ごつごつとした甲羅を背負い、ゆっくりと歩くリクガメ。その姿はどこか悠然としていて、見ているだけで心が落ち着きますよね。一方で「この子はいったい、あと何年そばにいてくれるのだろう」と、ふと寿命が気になった飼い主さんも多いのではないでしょうか。リクガメは犬や猫とはくらべものにならないほど長生きする動物で、飼い方によっては人よりも長く生きることさえあります。
この記事では、ヘルマン・ギリシャ・ロシア(ホルスフィールド)・ケヅメといった代表的な種類ごとの平均寿命、甲羅から年齢を読み取る「年齢の見方」、かかりやすい病気、そして長生きしてもらうための飼育のポイントを、動物病院や専門メディアの情報をもとに編集部が調べてまとめました。長寿だからこそ知っておきたい、終生飼養の心構えについてもそっとお伝えします。


一言でいうと、ペットとして飼われるリクガメの平均寿命は、多くの種類で30〜50年ほどです。ヒョウモンリクガメやケヅメリクガメのような大型種では、100年近く、あるいはそれ以上生きる個体もいます。
リクガメの平均寿命は何歳?
リクガメと一口に言っても、ペットとして飼われる種類はさまざまで、寿命にもかなりの幅があります。全体としては、飼育下で30〜50年ほどを目安とする情報が多く、小動物のなかでは群を抜いて長命な部類です(出典:アニコム損保「anicom you」、リクガメ専門ブログほか)。犬や猫の一生を何度もくり返すほどの年月を、一頭のリクガメと過ごすことになります。
ペットとして人気の高い種類について、飼育下での寿命の目安を整理すると次のようになります。数値は専門メディアや飼育者の記録をもとにしたおおよその目安で、飼育環境によって前後します。
| 種類 | 甲長の目安 | 飼育下の寿命の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ヘルマンリクガメ | 約20〜30cm | 30〜50年 | 丈夫でおとなしく、初心者向けとされる小型種 |
| ギリシャリクガメ | 約20〜30cm | 20〜50年 | 模様が美しい小型種。流通量が多い |
| ロシアリクガメ(ホルスフィールド) | 約15〜20cm | 30〜50年 | 小柄で飼いやすいが乾燥地帯出身で湿気に弱い |
| ケヅメリクガメ | 最大60〜80cm前後 | 30〜50年(100年以上の例も) | 大型化する。広い飼育スペースが必要 |
| ヒョウモンリクガメ | 最大40〜60cm前後 | 50〜70年(最長80〜100年) | 大型で長命。豹柄の甲羅が特徴 |
| インドホシガメ | 約15〜30cm | 30〜50年 | 星形の模様。やや繊細で温湿度管理が大切 |
「ロシアリクガメ」と「ホルスフィールドリクガメ」は同じ種類の別名で、乾燥した中央アジア出身のため、日本の湿気にはやや弱い一面があります。また、ペットショップで小さな幼体として売られていても、ケヅメリクガメやヒョウモンリクガメは成長すると甲長40cmを超える大型種になります。「小さいから」と迎えて飼いきれなくなる例もあるため、迎える前に成体の大きさと寿命を必ず確認しておきたいところです。

飼育環境による差
同じ種類でも、飼育環境によって寿命は大きく変わります。リクガメの寿命を縮める最大の要因は、じつは病気そのものよりも温度・紫外線・食事といった飼育環境のミスにあるとされます(出典:ペット火葬・大森ペット霊堂ブログ、爬虫類専門メディアREPTILESほか)。とくに温度管理の失敗による代謝の低下や、紫外線(UVB)不足によるカルシウム代謝の異常は、寿命に直結しやすい要因です。
裏を返せば、適切な温度と紫外線、バランスの取れた食事さえ整えてあげれば、リクガメは本来もつ長い寿命をまっとうしやすくなります。ロシアリクガメのように条件次第では20年に満たないこともあれば、丁寧に飼えば40年、50年と生きることもある——その差を分けるのが、日々の飼育環境なのです。具体的な整え方は、後半の「長生きしてもらうためにできること」で紹介します。
長生きの最高齢記録
リクガメの長寿ぶりを象徴するのが、ゾウガメの記録です。イギリス領セントヘレナ島に暮らすアルダブラゾウガメの「ジョナサン」は、2022年に推定190歳で「史上最も長生きしたカメ」としてギネス世界記録に認定されました(出典:ギネス世界記録公式サイト)。正確な誕生日は不明で、実際には200歳近い可能性もあるといわれています。それ以前は、188歳まで生きたとされるホウシャガメの「トゥイ・マリラ」が記録を保持していました。
これらは特別に長命なゾウガメの例ですが、家庭で飼われるケヅメリクガメやヒョウモンリクガメでも100年前後生きる可能性があると報告されています。いずれにせよ、平均寿命を超えて長生きした個体に共通するのは、適切な温度・紫外線・食事という基本的なケアが、長い年月きちんと続けられていたという点です。特別な裏技ではなく、地道な積み重ねが長寿を支えています。
リクガメの年齢を知る「年齢の見方」【早見表】
「うちの子は今、何歳くらいなんだろう」と気になっても、リクガメの正確な年齢を見極めるのは、じつはとても難しいことです。犬や猫のように「人間でいうと何歳」という一律の換算表もありません。そこで参考になるのが、甲羅に刻まれる「成長線(せいちょうせん)」から年齢を推測する方法です。

