部尿路の不調、慢性腎臓病にともなう尿量の増加、関節の痛み、加齢による認知機能の変化など、高齢猫では複数の要因が重なることも珍しくありません。

こんなときは早めに動物病院へ


排尿の回数や量が急に増えた・減った/トイレに何度も入るのに出ていない/排泄のときに鳴く/尿の色やにおいがいつもと違う/急に粗相が始まった、といった変化が見られる場合は、様子を見すぎずに動物病院へご相談ください。トイレの形を変える前に、まず診てもらったほうがよいケースもあります。

ここから先の内容は、あくまで暮らしの環境を整えるための工夫です。診断や治療にあたるものではありませんので、気になる症状があるときは獣医師の判断を優先してください。

高齢猫のトイレに必要な3つの条件|低い縁・広い底・浅い砂

手作りの設計図を描く前に、「何を満たせばよいのか」をはっきりさせておきます。米国猫獣医師会(AAFP)と国際猫医学会(ISFM)が2014年に公表した、家庭内での排泄トラブルに関する診療指針には、猫が使いやすいトイレの条件が具体的に示されています。

高齢猫のトイレに必要な低い出入り口・広い底面・浅い砂の3条件を示した図
足腰が弱った猫のトイレは、この3つを満たすことから考えます(当メディア編集部作成)

同指針が挙げているポイントを、手作りの視点で整理すると次のようになります。

ひとつめは出入り口の高さです。指針は、高齢の猫や関節に不調のある猫には「非常に浅い(低い)出入り口」を用意するよう勧めており、その具体例として「収納ケースの側面を切り下げて出入りしやすくしたもの」を挙げています。つまり、この記事で扱う手作りの方法は、思いつきの裏技ではなく、獣医療の指針のなかでも紹介されている考え方です。

ふたつめは広さです。同指針は、トイレの大きさの目安として「猫の鼻先から尾の付け根までの長さの1.5倍」を示しています。あわせて、成猫を対象としたある研究では約86cm×39cm(34インチ×15インチ)という大きなトイレが好まれたことも紹介されています。市販の猫用トイレの多くはこれより小さく、体の向きを変えるのがつらくなった子には窮屈になりがちです。衣装ケースが手作りに向くのは、この「広さ」を無理なく確保できるからでもあります。

みっつめは砂の種類と深さです。同指針は、細かい砂のような手ざわりの、無香料で固まるタイプの猫砂を、少なくとも約3cm(1.25インチ)の深さで入れることを推奨しています。深く敷きすぎると足を取られてふらつく子もいますので、ここは「最低ライン3cm前後を確保しつつ、その子の様子を見て調整する」という考え方が現実的です。

見直す点 市販のトイレに多い形 足腰が弱った子に向く形 そう変える理由
出入り口の高さ 全周が同じ高さで、縁をまたぐ必要がある 一辺だけを切り下げ、またがずに入れる 後ろ足を持ち上げる動作の負担を減らすため
底面の広さ 体長とほぼ同じか、やや小さい 鼻先から尾の付け根までの約1.5倍 中で向きを変えたり踏ん張ったりしやすくするため
砂の深さ 製品や好みによってまちまち 約3cm前後を目安に、様子を見て調整 掘る動作を保ちつつ、足を取られにくくするため
屋根・カバー フード付きで囲われている 取り外して開放的にする 出入りの動線を短くし、中を見渡しやすくするため
床との関係 置いただけで、滑ることがある 下と中に滑り止めを敷き、壁際に固定する 踏ん張ったときに本体がずれないようにするため

この5点のうち、市販品を買い替えるだけでは同時に満たしにくいのが「低い出入り口」と「広い底面」の組み合わせです。手作りが選択肢になるのは、まさにこの2つを両立させたいときだといえます。

衣装ケースで作る高齢猫用トイレの手順

ここからは、衣装ケース(収納ケース)を加工する具体的な流れです。寸法はあえて数値で示しません。体格も、足の上がり方も、その子によってまったく違うためです。「うちの子の体に合わせて決める」ことを前提に読み進めてください。

毛づくろいをしながら床に座っている年をとった猫の前足
写真はイメージです

1厚みのあるプラスチック製のケースを選ぶ

衣装ケースや収納ケースのうち、手で押しても大きくたわまない、しっかりした厚みのものを選びます。半透明のポリプロピレン製のものが加工しやすく、尿がしみ込まないため衛生的です。深さのある引き出しタイプよりも、浅めで底面積の広い「衣類収納ボックス」型のほうが、切り下げる量が少なくてすみます。段ボールや発泡スチロールは、尿を吸って崩れたり、かじって飲み込んでしまう心配があるため使わないでください。

