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高齢の猫が痙攣を起こしたら|すぐにすべき対応と受診の目安・考えられる原因

年を重ねた猫が、突然体を突っ張らせて倒れ、手足をバタバタと動かす——。その光景を目にした瞬間、頭が真っ白になってしまう飼い主さんは少なくありません。声をかけても反応がなく、数十秒がとても長く感じられる。あとから「あのとき、どうすればよかったのだろう」と自分を責めてしまう方もいらっしゃいます。

痙攣(けいれん)は、猫自身がコントロールできない体の反応です。飼い主さんにできることは限られていますが、それでも「知っているかどうか」で守れることがあります。この記事では、高齢の猫に痙攣が起きたときにまず何をすればよいのか、逆に絶対に避けたい対応は何か、そして受診を急ぐべきサインと、背景として一般に挙げられる病気について、編集部が動物病院や獣医師監修メディアの公開情報をもとに整理してお伝えします。

飼い主さん
年老いた猫が急に痙攣を起こしました。あのとき私は、何をしてあげればよかったのでしょうか。
編集部
まずは、そばで見守られたこと自体が大きな支えになっています。痙攣中は体に触れず、周りの危ないものをどけて、時間を計りながら静かに見守るのが一般的な対応とされています。落ち着いてから受診できるよう、順にご説明しますね。

一言でいうと、痙攣中は口に手を入れず・体を押さえず、周囲の危険物をどけて時間を計り、可能なら動画を撮って、落ち着いてから動物病院へ連絡するのが基本とされています。5分以上続く場合や短時間にくり返す場合は、時間帯を問わず緊急性が高いと考えられています。

高齢の猫にみられる痙攣(発作)とは

痙攣とは、脳の神経が異常に興奮することで、体が震える・手足が突っ張る・意識を失うといった症状が突然起こる状態を指します。数秒で終わるものから数分続くものまで幅があり、猫では全身がけいれんするタイプのほか、顔や体の一部だけがぴくつく、意識は保たれたまま奇妙な行動をとるといった軽い発作もあるとされています(出典:アニコム損保「みんなのどうぶつ病気大百科」)。

全身の発作では、突然倒れて体をのけぞらせ、四肢を突っ張る、手足をバタバタさせる、大量によだれを出す、失禁するといった様子がみられます。意識がないため呼びかけには反応せず、飼い主さんを認識できません。この間、猫は苦しさを自覚していないと考えられており、飼い主さんが慌てて体を揺すったり抱き上げたりする必要はないとされています。

窓辺で静かに横たわる高齢の猫のイメージ
写真はイメージです

発作は「前・最中・あと」の3つの時間で見ると分かりやすい

発作は、始まる前・最中・おさまったあとの3つの時間に分けて観察すると、動物病院で伝えやすくなります。前触れとして、落ち着きなく歩き回る、過剰にグルーミングする、不安そうに鳴くといった行動がみられることがある一方、まったく前触れなく突然始まることも多いとされています。

発作がおさまったあとは、何事もなかったように戻る子もいれば、しばらくぼんやりする、ふらつく、やたらと食べたがる、隠れてしまうといった状態が続く子もいます。これは「発作後の状態」と呼ばれ、数分から、まれに数日続くこともあるとされています。この時間帯の様子も、あとで獣医師に伝えたい大切な情報です。

痙攣と間違えやすいもの

寒さや痛みによる震え、寝ているときの手足のぴくつき、一時的に意識を失って倒れる失神、めまいでふらつく状態などは、痙攣とよく似て見えます。見分けの目安になるのは「意識があるかどうか」「呼びかけに反応するか」「体の動きを自分で止められるか」ですが、実際には区別が難しい場面も多く、判断は動物病院に委ねるのが安心です。

痙攣が起きたとき、すること・してはいけないこと

ここが、この記事でもっともお伝えしたい部分です。痙攣そのものを飼い主さんの手で止めることはできません。目的は「猫がケガをしないようにすること」と「あとで獣医師に正確に伝えられる情報を残すこと」の2つだけと考えると、動きやすくなります。

猫の痙攣時にすること・してはいけないことを対比した図解
痙攣が起きたときの対応のめやす(当メディア編集部作成)

1周囲の危険物をどける(猫を動かさない)

まず、猫のまわりを見渡して、ぶつかるとケガをしそうなもの——ストーブ、家具の角、ガラス製品、コード類——を遠ざけます。階段や高い場所の近くであれば、落下しないように毛布やクッションで囲うように置きます。猫自身を抱えて移動させるのではなく、危険なもののほうをどけるのが基本とされています。

