大切な家族を亡くした人を前にして、「何と言えばいいのか分からない」と立ちすくんでしまうことがあります。慰めの言葉を探しても、どれも軽すぎる気がして口に出せない。かといって何もしないのは冷たいようで、結局そのままになってしまう――そんな戸惑いは、決して薄情さから来るものではありません。
この記事では、ペットを亡くした人に「言葉」ではなく「行動」で何ができるのかを整理します。話を聞くときの姿勢、その子の名前に触れてよいかの見極め、生活を助ける具体的な手立て、残されたほかの子の世話、職場でできること、そして時間が経ってからの関わり方まで。逆に、よかれと思ってやってしまいがちな、避けたい関わりにも触れます。相手が深く沈んでいるときにつなげる公的な相談先も、確認できた情報だけをまとめました。


一言でいうと、ペットを亡くした人にできることは、正しい言葉を探すことよりも「ただ聞く」「生活を助ける」「そっと見守り続ける」といった行動にあります。何が支えになるかは相手によって違うため、様子を見ながら、押しつけずに選ぶことが大切です。
ペットを亡くした人にできることは、言葉より「行動」

大切な存在を失った人に対して、周囲の人が「なんて声をかけたらよいのか分からないし、そっとしておこう」と考えることは珍しくありません。日本心理学会の機関誌『心理学ワールド』110号(2025年)で、遺族の悲嘆を専門とする研究者が、まさにこの周囲の反応の典型として同じ趣旨のことを書いています。つまり、あなたが感じている戸惑いは、多くの人が同じように抱えているものです。
そのうえで押さえておきたいのは、支援の中心は「何を言うか」ではなく「どう関わり続けるか」にあるということです。同誌の解説では、がん医療の遺族ケアの文脈で、家族の相談に応じることは望ましい一方で、よかれと思ってわざわざ感情の表出を促す必要はない、と指摘されています。「泣いていいんだよ」「全部吐き出して」と促すことが、必ずしも支えになるとは限らないのです。
言葉は相手の状態によって受け取られ方が大きく変わります。一方で、届いた食事や、代わってもらった仕事、誰かが黙って一緒にいてくれた時間は、どんな状態の人にもほぼ同じように働きます。この記事では、そうした「行動でできる支え」を場面ごとに見ていきます。
まず「話を聞く」——助言せず、遮らず、比べない

相手が話し始めたなら、それはすでに大きな一歩です。このとき最も難しく、そして最も大切なのが、助言をせずに、ただ聞くことです。聞く側は無力さに耐えられず、つい何かを提案したくなります。けれど相手が求めているのは解決策ではなく、「その悲しみがそこにあること」を誰かに認めてもらうことである場合が多いのです。
具体的には、次の3つを避けるだけで、聞き方は大きく変わります。
1遮らない
話が途切れても、沈黙を埋めようとしなくて大丈夫です。相手は言葉を探している最中かもしれません。「うん」「そうだったんですね」と受けるだけで十分に伝わります。
2比較しない
「うちも去年〇〇を亡くしてね」と自分の話に移すと、話の主役が入れ替わってしまいます。「もっとつらい人もいる」「人間じゃないだけまだ」といった比較は、相手の悲しみを小さく扱うことになります。
3解決しようとしない
「気晴らしに出かけよう」「早く忘れたほうがいい」は、悲しみを取り除こうとする働きかけです。悲しみは処理すべき問題ではなく、相手がその子を大切にしてきた証でもあります。取り除こうとせず、隣に置いておくつもりで聞いてみてください。
そして、話を最後まで聞いたあと、無理にまとめようとしないことです。「大変だったね」と一言だけ返して終わっても、まったく問題ありません。
その子の名前を呼ぶ・思い出を話す(ただし相手による)

「亡くなった子の話題には触れないほうがいい」と考える人は少なくありません。けれど実際には、周囲がその話題を避けることで、「あの子はいなかったことにされている」と感じてつらくなる人もいます。名前を呼んでもらえること、思い出を一緒に語れることが、救いになる場合があるのです。
たとえば、「〇〇ちゃん、いつも玄関まで迎えに来てくれましたよね」「散歩ですれ違うとき、必ずしっぽを振ってくれました」といった、自分が実際に見た小さな記憶を伝える。それは慰めの言葉より具体的で、その子が確かにこの世界にいたことの証言になります。
ただし、ここは慎重さが要る場面でもあります。名前を出されるだけで涙が止まらなくなる時期の人もいます。「触れてほしい人」と「まだ触れられない人」に分かれ、しかも同じ人でも時期によって変わります。ですから、いきなり深く踏み込まず、短く一言添えて相手の反応を見る。相手が続きを話し始めたら聞き手にまわり、表情が硬くなったらそれ以上は追わない。この見極めを、こちらが引き受けるつもりでいてください。
生活を助ける——食事・家事・仕事・残された子の世話