リクガメの甲羅は、ブロック状に分かれた「甲板(こうばん)」でできています。この甲板には木の年輪のような線状の模様が刻まれており、これが成長線です。温帯に暮らすカメは、成長が活発な時期と止まる時期をくり返すため、一年に一本ずつ線が増えるとされ、これを数えることでおおよその年齢を推測できます(出典:爬虫類情報サイト「爬虫類.jp」ほか)。
ただし、この方法は万能ではありません。成長線は次のような理由で正確に数えられないことがあります。
- 飼育下では季節変化が少なく、線が一年に何本もできたり、逆にできなかったりする
- 年を重ねると甲羅がすり減り、古い線が消えてしまう
- ペットショップで迎えた個体は、生まれた正確な時期がわからないことが多い
そのため、成長線はあくまで目安です。厳密な年齢よりも、体の大きさや動きの様子から「幼体・成体・老体」といった大まかなライフステージをつかむほうが、日々のケアには役立ちます。性成熟して繁殖できる年齢になれば成体、動きがゆっくりになり食が細くなってくれば老体、といった具合に、その子自身の変化を目印にしてあげてください。年齢の数字にこだわりすぎず、今どの時期にいるのかを知ることが大切です。
リクガメがかかりやすい病気・寿命を縮めやすい要因
リクガメは丈夫な印象がありますが、飼育環境が合わないと特有の病気にかかることがあります。しかも甲羅に守られている分、体調の変化に気づきにくく、飼い主が異変に気づいたときには進行していることも少なくありません。ここでは代表的な病気と、寿命を縮めやすい要因を整理します。いずれも診断・治療は動物病院の領域ですので、気になる様子があれば早めの受診を検討してください。

代謝性骨疾患(MBD・くる病)
リクガメにもっとも多いとされる病気が、紫外線(UVB)不足やカルシウム不足によって起こる代謝性骨疾患(MBD)・くる病です(出典:爬虫類専門メディアREPTILES、ペット火葬・大森ペット霊堂ブログほか)。骨や甲羅がやわらかく変形したり、うまく歩けなくなったりすることがあります。リクガメは日光や紫外線ライトを浴びることで体内でカルシウムを活用できるようになるため、UVBの不足は骨の健康に直結します。甲羅がでこぼこに盛り上がる「ピラミッディング」も、栄養や湿度の偏りが背景にあるとされます。
尿路結石(膀胱結石)
もう一つ注意したいのが、バランスの悪い食事や水分不足によって起こる尿路結石(膀胱結石)です(出典:爬虫類専門メディアREPTILESほか)。とくにタンパク質の多すぎる食事や、水分が足りない環境が原因になりやすいとされます。結石が大きくなると排泄がうまくできなくなり、外科的な処置が必要になることもあります。野菜・野草を中心とした食事と、十分な水分補給が予防につながります。
寿命を縮めやすい飼育環境の要因
病気そのもの以上に注意したいのが、次のような飼育環境のミスです。これらはリクガメの寿命を縮めやすい要因として、複数の専門メディアが共通して挙げています。
- 温度管理の失敗(代謝の低下、夏場の熱中症)
- 紫外線(UVB)の不足
- 栄養バランスの悪い食事、水分不足
- 過度なスキンシップによるストレス
- 清潔でない飼育環境による細菌・カビの感染
- 冬眠させる際の判断ミス(体力のない個体の冬眠は危険)
これらはあくまで一般的な情報であり、症状や原因はその子によってさまざまです。「食欲が落ちた」「動きが鈍い」「甲羅がやわらかい」「鼻水やくしゃみが出る」など、いつもと違う様子に気づいたら、自己判断せず、爬虫類・エキゾチックアニマルに対応した動物病院に相談しましょう。
リクガメに長生きしてもらうためにできること
リクガメの寿命を左右するのは、特別なことよりも毎日の環境づくりです。ここでは、家庭で意識したい4つのポイントを紹介します。