2時計を見て、始まった時刻と長さを計る

痙攣が「何分続いたか」は、緊急度を判断するうえで重要な情報になります。慌てていると体感時間は実際よりずっと長く感じられるため、スマートフォンや時計で始まった時刻を確認し、可能ならストップウォッチで測ります。1日に何回起きたか、間隔はどのくらいかも、あとで書き留めておきます。

3可能であれば動画を撮る

発作の様子は、言葉で説明するより動画のほうが正確に伝わります。獣医師が体の動き方や左右差、意識の有無を確認する手がかりになるため、余裕があれば数十秒だけでも撮影しておくと診察の助けになるとされています。撮影が難しければ無理をせず、落ち着いてから「どこがどう動いていたか」をメモに残すだけでも十分です。

4部屋を暗くし、静かに見守る

強い光や大きな音は刺激になる可能性があるため、照明を落とし、テレビや音楽を消して静かな環境をつくります。名前を呼びたくなりますが、意識のない状態では届きません。そばで小さな声で話しかけながら、終わるのを待ちます。

5おさまったら動物病院へ連絡する

発作が終わったら、猫を暗く静かな場所で休ませ、動物病院へ電話をします。初めての発作であれば、たとえ短時間で落ち着いた場合でも、一度は診てもらうことがすすめられています。受診時には、時刻・長さ・回数・動画・最近の食欲や飲水量の変化を伝えられるようにしておきます。

絶対に避けたい対応

もっとも避けたいのは、口に手やタオル、スプーンなどを入れることです。「舌を噛まないように」と考えてしまいがちですが、発作中の猫は反射的に強く噛むため、飼い主さんが大ケガをする危険があるとされています。人と違い、猫が発作で舌を飲み込むことはないと説明されています。

また、体を強く押さえつける、大きな声で呼ぶ、ゆすって起こそうとする、水や薬を口に入れる、といった対応も避けたい行動です。押さえつけても発作は止まらず、猫や飼い主さんがケガをする原因になります。発作中に抱き上げて車に乗せるのも危険なため、移動はおさまってからにします(出典:ねこのきもちWEB MAGAZINE(獣医師監修))。

すぐに受診すべきサインと緊急度のめやす

多くの発作は数分以内におさまるとされていますが、5分以上続く発作や、意識が戻らないまま何度もくり返す発作は「重積(じゅうせき)」と呼ばれ、命に関わる緊急事態と考えられています。夜間や休診日であっても、救急対応をしている動物病院へ連絡することがすすめられています。

猫の様子 緊急度のめやす 対応の考え方
5分以上、痙攣が続いている 非常に高い 時間帯を問わずすぐ受診・救急へ連絡
短時間に何度もくり返す(間に意識が戻らない) 非常に高い 時間帯を問わずすぐ受診
おさまっても意識が戻らない・呼んでも反応がない 非常に高い すぐ受診
1日に複数回、発作がくり返される 高い 当日中に受診・電話で相談
初めての発作(数十秒〜数分でおさまった) 中〜高い 落ち着いてから当日〜翌日に受診
思い当たる誤食・薬・殺虫剤がある 非常に高い 原因物質を持参してすぐ受診

「様子を見てもいいでしょうか」と迷う場面もあると思います。一般的には、短時間でおさまり、そのあとけろりと普段どおりに戻った場合は、あわてて夜間救急に駆け込むより、翌朝かかりつけの動物病院で相談する形でも間に合うことが多いと説明されています。ただし、高齢の猫の発作は背景に病気が隠れていることが多いとされるため、「一度でも起きたら、必ず一度は受診する」と決めておくと迷いが減ります。

動物病院で診察を受ける猫と飼い主のイメージ
写真はイメージです

高齢の猫の痙攣で一般に挙げられる原因

痙攣は病名ではなく、さまざまな病気の結果として現れる「症状」です。若い猫では原因不明のてんかんも見られますが、高齢の猫では、脳以外の臓器の病気が背景にあることが少なくないとされています。ここでは、動物病院の解説で一般に挙げられている原因を整理します。見た目の様子だけで原因を特定することはできないため、あくまで「こうした可能性がある」という理解にとどめてください。

高齢の猫の痙攣で一般に挙げられる主な原因6つを整理した図解
高齢の猫の痙攣で挙げられる主な原因(当メディア編集部作成)

