ペットの見送り方を調べていると、「移動火葬」「訪問火葬」という言葉に行き当たります。火葬炉を積んだ専用車が自宅まで来てくれて、住み慣れた家のそばで最期を見送れる——そう聞いて、心が少し軽くなった方もいるかもしれません。高齢のご家族がいて外出が難しい、多頭で家を空けられない、車がない、遠くの斎場まで抱えていく自信がない。そうした事情があるほど、この選択肢はありがたく感じられます。
その一方で、この業界では実際に事件やトラブルも起きてきました。不安をあおるつもりはありませんが、知らないまま申し込んで悔いを残すことのないよう、静かにお伝えしておきたいことがあります。この記事では、移動火葬の仕組みと費用の目安(税込・執筆時点)、そして申し込む前に確かめておきたい点を、編集部が公式サイト・自治体の公表資料・報道をもとに整理しました。


一言でいうと、移動火葬は「火葬炉を積んだ車で自宅まで来てもらい、その場で火葬・収骨まで済ませられる見送り方」です。選ぶかどうかを決める前に、固定の施設と所在地・立ち会いの可否・返骨の方法・見積書・キャンセル規定の5点を確認しておくと、後悔がぐっと少なくなります。
ペットの移動火葬(訪問火葬)とはどんな見送り方か

移動火葬は、訪問火葬・出張火葬とも呼ばれます。小型の火葬炉を車両に積み込んだ「移動火葬車(ペット火葬車)」で業者が自宅まで訪れ、玄関先や自宅の駐車スペース、あるいは近くの私有地に車を停めて火葬を行う方式です。多くの事業者が24時間365日の受付をうたっており、夜中に息を引き取った場合でも相談先があります。
火葬の形式そのものは、固定の斎場に持ち込む場合と同じ考え方で分かれます。他のご家族のペットと一緒に火葬してお骨は霊園で供養してもらう「合同(お引取り)」、その子だけを火葬して業者に任せる「個別一任」、火葬からお骨上げまで家族が付き添う「個別立会」の3つです。移動火葬では、車のそばでご家族が待ち、収骨をその場で行える「立会」を選べる事業者が多いのが特徴です。
自宅の前で見送れるという点は、想像以上に大きな意味を持ちます。使い慣れた毛布や、いつも寝ていた場所のにおいのするタオルを一緒に持たせやすく、家族全員が普段着のまま最期の時間を過ごせます。斎場までの移動がないぶん、亡くなってから見送りまでの時間も短く済みます。
移動火葬が向いているご家族・慎重に考えたいご家族

移動火葬は「外に出ていくのが難しい」事情を抱えたご家族にとって、現実的な解決策になります。ただ、住環境によっては固定の斎場のほうが落ち着いて過ごせることもあります。どちらが優れているという話ではなく、住まいの条件と気持ちの両方から選ぶものだと考えていただければと思います。
集合住宅で駐車スペースを長時間確保しにくい、隣家との距離が近い、といった場合は、業者の敷地や提携駐車場まで移動して火葬してもらえるかを相談してみてください。自宅前にこだわらなくても、「自分たちの手で連れて行く負担がない」という移動火葬の利点は残ります。
移動火葬の費用の目安(形式別・体重別/税込・執筆時点)

移動火葬の料金は、火葬の形式(合同/個別一任/個別立会)と体重で決まるのが一般的です。全国対応の訪問火葬「ペット葬儀110番」の公式サイトでは、お引取りの霊園供養プランが8,500円〜、個別火葬一任プランが15,400円〜、個別火葬家族立会プランが17,600円〜(いずれも税込・骨壺代込み・執筆時点)と案内されています。
体重によってどのくらい上がっていくのかは、料金表を公開している事業者を見ると分かりやすくなります。下の表は、移動火葬車による訪問火葬を行うジャパンペットセレモニーが公式サイトで公開している料金表(税込・執筆時点)です。あくまで一例ですが、体重帯ごとの上がり方の感覚をつかむ目安になります。
| 体重の目安 | お引取り(合同) | 個別一任火葬 | 個別立会火葬 |
|---|---|---|---|
| 1kg未満 | 18,700円(税込) | 22,000円(税込) | 24,200円(税込) |
| 1kg〜5kg未満 | 22,000円(税込) | 25,300円(税込) | 27,500円(税込) |
| 5kg〜10kg未満 | 25,300円(税込) | 28,600円(税込) | 30,800円(税込) |
| 10kg〜15kg未満 | 30,800円(税込) | 34,100円(税込) | 36,300円(税込) |
| 15kg〜20kg未満 | 36,300円(税込) | 39,600円(税込) | 41,800円(税込) |
| 20kg〜25kg未満 | 40,700円(税込) | 44,000円(税込) | 46,200円(税込) |
| 25kg〜30kg未満 | 46,200円(税込) | 49,500円(税込) | 51,700円(税込) |
※ジャパンペットセレモニー公式サイトの料金表(税込・執筆時点)より編集部が作成。料金体系・対応エリアは事業者ごとに異なります。
おおまかには、小型犬・猫で2万円台、中型犬で3万円台、大型犬で5万円前後からが個別火葬のひとつの目安と考えておくと、極端に安い見積もりや高い見積もりに気づきやすくなります。ただし深夜早朝の割増、遠方への出張費、骨壺のグレード、返骨の配送などが別途かかる事業者もあります。総額でいくらになるのかを、必ず申し込み前に確認してください。
移動火葬をめぐって実際に起きてきたこと

