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犬・猫の老衰のサイン|数か月前・数週間前・数日前に見られる変化と寄り添い方

眠っている時間がずいぶん増えた。あんなに好きだったごはんを、少し残すようになった。呼んでも、前ほどすぐには顔を上げてくれない——。長く一緒に暮らしてきた子にそうした変化が重なると、「年のせいだろうか」「それとも、お別れが近いということなのだろうか」と、胸の奥がざわつくのではないでしょうか。老衰のサインといわれる変化は、ある日突然あらわれるものではなく、数か月をかけてゆっくり進むことが多いとされています。ただし進み方には大きな個体差があり、しかも病気による変化とよく似ているため、見た目だけで区別することはとても難しいものです。この記事では、犬や猫の老衰で見られるとされる変化を数か月前・数週間前・数日前という時間の流れで整理し、動物病院に相談したい目安と、おうちでできる寄り添い方をお伝えします。あなたが今日、そばにいてあげるための手がかりになればと願っています。

飼い主さん
最近、うちの子が一日中寝ていて、ごはんもあまり食べません。これは老衰のサインなのでしょうか。
編集部
眠る時間が増える、食が細るという変化は、加齢にともなってよく見られるとされています。ただ、同じ変化は腎臓や心臓、口の中の痛みなど、治療で楽にしてあげられる病気でも起こります。「老衰だから仕方ない」と決める前に、一度かかりつけの動物病院で診てもらえると安心です。

一言でいうと、老衰のサインとされるのは「眠る時間が増える・食が細る・体温が下がる・呼吸が変わる・反応が鈍くなる」といった、生活のなかで少しずつ進む変化です。ただし、これらは病気の症状とほとんど見分けがつかないことが多いため、自己判断はせず、気になったタイミングでかかりつけの動物病院にご相談ください。

老衰のサインとは|年齢による変化と病気の症状は見分けにくい

窓辺で静かに眠るシニア犬とそばに座る飼い主
写真はイメージです

老衰とは、特定の病気ではなく、加齢とともに体のさまざまな働きがゆるやかに低下していく状態を指す言葉として使われています。心臓や腎臓のように検査で数値が出るものではないため、「老衰」は、考えられる病気をひととおり確認したあとに残る言葉ともいえます。裏を返せば、動物病院で診てもらう前の段階で「これは老衰です」と言い切れる人は、飼い主にも獣医師にもいません。

犬は7歳ごろ、猫は8歳ごろからがシニア期の目安

新潟県・下越動物保護管理センターの啓発ページでは、「犬は7歳頃から、猫は8歳頃からがシニア期とされていますが、品種や飼育環境等により異なります」と説明されています(出典:新潟県「飼う前から考えよう!犬猫シニアライフについて」)。同ページでは、嗅覚・視力・聴力の衰えや筋力の低下、病気にかかりやすくなることが、老化にともなう変化として挙げられています。

大型犬は小型犬より老化が早く進むといわれるように、同じ年齢でも体の状態は一頭ごとに違います。年齢はあくまで目安として受け止め、「その子の去年との違い」を見ていくほうが、実際の状態に近づけるとされています。

同じ変化が、治療できる病気で起きていることもある

食欲が落ちる、痩せてくる、水をよく飲む、寝てばかりいる——こうした変化は、腎臓や心臓、甲状腺の病気、関節の痛み、口の中のトラブルなどでも見られると解説されています(参考:かやま動物病院「シニア犬の体の変化とは?」)。つまり、老衰に見える変化のなかには、治療やケアで楽にしてあげられるものが混ざっている可能性があるということです。

「もっと早く気づいていれば」と、ご自分を責める必要はありません。これらの変化は毎日そばにいる人ほど気づきにくいもので、ゆっくりとした進み方こそが加齢による変化の特徴だからです。今日気づけたなら、それは十分に早いタイミングです。

老衰で見られるとされる変化の流れ【時期別の目安】

老衰で見られるとされる変化を数か月前・数週間前・数日前の3段階で整理した図
老衰で見られるとされる変化の流れ(当メディア編集部作成)