腎臓病による尿毒症

高齢の猫にもっとも多い病気のひとつが慢性腎臓病です。有病率の報告には幅があり、15歳以上では30%以上とするものから、約80%とする調査(Marino CLら, Journal of Feline Medicine and Surgery, 2014年)まで報告されています。腎臓の働きが低下すると老廃物を尿として排泄できなくなり、体内にたまった物質が神経に影響して痙攣を引き起こすことがある、と説明されています(出典:ペット保険のFPC「尿毒症」)。多飲多尿、体重減少、食欲の低下といった変化が先行していることが多いとされます。

肝臓の病気(肝性脳症)

肝臓の機能が低下すると、本来なら分解・処理されるはずのアンモニアなどが十分に処理されず、脳に影響を与えることがあるとされています。ぼんやりする、ふらつく、興奮する、よだれを流す、筋肉のけいれんといった症状が現れることがあり、食後に目立ちやすいと説明されることがあります。

脳の病気(腫瘍・炎症など)

高齢になると、脳腫瘍や脳の炎症が原因となる発作もみられます。動物病院の解説では、脳そのものの腫瘍だけでなく、鼻の奥にできた腫瘍が大きくなって脳を圧迫し、痙攣につながる例が紹介されています(出典:動物病院セカンドセレクト)。同じ方向にぐるぐる回る、性格が変わったように見える、片側だけがぎこちないといった変化が伴うことがあります。

てんかん

てんかんは、脳の神経の異常な興奮によって発作がくり返される状態です。猫の場合は、原因不明の「特発性(真性)」より、脳腫瘍や脳炎などの脳疾患が背景にある「症候性」が多いとされています。同じような発作がくり返し起こる場合には、抗てんかん薬による治療が検討されることがありますが、いずれも診断と処方は動物病院で行われます。

低血糖

血糖値が下がりすぎると、ふらつき、震え、意識のもうろう、けいれんといった症状が起こることがあるとされています。糖尿病の治療中や、食事がとれない日が続いたあとに注意が必要と説明されることが多く、体調を崩している高齢の猫では見過ごせない要因のひとつです。

中毒

人用の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)、犬用のノミ・ダニ駆除薬に含まれるペルメトリン、殺虫剤、不凍液、一部の植物などは、猫にとって中毒の原因となることが知られています。猫は肝臓での解毒の仕組みが人や犬と異なるため、少量でも影響が出やすいと説明されています(出典:アニコム損保「植物・異物・薬品による中毒<猫>」)。思い当たるものがある場合は、パッケージや現物を持って、すぐに動物病院へ向かってください。

動物病院で伝えたいことと、検査の一般的な流れ

診察では、飼い主さんの観察情報が診断の大きな手がかりになります。動揺しているときほど言葉が出てこないものなので、電話をかける前にメモの形で整理しておくと安心です。

猫の前足にそっと手を添える飼い主のイメージ
写真はイメージです
  • 発作が起きた日時と、続いた長さ(分・秒)
  • 回数と間隔(今日何回目か、前回はいつか)
  • 体のどこがどう動いていたか(全身か、片側か、顔だけか)
  • 意識の有無(呼びかけへの反応、失禁やよだれの有無)
  • 発作の前後の様子(前触れ、おさまったあとのふらつきなど)
  • 最近の食欲・飲水量・体重・排泄の変化
  • 飲んでいる薬、思い当たる誤食や新しく使った薬剤
  • 撮影できた場合は発作の動画

動物病院では、問診と身体検査に加えて、血液検査(腎臓・肝臓の数値、血糖値、電解質など)、血圧測定、尿検査などで全身の状態を調べることが一般的です。そのうえで脳の病気が疑われる場合には、MRIやCTなどの画像検査、脳脊髄液の検査が検討され、設備のある二次診療施設を紹介されることもあります。検査の内容や費用は病院によって異なるため、事前に相談しておくと落ち着いて臨めます。

発作をくり返す猫と暮らすために、家庭でできる備え

診断がつき、通院や投薬が始まっても、発作がゼロになるとは限りません。「起きたときに慌てない準備」をしておくことが、猫にとっても飼い主さんにとっても、いちばんの安心につながります。

穏やかな光が差し込む静かな室内のイメージ
写真はイメージです

まず、猫が過ごす部屋の環境を見直します。階段や高い場所からの落下を防ぐ、ストーブやヒーターの周りを囲う、割れ物や倒れやすい家具を移す、といった調整で、発作中のケガのリスクを減らせます。爪切りを定期的に行っておくと、暴れたときに自分の体を傷つけにくくなります。