2切り下げる高さを、その子の実際の動きで決める

ケースを床に置いた状態で、愛猫がふだんどのくらい足を上げているかを見てみます。目安は「前足を大きく持ち上げずに、すっとまたげる高さ」です。判断に迷うときは、まず高めに切って様子を見て、まだつらそうなら少しずつ下げていくと失敗がありません。切りすぎた分は戻せませんので、最初は控えめに切るのが安全です。低くしすぎると砂が外に出やすくなるため、そのときは後述の飛び散り対策と組み合わせます。

3一辺だけを、角を丸めた形に切り抜く

四辺すべてを低くする必要はありません。出入りに使う一辺だけを、なだらかな谷型に切り抜きます。切り抜きの両端は直角にせず、大きめの丸みをつけてください。角が直角に残ると、そこに力がかかって割れやすく、割れた縁は鋭くなります。油性ペンで下書きしてから、細身のノコギリやカッター、電動工具などで少しずつ切り進めます。プラスチックは冷えていると割れやすいため、寒い場所での作業は避けたほうが無難です。

4切り口を必ず保護する(この工程は省略しない)

切ったままの断面は、目に見えないささくれや鋭い部分が残っていて、肉球や脚の内側を傷つけるおそれがあります。まず紙やすりで断面と角を丁寧に削ってなめらかにし、そのうえで市販の保護材をかぶせます。断面をはさみ込む形のU字型のエッジガード(コーナーガード)や、切り込みを入れたホース、配線用のモールなどが使われます。粘着テープを巻いただけの処理は、湿気や尿で剥がれやすく、剥がれた縁が再び露出してしまうため、あくまで一時的な対応と考えてください。保護材を付けたあと、手のひらでゆっくりなでてみて、引っかかりがないかを必ず確かめます。

5滑り止めを敷き、本体が動かないように固定する

中で踏ん張ったときに本体がずれると、それだけで猫は不安を覚えます。ケースの底には滑りにくいマットやペットシーツを敷き、外側の床にも滑り止めマットを置きます。軽いケースは、壁際に寄せて置く、底に重しになるものを入れるなどして動きにくくします。フローリングの上に直接置くのは避けたほうがよいでしょう。

6砂を入れ、実際に使う様子を見て微調整する

無香料で細かい砂状の固まるタイプを、3cm前後を目安に入れます。入れたら、その日のうちに使い方を見てください。入り口でためらう、砂を掘りにくそうにする、はみ出すといった様子があれば、切り下げる高さ・砂の量・置き場所のいずれかを一つずつ変えて試します。一度に複数を変えると、何が効いたのか分からなくなります。また、今まで使っていたトイレはすぐに片づけず、新しいトイレに慣れるまでしばらく並べて置いておくと、失敗を防ぎやすくなります。

切り口の処理と、安全のために守りたいこと

手作りのトイレでいちばん事故につながりやすいのが、加工した部分そのものです。ここは費用や手間を惜しまず、確実にやっておきたいところです。

手作りトイレで確認したい切り口の保護・素材の安定・滑り止め・大きさの4つの安全チェック
作ったあと、この4点を手で触って確かめてから使い始めます(当メディア編集部作成)
手作りで必ず守りたいこと(安全面のメリットを保つために)
  • 切断面は紙やすりで削り、エッジガードなどで覆ってから使う
  • 切り抜きの角は直角にせず、大きく丸みをつける
  • 厚みがあり、押してもたわまないプラスチック製を選ぶ
  • 本体が動かないよう、床と底の両方に滑り止めを敷く
  • 完成後、素手でゆっくりなでて引っかかりがないか確かめる
  • 使い始めてからも、月に一度は切り口とガードの状態を点検する
避けたい素材・やり方(デメリットが大きいもの)
  • 段ボール・厚紙:尿を吸って崩れ、においも残りやすい
  • 発泡スチロール:かじって飲み込むおそれがあり、崩れやすい
  • 薄く硬いプラスチック:割れたときの断面が鋭くなりやすい
  • 木材の切りっぱなし:ささくれと、尿のしみ込みが問題になる
  • 粘着テープだけの切り口処理:湿気や尿で剥がれ、断面が再び出る
  • 不安定な台の上に置く:出入りのときにぐらつき、転落につながる

もうひとつ気をつけたいのが、においと掃除のしやすさです。プラスチックは表面に細かい傷が付くと、そこに尿のにおいが残りやすくなります。強い香りの洗剤や漂白剤は、猫にとって刺激になったり、トイレそのものを避ける原因になったりすることがあるとされていますので、ぬるま湯とやわらかいスポンジで洗い、しっかり乾かす方法が基本です。加工した部分は水がたまりやすいため、乾かすときは立てかけておくとよいでしょう。