言葉に迷うときこそ、手を動かす支えが確実に届きます。深い悲しみのなかでは、食事をつくる、洗濯をする、書類を出すといった当たり前のことが、驚くほど重荷になります。ここを肩代わりすることは、誰にでもできて、誰にとっても意味のある支援です。
- 食事を届ける——温めるだけのもの、日持ちするもの、量が選べるものを。「食べて」と言い添えず、玄関先に置くだけでも構いません
- 家事を手伝う——掃除・洗濯・買い出しなど、終わりが見える単位で申し出る
- 仕事を代わる——引き継げる業務を具体的に挙げて「これは私がやります」と伝える
- 子どもを預かる——送り迎えや数時間の預かりが、ひとりで泣ける時間になることがあります
- 手続きに付き添う——火葬の予約や役所の届け出は、隣に誰かがいるだけで進めやすくなります
ポイントは、「何かあったら言ってね」ではなく、具体的な内容と日時をこちらから提示することです。悲しみのなかにいる人は、助けを頼む判断そのものが難しくなります。「明日の夕方、スープを届けます。出てこなくて大丈夫です」のように、断りやすい形で、けれど具体的に伝えてみてください。
残されたほかの子の世話も、大きな支えになります
同じ家に別のペットがいる場合、その子のごはん・トイレ・散歩は待ってくれません。飼い主さんが動けないときに、この世話を手伝えるかどうかは、暮らしの継続に直結します。
また、残された子自身にも変化が出ることがあります。イタリアの研究チームが飼い主426人を対象に行った調査(学術誌『Scientific Reports』2022年)では、同居していた犬を亡くしたあと、86%の飼い主が残された犬の行動に変化を認めたと報告されています。内訳としては、甘えや要求が増える、遊ばなくなる、活動量が下がる、食事の量が減る、といった変化が挙げられました。同調査では、2頭の関係が良好だった場合や、飼い主自身の悲しみが強い場合に、こうした変化がより多くみられたことも示されています。
これは犬を対象にした1つの調査であり、すべての動物や家庭に当てはまるものではありません。ただ、「残された子の様子も気にかけている」と伝わること自体が、飼い主さんにとっては心強いはずです。食欲や元気が落ちた状態が続くようであれば、動物病院への相談をそっとすすめてみてください。
「そっとしておく」も支え——連絡は絶やさず、返信は求めない

会いたくない、話したくない時期は確かにあります。訪問や電話が、かえって負担になることもあります。けれど「そっとしておく」ことと「関わりを断つ」ことは違います。理想的なのは、連絡は絶やさないけれど、返信を求めないという関わり方です。
たとえば「返事はいらないので、これだけ」と前置きしたメッセージ。玄関先に置いた差し入れと短いメモ。会うかどうか、返すかどうかの決定権を相手に渡したうえで、「気にかけている」という事実だけを届けます。これなら、相手がどんな状態でも負担になりません。
前述の『心理学ワールド』の解説でも、周囲の対応として望ましいのは、こちらから感情の表出を促すことではなく、相談に応じられる状態を保つこと、そして必要なときに専門家につなげることだと述べられています。待つことも、立派な行動です。
職場でできること——忌引と、無理に明るく振る舞わせないこと

職場は、ペットとの別れがもっとも理解されにくい場所のひとつです。アイペット損害保険が2023年9月に、犬や猫を亡くした経験のある1,000人を対象に行った調査によると、ペットを亡くした際に休暇を取得した人は11.6%にとどまりました。さらに、休暇を取得した人のうち約半数は会社に理由を伝えておらず、その理由として最も多く挙がったのが「共感してもらえないと思った」(5割超)でした。取得日数は「1〜2日」が約7割を占めています。
制度面でいえば、忌引休暇は法律で義務づけられた制度ではなく、各企業が就業規則で定めるものです。したがって、ペットが対象に含まれるかどうかも会社ごとに異なります。近年は独自に制度を設ける企業もあり、たとえば同社は2016年7月から「ペット忌引き」を導入し、犬・猫は年最大3日、その他のペットは年1日を取得できるとしています。
同僚や上司としてできることは、次のようなことです。
- 就業規則を確認し、忌引や慶弔休暇、有給の取得が可能かを本人に代わって調べる
- 理由を根掘り葉掘り聞かず、必要な手続きだけを静かに整える
- 締め切りや当番を前倒し・肩代わりできないか具体的に提案する
- 「元気そうでよかった」「もう立ち直ったね」と決めつけず、明るく振る舞うことを求めない
- 本人が話題にしたときだけ、静かに受け止める
制度がない職場でも、有給休暇の取得を後押しする、業務量を調整するといった運用でできることはあります。「休んでいい」と誰かが言ってくれること自体が、大きな支えになります。
よかれと思って、つい やってしまいがちなこと