以下は、動物病院やペット関連メディアの解説で共通して挙げられている変化を、時期別に整理したものです。あくまで一般的に言われている目安であり、この順番どおりに進むとはかぎりませんし、時期が前後することもあります。その子に当てはめて残された時間を判断するためのものではない、という前提でご覧ください。

時期の目安 見られるとされる変化 そのときにできること
数か月前ごろ 眠る時間が増える/散歩や遊びを早く切り上げる/食べる量が少しずつ減る/呼びかけへの反応が鈍い 健康診断を受け、治せる不調がないか確認する
数週間前ごろ 体重が落ちる/立ち上がりや歩行がふらつく/好きだった食事も残す/排せつの失敗が増える 過ごし方や食事の形について獣医師に相談する
数日前ごろ 水もほとんど口にしない/体や手足が冷たい/呼吸が浅い・不規則/横になったまま起き上がれない 保温と静かな環境を整え、そばで声をかける

なお、この流れをたどらずに、前日まで穏やかに過ごしていた子が静かに旅立つこともあります。どのような形であっても、それは飼い主の落ち度ではありません。

数か月前ごろから現れやすいとされる変化

日だまりで丸くなって眠るシニア猫
写真はイメージです

眠っている時間が増える

もっとも早い時期から見られやすいとされるのが、睡眠時間の増加です。起きている時間が短くなり、名前を呼んでも寝たまま尻尾だけで応える、といった様子が増えていきます。一方で昼夜が逆転し、夜中に起きて鳴いたり歩き回ったりする場合は、認知機能の低下(いわゆる認知症)が関わっていることもあるとされ、12歳を過ぎたころから見られやすくなると解説されています(参考:ドクターオザワ動物病院「シニアの犬や猫の認知症について」)。夜鳴きや徘徊は飼い主の負担も大きいため、抱え込まずに動物病院に相談してよい症状です。

食が細くなる

加齢とともに嗅覚が衰え、においで食欲が湧きにくくなるといわれます。消化する力も落ちるため、以前と同じ量を食べきれなくなることがあります。フードを人肌程度に温めてにおいを立てる、一回量を減らして回数を増やすといった工夫が紹介されていますが、数日以上まったく食べない、水も飲まない場合は、加齢とは別の原因が隠れている可能性があります。早めに受診してください。

呼びかけや物音への反応が鈍くなる

視力や聴力の低下により、後ろから近づくと驚く、呼んでも気づかない、家具にぶつかるといった様子が出てくることがあります。触れる前に必ず声をかける、家具の配置を変えない、といった配慮で暮らしやすさが変わるとされています。

被毛や体つきの変化

毛づやが失われる、白髪が増える、背中の筋肉が落ちて骨ばって見える、といった変化も加齢にともなって見られます。ただし急激な体重減少は病気のサインであることも多いため、月に一度は体重を記録しておくと、受診時の大切な情報になります。

数週間前〜数日前に見られることがあるとされる変化

寝ている愛犬の体にそっと手を添える飼い主
写真はイメージです

体温が下がり、体が冷たく感じられる

終末期が近づくと血液の巡りが弱まり、耳の先や手足、しっぽの先などが冷たく感じられるようになるといわれます。体温を保つ力そのものが落ちていくため、室温を暖かめに保つ、毛布を重ねるといった保温が、そのままの寄り添いになります。

呼吸のリズムが変わる

浅く速い呼吸になったり、逆に深くゆっくりになったり、数秒とまってからまた始まったりと、呼吸が不規則になることがあるとされています。あごを上げて口を開ける呼吸が続く場合は苦しさをともなっていることもあるため、時間帯を問わずかかりつけ、または夜間救急の動物病院に連絡してよい状態です。