ここからは、読むのがつらい内容を含みます。ただ、あとで知って悔やむより先に知っておいたほうがよいと考え、事実として確認できる範囲だけを静かにお伝えします。誠実に営んでいる事業者が大多数であることを前提に、お読みください。
火葬されないまま遺棄された事件が報じられている
2010年、埼玉県で動物葬祭業を営んでいた男性が、火葬を請け負った犬や猫の死骸を山中に遺棄した疑いで逮捕されたと報じられました(日本経済新聞ほか)。報道によれば、飼い主には火葬したと伝えたうえで代金を受け取り、別の骨を返していたとされています。これは移動火葬に限った事件ではありませんが、「火葬したかどうかを飼い主が確認できない」形の依頼には、こうした余地が残るという現実を示しています。
返ってきたお骨がその子のものか、確かめる手立てが乏しい
お骨を見て、それが自分の家族のものだと判別できる飼い主はほとんどいません。だからこそ、火葬の場に立ち会えるかどうかは、金額以上に大きな意味を持ちます。立ち会って自分の手でお骨上げをすれば、この不安は根本から解消します。事情があって立ち会えない場合でも、火葬の様子や日時の記録を残してもらえるか、収骨に立ち会えるかを尋ねてみてください。
火葬の途中で追加料金を求められるケース
葬儀サービス全般で、国民生活センターには「見積書がもらえなかった」「追加費用が高額だった」という料金トラブルの相談が寄せられています。ペットの火葬でも、炉に入れたあとで骨壺や供養のオプションを勧められると、中断も比較もできない状況で判断を迫られることになります。埼玉県も、ペット葬儀業者との契約前に総費用・追加費用の有無・料金表を確認するよう呼びかけています(埼玉県公式サイト「ペットが亡くなったとき」)。
火葬する場所と近隣への配慮にはルールがある
移動火葬車には全国一律の許認可制度がなく、扱いは自治体の条例や要綱によって異なります。たとえば大阪府堺市では、2022年1月1日施行の「堺市ペット霊園の設置等に関する条例」により、移動火葬車で市内の火葬を行う事業者に事前の届出を義務づけています。大阪府箕面市は、道路や公園など公共的な場所での収納・火葬・収骨を行わないこと、遺体や焼骨が見えないようにすること、悪臭防止を行うこと、継続的に火葬する場合は土地所有者の承諾を得た場所であることなどを条件として示しています。
つまり、自宅前の道路に車を停めてそのまま火葬する、という進め方は地域によっては認められていません。どこで火葬するのかを事前に決めておくことが、近隣との関係を守ることにもつながります。
移動火葬の業者を見極める5つの確認事項

ここまでの内容は、裏を返せば「何を確認すればよいか」がはっきりしているということでもあります。埼玉県が公表している確認事項(業者の住所と連絡先、立ち会いの可否、火葬方式、火葬を行う場所、遺骨返還の有無、総費用と追加費用)を軸に、5つに整理しました。悲しみの中でも、電話口で順に尋ねていけば確認できる内容です。
1固定の施設と所在地が公開されているか
公式サイトに会社の所在地(番地まで)と固定電話が記載され、自社の斎場や霊園を持っているかを確かめます。車両だけで営業し、住所が私書箱や携帯番号のみという場合は、何かあったときに連絡が取れなくなる可能性があります。地図で所在地を検索してみるだけでも、多くのことが分かります。
2立ち会いと、お骨上げができるか
立会プランがあるか、火葬のどこからどこまで立ち会えるか、収骨は自分たちの手でできるかを尋ねます。立ち会いを断られる場合は、その理由の説明が納得できるものかどうかが判断材料になります。安全上の理由で炉のそばに近づけない場合でも、収骨には立ち会えるのが一般的です。
3返骨の方法と骨壺の扱いが決まっているか
お骨をいつ・どこで・どのように受け取るのか、骨壺は料金に含まれるのかを確認します。「後日連絡します」だけで日時や方法が決まらない場合は、その場で具体的に決めてもらってください。分骨や小さな骨壺への変更を希望する場合も、この段階で伝えておくと当日あわてずに済みます。
4見積書を事前に、書面かメールで出してくれるか
総額と内訳を、申し込み前に文字で残る形で出してもらいます。出張費・深夜早朝の割増・骨壺代・返骨の送料まで含めた「これ以上かからない金額」を確認しておくと安心です。当日に追加費用が発生する条件があるなら、それも先に聞いておきます。
5キャンセル規定と火葬場所が示されているか
いつまで、いくらでキャンセルできるのかが約款や規約に書かれているかを確かめます。あわせて、自宅前で火葬してよいのか、駐車スペースはどれくらい必要か、自治体への届出が必要な地域かどうかも聞いておきましょう。答えをはぐらかされるようなら、いったん保留にして構いません。
5つすべてに明確に答えてくれる事業者であれば、大きく外すことは少ないはずです。逆に、金額の話だけが先に進み、施設や立ち会いの話がぼんやりしている場合は、いったん立ち止まってください。一社だけで決めず、二社に電話してみるだけでも、説明の丁寧さの違いが見えてきます。
\ 詳細・ご相談は公式サイトから /
全国対応の訪問火葬窓口で、合同・個別一任・個別立会のプランと料金(税込)が公開されています。深夜早朝でも受付があるため、まず状況だけ相談したいときにも使えます。
依頼から見送りまでの流れと、近隣への心づかい