1温度をこまやかに管理する
リクガメは変温動物で、体温を自分で調整できません。ケージ内は昼間28〜30℃前後、バスキング(日光浴)スポットは35℃前後を目安にし、夜間も冷え込みすぎないよう保ちます。乾燥地帯出身の種類は湿気に弱いなど、種類ごとに適した温湿度が異なるため、温度計・湿度計で必ず確認しましょう。
2紫外線(UVB)ライトを設置する
リクガメが骨や甲羅の健康を保つには、紫外線(UVB)が欠かせません。屋内飼育では専用の紫外線ライトを設置し、太陽光に近い環境を再現します。ライトは時間とともに紫外線量が落ちるため、定期的な交換も大切です。天気のよい日の日光浴も、無理のない範囲で取り入れたいところです。
3野菜・野草を中心にカルシウムを補う
主食は葉物野菜や野草などの植物性の食べ物です。甘い果物やタンパク質の多い食事は肥満や尿路結石の原因になりやすいため控えめにし、カルシウム剤などで不足を補います。カルシウムとUVBは、どちらか一方だけでは十分に働かないため、食事と光の両面から整えることが大切です。
4ストレスの少ない環境をつくる
リクガメは静かに過ごすことを好みます。触りすぎや大きな音、頻繁な模様替えはストレスになり、体調をくずす一因になります。清潔な床材を保ち、落ち着いて過ごせる隠れ家を用意して、そっと見守る飼い方を心がけましょう。
どれもすぐに始められることばかりですが、リクガメの場合はこれを何十年も続けることに意味があります。「必ず長生きする」と保証できるものではありませんが、こうした日々の積み重ねが、その子が本来もつ長い寿命をまっとうする助けになります。
長寿だからこそ考えたい「終生飼養」と向き合い方
リクガメの寿命の長さは、大きな喜びであると同時に、飼い主にとって特有の課題も生みます。30年、50年という年月は、飼い主自身の人生の大きな部分と重なります。飼い主が先に高齢になったり、この子より先に旅立ってしまう可能性も、決して他人事ではありません。

だからこそ、リクガメを長く飼ううえでは「終生飼養(しゅうせいしよう)」——最後まで責任をもって飼い続けることを、家族全体で考えておくことが大切です。もし自分が世話を続けられなくなったとき、誰に託すのか。飼育環境や食事の内容、かかりつけの動物病院などを書き残しておくと、いざというときに引き継ぐ人の助けになります。近年は、ペットに財産を遺したり世話を託したりする方法について、遺言や信託の形で備える人も少しずつ増えています。
重たく考えすぎる必要はありませんが、これほど長く生きる動物を迎えるということは、その一生に責任をもつということでもあります。元気なうちに、この子の未来を家族で話し合っておく——それもまた、長寿のリクガメとの大切な向き合い方のひとつです。
リクガメとのお別れが近づいたら
どれほど長く一緒に過ごしても、いつかは必ずお別れの時が訪れます。何十年も連れ添った家族であればなおのこと、その悲しみは深いものです。考えるのもつらいことですが、その瞬間に慌てず、静かに見送ってあげるために、少しだけ心の準備をしておくと支えになります。

リクガメのような爬虫類も、犬や猫と同じようにペット霊園やペット葬儀社での火葬・供養が可能です。合同火葬・個別火葬・立ち会い火葬など形式はさまざまで、返骨の有無や料金も業者によって異なります。甲羅のあるリクガメは火葬の対応可否を事前に確認しておくと安心です。慌てて決めなくてよいよう、元気なうちに選択肢だけでもそっと知っておくと、いざというときの心の負担が少しやわらぎます。
安置の方法やお別れまでの流れは、下記の記事にやさしくまとめています。
また、長年寄り添った家族を見送ったあとに、深い悲しみや喪失感が続くのは自然なことです。ひとりで抱え込まず、同じ思いを経験した人の言葉にふれることも、心の回復の助けになります。
よくある質問
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。
まとめ
ペットとして飼われるリクガメの平均寿命は、多くの種類で30〜50年ほど。ケヅメリクガメやヒョウモンリクガメといった大型種では、100年近く生きる個体もいる、たいへん長命な動物でした。その寿命を左右するのは、温度・紫外線・食事という飼育環境の整え方と、それを何十年も続ける日々の積み重ねです。
正確な年齢は甲羅の成長線からおおよそ推測できますが、数字にとらわれず、その子のライフステージに寄り添うことが何より大切です。そして長寿だからこそ、終生飼養——最後まで見守る心構えを、家族で早めに話し合っておけると安心です。
ゆっくりと、けれど確かに刻まれていくその歩みの一歩一歩が、あなたと小さな家族にとって、あたたかな灯りに照らされた穏やかな日々でありますように。