水もほとんど口にしなくなる

食事に続いて、水も自分から飲まなくなることがあります。脱水を防ぐためにスポイトやシリンジで口元を湿らせる方法が紹介されていますが、飲み込む力が落ちている子では誤嚥(気管に入ってしまうこと)の危険があるため、やり方は必ず獣医師に確認してから行ってください。

横になったまま起き上がれなくなる

自力で立てなくなり、寝返りも打てなくなると、床ずれや体の冷えが起こりやすくなります。ここからは治すためのケアではなく、痛みや不快感をできるだけ減らすためのケアが中心になります。何をどこまでするかは、その子の状態とご家庭の事情によって違ってよいものです。

自己判断せず動物病院に相談したい目安

診察台の上でシニア犬をやさしく診る獣医師と付き添う飼い主
写真はイメージです

ここまで挙げた変化は、そのほとんどが病気でも起こりうるものです。「老衰だと思っていたら治療できる病気だった」というケースは珍しくなく、逆に「もう年だから」と受診をためらったことで、和らげられたはずのつらさが続いてしまうこともあります。次のような様子が見られたときは、迷わず相談してください。

動物病院に相談したい様子


・24時間以上まったく食べない、水も飲まない
・呼吸が苦しそう、あごを上げて口を開けて呼吸している
・立てない、ふらつく、けいれんしている
・嘔吐や下痢が続く、便や尿が出ていない
・急に体重が落ちた、極端に水を飲む量が増えた
・夜鳴きや徘徊が続き、飼い主の生活にも支障が出ている

受診の際は、いつからどんな変化があったか、食べた量や水の量、排せつの回数などをメモして持っていくと、限られた診察時間でも状態が伝わりやすくなります。スマートフォンで歩き方や呼吸の様子を動画に残しておくのも役立つとされています。

また、これから先どう過ごすか、痛みをどう和らげるか、通院と自宅ケアのどちらを中心にするかといった相談も、動物病院でできます。安楽死という選択に触れることがあるかもしれませんが、それは選んでも選ばなくても、どちらも愛情から出た判断です。ご家族の気持ちと、その子の様子を見ている獣医師の見立てを重ねながら、時間をかけて決めていくことがらだとされています。

おうちでできる寄り添い方【床ずれ・保温・水分・声かけ】

床ずれ予防・保温・水分・声かけという自宅でできる4つの寄り添い方をまとめた図
おうちでできる4つの寄り添い方(当メディア編集部作成)

特別な道具がなくても、今日から始められることがあります。すべてを完璧にやろうとせず、できる範囲で構いません。

1床ずれを防ぐ(体位変換)

寝たきりになると、体の下になった部分の皮膚が圧迫されて床ずれが起こりやすくなります。老犬ホーム情報サイト「老犬ケア」では、体位変換は2時間程度を目安としつつ、体重や皮膚の状態、マットの素材によって調整するとよいと説明されています。返すときはお腹を上にせず、背中側が上になるようにするのが負担が少ないとされています。夜間まで無理に続ける必要はありません。

2清潔と乾燥を保つ

同サイトでは、圧迫を減らすこと以上に清潔を保つことが大切だと説明されています。排せつ物はすぐに片づけ、体についた場合はやさしく拭き取り、しっかり乾かします。体圧分散マットやタオルで、骨が出ている部分が直接床に当たらないようにするのも予防になります(出典:老犬ケア「寝たきり・床ずれへの対応」)。

3体を冷やさない

体温を保つ力が落ちていくため、室温を暖かめに保ち、毛布やベッドで包むように整えます。湯たんぽや電気マットを使うときは、自分で動けない子ほど低温やけどの危険があるため、必ずタオルで包み、直接触れないようにしてください。

4水分と食事は「その子のペース」で

食べたがるならやわらかくしたものを少しずつ、食べたがらないなら無理強いはしません。水を飲みたそうにしているのに飲めないときは、口元を湿らせる方法もありますが、誤嚥を避けるためやり方は獣医師に確認してください。点滴などで水分を補う選択肢についても相談できます。