次に、発作の記録を続けることです。日付・時刻・長さ・様子を一冊のノートやスマートフォンのメモにまとめておくと、頻度が増えているのか、薬の効果が出ているのかを獣医師が判断しやすくなります。動画も、日付ごとにフォルダを分けて保存しておくと後から見返しやすくなります。

そして、夜間や休診日に備えて、かかりつけの動物病院の連絡先と、救急対応をしている近隣の病院の電話番号・診療時間を、冷蔵庫やスマートフォンに控えておきます。移動用のキャリー、タオル、保険証をまとめて玄関近くに置いておくと、いざというときの数分を短縮できます。

発作が増えてきたとき、心の準備として知っておきたいこと

治療を続けていても、高齢の猫では発作の頻度が増えたり、以前のように回復しなくなったりすることがあります。その変化に気づいたとき、飼い主さんの心には「もっと早く気づいていれば」という思いがよぎるかもしれません。けれど、痙攣は前触れなく起こることも多く、気づけなかったことは、飼い主さんの落ち度ではありません

猫のそばに静かに寄り添う飼い主のイメージ
写真はイメージです

この時期に大切になるのは、これから先どうしていきたいかを、家族と獣医師とで少しずつ話しておくことです。どこまで検査や治療を行うか、痛みや苦しさをやわらげるケアをどう考えるか、自宅で過ごす時間をどう支えるか。正解のない問いですが、あらかじめ言葉にしておくことで、いざというときに迷いや後悔が少し軽くなるといわれています。

また、もしものときの流れを知っておくことも、静かな備えのひとつです。ご自宅での安置の方法やお別れまでの手順を、あらかじめ目を通しておくだけでも、そのときの負担は変わってきます。

そして、お別れのあとに訪れる悲しみは、決して弱さではありません。長く介護を続けた方ほど、張りつめていたものがほどけて深い喪失感に包まれることがあります。ご自身の気持ちの変化に戸惑ったときは、その感情がどのようなものかを知ることが、回復への第一歩になります。

よくある質問

Q痙攣は何分続いたら危険ですか?

A一般的には、5分以上続く場合や、意識が戻らないまま何度もくり返す場合は「重積」と呼ばれ、緊急性が高いと考えられています。数十秒〜数分でおさまった場合でも、初めての発作であれば一度は動物病院で診てもらうことがすすめられています。判断に迷うときは、時間帯を問わず、まず電話で相談してみてください。

Q痙攣中に名前を呼んだり、体をさすったりしてもよいですか?

A発作中は意識がないため呼びかけは届かず、強い刺激はかえって状態に影響する可能性があるとされています。体をさすったり押さえたりせず、周囲の危険物をどけて静かに見守るのが一般的な対応です。おさまってからそっと声をかけ、暗く静かな場所で休ませてあげてください。

Q高齢の猫が痙攣を起こしたら、寿命が近いということですか?

A痙攣が起きたからといって、必ずしも終末期を意味するわけではありません。原因によっては、治療やコントロールによって落ち着いた状態を保てる場合もあるとされています。一方で、腎臓や脳の病気が進行しているサインとして現れることもあるため、まずは検査で背景を確かめることが大切です。

Q発作の動画を撮るのは、かわいそうではないでしょうか?

Aつらく感じられるお気持ちは自然なものです。ただ、動画は獣医師が発作のタイプを見極めるうえで有力な情報になるとされ、猫にとっての負担にはなりません。撮影が難しいときは無理をせず、落ち着いてから覚えている範囲をメモに残すだけでも診察の助けになります。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状は動物病院にご相談ください。

まとめ

高齢の猫の痙攣は、腎臓病による尿毒症、肝臓の病気、脳の腫瘍や炎症、てんかん、低血糖、中毒など、さまざまな背景から起こるとされています。見た目だけで原因を判断することはできないため、発作が一度でも起きたら、動物病院で背景を確かめることが第一歩になります。

そして、その場でできることはとてもシンプルです。口に手を入れない、体を押さえない、周りの危ないものをどける、時間を計る、できれば動画を撮る、そして落ち着いてから受診する。5分以上続く場合や、くり返して意識が戻らない場合は、時間帯を問わず緊急です。この記事を、いざというときに思い出せる場所に置いておいていただければ幸いです。

怖い思いをしたのは猫だけではなく、そばで見ていた飼い主さんも同じです。落ち着いたあと、どうかご自身のこともいたわってあげてください。あなたと猫が過ごす日々が、これからも穏やかでありますように。

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