そして、手作りしたものが必ずしもその子に合うとは限りません。作ったのに使ってくれない、という結果も十分にあり得ます。そのときは失敗ではなく、「この形は好みではなかった」という情報が一つ得られたと考えて、次の選択肢に移ってください。

浅い箱や身近なもので代用する方法

「切る作業に自信がない」「工具がない」という場合でも、切らずに用意できる選択肢があります。むしろ、こちらのほうが早く試せて、その子の好みを知る手がかりになることもあります。

日の当たる床でくつろぐ年をとった猫の後ろ姿
写真はイメージです

ひとつめは、もともと縁の低い浅型のケースをそのまま使う方法です。衣類用の浅い収納ボックス、書類用の平たいトレー、園芸用の受け皿など、加工せずに使える容器は意外と多くあります。選ぶときは、底面が広いこと、押してもたわまないこと、縁の内側にバリ(成型時のはみ出し)がないことを確かめてください。バリがある場合は、その部分だけ紙やすりをかけておきます。

ふたつめは、今使っているトイレのカバーを外す方法です。フード付き(屋根付き)のトイレであれば、上部を外すだけで出入りの動線が短くなり、中も見渡しやすくなります。ドア付きの入り口も、ドア部分を取り外せる製品が多くあります。何も買わずにすぐ試せるので、まず最初に試す価値があります。

みっつめは、トレーとペットシーツの組み合わせです。砂を掘る動作がつらくなってきた子や、間に合わずに手前で排泄してしまうことが増えた子には、浅いトレーにペットシーツを敷くだけの形が合うことがあります。ただし、砂を掘って埋める行動は猫にとって自然なものですので、シーツに切り替えたことで落ち着かない様子を見せる場合は、砂のトイレも並べて残しておき、その子に選ばせてあげてください。

いずれの方法でも、今までのトイレを急に撤去しないことが大切です。新しい形に慣れるまでの間、古いトイレと新しいトイレを並べて置き、使う様子を見ながら少しずつ移行していくと、粗相の増加を防ぎやすくなります。

市販品で代用できる選択肢

手作りにこだわる必要はまったくありません。近年は、シニア期の猫を想定した製品や、既存のトイレに後付けできる用品も増えています。手作りと組み合わせて使うこともできます。

窓辺で静かに外を眺めている年をとった猫
写真はイメージです
選択肢 手軽さの目安 向いている様子 気をつけたい点
入り口の低いシニア向けトイレ 買うだけで使える またぐ動作はつらいが、自力で歩ける 底面の広さが体長の1.5倍あるかを確認する
トイレ用のスロープ・ステップ 既存のトイレに後付けできる 今のトイレを気に入っていて変えたくない 本体とずれないよう固定し、傾斜をゆるくする
浅型の収納ケース・園芸トレー 加工せずそのまま使える 縁の高さだけが問題になっている たわまない厚みと、バリの有無を確かめる
トレーとペットシーツの組み合わせ すぐ試せて掃除も簡単 掘る動作がつらい、間に合わないことが増えた 砂のトイレも残し、その子に選ばせる
防水マット・トイレ周りのシート 敷くだけでよい はみ出しや手前での排泄が増えてきた 滑りにくい素材を選び、こまめに洗う
猫用のおむつ・マナーウェア 装着に慣れが必要 自力で排泄姿勢を保つのが難しくなった 長時間の装着は皮膚の負担になるため獣医師に相談する

この表は、どれか一つを選ぶためのものではありません。スロープと手作りトイレ、防水マットと浅型トレーというように、組み合わせて使うほうがうまくいくことが多いと考えてください。とくにスロープやステップは、トイレ以外の場所——ベッドやソファ、窓辺への上り下り——にも応用でき、暮らし全体の負担を減らすことにつながります。

なお、おむつのような排泄そのものを補助する用品は、その子の状態によって向き不向きがはっきり分かれます。導入を考えるときは、自己判断で長く続けるのではなく、かかりつけの動物病院で相談したうえで使い方を決めてください。

置き場所を増やす、粗相が続くときに考えたいこと

トイレの形を整えたあと、もう一段階できることがあります。それが「距離を短くする」という考え方です。

床に伏せた年をとった猫にそっと手を添える飼い主
写真はイメージです

前述のAAFP・ISFMの指針は、トイレの数について「猫の頭数より1つ多く」を基本とし、複数階のある住まいでは各階に少なくとも1つ置くことを勧めています。さらに高齢の猫については、より行きやすい場所にトイレを置くことと、寝床の近くにトイレを増やすことにも触れています。