5いつもの声で、名前を呼ぶ

聴覚や触覚は最後まで残りやすいといわれています。特別なことをしなくても、名前を呼び、いつもの調子で話しかけ、そっと体をなでる時間そのものが、その子にとっての安心になります。泣いてしまってもかまいません。

そして、その日が来たあとに慌てないよう、安置やお別れの流れを一度だけ目を通しておくと、心の準備の助けになることがあります。今は読みたくないと感じるなら、そのままで大丈夫です。

見守る側の心も、同じくらい大切に

窓辺で静かに考えごとをする人の後ろ姿
写真はイメージです

介護や見守りの時間は、体力だけでなく心も削られます。夜中に何度も起きる日が続き、仕事や家事との両立に疲れ、そんな自分に罪悪感を覚えてしまう——それは、あなたが不真面目だからではなく、それだけ長く向き合ってきた証です。

家族で当番を分ける、日中だけペットシッターや老犬・老猫ホームの一時預かりを使う、かかりつけの動物病院に「介護がつらい」と正直に伝える。そうした選択は、その子を大切にしていないことにはなりません。介護をする人が倒れてしまえば、いちばん困るのはその子だからです。

お別れのあとに訪れる悲しみは、時間の長さも形も人それぞれです。あらかじめ知っておくだけでも、あとの自分を少し楽にしてあげられることがあります。

よくある質問

Q老衰のサインが出てから、どれくらいの時間が残っていますか。

A一般的な目安として語られることはありますが、その子に当てはめて期間を言い切れるものではありません。数か月穏やかに過ごす子もいれば、急に変化が進む子もいます。日数を数えるより、今日どう過ごすかに目を向けられたほうが、後悔は少なかったという声が多く聞かれます。状態の見通しについては、実際に診ているかかりつけの獣医師にお尋ねください。

Q老衰と病気は、家で見分けられますか。

A見た目だけで区別するのは、獣医師でも難しいとされています。食欲低下や体重減少、活動量の低下は、腎臓病・心臓病・甲状腺の病気・関節の痛み・口内のトラブルなどでも起こります。血液検査などで確認できることも多いため、家で判断せず受診をご検討ください。

Qハムスターや小動物にも、同じサインが当てはまりますか。

A動く量が減る、食が細る、体が冷たくなるといった大きな流れは共通するとされますが、小さな体の子は体調の変化がとても速く進みます。犬猫と同じ感覚で様子を見ると手遅れになることがあるため、変化に気づいた時点で、小動物の診療に対応している動物病院にご相談ください。

Q最期のときは、そばにいてあげたほうがよいのでしょうか。

Aそばにいられるなら、それはとても穏やかな時間になるといわれます。ただ、飼い主が留守のあいだに静かに旅立つ子も少なくありません。それは「ひとりにしてしまった」ということではなく、そういう形の最期もあるというだけです。看取れなかったことで、それまで積み重ねた日々の価値が変わることはありません。

※本記事は一般的な情報提供が目的で、診断・治療の代わりではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。

まとめ

老衰のサインとされるのは、眠る時間が増える、食が細る、体温が下がる、呼吸が変わる、反応が鈍くなるといった、暮らしのなかで少しずつ進む変化です。数か月前・数週間前・数日前という流れで語られることが多いものの、進み方には大きな個体差があり、そのとおりに進むとはかぎりません。

そして何より、これらの変化は病気の症状とほとんど見分けがつきません。「もう年だから」で終わらせず、一度かかりつけの動物病院で診てもらうことが、その子のつらさを減らす近道になります。おうちでは、床ずれを防ぎ、体を冷やさず、水分に気を配り、いつもの声で名前を呼ぶ。それだけで十分に、寄り添えています。

気づくのが遅かったのではないか、もっと何かできたのではないか——そう思ってしまう日もあるかもしれません。けれど、その子が長い時間を安心して眠れる場所を持てたのは、あなたがそばにいたからです。

残された時間が、その子にとってもあなたにとっても、静かであたたかいものでありますように。

-死の前兆・余命, 看取り・終末期