ここまでの裏返しとして、善意から出ているのに相手を追いつめてしまいやすい関わりを整理します。もしすでに言ってしまっていたとしても、責める必要はありません。次からの関わりで十分に取り戻せます。
| つい やってしまいがちなこと | 相手が受け取りやすい意味 | 代わりにできること |
|---|---|---|
| 「元気出して」「前を向いて」と励ます | いまの状態のままではいけない、と急かされている | 「無理に元気にならなくていいですよ」と伝える |
| 「次の子を迎えたら」とすすめる | あの子は代わりのきく存在だと言われている | 迎えるかどうかは本人が決めること。話題にしない |
| 「元気そうでよかった」と決めつける | もう悲しんではいけないのだと感じる | 「どうしていますか」と、決めつけずに尋ねる |
| 「寿命だったんだよ」「大往生だね」 | 後悔や自責の気持ちを否定された | 「よく面倒をみてこられましたね」と経緯をねぎらう |
| 「もっとつらい人もいる」と比べる | この悲しみは大したことではないと言われた | 比べずに、その人の悲しみだけを聞く |
| 「ペットなんだから」と線を引く | 家族として扱ってもらえない | その子の名前で呼び、家族として話す |
共通しているのは、悲しみを早く終わらせようとする働きかけが、かえって相手を孤立させてしまうという点です。終わらせるのではなく、そこに一緒にいる。それだけで十分に支えになります。
時間が経ってから/相手が深刻な状態のときにできること

周囲の関心は、どうしても最初の数週間に集まります。けれど本人にとって難しいのは、まわりが日常に戻ってからの時間であることも少なくありません。命日や誕生日、その子と過ごした季節の節目に、一言だけ添える。「今日は〇〇ちゃんの日ですね」と送るだけで、忘れられていないことが伝わります。何年経っていても構いません。
なお、悲しみが進む道筋を「段階」として語る説明を目にすることがありますが、誰もが決まった順序をたどるわけではありません。行きつ戻りつするのが自然な姿です。「もう〇か月なのに」と、こちらが時計を持ち込まないようにしてください。
専門的な支援につなぐ目安
大切な存在を失ったあとの悲しみは、多くの場合、時間とともに少しずつ形を変えていきます。一方で、一部の人では症状が重くなり、支援が必要な状態になることがあります。人との死別の領域では、こうした状態が「遷延性悲嘆症(PGD)」として、WHOの国際疾病分類ICD-11(2019年)とアメリカ精神医学会のDSM-5-TR(2022年)に正式な診断名として収載されました。診断までに症状が持続している期間の基準はICD-11で6か月、DSM-5-TRで12か月(成人の場合)とされています。海外での有病率はICD-11基準で2〜8%、DSM-5-TR基準で3%との報告があり、日本国内の知見は乏しいとされています(『心理学ワールド』110号、2025年)。
これは人との死別を対象とした基準であり、ペットとの別れにそのまま当てはめられるものではありません。ただ、同記事では、悲嘆が重い状態にある人の約7割が、うつ病やPTSDといった別の疾患の診断にも相当したという報告が紹介されています。そして支援や治療が必要な状態にあることを、本人が自覚するのは難しいとも述べられています。だからこそ、周囲が気づくことに意味があります。
次のような様子が続くときは、専門的な相談を検討する時期かもしれません。医療的な判断はできませんが、「相談先があること」を伝えるのは、周囲にできる行動のひとつです。
- 眠れない・食べられない状態が長く続いている
- 仕事や家事、身のまわりのことが手につかない日が続く
- 強い自責の言葉が繰り返される
- 「自分も一緒に行きたい」といった言葉が出る
- お酒の量が明らかに増えている
相談先としては、まず公的な窓口があります。厚生労働省のサイト「まもろうよ こころ」で案内されているこころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)は、全国どこからかけても、かけた場所の公的な相談機関につながる電話相談です。ただし対応の曜日・時間は都道府県・政令指定都市によって異なるため、事前の確認が必要です。24時間対応の窓口としては、一般社団法人社会的包摂サポートセンターが運営するよりそいホットライン(0120-279-338/通話無料)があります。お住まいの地域の精神保健福祉センターや保健所でも相談を受け付けています。
「こういう窓口があるみたいです」と情報を渡すところまでが、周囲にできることです。かけるかどうかは本人が決めることですので、無理にすすめないでください。
よくある質問
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。心身の不調が続くときは、医療機関や公的な相談窓口にご相談ください。相談窓口の名称・電話番号・受付条件、および企業の休暇制度の内容は執筆時点(2026年8月)の各公式サイト・公表資料の情報です。最新の情報は各窓口・各企業の公式情報でご確認ください。
まとめ
ペットを亡くした人にできることは、正しい言葉を見つけることではありませんでした。助言をせずにただ聞くこと。その子の名前を、相手の様子を見ながらそっと呼ぶこと。食事や家事、残された子の世話といった暮らしの部分を具体的に肩代わりすること。返信を求めない連絡を絶やさないこと。職場では休める環境を整え、明るく振る舞うことを求めないこと。そして、時間が経ってからも忘れずに一言を添えること。
どれが支えになるかは、相手によって、時期によって変わります。正解はありません。うまくできなくても、そばにいようとしたことは必ず伝わります。もし相手が深く沈んだままなら、公的な相談窓口という選択肢があることを、そっと差し出してください。
あなたの気づかいが、あの子と過ごした日々ごと、その人をやさしく包んでくれますように。