これは、加齢によって「尿意に気づいてから間に合うまでの時間」が短くなることへの備えでもあります。よく寝ている場所の近く、よく過ごすリビングの隅など、その子の生活動線の上にもう一つ置くだけで、手前での粗相がおさまることがあります。置き場所を選ぶときは、次の点を見てみてください。

  • 寝床から遠すぎないか(階段や段差を越えないと行けない場所になっていないか)
  • 行き止まりになっていて、他の猫や人と鉢合わせしやすい場所ではないか
  • 洗濯機や給湯器など、突然大きな音がするものの近くではないか
  • 冬に極端に冷える場所、夏に暑くなる場所ではないか
  • 夜間に真っ暗になる場所ではないか(足元灯があると動きやすくなります)
  • 食事や水の場所とくっつきすぎていないか

そのうえで、形も場所も整えたのに粗相が続く場合は、環境ではなく体の側に理由があることを考える段階です。繰り返しになりますが、排尿の回数や量の変化、トイレに何度も入るのに出ていない、排泄のときに鳴く、といった様子が見られるときは、早めに動物病院で相談してください。「年だから仕方ない」と受け止めていた変化が、手当てできるものだったというケースもあります。

そして、介護する側の負担についても書き添えておきます。粗相の片づけが続く日々は、体力だけでなく気持ちもすり減らします。防水マットや洗いやすい敷物を活用する、洗濯の回数を減らせる導線に変える、といった「飼い主さんが楽になる工夫」も、遠慮なく取り入れてください。それは手抜きではなく、長く付き添うための備えです。

介護の時間が続くなかで、ふとこの先のことが心をよぎることもあると思います。今すぐ必要な情報ではないかもしれませんが、心の準備として知っておきたいときのために、当メディアでは次の記事も用意しています。

高齢猫のトイレの手作りについてよくある質問

Q切り口はどのくらいの高さまで低くすればよいですか?

A具体的な数値は、その子の体格や足の上がり方によって変わるため一律には決められません。目安は「前足を大きく持ち上げずに、すっとまたげる高さ」です。最初は控えめに切って実際に使う様子を見て、まだつらそうであれば少しずつ下げていく方法が安全です。切りすぎた分は元に戻せないため、一度で仕上げようとしないことをおすすめします。

Q段ボールでトイレを作ってもよいですか?

Aおすすめできません。段ボールは尿を吸って形が崩れやすく、においも残ります。湿った紙をかじって飲み込んでしまう心配もあります。一時的にしのぐ場合でも、内側に防水シートを敷き、その日のうちにプラスチック製のものへ切り替えるようにしてください。発泡スチロールも、崩れやすさとかじる危険から避けたほうがよい素材です。

Q猫砂は浅くしたほうがよいのでしょうか?

AAAFP・ISFMの指針では、少なくとも約3cmの深さが目安として示されています。ただし、砂に足を取られてふらつく様子がある場合は、やや浅めにして、床にペットシーツを併用する形が合うこともあります。掘って埋める行動は猫にとって自然なものですので、極端に浅くするのではなく、その子の様子を見ながら少しずつ調整してください。

Q新しいトイレを使ってくれないときはどうすればよいですか?

A古いトイレをすぐに片づけず、両方を並べて置いたまま数週間様子を見てください。置き場所を今までのトイレの近くに移す、慣れた猫砂をそのまま使う、いつものトイレの砂を少し混ぜる、といった方法で受け入れられることがあります。それでも使わない場合は、形が合わなかったということですので、市販の入り口が低いトイレやスロープなど、別の選択肢に切り替えてかまいません。焦らせず、決して叱らないことが何より大切です。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。

まとめ

高齢猫のトイレを手作りするときに満たしたい条件は、「またがずに入れる低い出入り口」「体長の約1.5倍という広い底面」「約3cmを目安にした浅めの砂」の3つでした。衣装ケースや浅い収納ケースの一辺を切り下げる方法は、AAFP・ISFMの診療指針のなかでも高齢猫への対応として紹介されている考え方です。

作るときは、切り口を紙やすりで整えたうえでエッジガードなどで覆うこと、たわまない厚みのある素材を選ぶこと、床と底の両方に滑り止めを敷いて本体を動かないようにすることを、必ず守ってください。寸法は数値で決めるのではなく、その子の体格と足の上がり方に合わせて、少しずつ削るように調整していくのが確実です。

そして、うまくいかない日があっても、粗相を叱らないであげてください。トイレの外で用を足してしまうのは、間に合わなかったか、入るのがつらかったというサインです。形も置き場所も整えたのに失敗が続くときは、体の不調が隠れていることもありますので、早めに動物病院にご相談ください。

毎日のトイレは、その子にとっていちばん身近な暮らしの一部です。少し低くした縁のむこうで、今日もその子が安心して用を足せますように。

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