実際に依頼すると決めたあとは、次のような流れになります。当日までにできる準備を知っておくと、限られた時間を最期のお別れに使えます。
1連絡してプランと日時、火葬場所を決める
電話やフォームで、動物の種類・体重・希望プラン・希望日時を伝えます。あわせて、自宅前で火葬できるか、駐車スペースの広さは足りるかを相談します。難しい場合は、業者の斎場や提携駐車場での火葬に切り替えられるか聞いてみてください。
2お迎えまでの間、体を整えて安置する
体を横向きにして手足を軽く折り曲げ、タオルなどを敷いた箱に寝かせます。保冷剤やドライアイスをタオルで包み、お腹や首まわりを冷やして、直射日光の当たらない涼しい場所に安置します。目や口が開いていても自然なことですので、無理に閉じようとしなくて大丈夫です。
3一緒に送るものを選ぶ
お花、少量のおやつ、手紙などは一緒に納められることが多い一方、金属・ガラス・プラスチック・厚手の毛布などは断られる場合があります。何が入れられるかは事業者によって違うため、事前に確認しておくと当日迷いません。
4当日、車の到着とお別れの時間
移動火葬車が到着したら、書面で内容と金額を再確認してから始めてもらいます。最後のお別れの時間を取ってもらえるのが一般的です。火葬にかかる時間は体重によって異なり、小型で1時間ほど、大型では2時間以上かかることもあります。
5収骨し、お骨を受け取る
立会プランなら、火葬後にご家族の手でお骨を拾い、骨壺に納めます。一任プランの場合は、後日決めた方法でお骨を受け取ります。その場で領収書と、必要であれば火葬証明書を出してもらえるかも確認しておきましょう。
近隣への配慮としては、あらかじめ両隣に「明日の午前中、少しの間、車を停めさせてもらいます」と一声かけておくだけで、驚かせずに済みます。多くの移動火葬車は火葬車と分かる表示のない外観になっており、煙や臭いを抑える構造をうたっていますが、風向きや時間帯には気を配りたいところです。夕方以降や早朝を避け、日中の落ち着いた時間帯を選ぶご家族が多くなっています。
どこに相談すればよいか迷ったとき

お住まいの地域に信頼できる固定斎場があるなら、そこに相談するのがいちばん確かです。ただ、地方で近くに斎場がない、深夜で開いている窓口が分からない、どこに電話してよいか判断できない——そうしたときは、全国対応の受付窓口を使うと、条件に合う事業者を探す手間を減らせます。
また、自治体によっては公営の斎場でペットの火葬を受け付けているところもあります。返骨に対応していない場合が多いものの、費用は抑えられます。「お骨を手元に残したいか」がはっきりしているなら、選択肢はおのずと絞られます。
料金や説明に納得できないまま契約してしまった、支払いを迫られて困っている、という場合は、お住まいの自治体の消費生活センター、または消費者ホットライン「188」に相談できます。ひとりで抱え込まず、公的な窓口を頼ってください。
\ 詳細・ご相談は公式サイトから /
24時間365日の受付で、全国のエリアに対応しています。プラン内容と料金(税込)が公式サイトに明示されているため、見積もりの妥当性を確かめる基準としても使えます。
よくある質問
※本記事の料金は執筆時点(2026年8月)の各社公式サイト情報です。最新は各公式サイトでご確認ください。
まとめ
移動火葬は、外に出ることが難しいご家族にとって、住み慣れた家のそばで最期を見送れる大切な選択肢です。同時に、火葬の様子が外から見えにくいという性質があるため、申し込む前の確認がそのまま安心につながります。
確かめるのは、固定の施設と所在地が公開されているか、立ち会いとお骨上げができるか、返骨の方法が決まっているか、見積書を事前に出してくれるか、キャンセル規定が示されているか。この5つです。悲しみの中で細かいことを尋ねるのは気が引けるかもしれませんが、それは大切な家族を最後まで守るための当たり前の行いです。
どうか、あの子との最後の時間が、静かで穏やかなものになりますように。